海賊とよばれた男 | つましくても、ささやかな幸せ

つましくても、ささやかな幸せ

地位もお金も能力も無くても得られる、日々のささやかな幸せを記します。
内容は、映画・演劇・美術鑑賞&読書感想文&旅行記&趣味の手品&日々の出来事などです。


 涙する場面が何度もあった。岡田准一さんが、20代から90代までの国岡鐵造を見事に演じ分けていた。特に60代の老練な鐵造の、統率者としての迫力がもの凄かった。彼の演技力に脱帽した。
 真のリ-ダ-とはどのような人物なのかを、大いに考えさせられた映画だった。誰が何と言おうと周りにどのような抵抗があろうと、決して自分の信念を曲げない。責任は全て自分が取る。部下を家族のように大切にする。そんな鐵造の卓越した経営者像に深く感銘を受けた。鐵造は、ただただ厳しい頑固親父たけではなく、部下に寄り添いねぎらいの言葉をかけたり、家族の面倒も見たりしていた。だからこそ、強引でむちゃくちゃとも言える経営方針に、部下がついてきたのだ。敵対する経営者と労働者とは正反対で、両者が熱い信頼関係で結ばれていた。危険なアバダン行きの航海を知った船員たちが皆、「国岡商店、万歳!」と口々に叫んだ場面は、最高に感動した。「出勤簿無し。定年無し。社員は皆家族。」というのは、理想の会社経営だと思う。鐵造のような人格的に優れた経営者でなければ、そのような会社経営は無理だと思うが・・・。
 博打のような危ない経営の賭けに勝ち続けることができたのは、鐵造の強運と素晴らしい出会いがあったからこそだと思う。全く無償で多額の資金を提供してくれた日田重太郎との出会い。英語が堪能で諜報活動に長けている武知甲太郎との出会い。敏腕船長の新田辰男との出会い。多額の金額を融資してくれたアメリカの銀行等々。でも、そのような強運や出会いは、全て鐵造の人格が引き寄せたのだと思う。
 最初の妻ユキが自ら離縁する場面では、涙が溢れた。2人は互いに愛し合ったいた理想の夫婦なのに、子宝に恵まれなかったことが理由で引き裂かれてしまったことが、悲しかった。晩年に鐵造が、老人ホ-ムで亡くなったユキの遺品をに涙する場面も、ものすごく切なかった。
 明治から昭和にかけて激動の日本史の流れも、壮大に描かれていた。当時の日本人は現代の私たちの何倍も苦労して努力して、今日の日本を築いたということを実感した。私たちは精神面でも物質面でも、その先人の遺産をしっかり引き継いでいかなければと身の引き締まる思いがした。