「ノン」という言葉と「赤」という色彩と「太陽の塔」が、今も脳裏に鮮明に焼き付いている。それが今日鑑賞した岡本太郎展の率直な感想だ。
「太郎の塔」というテレビドラマでも紹介されていたが、岡本太郎が幼少期に受けた家庭教育は、戦前という時代を考えるとかなり特異だったと言わざるを得ない。その時に培った「ノン」という思想が、後に既成の概念を打ち破っていく岡本太郎のエネルギーの根底にあったのだと思う。「芸術は爆発だ」「芸術?そんなものはケトバシてやれ!」という挑発的な言葉を発することができた岡本太郎は、自由人であり、自分に正直に生きられた幸福者であったのかもしれない。
赤という色彩が、岡本太郎の絵のいたるところに使われているのが目立った。今まで観た展覧会で、ここまで赤の鮮明に目立つ絵を観たことがない。この赤の中には、太陽のような情熱と共に、「反戦」という思想も込められているのではないかと感じた。「明日の神話」という反戦をテーマとした絵を観て、またアメリカに向けて送ったベトナム戦争への抗議文を見て、彼の戦争反対という強い願いが伝わってきた。
「太陽の塔」の顔が、土偶からヒントを得てできたということを、この展覧会で初めて知った。この巨大なモニュメントが、当時は万博のパビリオンの建物を突き破り、今は平地の公園に高く高くそびえていることを思うと、古代からの壮大な歴史の流れを思わずにはいられない。同様の土偶のモニュメントを、以前私は子どもの城や有楽町の公園で見つけたが、一目見て「岡本太郎の作品だ」と分かるくらい個性的な様相だった。
岡本太郎ほど、個性的な作品を世に出し、強いメッセージを世に突きつけた画家は、日本には他にいないだろう。そんな岡本太郎を、私は尊敬する。