文化の日の振替休日を含めたこの三連休、本来は満を持して2日にスタートする600㎞ブルベに参加する予定であったが、折からの台風襲来で天気予報が芳しくない。当初の土日ともに大荒れという予報から土曜のみ雨と若干良くなったものの、時間的に夜間の走行となる静岡市近辺がちょうど大雨にになりそうだ。先日の首都圏一周ブルベにおける無念のDNS(出走中止)も記憶に新しいため、今回は多少の通り雨程度であればチャレンジしようと新たにモンベル製のサイクリング用レインジャケットを購入して万全の備えをしていた。ただ、終日雨の中を走行するのは苦行でしかないし、過酷な環境で600㎞を走破する自信はまったくといっていいほど無いので、今回ばかりはさほど迷うことなくDNSを決定した。年内に走れそうな600㎞ブルベはもう見当たらないので、これにより本年SR取得は不可能になってしまった。残念ではあるが、現在の実力的にはやや高望みし過ぎであったことは否めないので、仕切り直して来年の取得に向け鍛錬を積み重ねたい。そんな事を考えつつ、早速来週開催予定の300㎞ブルベにエントリーした。

 そんなわけで、直前になってまったく予定がなくなった三連休、初日は雨の中、それぞれ仕事や用事があるという娘と息子、そしてワイフを一人ずつ駅まで送っていく。時間がバラバラなので効率が悪いが、暇なのでまぁいいだろう。後は猫とともにひたすらダラダラと過ごす。翌3日は新旧2台のロードバイクの整備や自転車車載システムの効率化を図るための調整などに費やした。迎えた本日の連休最終日は、来週の300㎞に向け足慣らしとして少し長めに走らなければならない。そういえば5月の落車事故から早くも半年近くが経過したが、あれ以来都民の森を訪れていない。正直、再びあの場所を通るのは気が重いし、プレッシャーの余り再度落車しそうな気がしないでもない。とはいえ、都民の森はヒルクライムのトレーニングにはちょうど良いスポットであるので、このトラウマは早々に克服する必要がある。できるだけ早めに出発し、余裕を持ったスケジュールで走れば問題なかろう、と考えたものの夜半に開催されたF1サンパウロGPが雨の中の赤旗連発で中々終わらず、途中で視聴を断念して残りを今朝視たため出発が遅れ、準備をして自宅を出たのは10時50分になった。相変わらず体調も今一つで、正直この時間から60㎞以上走った先の都民の森にたどり着ける気がしない。とりあえず、行けるところまで行くことにして無心でペダルを漕ぐ。とはいえ、八王子を過ぎていつもの秋川街道を走っていてもあまりペースを上げられない。武蔵五日市駅を過ぎた先で、落車時に診察してもらったクリニックの前を通る。広い駐車場の片隅にロードバイクを立てかけたフェンス、激しい痛みをこらえて歩いた車椅子用のスロープなどを見ると、いやが上にも半年前の悪夢が蘇る。完全に負のオーラに絡め取られたようにテンションが下がっていく。12時50分、いつものファミマに到着。駅からここまで、下山してくる多くのサイクリストとすれ違ったが、時間が遅すぎるせいかコンビニに他のサイクリストの姿は見られない。時間帯的にも体力的にも都民の森まで上ることは厳しそうだが、やはり事故現場ぐらいはこの目で確認しておきたい。そのまま檜原街道を進むこと15分、見覚えのある場所に到着した。

 あらためて周囲を確認してみると、当時は気づかなかったが落車地点の手前には小さな橋がかかっている。その橋と道路の継ぎ目の段差がやや大きく、直ぐ側には小さなグレーチングが見られるが、一見して落車を引き起こすほどのものではないように思える。半年経過したことにより何らかの工事が入っている可能性もあるし、根本的な原因が判明しないのはスッキリしないが、逆に考えるとどのような状況下であっても落車事故は起こり得るということなのかもしれない。何となく納得したような気分で、さらに先を目指す。ヒルクライムの起点となる橘橋の交差点で足を止め、果たしてどうしたものかと暫し考える。体力、気力ともに十分ではないが、せっかくここまで来たのだからタイム云々は気にせず行けるところまで行ってみることにする。序盤の緩い勾配で早くも息が上がるが、心拍数は相変わらず130台にとどまる。30分弱ほどで上川乗の交差点に。頭の中ではもう撤退したい気持ちが大半を占めているが、怠惰なメンタルに鞭を入れて先に進む。勾配の急なところでは、インナーローで歩くぐらいの速度しか出ない。旧料金所を過ぎた先ではバイクが事故を起こしたらしく、パトカーや救急車が出動していた。ノロノロとひたすら絶望的な速度で上りながらも気を引き締める。普段はよく晴れた昼前後に走ることの多い都民の森だが、15時が近づいている本日は傾いた太陽により路面に影が落ちているのが新鮮だ。

 さすがにここまで標高が上がってくるとかなり肌寒く、先程までの激しい汗があっという間に冷えていく。最後の数㎞は完全に歩くぐらいのペースで進み、15時7分なんとか都民の森に到着。時間が遅いせいかハイカー、ライダーは数多いが、サイクリストは他に見当たらない。

タイムの方は1時間40分と、残念ながら過去5回走った中でもっとも遅い記録になってしまった。今ひとつ優れない体調からするとやむを得ないとはいえ、冷静に考えると酷いタイムである。やはりステロイドを急速に減らしすぎたせいで心臓に再び炎症が起こっているのか、あるいは根本的にロードバイクに向いていないのでは、などと様々な思考が頭をよぎる。とはいえ、スローペースといえども無事に目的地に到着したという点においては悪い結果ではないと前向きに捉え、ソフトクリームで糖分を補給しながらこの後どうするか検討する。

 余裕があれば奥多摩湖側に下りるつもりであったが、ここまで時間がかかり過ぎているため本日のところはこのままUターンして帰宅したほうが良いだろう。20分ほどゆっくりと休憩し、下山開始。半年前の悪夢を繰り返さぬよう、スピードの出しすぎに注意して慎重に下る。それにしても全長約20㎞にもおよぶここ都民の森ヒルクライム、下山時には毎度よくこんな長くて急な坂を上ってきたものだと、我ながら感心してしまう。タイムはともかく、54歳にもなってこんなところを走れるだけでも大したものではないのか、と心の中で少しだけ自賛しながら淡々と下る。途中のキャンプ場横で、車道を横切る20匹ほどの大量のサル軍団に遭遇した。サルなりに安全確認はしているようだが、ハイスピードで飛ばすオートバイなども多いので轢かれてしまわないか少し心配である。すぐ近くを通りかかったサルを撮影しようとすると、一瞬目が合ったこちらを軽く威嚇した後に悠々と歩き去った。

 順調に進んで橘橋の交差点を右折すると、先程の落車スポットを再び通過することになる。全身で嫌な予感に包まれながらもなんとか無事に通過。これで一応、トラウマは克服したと考えてもいいだろう。最後は各所で渋滞に遭遇しつつ、すっかり日も暮れた19時30分無事自宅に帰着。トータル135㎞を超えた本日のライド、気温が低かった割に疲労が顕著なのは来週の300㎞ブルベに向けて不安材料ではあるが、2度のDNSを経た久しぶりのブルベだけに好天に期待したい。