先週土曜日のロードバイク落車事故で大きなダメージを受けたものの、人間の自己治癒能力とは実に大したもので着々と回復しつつある。特に右目付近の裂傷と顎の内出血に関しては、あまりに酷い見た目に当初は大きな絆創膏を2枚貼って出勤したが、本日はその絆創膏なしでも恥ずかしくはない程度には目立たなくなった。同様に、右手親指および左手首の捻挫も若干の痛みは残るものの日常生活にほぼ支障はない。問題は背中の痛みである。事故当初は肋骨のダメージと捉えていたが、その夜には体を動かす度に背骨の真ん中あたりに鋭い痛みが発生するようになった。以来、この痛みはまったく収まる気配を見せず、夜ベッドに横臥するだけでも痛むので、やむなくリビングのソファで上半身を軽く起こした状態で寝るという状態だ。当然、十分な睡眠は取れず寝不足の日々が続く。幸い、日中の仕事に関して大きな問題は無いのだが、少しずつでも良くなるどころか事故後1週間を経てほぼ同じレベルの痛みが続くので気が滅入る。見かねたワイフが「もう一回病院で診てもらったら」と言うし、さすがに自分でも尋常ならざる事態と考え、やむなく本日は午後休として病院に出かけることにした。

 一旦自宅に戻ってから、近所の整形外科へ。混み合う待合室に座っていると、昨年6月の常念岳登山の際に負傷した肉離れ診察時の嫌な思い出が蘇る。40分ほど待った後、診察室へ。11カ月前と同じ医師に事の次第を細かく伝える。とりあえずレントゲンということで、様々な角度から計5枚ほど撮影。その間にも、不自然な姿勢を強要されるだけで結構な痛みで思わず声が出てしまう。少し待機した後に再び診察室に入ると、忙しそうな医師もモニタに映し出された撮影画像は初見らしく「じゃ、一緒に見てみましょう」と一言。正面から上半身全体を捉えた画像は特に問題は無さそうだが、横からの画像を見た瞬間にマウスを操る医師の手が止まる。しばし画像を凝視した後「あ、折れてますね」と衝撃の一言。一瞬、何のことを言っているのかわからないが、どうやら背骨の第六胸椎という部分が圧迫骨折しているらしい。確かに、画像をよく見ると他の胸椎がきれいな長方形なのに、患部のみ前が潰れた台形になっている。道理で痛いわけである。背骨の骨折という診断への衝撃は大きいが、一方で謎の痛みにちゃんと理由があったという点においては少しホッとする。ただ、医師は少し腑に落ちないというか納得しかねる様子で「今回の事故ではなく、以前から骨折している可能性もあるんですよね」とよくわからないことを言う。ふと思いついて「そういえば普段ステロイドを大量に飲んでいて骨粗鬆症なんで、それも原因ですかね?」と言うと、医師は「あ、なるほど。それですね。一般的には、骨粗鬆症の高齢の女性が咳したときなどに折れることが多い部位なんです」と謎がすべて解けたのか嬉しそうだ。治療について尋ねると、酷い痛みが続いて手術を行うケースもあるが、一般的には経過観察するしかないらしい。結局は呪われた難病心サルコイドーシスに起因するものか、とちょっと投げやりな気分になり「もうロードバイクとか乗らない方がいいですかね」と言うと「いや、骨粗鬆症的には運動は良いことなので続けてください。ただし落車は厳禁です」と冷静に返される。ごもっともとしか言いようがない。ちなみに、この圧迫骨折によって物理的に背骨の長さが短くなるため、身長が最大1cm程度低くなる可能性があるらしい。現在の身長は172cmで、遺伝のせいかこれは息子の身長とほぼ同じである。彼が幼少の頃より、何れ大きくなって身長を抜かれたら果たしてどのような気分になるのだろうと考えていたが、予期せぬ事故によってそれが現実のものになってしまうのか。何とも締まらない話ではある。念の為、1カ月後に再度レントゲンにてチェックすることになり、本日の診察は終了。

 事故当日、現場近くのクリニックによるレントゲン診断では骨折の恐れはないとのことだったので、本日の結果を踏まえると完全なる医療過誤であるように思うが、あの時は自身も完全に患部が肋骨と信じ込んで医師にアピールし、レントゲンも肋骨を中心にチェックしていたのでやむを得ないか。会計を待つ間、早速スマホで胸椎圧迫骨折について調べてみると、真っ先に例として上げられるのはやはり高齢女性の骨粗鬆症案件が多い。もちろん、交通事故による強い衝撃も一因となるらしいが、過去2回の骨密度検査ですでに骨粗鬆症に蝕まれていると診断されているだけに、そうしたリスクが顕在化したという点においては残念である。月一回の治療薬「アクトネル」は欠かさず服用しているが、今後はカルシウムも意識して多めに摂取する必要がありそうだ。そもそも外来診察時の血液検査でも毎回タンパク質が全然足りてないし、とはいえ各栄養素をしっかり摂取しようと心がけると食べ過ぎとステロイドの副作用であっという間に体重が増えてしまう恐れがあるので悩ましい。

 さて、懸案のMt.富士ヒルクライムがいよいよ来週末に迫っている。先週の事故後は、肋骨周りの捻挫であれば2週間もあれば程々に治るだろうし下半身にはまったく問題はないので、タイムはともかく参加して完走するぐらいは何とかなるだろうと密かに楽観視していた。もちろん、ワイフの前では沈痛な面持ちで「当然、棄権かな…」と殊勝な態度は崩さない。しかしながら、ウェブ情報によると一般的に胸椎圧迫骨折の完治には4週間ほど要するらしく、さすがにこれでは出走を断念せざるを得ないかもしれない。手配済みの大会前日泊ホテルについて、ワイフからは「今すぐキャンセルせよ」と強い圧がかかるが、それでもどこかで奇跡の回復を祈る自分がいて、中々キャンセルボタンを押すことができない。