オバマ元大統領は、イランという国の歴史や文化への敬意を持って「イラン核合意」を成立させた稀な政権 | 韓国の森3

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2014~2024~

 

 背景には、トランプ大統領とネタニヤフ首相の双方に巨額の政治献金を行っているアデルソン一族のような存在もあります。マリーナベイサンズというシンガポールの大きな大型リゾートカジノを経営している一族ですね。

 そして、これはあくまで推測ですが、それなりの説得力を持って語られているのが「エプスタイン・ファイル」の存在です。

 

 少女売春組織を運営していたエプスタインの背後には、イスラエルの諜報機関モサドがいたのではないかという説があります。公開されていないファイルの中に、トランプ大統領にとって致命的に不都合な記述があり、イスラエルがそれを使って圧力をかけているのではないか、という推測です。イラン側の広報では、今回の戦いを「エプスタイン戦争」と呼んでいるほどです。

 

表向きは、中東が安定して海外資本がサウジに入ってこられるよう戦争は避けたいとしていますが、サウジの本音は、脅威であるイランの体制を倒してほしいというところにあります。

 ただ、もし戦争が終わってイランの体制が生き残った場合、サウジはイランからの激しい報復を受けることになります。今のサウジは、アメリカの抑止力が揺らぐ中で「裏切り者」として狙われることを恐れる、板挟みの立場に置かれています。

 

2019年にサウジのアブカイクにある石油施設がイランに攻撃された際、当時のトランプ政権は報復してくれませんでした。「これだけアメリカに貢いでいるのに、いざとなったら親分は守ってくれないのか」とサウジ王家は思ったに違いありません。

 そこで、彼らは新しい親分としてイスラエルに接近しましたが、今度はそのイスラエルがカタールを爆撃するなどみさかいのない行動に出ました。今、彼らが注目しているのは、軍事大国のトルコ、そして核保有国のパキスタンです。パキスタンの背後には中国がいますから、中東に中国の影響力が流れ込む大きな転換点になるかもしれません。

 

いずれにせよアメリカにとって地上戦は極めてリスクが高いものです。イランは広く、地形は山がちで複雑です。重要施設は地下深くの隠されており、ガザのような、あるいはそれ以上の消耗戦になるでしょう。

 さらに、イラン側には切り札があります。イエメンのフーシ派による紅海封鎖や、イラクの民兵組織による隣国クウェートへの侵攻です。

 イラン側は「地上戦なら受けて立つ、どうぞこちらへ」という不気味なほどの戦意を見せています。自分たちに空軍がない分、地上で引きずり込めば勝機があると考えているのです。切り札を持っているのはアメリカだけではないということは意識しておいた方がいいと思いますね。

 

フーシ派がイスラエルに対してミサイルを撃ち始めました。大規模なものではありませんが、すでにイスラエルはイランとレバノンのヒズボラからの集中砲火を浴びている状態なので、これで三方向からの攻撃となります。イスラエルの防衛が少し難しくなりました。

 また、もしアメリカが陸上戦闘を始めてフーシ派が紅海を封鎖すると、世界経済はさらに混乱して、サウジは石油が全く輸出できなくなる可能性があります。フーシ派の陸上部隊がサウジアラビアに侵攻するというシナリオも十分にあります。

 

オバマ元大統領は、イランという国の歴史や文化への敬意を持って「イラン核合意」を成立させた稀な政権でした。

「イラン・イスラム共和国の皆さん」と正式な国名で呼びかけたり、体制を脅かすつもりはないというメッセージを送り続けて核合意の交渉を始めたんですね。イランの人たちはプライドが高いので、自分たちに敬意を払ってくれているということがわかると話を始められるんです。

 他方、トランプ大統領は、それを一方的に反故にしました。圧力を強めればもっと良い条件を引き出せると誤解していました。イラン側は結んだ契約を反故にされて、なぜまた交渉しないといけないんだと反発を強めました。

 バイデン前大統領は、私はこの点について失敗したと思っています。トランプ大統領はイラン核合意から大統領令を出して抜けたのだから、バイデン前大統領も政権発足の初日に大統領令を出せば核合意に戻れたはずです。

 大統領選挙では核合意復帰を掲げながら、さらなる譲歩を求めて時間を浪費し、最終的に機会を逸してしまいました。やはりイスラエルとの関係が重要だったんですね。全くイランという国がどういう国かわかっていなかったという印象です。

 

──トランプ大統領はオバマ元大統領の核合意に関しては大失敗だったと否定的な評価をしています。

高橋:あの核合意を受けて、イランはIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れて、IAEAもイランは核合意に忠実に従っているという報告を出していますから、トランプ大統領の「オバマ元大統領との合意があったので、イランは核兵器開発に突き進んだ」という認識は事実ではありません。

 

オバマ元大統領は幼少期をインドネシアで過ごしています。インドネシア人は日本人のようにはっきりものを言いません。いわば「変化球」の文化です。その中で育ちました。直球勝負のアメリカ社会に戻った際に経験したであろう文化的摩擦が、異文化への高い感受性を育んだのでしょう。

 加えて、イラン育ちの補佐官バレリー・ジャレットや、娘がイラン系移民と結婚しているケリー国務長官など政権中枢にイラン文化への敬意を持つ人々がいたことも重要です。

 オバマ政権は、相手のプライドや感情に訴えるための工夫を凝らしていました。例えば、ペルシャ語報道官の任命です。あえてネイティブではなく、デーブ・スペクター氏の日本語のように「アメリカなまりで一生懸命に話すアメリカ人」を起用することで、誠実な姿勢を演出しました。こうした細かな敬意の積み重ねが、あの核合意を成立させる土壌になりました。

 

──イラン側のダメージはどの程度なのでしょうか。あとどのくらい持ちこたえられそうですか?

高橋:経済的な打撃は極めて大きく、アメリカやイスラエルはイランが二度と立ち上がれないよう、大学や製鉄所などの知的・社会的なインフラを潰しにかかっています。

 ただ、空爆だけで戦意を喪失することはないでしょう。地下深くに隠されたミサイルはまだ手つかずでしょうし、反体制派だった人たちも今は「国を守る時だ」と一体感を高めています。

 苦しいのはイランだけではありません。アメリカとイスラエルも、ミサイルの在庫が尽きかけています。今日(4月2日)の映像ではテルアビブが火の海ですが、撃ち落とす迎撃ミサイルがないのです。

 韓国やポーランドに配備している迎撃ミサイルを引っ張ってこようとして現地が怒っているほどです。イラン側はそれを見て「敵は防衛できなくなる、時は我が方の味方だ」と考えています 。

 海峡封鎖にしても、中国やインドなどの「いい子」の船だけ通す「とおせんぼごっこ」で石油収入は確保しています。今の体制が生き残れば、将来的にホルムズ海峡の通過料を一隻200万ドルほど徴収して復興資金に充てることすら、彼らは考え始めているようです。