祈りを込めたレクイエム | 小林沙羅オフィシャルブログ「小林沙羅のきまぐれ日記」Powered by Ameba

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ソプラノ歌手、小林沙羅のブログです。
出演する演奏会についての日記を中心に、忘れてしまいたくない大切な日々を綴っていきたいと思います。

東北関東大震災があって1週間以上経ちました。

この間、いろいろな事を感じ、考え、

でも、今までそれを言葉にする事ができませんでした。


何を言っても表現が追いつかないように思えて、

何を書いても足りないように感じて。

私の安否を心配して下さる方もいたのに、

長い間沈黙してしまい、本当に申し訳ありませんでした。


皆さま、ご無事でいらっしゃいますか?


私は無事です。

元気です。

精神的にも元気を取り戻してきました。


3月11日、私は「椿姫」の公演の関係で神戸にいました。

その日はオフだったので大阪の劇場にいたのですが、

客席も照明もそで幕もゆらゆら揺れて、船酔いのような状態になりました。


ワンセグで東北と関東で大地震だったとわかったのですが、

家族とはなかなか電話が通じず。。


何時間も経ってようやく家族の無事がわかり、

テレビのニュースで地震、津波による大惨事を目にして、

なかなか同じ日本で起こった事だと言う実感がわきませんでした。


次の日は椿姫の最終日で、朝からスタンバイをし、

交通がめちゃくちゃな中、東京から兵庫へ向かっている森さんが

無事に到着されるように願いながら、お待ちしていました。

森さんも無事に間に合い、椿姫のメンバーはありがたい事に、

一人も欠けることなく、千秋楽を素晴らしい演奏で締めくくる事ができました!!

本当に良かった。


そして私はその日のうちに名古屋へ移動、

夜はリハーサルをして、次の日はアンサンブル金沢の皆さま、

飯森範親さん、与那城敬さん、名古屋の女声合唱の皆さまと、

フォーレの「レクイエム」を演奏しました。


こんなにタイムリーに「レクイエム」を演奏する事になるとは思いませんでした。

今回の「レクイエム」は、演奏者だけでなく客席の皆さまも一緒に祈りを込めた演奏になり、

名古屋の大ホールが、言葉にならないたくさんの思いで溢れていました。


私自身もピエイエズに祈りを込めて歌いました。

金沢で演奏した時とは全然違う演奏になりました。

感情過多になってしまったかもしれません。

でも、希望の光を、美しさを失わないように、と努めました。

自分が歌っていない時には、何度か涙が出そうになりました。


その日、演奏が終わって東京に帰り、

久しぶりの実家に帰るとわけもわからなく涙が出ました。

疲れや不安や様々な思いでいっぱいいっぱいになっていたのだと思います。

ひとしきり家で泣いて、少し落ち着きました。


本当はその2日後にウィーンに発つ予定になっていたのですが、

大変な状態の日本から飛び立つ気になれず、

私になにかできる事はないだろうか、と考えながら、

航空券をキャンセルしました。


そして一週間あまり、毎日ニュースや新聞やインターネットを見たり、

原発に詳しい知人や外国人から情報を得ながらいろいろな事を感じ、考えていました。

そしてこんな時に何もできない自分の無力さにがっくりしました。


そして最近ようやく思う事は、


私たち演奏家はきっと、もう少し時間が経って落ち着いて来たら、

復興のためにできる事が必ずある。必要とされる時が必ず来る。

その時にできる精一杯の事をしよう。

そのためにも今は元気でいよう。

そして自分のやるべき事をしっかりやろう。

歩みを止めずに、前を向いていよう。


ということ。


世界中でチャリチィーのためのコンサートが開催され、

日本の復興のための資金が集まっています。

ウィーンでも演奏会が企画されています。

世界中で PRAY FOR JAPAN をスローガンに、様々な活動が起きています。


私は落ち込んでいる場合ではない。

今週ウィーンに発ちます。

しっかり自分のやるべき勉強を重ね、

私の演奏でたくさんの人を笑顔にできるように、

しっかり前を向いて頑張る。


今、私にできる事はきっとそれしかない。


被災した友達や、まだ家族が見つからない友達もいます。

福島の原発のそばで防護服を着て、

原発のコンピューターを直しに行っている友達もいます。


心配な事、不安な事はたくさんあります。

でもそこから目をそむけずに、溢れる情報の中から本質を読みとって行くこと。

それがとても大切な時だと思います。


私たちは日本人としてだけでなく、人間として、

今回の災害から学ばなければいけない事がたくさんある。

自然に対する謙虚さを持って、これから進むべき道を、

一人ひとりが考えて行かなければいけない大事な時だと思っています


皆さまの無事と健康を心から願っています。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。