”元祖巴の龍#69” | 人はなにかしら欠けている いびつで歪んでいるから人間だからこそ私は私マイウェイ runas-fountain

人はなにかしら欠けている いびつで歪んでいるから人間だからこそ私は私マイウェイ runas-fountain

sarai runas-fountain最新作「炎の巫女/阿修羅王」そしてまた、どこかの時代で 全国書店・Amazon・楽天で発売中!

 

「もとよりこの日が来るのは覚悟の上。まずは朱欄に行くのだな」
「兄上、行っていただけるのですね」
菊之介が身を乗り出すと


「当然だろう。新城や涼原のことはともかく、わたしも母を助けたい

一目なりともお会いしたいのは同じ気持ちだ。


しかし桐紗殿の病状のこともあり、おまえ達がいつ言い出すか、待っていたのだ」
兵衛は手を出した。その手に大悟、菊之介の手が重ねられた。


我ら兄弟の旅立ちぞ
兵衛が力強く言った。

 

 

三人の若者は、それぞれに別れを告げ、いよいよ出発の朝、粛清の町から南燕山に向かう山道で落ち合った。
兵衛は洸綱より涼原家伝来の太刀が譲られ、大悟は芹乃の親方が作った鋼の弓矢を、菊之介は桔梗の太刀を携えていた。


山道を少し入ったところで、ひとりの女が待っていたように現れた。
桐紗だった

 

 

 

 

「菊之介、私もこの旅、連れて行ってください
兵衛と大悟は顔を見合わせた。


「義姉上、何度も申し上げたではありませぬか。

この旅は、義姉上の父君を討つための旅。

そんな旅に、連れて行けるわけがないではありませぬか」


「もう、父とは思わぬと、丈之介様の家でも言うたではありませぬか。それに、あなた方には私の力が必要です
菊之介も兄達も不思議そうにしていたが、桐紗は横を向くと、山道脇の岩めがけて手をかざした。


そして、なにやら小さくつぶやくと、その手から火の玉が飛び出し、岩を燃え上がらせた。


「これでおわかりいただけたでしょうか」
菊之介も大悟も、かつての妖怪たちとの闘いを思い出していた。

 

黒龍を燃え上がらせた火の玉、白龍を凍らせた吹雪、そして龍車に落ちた落雷、すべては桐紗の妖術だったのだ。


私は三つ口定継の娘、妖怪を操る男の娘です。ですから、このような力があっても不思議ではありません。

 

しかし、私は父とは違います。力と恐怖で人を人を押さえる父のやり方は納得がいきません。
父をいさめるのも娘の役目かと存じます

いえ、娘なればこそ、ほかの者には任せておけないのです」



兵衛は桐紗に近づいた。
桐紗殿、あなたを信用するに足るものが、何かおありですか

 

続く
ありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

https://jp.mercari.com/item/m22674267294

 

弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ