「義姉上が美しすぎるからいけないんです。
子供の頃から、どれほど眩しかったか。
今のわたしには眩しくて目を開けていられない。
恥ずかしくて、言葉を交わすこともできない。
子供の時のように素直に、手をつないだり抱きしめあったりしたいけど、それはもう妹としてではなく、男と女のこと。
義姉上の気持ちもわからないし、聞く勇気もないのに、どうして自然に話せるんだ。
わたしは義姉上が・・・義姉上が、好きなんです。
ずっと前から。義姉上・・・」
菊之介は座り込んだまま頭を抱え込んだ。
すると涼やかな風が吹いてきて、後ろから菊之介を包み込んだ。
それから不意に人の温かい体が絡みつき、後ろから抱きすくめられた。
菊之介は首だけ後ろに向けた。
「義姉上」
菊之介は嬉しさと同時に顔中火がでるほど真っ赤になった。
「すべて聞きました。菊之介のうそつき」
「う…うそなんてついてません」
「いいえ、うそつき。私のこと嫌いなふりして」
「嫌いだなんて、一度も言ってません」
桐紗は菊之介の隣に座り、寄り添ってきた。
菊之介は、おずおずと桐紗の肩に腕をまわした。
桐紗は微笑んで、いっそう菊之介にすり寄ってきた。
菊之介は相変わらず心臓が早鐘のように打ちながら、心地よさに酔っていた。
年が明けてからしばらく経っていたが、粛清(しゅくせい)はまだ冬の真っただ中だった。
粛清は工業が発達した町で、職人町で成り立っていた。
商家は少なく、主に作られたものを、他の地方に売りさばくための媒介するのが仕事だった。
また農地も少なく、作物は甘露(かんろ)や蛇骨(だこつ)から売りに来るものが多かった。
菊之介と大悟は粛清に入ると、まず鍛冶屋町に向かった。
太刀を打ち直すのが目的だ。
そして大悟は、より強い弓矢を手に入れたいと思っていた。
今、大悟が持っている弓は木でできていた。
大悟は鋼のような強い弓と矢を作ってくれる所を探そうと思っていた。
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兵衛はこのところ、鍛冶屋町に行く機会を失っていた。
それというのも、洸綱の太刀も打ち直しが終わり、行く理由を見つけられないでいた。
芹乃に会いたい気持ちは日々強くなっていたが、一方でこのまま会わずに忘れてしまった方が良いという気持ちもあった。
だが、その日は珍しく洸綱も葵も出かけていなかった。
二人が帰って来る前に帰れば良いのだ。黙っていれば、わからない。
兵衛の心はもう芹乃の元へ飛んでいた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
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弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ