こんにちは、Sarahです。

大手住宅メーカー勤務の

インテリアコーディネーターです。

 

住空間を通して


人を幸せにすることが

インテリアコーディネーターの責務です。


インテリアに興味があり、

自宅を自らの手でおしゃれにしたいと思う方に

手に入れておくと役にたつ基本的なセオリー(理論)をご紹介します。


『捨てられない』

その言葉を否定しない



インテリアの打ち合わせに入る前に、
担当営業や設計士とミーティングをします。
お客様についての情報共有だけではなく、
話の進め方について、アドバイスを受けることも
あります。

このアドバイスが、打ち合わせの流れを
作っていきます。

今回は、その一例をご紹介します。

『8割聞いて、2割で提案。』

お客様の想いを形にするのが、仕事であれば
家やインテリアに対する要望を聞くことは、
当たり前なのでは?と思われますよね。

インテリアコーディネーターは、
ヒアリング力(正しく言葉と想いを聞き取ること)が高いこと、優れていることが大切だと思います。

今回の聴くは、意味が少し違いました。

以前、弁護士の知人から
インテリアコーディネーターは、
クライアントが幸せな人ばかりで羨ましいと言われたことがあります。
その一言が嬉しく、心に留まりました。
確かに打ち合わせで会う大半の方が、
幸せ色のオーラを纏っています。

そんな中、ご紹介するのが今回のお客様です。
挨拶もそこそこに、引越しが迫っているのに、
片付けが一向に進まない、と話が始まりました。

引越しの中でも、一番と言えるくらい大変なのは、
生まれ育った実家を建て替えるための片付けです。
自分の年齢と同じ年月をかけて積み重ねた荷物を設けられた期限までに、片付けなければいけない。
毎日、片付けても片付けても荷物は減らず、
焦りと疲れだけが溜まっていく…など、
相当なストレスを抱えられているようでした。

仮住まいに、とりあえず必要なものは運び終えた現段階で、建物の解体まで約2か月。
これから、まだ仕分けされていない荷物の整理をはじめなければいけないと、ため息まじりに話されました。
自宅の契約からずっとこのもやもやした思いを
抱え続けて約2年。何度も新居を諦めようと
思われたとか。


営業からアドバイスされた「聴く」ことは、
聞き出すことではなく、言葉に載せた様々な想い
受け止めることだと理解しました。

遮ることもアドバイスをすることもしない。
ただ、相づちを打って話を聞くだけの時間が
流れていきました。

今日、新居の打ち合わせのために、ここに出向く
ことを億劫だと思われていたそうです。
今は、片付けに心が囚われていて、
新居のインテリアを考える余裕はないと
話されました。
今日は新居のインテリアのことは考えず、
次回へと先送りすることにしました。

引越しのために、こんまりさん(近藤麻理恵)の
本をはじめ、お片付けに関する本をたくさん
読んだことや、テレビの片付け特集などを見つけては視聴もしてきたことも伺いました。
真面目で勉強熱心な人柄が窺えるエピソードです。
ただ、どの本を読んでも、番組を観ても他人事で心に響かなかったそうです。
その中で、こんまりさんの本
「人生がときめく片付けの魔法」だけは、厳しさを強いられなかった点で受け入れることができたと話されました。



人に話すことで、心が柔らかくほぐれてきたのか、時間が経つにつれ、しだいに表情が明るくなってきました。

まだ手をつけられていない衣装ダンスが17棹。
コートだけで50着あり、仕事を辞めた今、通勤に着ていたコートは必要ないと思いながらも
捨てられないと打ち明けられました。

断捨離やお片付けが、正論として広く世間に受け入れられています。
もちろん、無駄なものがなく、美しく整えられた
空間は憧れを持って肯定され、否定されることはありません。

反対に捨てられないことをネガティブに捉え、否定することも同じようにしてはいけないと今回、気づかされました。

新居のプランには17棹のタンスが収められるスペースを用意しています。
捨てなくてはと衣装ダンスの前で思い悩む前にゆっくりで良いので、一日一棹片付けませんか?
とお声かけをしました。
一棹の片付けが終わったら、かなり疲れると思うので、そこで終了してください。
それを17日間、繰り返してみてください。

次回の打ち合わせまでの一週間。
七棹のタンスが片付くことより、
お客様が少しずつ、幸せ色のオーラを纏い重ねて
いくことを期待して、「聞く」に徹した今回の打ち合わせを終了しました。