[ガン治療]ガンだけを狙い撃つ「第5のガン治療」BNCT!効果は高いが普及が遅い理由

 

 

■ [ガン治療]ガンだけを狙い撃つ「第5のガン治療」BNCT!効果は高いが普及が遅い理由

 

日本では2人に1人がガンに罹患し、男性は4人に1人、女性は6人に1人が命を落とす「死に近い病」として、いまだに恐るべき相手です。ただ、死亡率は低下傾向が続いています*1 。

 

その要因のひとつは、さまざまな治療法の進歩です。ガン治療は外科手術、放射線治療、化学療法の3本柱が基本です。化学療法に使われる抗がん剤は、研究開発に世界中がしのぎを削っており、新薬の登場も多くなっています。

 

そこに新たな治療法も登場しました。2014年には、免疫チェックポイント阻害薬を使用し、自身の免疫を利用してガンと闘う“第4の治療法”が承認されました。さらに20年6月にはBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、21年1月にはアルミノックス治療(光免疫療法)が保険適用されて診療が開始されました。BNCTとアルミノックス治療は“第5の治療法”と呼ばれています。

 

*1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」より

 

 

●再発頭頸部がんに2つの新治療法

 

第5のガン治療法といわれるBNCTとアルミノックス治療は、どちらも「再発頭頸部がん」で保険適用されます。つまり、外科手術や放射線治療、化学療法などの〈標準治療〉を受けた上で、ガンが再発した場合に受けられる治療法です。「〈標準治療〉を尽くして、もう手立てがない」ではなく、次の一手が登場したとも言えます。

 

このうちアルミノックス治療の仕組みは、ガン細胞に特異的に結合する薬剤を患者に投与し、患部にレーザー光を当てることでレーザーと反応させ、ガン細胞だけを壊すというものです。対してBNCTのほうは、ガン細胞に取り込まれやすいホウ素の同位体を含んだ薬を投与した後、中性子線を照射、中性子とホウ素が反応してα線という放射線の一種とリチウム粒子が発生し、2つのエネルギーによってガン細胞が破壊されるという仕組みです。

 

どちらもガン細胞だけを“狙い撃ち”するのが特徴で、正常な細胞への影響が少ないため、従来の放射線治療や殺細胞性抗がん剤に比べると身体的な負担は比較的、軽くて済むといいます(ただし、ホウ素化合物の取り込みの程度によっては正常細胞も影響を受けます)。

 

治療にかかる日数もアルミノックス治療では治療に2日、BNCTは1日です。その後、約1週間の入院で経過観察をするため、短期間で終わります(事前の検査にかかる時間は除く)。

 

 

●奏効率の高いBNCTが必ずしも選ばれない現状

 

では、どちらがより効果があるのでしょうか。

 

アルミノックス治療は、海外で行われた切除不能な局所再発の頭頸部扁平上皮がん患者30人への治験において、ガンが全て消失した完全奏効4人(13%)、状態が改善した部分奏効9人(30%)で、効果があったとされる奏効率は43%です。BNCTは、南東北BNCT研究センター(福島県郡山市)において保険診療で行われた頭頸部扁平上皮がん55例の治療において、完全奏効26人(47%)、部分奏効13人(24%)で、奏効率は71%です。

 

数字だけを見るとBNCTに分がありそうなものですが、そうでもないらしいのです。南東北BNCT研究センターの髙井良尋センター長と担当医師はこう話します。

 

「治療の対象は〈切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん(上皮系の悪性腫瘍のみ)〉の患者さんなので、全体から見ると、そう多くありません。それでも対象になる患者さんは年間で数百人ほどおられますから、2施設で分けて治療していたらフル稼働になるはずです。しかしながら、再発頭頸部癌の治療手段には、アルミノックスやBNCTだけではなく、従来行われていた化学療法の他、近年の免疫療法、化学療法と免疫療法との併用療法等多くの選択肢があります。BNCT以外の治療法は頭頸部癌の治療を最初に手掛ける頭頸部外科医等の手元にある治療手段であり、それらの治療法が優先されている現状があります」

 

また、アルミノックス治療は実施可能な施設が北海道から沖縄県まで全国に約100カ所ありますが、BNCTは南東北BNCT研究センターと大阪医科薬科大学にある関西BNCT共同医療センター(大阪府高槻市)の2カ所のみです。

 

「BNCTの方が良好な治療成績であることが分かっていても、BNCT施設が遠いとの理由も一部あり、適応がある場合には全国的に施行可能なアルミノックス治療が優先されているようです。BNCTに紹介される患者さんの診療情報には、〈レーザーが十分に届かずアルミノックス治療の適応にはならないのでBNCTはいかがでしょうか〉との記載が多いのです」(同)

 

 

●「まるで腫瘍が溶けていくような感じ」

 

左上顎部のガンを発症した70代男性患者は、手術、化学療法、放射線療法を行いましたが1年後に再発し、南東北BNCT研究センターを受診しました。

 

このとき、腫瘍の大きさは左頬の表面からも膨らみが見てとれるほどだったといいます。男性は中性子線の照射後、「まるで、腫瘍が溶けていくような感じがする」と話し、実際に治療によってガンは消失して、表面の膨らみや赤みもなくなりました。このような完全奏功が47%にのぼるのです。

 

「再発頭頸部がんの予後は厳しく、10~50%の人が半年ほどで亡くなります。当院の治療成績では、1年生存率は90%、2年は66%。また、癌が完全になくなったまま生存している無病生存率は2年で30%です。つまり他に治療法がなくなった患者さんの3人に1人は治癒する可能性があるのです。このような良好な治療成績は従来行われていた治療法では報告されていません。ちなみに前述の70代男性は他に治療法がなく紹介された方でしたが現在3年9カ月経過し、再発なく元気にお過ごしです。病院が遠いからなどのことで躊躇せず、なるべく治る可能性の高いBNCTを受けていただきたいし、主治医の先生方にも再発時に最初から選択肢のひとつとして、患者さんに示してほしいと思っています」(同)

 

保険診療で受けられる確かな治療であり、その対象となる患者にとっては希望となるはずのBNCTは、なぜ施設がこんなにも限られているのでしょうか。

 

 

●アメリカ生まれの治療法が現在は日本の独走状態に

 

BNCTの歴史は古い。世界で初めて臨床試験が行われたのは1951年のアメリカで、研究用原子炉を使い、神経膠腫(悪性脳腫瘍)を対象に10年にわたって行われました。ところが、ホウ素化合物や中性子線の品質不良などから被験者の平均生存期間が半年にも満たない結果となったために臨床試験は中止、アメリカはBNCT研究からはいったん退きました。

 

ただ、その間も世界各地でBNCT研究が進められていました。

 

日本では東京大学に所属していた畠中坦(ひろし)が留学先のハーバード大学で学んだBNCTを持ち帰り、帰国してすぐに研究用原子炉を使った臨床試験を開始しました。帝京大学医学部に移った畠中は、60年から90年にかけて200例以上の神経膠芽腫を治療して、良好な結果を蓄積しました。また三嶋豊(当時神戸大学)らによる悪性黒色腫への臨床試験も行われ、日本が世界をリードしていきます。

 

患者への治療へと移行するためにネックとなるのは、中性子線を出す装置です。中性子線を発生させることができるのは、当時は原子炉だけでした。病院に原子炉を設置することは現実的でない上に、メンテナンスのため長期間、停止させることもあるので継続的に治療法として用いるのには向きません。

 

そこで、加速器を用いて中性子線を発生させ、しかも病院にも設置できる小型化した装置の開発が2000年頃から世界中で始まりました。2012年にこれを実現したのが、京都大学と住友重機械工業が開発したサイクロトロン型の装置です。

 

現在までに中国で5カ所、イタリア3カ所、ロシアと韓国が2カ所、フィンランド、スペイン、イスラエル、アルゼンチン、イギリス、台湾で各1カ所ずつ加速器BNCTシステムがあり、前臨床試験段階から開発中だといいます*2 。

 

日本では国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)が2019年11月から悪性黒色腫と血管肉腫の第I相臨床試験を行い、22年11月から血管肉腫を対象とした第2相臨床試験を開始しました。

 

江戸川病院(東京都江戸川区)では、23年7月5日から放射線治療後再発乳がんを対象とした特定臨床研究が行われ、全ての治療が終了し、次の特定臨床研究に向けて準備中だといいます。

 

筑波大学附属病院 陽子線治療センター(茨城県つくば市)では、24年2月から初発の膠芽腫を対象に治験を開始しました。この悪性脳腫瘍をBNCTの対象とするのは世界で初めてとなります。

 

湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)でもNeutron Therapeutics, Inc.が開発したBNCT用照射装置を導入し、臨床開始を目指して調整中です。

 

他にも中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市)、京都府立医科大学ロームBNCTセンター(京都府京都市)、岡山大学中性子医療研究センター(岡山県岡山市)も導入を計画しています。既に2施設で治療を実施し、4カ所で加速器BNCTシステムが稼働していることを考えれば、日本が圧倒的に世界を大きくリードしているガン治療技術だといえます。

 

*2 静岡医療科学専門大学校「青翔保健科学ジャーナル」vol.3より

 

 

●装置のタイプが違うと、別のガンの治療はできないという現実

 

頭頸部がん以外にも患者数の多い乳がんから、治療法が確立していない希少がん(膠芽腫、血管肉腫)まで治療の効果が期待できるBNCTですが、実現までには装置に関わる課題と、現在のガン治療の進化がネックになっていると国立がん研究センター中央病院の井垣浩放射線治療科長は話します。

 

「加速器BNCTシステムは、従来の陽子線や重粒子線で使われている加速器よりも格段に電流量が大きく、安全面が非常に重要になります。そのため非常に苦労して開発されて、やっと臨床に使えるようになりました。現在、稼働している加速器にはいくつかのタイプがあります。頭頸部がんの治療ができる南東北BNCT研究センターと関西BNCT共同医療センターの装置は、住友重機械らが共同開発したサイクロトロンです。国立がん研究センターと江戸川病院は(株)CICSらと共同研究した直線型加速器。筑波大学は、高エネルギー加速器研究機構や日本原子力研究開発機構らと開発した直線型加速器です。また、湘南鎌倉総合病院は、Neutron Therapeutics, Inc.(アメリカ)のサイクロトロン静電型加速器とそれぞれ方式が違います。理論上はどれも中性子線を発生させる装置ですが、医療機器・装置として使用するためには安全性試験、性能試験、非臨床試験から具体的な疾患(ガン種)への臨床試験を行い、厚生労働省から医療機器としての薬事承認を受けなければなりません。しかし、現在の国の方針では、加速器の仕組みが違うと同じ質の中性子線とは認定されないのです」

 

つまり、こういうことです。国立がん研究センターは現在、血管肉腫に対する第2相の治験を行っていますが、それが厚労省から承認されたとしても、頭頸部がんの治療も行うことはできません。同様に、関西BNCT共同医療センターや筑波大学では、血管肉腫の治療はできないことになります。では、タイプの違う加速器が各々でいくつものガンの治験を行っていけばいいのかというと、それも難しいと井垣氏は言います。

 

「医療機器での治療全般に言えることですが、装置のあるところまで患者さんに来ていただく必要がありますから、装置が広く普及しなければ、たくさんの患者さんを集めてデータを出すことができません。抗がん剤などお薬であれば、全国レベルで大規模な臨床試験を組むことはそう難しくないでしょうが、BNCTは国内で数カ所しかないわけですから、大規模なデータを集めることは不可能に近い。けれども、そうしたデータがなければ研究開発も進まないという、非常にもどかしいところにあります」(同)

 

現在、井垣氏はどのタイプの加速器でも同じ治療効果であることを示すガイドラインを日本中性子捕捉療法学会から出せるように作成を進めているそうです。

 

「加速器がどのタイプであっても、同じBNCT用なのだという基準ができれば、治験を行う地域が広がりますし、参加する患者さんの負担も減ります。世界にも応用できる基準となれば、さらに多くのガン治療につながるでしょう」(同)

 

放射線治療装置のように日本産業規格(JIS)や国際電気標準会議(IEC)で国際標準化された規格に沿っていれば、方式やメーカーが違っても問題はないはずです。そうなれば臨床試験を国内で組みやすくなり、研究が加速して治療できる疾患が増えるかもしれません。また、日本がリードしてきたBNCT技術を世界に向けて輸出することも可能でしょう。

 

 

●日進月歩で開発が進むガン治療薬の登場も一因に

 

BNCTの普及を難しくしているもうひとつの要因は、(患者にとってはありがたいことなのですが)化学療法の進化です。特に免疫チェックポイント阻害剤の登場が大きい。

 

「悪性黒色腫のBNCTは、1987年に研究用原子炉を使って臨床研究が開始されました。BNCTでは必須アミノ酸のフェニルアラニンにホウ素原子が結合したBPAと呼ばれる薬剤をガン細胞に取り込ませます。悪性黒色腫は、フェニルアラニンから合成されるチロシンがメラニン合成の前駆物質であることから、他のガンよりもBPAの取り込みが強く、BNCTが非常に有効だという理論的な根拠があります。また、再発すると従来の殺細胞性抗がん剤も放射線治療もほとんど効かないために、予後が非常に厳しいガンであり、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が登場するまでは太刀打ちできない相手でしたから、BNCTプロジェクトが始まった2010年時点では悪性黒色腫で治験をスタートしようとなったのです」(井垣氏)

 

国立がん研究センターの治験がスタートした2019年の段階では、すでに3種類の免疫チェックポイント阻害薬が悪性黒色腫に対して承認されています。今では5種類の分子標的薬も使えることに加え、「ガン遺伝子パネル検査」によって、個々の患者に効果のある薬剤を見付ける方法もあります。結局、悪性黒色腫を治療する手段が格段に増えていたために治験に参加する患者が十分に集まらず、第2相試験は行われませんでした。

 

 

●患者の生き方・あり方を尊重する〈治療の選択肢〉も重要

 

効果のある化学療法が増えたからといって、BNCTが不要になるとは一概に言えません。たとえば、悪性黒色腫の標準治療では、転移がない場合には外科手術で原発巣を切除、リンパ節転移があるステージ3A~3Cは手術の後に〈術後補助療法〉と呼ばれる化学療法で再発を予防します。他の臓器に転移があるステージ4期は、原則的には化学療法のみですが、手術で腫瘍を取り除いてから化学療法に入ることもあります。つまり、標準治療から始めるとなれば、殆どの場合は手術をすることになりますので、腫瘍ができた場所によっては、失われる機能や外見の変化などからQOL(生活の質)を大きく損なうことがあります。

井垣氏は、「どうありたいか」を重視してBNCTの治験に参加した悪性黒色腫患者のことを話してくれました。

「治験に参加したある患者さんは、手の指先に腫瘍ができていました。標準治療では、まず指を切断することを提案されましたが、指を失いたくないと手術を拒否されたのです。悪性黒色腫はガンの中でもかなり深刻なものですから、ほとんどの方が命の方が大事だと考えられるでしょうが、その方のように自分の人生において重要なのは何かを考え、失うことと得ることを自分の基準で天秤にかけて、『手術はしない』という結論を出す人もいらっしゃるわけです」

標準治療を行うことは当然だけれども、患者のQOLも無視できない場合の選択肢にもなり得るのではないかと井垣氏は考えています。

「現在、第2相試験を行っている血管肉腫は、皮膚だと頭皮にできることが多いのですね。手術では腫瘍よりも数cm大きく切除して植皮しますから、その部分は髪が生えてこなくなります。十分なマージンをとって切除しても、周りに腫瘍細胞が浸潤して残った場合には放射線治療を加えますが、さらに毛根へのダメージは大きくなります。高齢者に多い疾患でもあり、手術や放射線治療で身体、時間、経済的な負担をかけ、さらに外見の変化もやむなしとするのは、酷なところもあります。BNCTは治療にかかる時間も短く、従来の放射線治療よりも正常な組織への影響は小さいので、髪がまた生える可能性はあります。患者さんのQOLを尊重するという面でも、大事な選択肢になり得るでしょう。血管肉腫は希少がんゆえに標準治療はおろか、治療法も確立できていないこともあり、当センターの皮膚科の先生方は治験の成果を見て、BNCTをひとつの選択肢として考えるようになっています」(同)

ガンは、生物学的な命も、「どのようにありたいか」という魂をも脅かす病気だからこそ、患者にとっても医師にとっても、対抗する手立てはひとつでも多い方がいい。それも、正確な方法で効果が認められた保険適用の治療法であればなお良いです。それが患者にとって絵に描いた餅にならぬよう、BNCTの施設が増えてきた今こそ、広く治療と臨床試験を行える仕組みづくりが急務でしょう。

 

 

 

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