読売新聞の人生相談記事(2021年11月9日)

 

40代の男性会社員。高校生の一人息子が不在の夜、妻に求めたところ、ものすごい顔で「キモイ!」と拒否されました。

 

理由を聞くと、「産後の恨みは一生もの」と。妻の出産後、私が育児に一切協力せず、毎晩のように一人で外出して楽しんでいたことが「いまだに許せない」と言うのです。

 

しかし、たかがほんの数年の寝不足や疲労くらい、母親なら誰しも一人で乗り越えられるはず。家事育児に専念させてくれる夫、外で稼いでくる夫に対する敬意はないのでしょうか。

 

妻は息子が独り立ちしたら離婚を考えているようです。私はコミュニケーション力もなく、妻を逃したら再婚は不可能だと思います。こんなことなら妻の産後にゴミ出しくらいしておくべきだったと後悔しています。今から名誉挽回するには何をすればいいでしょうか。(東京・I男)

 

この男性、本当に40代?と思うほど、思考が古い。

 

コミュニケーション力がないと書いているけれど、

 

足りていないのは

思いやりと当事者意識。

 

たかがほんの数年の寝不足や疲労くらい、母親なら誰しも一人で乗り越えられるはず。

 

もし「ほんの数年の寝不足ぐらい」って思うのであれば、自分だって寝不足でも働けたでしょ?って思う。

 

外で稼いでくる夫に対する敬意はないのでしょうか。

 

と思うなら「命を産み出す大偉業を成し遂げた妻への敬意はないのでしょうか」とお返ししたい。

男性には逆立ちしてもできないことなのに。

 

 


東レ経営研究所の調査によると、

子どもが1歳半までの夫の関わりで、その後一生の関係性が変わることが分かっています。

 

グラフで表しているのは、女性の愛情。

 

子どもが生まれると女性の愛情は子供に向いています。


「子どもが乳幼児期に、夫が一緒に子育てをやってくれたか否か」という設問に、「夫と二人で子育てした」と回答した女性の夫への愛情は徐々に回復、一方で「一人で子育てした」と回答した女性の愛情は回復しないことがわかりました。

 

 

子どもが小学生になることには

「愛情はないけれど父親がいた方がいいから」

 

高校生になるころには

「愛情はないけどお金がかかるから」

 

という理由で夫婦を続けていることがわかります。

 

子どもが自立したら熟年離婚…というパターンは、まさにこれ。

 

以前に離婚の調停委員さんからこんな話を聞きました。

 

熟年離婚には共通点があって、男性は「突然離婚を言い渡されて何が何だか分からない」と言うのに対して、女性の話は「わたしがお産をしたときに…」「子どもが小さかったときに…」から始まるんですよね…と。

 

先ほどの相談者の男性が

妻の産後にゴミ出しくらいしておくべきだったと後悔しています。

と書いていましたが、ゴミ出ししていても同じだったでしょうね。足りないのは、思いやりと当事者意識なのだから。

 

そして、

この人生相談の回答が秀逸でした。

 

 

 

お連れ合いの立場から見れば、あなたは反省しているとは思えません。ご相談のお手紙には、「たかがほんの数年」「外で稼いでくる」「ゴミ出しくらい」など、お連れ合いの方を「家事使用人」で「セックスの相手」としか見ていない表現が満載です。

 

あなたは、お連れ合いの出産後から今までずっと、相手の気持ちに寄り添ったり、大切にしたりせずに来たということをまず認識してください。条件が整えば、いつ離婚されても文句は言えない状況ですよ。ただ、離婚を突き付けられる前に気づけたことは不幸中の幸いだと思います。

 

嫌われた相手の好意を取り戻す方法はありませんが、コミュニケーション力は苦手であっても身につけることはできます。というより、これからのために身につけましょう。遅すぎるということはありません。

 

相手のことが好きで、結婚生活を続けたいのなら、するべきことは名誉挽回などではありません。プライドを捨てて、お連れ合いの方を第一に考える努力をしてみたらいかがでしょう。

 

ほんとにそう。

あなたは、お連れ合いの出産後から今までずっと、相手の気持ちに寄り添ったり、大切にしたりせずに来たということをまず認識してください。

 

ここをズバッと書いてくれたのはさすがです。

また、

相手のことが好きで、結婚生活を続けたいのなら、

 

これってつまりは、

「家事をする使用人だと思っているなら何の努力もしなくていいですよ。きっとすぐに離婚されるでしょうから」ということ。

 

そして、「奥さん」ではなく「お連れ合い」という表現をしているのも素晴らしいと思いました。

 

解答している山田昌弘先生はジェンダー学専門の中央大学教授。さすがです。

 

山田先生は現在64歳。

質問者よりも20年くらい年上。

 

つまり、「昔の男性は」とか「時代が」とか「女は・男は」と世代の刷り込みを言い訳にする人がいるけれど、年齢は関係ない。

 

大切なのは相手への思いやりや敬意が持てるかどうか。

 

たとえ男性の仕事が多忙だとしても、常に思いやりや敬意があふれていたら、心は離れないのだから。

 

最後に…怖いマンガをみつけました。

こんな悲しい夫婦にはなりたくない!!

 

沖田✕華「お別れホスピタル」より

 

きゃー!

こわいー!

 

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直井亜紀の書籍です。

 

思春期の性についてだけではなく、子どもがジェンダーの影響を受ける夫婦関係についても丁寧に書きました。「ここまで書いてくれてありがとう」というコメントも。

 

 

いのちや性について、どの世代へも伝えやすい表現をまとめました。

 

 

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