ちょっと一休み

ちょっと一休み

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行く先を点々と照らす、今にも消えてしまうそうな街灯。

暗闇の先に延びるアスファルトの道。

背中をすり抜けるように、夜風が吹いた。

何気なく振り返ったけれど、そこには誰もいなかった。

深いため息をつくと、僕は再び歩き出した。

コツコツと響く僕の足音。

ブロック塀に反響した足音は、もう一人の誰かの存在を思わせる。

何気なく隣を見たけれど、そこには誰もいなかった。

遠くに見える信号が青から赤に変わった。

車のヘッドライトが左右に交差している。

しばらくすると信号は赤から青に変わった。

僕はずっと歩き続けている。

僕はずっと進み続けている。

誰もいない、誰も感じないこの道を。

ただ薄暗く道を照らす街灯の光を頼りに。

小さな交差点に差し掛かったとき、右側の道から足音が聞こえた。

白いコートを着た誰かが目の前を横切った。

左側の細い道を進むその人もまた、

薄暗い道を一人歩いていく。

気が付けばその人は闇の中に飲まれていってしまった。

この先、いくつの道と交差し、

何人の人とすれ違い、見失っていくのか。

まだまだ続く、この薄暗くて先の見えない道。

時々振り返っては、寂しい想いを振り切って、

僕はまた少しずつ進んでいく。

それがたとえ孤独であったとしても。

 
別に興味なんてない。

そう思うことすらない、そんな存在だったはずなのに。

気が付いたら、常に僕の瞳にはキミが映っていた。

キミが笑うたびに、僕は嬉しくなった。

キミが喜ぶたびに、僕は幸せになった。

叶うことのないこの想いだけれど、この想いがあるから僕は笑顔になれる。

キミの笑顔が、いつか誰かのものになっても、

寂しいけれど、この想いはずっと胸にしまっておくしかないから。

だから今過ごせる、この瞬間が僕の幸せ。

何気なく話して、馬鹿なこと言って笑って、

触れることすらできないキミに、かける言葉を選んで…。

胸に少し痛みを感じた。

キミがまた僕に笑いかけた。

僕もまた君に笑いかけた。

 
窓の外は寒空が広がる冬の景色。

クローゼットを開け、ダッフルコートをハンガーから外した。

マフラーをしよう、手袋も…。

ごつい厚底のブーツに足を突っ込み、かかとを鳴らした。

ドアを開けると、冷たい風が部屋に入り込んだ。

肩をすくめ、思わず目を閉じてしまう。

思ってた以上に、外の空気は冷えている。

懸命に地上を温めようと、太陽が輝いているが、

薄い灰色の雲が遮って、その想いはこの季節には届かないようだ。


おもむろにポケットからスマホを取り出す。

お天気マークの付いたアイコンをタップする。

一桁の数字がたくさん目に入る。

無表情な雪だるまがこの後やってくるようだ。


マフラーを少し手で直し、手袋をはめた手をポケットに入れた。

吐く息が白い。

うつむきながら歩いていると、自分と同じように肩をすくめて歩く人と何度もすれ違う。

また風が吹く。

鼻の先がジンジンと痛い。

街路樹に目をやると、葉の無い枝が寒そうに風に揺られている。

また風が吹く。

公園のブランコが寂しそうに少し揺れている。


何度も風に吹かれ、何度も人とすれ違い、

鼻の先も、手の指も冷え切った。


けれど、僕は寒くなんてない。

僕は、風なんて感じない。

冬の道を行く僕の心は、冬なんて季節を知らない。


僕はひとつのドアの前にたどり着いた。

チャイムを押すと、かすかに返事をする声が聞こえた。

鍵が開き、ドアがゆっくりと開く。

何よりも暖かい笑顔が僕を迎えた。

僕はその笑顔に笑顔で応える。


その時、空から白い冬の使者が舞い降りる。

ゆっくりと、ゆっくりと。