まじかるクラウン 第76話 決戦の時 まじかるクラウン

 

『まんまと嵌められた! 奴らの狙いは今だ!!!
城内が暗闇になる この時を待っていたんだ!』
 

カン・ソッキ ソ・ジャンボ パク・テスらが手を打とうとする間も無く
城内の灯りが次々に消されていく…!
真っ暗闇になった城内に 次々と刺客が忍び込む!!!
 

ソッキが警砲を打てと喚き散らし 戸惑うばかりの部下を押しのけ
ジャンボが 自ら警砲を打ち鳴らそうともがく!!!

正祖(チョンジョ)王と重臣らが 怪しい気配に気づいた時にはもう遅かった
おびただしい数の刺客が 玉座の周囲を取り囲んでいたのである!
 

真っ先に剣を構えたのは 正祖(チョンジョ)王自身であった

『王様… 王様!!!』
『明かりを… 火をつけよ! 早くつけぬか!!!』

テスたちの必死の働きにより 次々と明かりが灯されていく
先ほど退場したばかりの兵士らが 瞬く間に刺客を包囲した…!
城外に身を潜めていた刺客も すべて捕えられたのである!

『右議政(ウイジョン)様 早くお逃げください!!!』
『決戦に敗れたのだ 逃げても無駄だ 潔く腹をくくらねば…!』

※右議政(ウイジョン):領議政・左議政に次ぐ重職 正一品
 

もはや チェ・ソクチュが捕えられるのも時間の問題であった
座して動こうとしないソクチュを見捨て 他の重臣らは散り散りに逃げようとする
しかし それも手遅れであった
壮勇衛(チャンヨンウィ)の兵士が 四方からなだれ込むように押し寄せる!

※壮勇衛(チャンヨンウィ):王の親衛部隊
 

『罪人を護送せよ!!!』
 

捕えられた中のひとりミン・ジュシクは ソ・ジャンボの姿を見て驚く
王に恨みを抱き 寝返ったかに見えたジャンボは
壮勇衛(チャンヨンウィ)として 敢然と罪人を捕える任務に就いている…!

『お前…!』
『黙れ! 逆賊のくせに生意気な!』

そこへ正祖(チョンジョ)王が現れ ジャンボの手柄を称える
ジュシクは ようやくジャンボの行動が囮捜査だったのだと気づくのである…!

チェ・ソクチュをはじめとする逆賊はすべて捕えられ この場に引き出された
正祖(チョンジョ)王は ソクチュの前に進み出る

『これがそなたの最期か?』

王の言葉に 返す言葉もないチェ・ソクチュ
一時は英祖(ヨンジョ)王と王世孫イ・サンの側についたこともあった
老論(ノロン)派でありながら 公正な視点で物事を判断出来る逸材でもあったが
自ら選んだ末路は 王の意志に背く生き方となってしまった

その後
華城での華やかな宴が催され 再び漢陽(ハニャン)の宮殿に戻る時を迎える
そしていよいよ 大妃(テビ)を裁く機会が訪れたのであった
宮殿に戻った壮勇衛(チャンヨンウィ)は すぐさま大妃(テビ)殿を包囲する!!!

『罪人は 直ちに王命を受けよ!!!』

パク・テスは 縄をかけろと命じていくが
大妃(テビ)は王に会わせろと要求し 一歩も引こうとしない

『放さぬか無礼者!!! 私を誰と心得る!軽々しく触れるな!!!
私はこの国の大妃(テビ)だ!王様にお会いする!!!』

そこへ正祖(チョンジョ)王が現れた

『お話があるとか どうぞ話してください
こうして顔を合わせるのも最後でしょうから』

大妃(テビ)はその場に跪く
突然の行動に 正祖(チョンジョ)王と周囲の者たちは驚きの表情になる

『どうか… お許しください
私は先代の王の正室でした
それと同時に王様の祖母でもあります
今の私には何の力もありません どうか寛大なるご処置を』

『そうはいきません 二度と慈悲を施すことは出来ません!
すべて終わったのです 見苦しい真似はおやめを!』

『王様…! いいえ終わりではない 絶対にこのままでは終わらぬ!』

挑みかかるような大妃(テビ)の視線を受け 正祖(チョンジョ)王は立ち去った
形ばかりの命乞いの すぐ後で見せる大妃(テビ)の敵意!
正祖(チョンジョ)王は 二度と惑わされることは無かった

『直ちに罪人を連行せよ!!!』

宿敵である大妃(テビ)を捕えながら 正祖(チョンジョ)王は深く考え込んでいた
宣嬪(ウィビン)亡き後 そんな正祖(チョンジョ)王を思いやれるのは王妃だけだ

『ファワン様と大妃(テビ)様は父上を陥れ
そのせいで先代の王は 最期まで苦しんでおられた
私は…この手で 叔母であるファワン様を流刑に処し
今度は大妃(テビ)様まで断罪せねばならぬとは…
権力とは一体 何なのだろう
互いを傷つけ合って奪い合うほど 価値のあるものなのか』

王妃は恵慶宮(ヘギョングン)を訪ね 王の苦しみを伝えた
恵慶宮(ヘギョングン)もまた 息子の心情を痛いほど分かっていた

『幼くして父を亡くし癒えることのない傷を負いました
だからこそ何としても 再び悲劇を招くことは避けたかったのです』

そこへヤン尚宮が 間もなく義禁府(ウイグンブ)において
罪人の取り調べが行われると報告に来た

※義禁府(ウイグンブ):主に重罪人を扱う検察に似た帰還

その心情とは裏腹に
あまりに早く事を進めていく正祖(チョンジョ)王であった

『徹底的に尋問せよ!
罪状をひとつ残らず明らかにするのだ!!!』

まもなく拷問されるのだと 怯え始める重臣たちに向かって
チェ・ソクチュは毅然として言い聞かせる

『よいか よく聞くのだ 我々の命は無い
だが 数百年続いてきた老論(ノロン)派の根を絶やしてはならぬ
忘れるな 老論(ノロン)派だけが 我々が生きた証だということを…!』

今回の事件に関わっていない老論(ノロン)派の重臣たちは
チャン・テウの屋敷に押しかけ このまま見過ごすのかと詰め寄った…!

『そんなことを言いに来たのか!!!』
『領議政(ヨンイジョン)様!』

※領議政(ヨンイジョン):議政府(ウイジョンブ)の最高官職

『この国の臣下でありながら 逆賊を庇護するなど言語道断だ!!!
彼らは大逆罪に問われるべきだ!
今後そんなことを口にしたら そなたたちも逆賊として告発する!!!』

酒場の女将は パク・タルホから事の次第を聞き
今度こそ悪人らが裁かれるといきり立つ!

『大妃(テビ)様もおかしな人ね
黙ってれば一生ふんぞり返って暮らせるのに
何が不満で謀反なんか…!!!』

『そのうえ首謀者だなんて たまげたもんだよ!』
『今夜は早く帰って結果を教えてよ 気になってしょうがないわ!』

これぞ庶民の心理である
与えられた人生を 生活苦に喘ぎながら生きるしかない庶民にとっては
何が不満で事を起こすのかなど理解出来るものではない
しかし そんな立場の無欲な人間さえ いざ権力を手にした途端
掴んでも掴んでも満たされない権力欲に翻弄されてしまうのだろう

拷問づくの取り調べは予想以上に難航していた
誰ひとりとして 事件の首謀者に大妃(テビ)の名を挙げる者はいない
連判状に名が記されていないことを盾に 口を揃えて庇っている…!

大妃(テビ)本人を断罪することが出来なければ いかに裁いても
やがて大妃(テビ)のもとに 不穏な輩が集結してしまうのだ
激烈な拷問に耐え抜き チェ・ソクチュらは頑として口を割ろうとしない

『いくらやっても無駄だ!
大妃(テビ)様に罪はない 大妃(テビ)様は無関係なのだ!』
『こ奴…!罪を悔いるどころか首謀者を庇うとは!命が惜しくないのか!』

囚われの身の大妃(テビ)は
事を起こす前のソクチュの言葉を思い出していた
もし計画が失敗しても 決して自分の名を口にする者はいないと…

「死を覚悟してお守りしますので 決して折れぬよう!」
「右議政(ウイジョン)!」
「耐えねばなりません! 何があっても生き延びるのです!
老論(ノロン)派の存続が懸かっています!!!」

拷問を受ける者らの悲鳴が聞こえてくる
ソクチュの言葉に従うのだとしても 大妃(テビ)の心が傷まぬ筈は無い

一夜明け
ソ・ジャンボは怒りに打ち震える…!
囮(おとり)になってまで 自分こそが連中の罪を確信しているのに
口の堅い罪人らは 誰ひとり大妃(テビ)の名を挙げないのだ
そして ふた晩目の拷問を受け罪人らの意識も遠のき始める

チェ・ソクチュは そんな状況でも決して信念を曲げず
頑として口を割らず大妃(テビ)を庇い続けた!

正祖(チョンジョ)王は
自ら大妃(テビ)のもとへ行き 罪を自白してほしいという
このままでは老論(ノロン)派の重臣らが死ぬまで拷問されることになると…!

『私が望むのは真実と懺悔だけです
今からでも自白すれば 彼ら共々命は助けます』

『生きたところで… どうなるのです?
宮殿を追われ草葉に埋もれて暮らせと? それは死んだも同然
私の命に価値があるのは 大妃(テビ)の座にいるからです
そうでなければ生きる意味などありません』

『このまま黙って待つのですか
大妃(テビ)の座を守るために 重臣たちの命を犠牲にするのですか!』

『ええ そうです! 私はそのつもりです!
生き残れるなら誰が犠牲になろうと構いません
どんな手を使ってでもここを出て 私のいるべき場所に戻ってみせます…!』

『…それで何になるのです?
他人の命を奪ってまで生き延びる理由は何ですか?
老論(ノロン)派を再建し いつの日かその手で権力を握るためですか?
そうして手に入れた権力など 風に舞い散る一握の砂に過ぎないことを
そんなもののために同志を見捨てたことを 死ぬまで後悔するでしょう』

やがてひとりになった大妃(テビ)の耳に 外の喧騒が聞こえてくる

『刑場に連れて行け!
特にチェ・ソクチュは厳重に護送せよ!!!』

(ついに罪人らが首を斬られるらしい)
(全部で8人だそうだ)

大妃(テビ)はうろたえ始める
何があっても耐えねばならないと チェ・ソクチュは言った
しかし そのソクチュの首が撥ねられようとしている…!

『刑の執行を始めよ!!!』

次々と 死刑執行人によって斬首されていく光景を
図画署(トファソ)の画員らが 記録画として描写していく
大妃(テビ)は激しく号泣しながら その苦しみに耐えていた
正祖(チョンジョ)王もまた刑の執行の間 立ち尽くして庭園を凝視している
パク・テスが 王の傍に立ち見守っている

『大妃(テビ)様のことはどうなさいますか』

『大妃(テビ)様は今後 苦痛の中で余生を送ることになる
そして死んでも尚 歴史に刻まれた罪は永遠に許されない
私が断罪したところで何の意味も無い
誰よりも哀れなのは 大妃(テビ)様なのかもしれない
生きても死んでも 罪が許されることは無いのだから』

8人の死刑執行が終わっても 限りなく正祖(チョンジョ)王の政務は続く
ナム・サチョが 奎章閣(キュジャンガク)へ行く時間だと呼びに来た

 

『もう行かねば 王として本来の務めに戻らねばな』



そして月日が流れ…
地方の役所に 憤慨したチャン・テウの姿があった

『直ちに獄舎の民を解放せよ!
貸付米の滞納で捕えられたそうだが 特例で返納の必要は無くなった筈!
それを県監が私的に処罰し!民から収奪するとは何事だ!!!』

『収奪とはお言葉が過ぎます!口を挟まないでください!
朝廷を離れたお方には関係無いことです!!!』

テウを追い払った県監は 部屋の奥にいる暗行御史(アメンオサ)に泣きつく
いかに朝廷を離れたとはいえ テウの逆鱗に触れるとは生きた心地がしない

※暗行御史(アメンオサ):地方官の監察を行う国王直属の官吏

監察を行う名目で地方を周り 甘い汁を吸う不届きな官吏である
するとそこへ 使用人が慌てた様子で駆け込み
外で怪しい者が見張っていたと報告する…!
2人のやり取りを覗き見ていたのは あのチョン・ヤギョンだった
ヤギョンは捕えられ 県監の前に引き摺り出されてしまう!

『不届き者め! 役所に忍び込みおって!!!』
『待てよ どこかで見た顔だが…そうだ!先日酒場で私をじろじろ見ていた!』

剣を突き付けられたヤギョンは 自分が誰か知りたければ腰の巾着を見ろという
自分の周囲を嗅ぎまわる怪しいヤギョンに 暗行御史(アメンオサ)は
兵士に命じ ヤギョンの腰の巾着を探らせる

『これは…!』
『もうお分かりかな? 私は暗行御史(アメンオサ)だ!縄を解いてくれ
私にこんなことをして後が怖くないのか?』

『黙れ!恐れ多くも身分を偽るとは!!!これを見よ!
この地域の御史(オサ)は私だ!2人も派遣されるわけが無い!!!』

『そのとおり!お宅がだらしないから私が来る羽目に!』

チョン・ヤギョンの手配した兵士が乱入し
県監と暗行御史(アメンオサ)を捕えた
地方官吏と暗行御史(アメンオサ)の不正が横行する事態になり
とうとうヤギョンが乗り出したのだ
ヤギョンは 情報を提供したチャン・テウを訪ね挨拶する
テウに対しての無礼な振る舞いについても
王様に報告し 厳しく罰するというヤギョンだが…

『結構だ 犯した罪だけ公正に罰すればよい その積み重ねが国を正すのだ
最近の朝廷の様子は? 王様が新たな政策を推進中だとか』

『はい 先日はついに五軍衛が解体され
壮勇衛(チャンヨンウィ)が取って代わりました
現在は 華城の貯水池の建造を進めています』

※五軍衛:中央軍の五衛を改編して出来た部隊
※壮勇衛(チャンヨンウィ):王の親衛部隊

貯水池があれば 干ばつによる被害も格段に減らすことが出来る
こうした政策を精力的に行う正祖(チョンジョ)王であった

一方 パク・テスは
壮勇衛(チャンヨンウィ)の大将に昇進していた
ソ・ジャンボは 兼司僕将(キョムサボクチャン)に
またカン・ソッキは 内禁衛将(ネグムウィジャン)に昇進していた

※兼司僕将(キョムサボクチャン):王の親衛隊のひとつ兼司僕の長官
※内禁衛将(ネグムウィジャン):王の親衛隊のひとつ内禁衛の長官

『俺は壮勇衛(チャンヨンウィ)の総監も兼任するらしい!
あぁ!もう重圧に潰されそうだ!』

人一倍昇進の野心に燃えるジャンボは そう言いながら満面の笑顔を見せる
正祖(チョンジョ)王のもとで命懸けの働きをした3人こそ 真の功臣であった
任命式を前に 図画署(トファソ)では記録画の準備に追われていた
イ・チョンは パク・テスの昇進を我がことのように喜ぶ…!

『それだけじゃない 俺もじきに別提に昇進するんだ!』
『な…何だと?!!!』

聞き捨てならないイ・チョンの言葉に タク・チスが逆上する!
何を思ってイ・チョンが自分の昇進を確信しているのか…
チスは 自分こそが別提になるのだと喚き散らす!

任命式では 正祖(チョンジョ)王が3人に祝いの言葉を贈る

『今日からは私だけでなく この国全体を守らねばならない
忠心を尽くし任務を全うせよ!』

『我々は命ある限り!誠心誠意!この国と王様をお守りします!!!』

『壮勇衛(チャンヨンウィ)の兵士は聞け!
今日から壮勇衛(チャンヨンウィ)は この国を守る朝鮮最高の軍衛となる!
朝鮮の臣下として!そして朝鮮の武官として!自負心を持ち忠義を尽くせ!』

テスは 王より賜った任命状を宣嬪(ウィビン)の墓前に捧げた

『見えますか宣嬪(ウィビン)様 壮勇衛(チャンヨンウィ)大将の任命状です
一番にお見せしたくて持って来ました』

その夜
執務室で政務を執る正祖(チョンジョ)王のもとへ
恵慶宮(ヘギョングン)付きのイ尚宮が 帰りに寄ってほしいと伝言を持って来る
それをきっかけに政務にキリをつけ 母のもとへ向かおうとして
激しい眩暈に襲われる正祖(チョンジョ)王であった…!
 

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