第42話 衝撃の処分
『禁軍(クムグン)親衛隊長は答えよ!
なぜ武装した兵が大殿(テジョン)に押し寄せているのだ!
そなたたちは王世孫に反旗を翻したのか!!!』
親衛隊長チョ・ジョンスが すべては自分の責任だと言い跪く
その場にいる全員が王命により捕えられた
※大殿(テジョン):王が住む宮殿
『ファワンは部屋に軟禁せよ!
重臣らは残らず内兵曹(ネピョンジョ)に連行するのだ!!!』
※内兵曹(ネピョンジョ):護衛官の駐屯所
ただ1人残された王妃が泣き叫び 弁明させてほしいと懇願する
しかし英祖(ヨンジョ)王は 怒りに満ちた表情で王妃を睨みつける…!
王妃を連れて行け!と… 皆と同様大罪に問うと言明したのである!
死をも覚悟して王世孫と宮殿を守ろうとした護衛官たちは
王の意識が戻り 逆賊らが捕えられたと知り歓喜する…!
王世孫イ・サンのもとへ 五軍営の動きが報告される
サンは新たに出された王の宣旨(せんじ)を ホン・グギョンに渡した
王妃の命令によって進軍した軍営の動きは寸前で止められた
※宣旨(せんじ):王の命令を伝達する文書
一方ソンヨンは もう我慢の限界だった
図画署(トファソ)も閉鎖され 市場の店はすべて閉められている
何がどうなっているのか分からない状況で ただ待つしか無いのだ
様子を見に行くというソンヨンを 止めることが出来ないタルホだった
※図画署(トファソ):絵画制作を担う国の機関
そこへテスが戻って来た
王様の意識が戻り反乱軍が一掃されたと テスの説明は至極簡単だった
死を覚悟した程の重大な数日間だったとは 敢えて話さなかった
タルホとソンヨンに笑顔が戻り テスも大喜びで2人を見つめるのだった
宮殿では
恵嬪(ヘビン)ホン氏と 嬪宮(ピングン)孝懿(ヒョイ)王后が安堵している
この2人も死を覚悟していたのだ
※恵嬪(ヘビン):亡き王世子の妃
※嬪宮(ピングン):王世孫の妃
王世孫イ・サンは 英祖(ヨンジョ)王の傍にいた
意識を取り戻すなり怒りに打ち震えたことで 体調が心配されていた
御医(オイ)によれば 病状は極めて深刻だという
意識を取り戻し起き上がったこと自体が奇跡なのだと…!
※御医(オイ):王の主治医 侍医(シウィ)ともいう
サンは泣きそうな表情になり 英祖(ヨンジョ)王に寄り添い手を握る
そんな孫を 愛おしそうに見つめる祖父であった
英祖(ヨンジョ)王は皆を下がらせ 孫と2人切りになる
そして今回の事件の関係者に 全員死をもって償わせると告げた
するとサンが 今回の処分は自分に任せてほしいと許しを請う
少しでも休んで快復してほしいという 願いを込めての嘆願だった
『危うくそなたの父の願いを叶えられずに終わるところだった
私が息を吹き返したのは… きっとそなたの父のおかげだ』
図画署(トファソ)が再開された
別提パク・ヨンムンが 画員と茶母(タモ)たちを招集する
各部署の休止令が解かれ 通常業務に戻るという伝達がされた
画員たちが気にするのは 宮中で粛清が行われるのかということである
捕らわれた重臣たちが尋問され 打ち首になるのであれば
画員たちには その光景を描写するという任務があるのだ
※茶母(タモ):各官庁に仕える下働き
王世孫イ・サンはじっと考え込む
自分を廃位しようとした王妃
その配下に これまで何度となく命を狙われて来た
亡き父の死の真相も 自分への妨害も すべては王妃の差し金であり
重臣たちが手足となっていたことを考える
どう処断すべきか… 沸き起こる憤りと闘うサンであった
そこへホン・グギョンが現れる
サンは聞いてみたかった
グギョンが抱く夢や野望
それが叶えられなくなるかもしれない 激動の数日間であった
自分に仕えたばかりに 1歩間違えれば死ぬところであった
それを後悔しなかったかと 聞きたかったのだ
グギョンは 正直なところ夜も眠れなかったと答える
どんな時も真実を話すグギョン
だからこそサンは 逆に信頼することが出来た
『後悔ではなく 男らしく死ねると…内心嬉しくもありました
死が差し迫り 悟ったのだと思います
王世孫様に仕えたからこそ 私の大志や夢がかなえられたのだと…』
『恩に着る』という王世孫の言葉に グギョンは感涙する
紆余曲折を経て 王世孫が最も信頼する側近となった瞬間であった
その絶大な信頼を受け グギョンは反逆者の名簿を作成した
捕えられた者以外にも関与したすべての者が挙げられている
どんな処分を下すのか… サンはまだ答えを出せずにいた
王妃やファワン翁主(オンジュ)のみならず
大叔父にあたるホン・イナンの名も挙がっていることで迷っているのでは?
グギョンの率直な問いに サンは迷いを認めた上で『逃げない』と答える
単なる“復讐”ではなく 罪人をしっかりと罰しなければ国が立ち直らないのだと
『やるべきことを躊躇なく実行することこそが今は必要だ』
一方 牢獄のチョン・フギョムは 側近を通じチェ・ソクチュに連絡する
吏曹判書(イジョパンソ)であるソクチュは この協力要請に深く考え込む
そうした熟慮の上で ソクチュは東宮殿へ行き王世孫に会う
※吏曹判書(イジョパンソ):任官や人事考課などを行う官庁の長官
キム・ギジュと一部の重臣にすべての罪を被せ
事態を収拾すべきと進言するソクチュ
王世孫イ・サンは 憮然としてその理由を問いただす
徹底的に謀反人を追求すれば 彼らは譲位に異を唱える
たとえ病による間違った宣旨(せんじ)だったとしても
“王世孫廃位”の宣旨(せんじ)が下ったのは事実
それが一夜にして覆り なぜ譲位するということになったのか
『彼らが尋問でそのことを持ち出せば 王様の病名を言わざるを得ません
そうなれば記録され 後世に残されるのです
波紋を防ぐには 事を大きくしない方が賢明です』
更にソクチュは 王様の病名だけのことではないという
100人以上の関係者を罷免すれば 朝廷は間違いなく破綻してしまうと…!
『朝廷の破綻を防ぐために協力したのです
しかし老論(ノロン)派を一掃するということであれば
私は命懸けで抗うしかありません
どうか数名の処分で幕引きとしてください
それが王様の名誉を守ることであり 国の破綻を防ぐただ1つの道です』
脅迫とも取れるチェ・ソクチュの訴えは ある意味道理に適っていた
謀反という罪だけを思えば許すことは出来ないが…
悩むサンの苦悩を知らず グギョンは事件の内幕を暴き
まずはチェ・ジェゴンに報告する
事件の詳細が明らかになる毎に サンの苦悩は増していく
すべての罪状の発端は王妃であり 皆が王妃の密書により動いていた
投獄されていた者たちが便殿に集められた
裁きを下すという王世孫に 罪人たちは怯え出す
謀反の裁きは当然打ち首だと知っているのである
サンが 王様から全権を預かり…と話し始めると
痺れを切らしたホン・イナンが すべては誤解なのだ!と絶叫する
サンはこの大叔父を 厳しい口調で黙らせた…!
そして 勝手に兵を動かした左承旨キム・ギジュと
禁衛営(クミョン)の指揮官 禁軍(クムグン)の部隊長2人は官職を剥奪し流刑に!
打ち首にしても足りない罪人に流刑とは…!
愕然として王世孫を見るホン・グギョン
※禁衛営(クミョン):首都防衛を行った軍営の1つ
※禁軍(クムグン):王を護衛する王直属の部隊
続いて内通した工曹判書(コンジョパンソ)イ・テソク
刑曹参議オ・インチョル 吏曹参判ペ・ヨンスにも 同様の処罰が下る!
また他の重臣については別途尋問の場を設けると…!
※工曹(コンジョ):公共事業・社会事業を担当する官庁
※刑曹(ヒョンジョ):法や刑罰を司る官庁
場内が鎮まり返る
罪は明らかなのに なぜ尋問が必要なのかと
悲鳴にも似た叫びを上げたのはホン・グギョンであった…!
『口を挟むでない!!! この件はこれにて終結する』
『王世孫様…!!!』
はらわたが煮えくり返っているのは グギョンではなく王世孫自身であった
悩み抜いた末 サンはチェ・ソクチュの申し出を受け入れたのだ
尋問の責任者をホン・グギョンに指名し 解散を宣言する
キツネにつままれたような信じ難い裁断に 唖然とする重臣たち
ホン・グギョンは打ちひしがれて涙ぐんでいる…!
東宮殿へ戻ったサンに詰め寄ったのは グギョンだけではない
チェ・ジェゴンも 納得がいかないとして抗議する!
数日前
真の主君と臣下として 互いを認め合った2人である
この信じ難い裁断をどう受け止めたらいいのか…
グギョンは苦悩の表情で王世孫を見つめる
尋問はあくまでも形式的なものとし 後日の調査も必要は無いという
そう言いながら サンはグギョンと視線を合わせられない
長い年月 自分を苦しめた敵を追い詰め その罪が明らかになったのに
罰することが出来ず 側近に詳しい事情を話すことすら出来ないのだ
『そなたを失望させた だが私は最善の方法を選んだつもりだ
だからそなたも… 黙って従って欲しい』
自分が尋問の責任者と言うなら… 責任を持って全員極刑にしてやる!
そう言い捨て飛び出して行くグギョン
あまりに無礼な態度に憤るジェゴンだが 無理も無いというサン
敵を根絶やしにする千載一遇の機会を 自ら捨てたのだ
グギョンでなくとも この自分こそがいちばん悔しいのだ…!
一方 悲嘆にくれるファワン翁主(オンジュ)
そこへ二度と生きては会えぬと思っていたフギョムが戻った
フギョムには なぜ王世孫がこのような処分で終わらせたのか
それは英祖(ヨンジョ)王のためだと 察しがついていた
※翁主(オンジュ):側室から生まれた王女 正室から生まれた王女は公主
『王世孫は 王様の病名が公になることを恐れたのです
ですからこのような処分に留まった そうに違いありません』
激怒したのはホン・グギョンだけではない
恵嬪(ヘビン)ホン氏が 怒りに打ち震え東宮殿へ向かう…!
それを必死に止める孝懿(ヒョイ)王后
ホン氏は激怒して息子に詰め寄る!!!
『また王様が助けろと仰ったのですか!!!』
『そういうことではありません!!!』
王様に言われたのなら諦めもつく
息子本人が考えて決めたことが 更に怒りを増幅させていくのだ
これまでの憤りと苦悩を忘れたのかと詰め寄るホン氏!
同じ時 テスたち3人もまた激怒して酒場に現れた
テスは怒鳴り散らし ジャンボはうなだれ ソッキは黙り込んでいる
何事かと気遣う女将が 3人を奥の部屋へ案内した
きっと 護衛官には理解し難い“政治的事情”があるというソッキ
そんなの知るもんか!と テスが憤慨して言い返す
お偉方が出来ないなら 自分が行って奴らを叩き斬ると…!
英祖(ヨンジョ)王は 王世孫を呼びつけた
そして断罪に必要であれば 認知症の事実を公表せよという
そのことで孫が苦しみ判断を誤るのではないかと 危惧していたのであった
『断じて従えません!!!』
『構わぬのだ!病名を公表すれば宣旨(せんじ)が無効であると証明出来る』
※宣旨(せんじ):王の命令を伝達する文書
一方ホン・イナンは 兄ボンハンに泣きついていた
外戚として王世孫を守るべきなのに 陰謀に加担していたとは許し難く
恵嬪(ヘビン)ホン氏は ひれ伏す叔父を冷たく睨みつける…!
『王世孫が許せば罪を逃れられるとお思いで?
たとえ王世孫が許そうともこの私が許しません!!!』
ホン氏を取り成そうとする父ボンハンにも怒りをぶつける!
反省して許されるようなことではないと…!!!
退室したイナンは激怒して居直る
助けてくれないなら考えがある!と怒鳴り 敵意を剥き出しにして帰って行った
それを耳にしたホン氏は大殿(テジョン)に向かう!
そして今回の事件を不問に付すことだけは納得出来ないと訴えるのだった
夕暮れの海辺で ホン・グギョンは釣り糸を垂らしている
すっかりやる気を失くし ぼんやりと波間を見つめていると…
そこへテスが現れ『王世孫様を説得しましょう!!!』と急き立てる!
説得など無駄なことだとグギョンは承知している
そしてもう王世孫様にはついて行けないと呟いた
『そなたが今釣るべきは王世孫様の心だ!』
突然の声にハッとして振り返ると
そこにはチェ・ジェゴンが立っている
粗末な家にジェゴンを招き 茶を煎れるグギョン
しかし思い直すつもりも無いし 王世孫を説得するつもりも無い
『王世孫様は 政治的理由からあのような処断をしたのではない
すべては王様の病名が歴史に残らないようにという思いからだ』
だからと言ってすぐにグギョンの心は動かない
実に誇らしい主君を持った と笑うジェゴン
グギョンは視線を外しうつむいた
『敬うべきはその能力ではなく あのようなお心持ちではないのか』
同じ時 英祖(ヨンジョ)王は考え込んでいた
ホン氏の涙の訴えが耳に残っている
「爆発事件の時 王様は黒幕である王妃様をお許しになりました
ですが生き残った彼らはまたしても王世孫に刃を向けています!
それでも… それでも彼らを生かすのですか!!!」
厳しい表情で内官を呼び 再び王世孫を呼びつけた
『私は何のために死の淵から蘇ったのだ?
そなたを守ってくれという息子との約束があるからだ!
こんな老いぼれを守るために逆賊を許すと?!
そなたがやらぬならこの私がやるまでだ!!!』
罪人をどう処断したか… それをなぜ王様が知っているのか!
サンは神妙な表情で祖父の言葉を聞く
交泰殿(キョテジョン)では 王妃がじっと待ち続けていた
重臣たちが不問に付されたなら自分も許される筈
そう確信し 王の呼び出しを待っているのだ
大殿(テジョン)に 王妃と都承旨(トスンジ)が呼ばれた
王妃は意気揚々として大殿(テジョン)に向かう
満面の笑顔で王の前に進み出ると そこには王世孫が同席している
途端に表情が強張る王妃…!
※都承旨(トスンジ):王命の公表・伝達をし民の上訴を王に伝える官職
『そなたの処分に関する宣旨(せんじ)を出す
その理由をそなたにも知らせたくて呼んだ』
すっかり自分は許されるものと信じていた王妃は
“処分”という言葉が何を意味するのかと戸惑う
英祖(ヨンジョ)王は無表情のまま 都承旨(トスンジ)に書き留めるよう命じた
『本日 丙申年2月13日
中殿キム氏の王妃の位を剥奪し 平民に降格するものとする』
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