善徳女王 第61話 誤解
苦悩し 叫び出す毗曇(ピダム)の横で
廉宗(ヨムジョン)は 美生(ミセン)との会話を思い返す
「毗曇(ピダム)の信頼を崩すだと? そう簡単に引っ掛かるか?」
「陛下に関することですから…」
善徳(ソンドク)女王が刺客を差し向けた!と騒ぎ立てる廉宗(ヨムジョン)
『お前が皆を裏切ってまで得た愛ってのはこんなものか?!
アーッハッハッハ…!!! こんなもんだったんだな!え?おい!』
『この野郎!殺してやる!!!』
『俺を殺すのか?殺してみろよ! 俺を殺せば何も無かったことに?
んなわけあるか! お前はまた捨てられたんだ! 陛下に捨てられた!!!』
剣を取り落とし 地べたに座り込む毗曇(ピダム)…!
洞窟では 毗曇(ピダム)を連れて来るという廉宗(ヨムジョン)を待ちくたびれ
美生(ミセン)達が苛立ちの絶頂に…!
そもそも廉宗(ヨムジョン)を信じたことが間違いだったと怒り狂う!
残忍さが消え 絶望して座り込む毗曇(ピダム)は
放心状態のまま立ち上がり歩き出した
『どうした どこへ行くんだ?毗曇(ピダム)…!』
毗曇(ピダム)が受けた衝撃も知らず
善徳(ソンドク)女王は 推火(チュファ)郡の毗曇(ピダム)に宛て手紙を書く
〈今回のことは 王としての最後の仕事になるだろう
これを終えたら譲位し 推火(チュファ)郡に行くつもりだ
小さな寺が建てられる場所を用意して 待っていてほしい
たとえ短い時間でも お前と一緒に過ごしたい〉
(本当に俺を殺そうとしたのだろうか)
「私に恋心を? でも私は神国だけに恋せねば 人に恋は出来ない」
「陛下 私にとって陛下は神国そのものなのです!」
「でも私には話して欲しかった」
「でも 話したとして… 王女様にまで捨てられたら?」
再び座り込んだ毗曇(ピダム)は 指輪を取り出す
2人にとって ただ1つの共通の物…
毗曇(ピダム)は 愛おしそうに指輪に頬ずりした
同じ時 善徳(ソンドク)女王は まだ手紙の続きを書いていた
〈どんなことがあっても 私を信じ待っていなさい -徳曼(トンマン)- 〉
手紙の最後に 敢えて“徳曼(トンマン)”と書き記した
そこへ 呼ばれていた竹方(チュクパン)が現れた
『推火(チュファ)郡へ行って これを毗曇(ピダム)に届けて』
『はい 陛下』
『必ず本人に渡すのです』
「でも私は神国だけに恋せねば」
(それならば この毗曇(ピダム)が神国になります
それでもダメなら 神国の邪魔者として消えればいい そのどちらでも構いません
王というものは この私を捨てたり殺したりせねばならぬ程に重荷だと?
それならこの毗曇(ピダム)が… その重荷を下ろして差し上げます)
洞窟では ようやく現れた廉宗(ヨムジョン)に 美生(ミセン)達が怒り出す
散々に心配させた挙句 毗曇(ピダム)を伴っていないとはどういうことだと!
『廉宗(ヨムジョン)!お前という奴は…!!!』
『そんな場合ではない!すぐにここを離れるべきでは?!!!』
『兵部(ピョンブ)がここを嗅ぎつけたのか?!』
『取り敢えず ユルポ県に!』
『そこで勢力を集めましょう!』
するとそこへ…!!!
上大等(サンデドゥン)の服で現れた毗曇(ピダム)
※上代等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
もうすっかり冷静さを取り戻している
その眼差しには 恋心の欠片も滲んではいない
『情けない人達ですね』
『毗曇(ピダム)公!!!』
宮殿では
近衛兵を前に侍衛府令(シウィブリョン)閼川(アルチョン)が
各自持ち場を徹底して守るよう檄を飛ばしていた
※侍衛府令(シウィブリョン):近衛隊の長
すると 1人の近衛兵が残り 閼川(アルチョン)を呼び止め
ここ数日 フクサンの姿が見えないと報告する
しかも 最近何だか行動が怪しかったと…
洞窟では
戻って来た毗曇(ピダム)の指示に 皆が納得し兼ねていた
『この場から逃げないと言うなら何処に行けと?』
『“柒宿(チルスク)の乱”の時に なぜ美室(ミシル)が負けたと?』
そのことを口に出して良かったのかどうか… 皆が押し黙る
『徐羅伐(ソラボル)を見捨てて大耶(テヤ)城に行ったからだ
徐羅伐(ソラボル)を捨てる者は皆 逆賊となる!
新羅(シルラ)の大義は 徐羅伐(ソラボル)だけにあるのだ!』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
『では…』
『徐羅伐(ソラボル)を奪還し女王を廃位させる
そしてこの毗曇(ピダム)が王になる!!!!!』
初めて毗曇(ピダム)の口から明確な答えが発せられた
それは 生きるか死ぬかの明暗を分ける 重大な決意表明だった…!
『間もなく夜が明ける 夜明け前に徐羅伐(ソラボル)に進撃します!』
『では 陛下がおられる月(ウォル)城を?』
※月(ウォル)城:半月(パノォル)城 徐羅伐(ソラボル)の都城
『まだまだ来ていない貴族らがいます』
『現状の兵力では 兵部(ピョンブ)に勝てるかどうか…』
待ちかねていた毗曇(ピダム)ではあるが その過激さに怖気づく一同
毗曇(ピダム)はただ 愉快そうに含み笑いをするばかりだった
兵部(ピョンブ)では
迫り来る事態に備え作戦会議が開かれている
恐らく敵はユルポ県に向かうだろうと読む一同
司量部(サリャンブ)の管轄であり
毗曇(ピダム)と廉宗(ヨムジョン)の本拠地でもある
※司量部(サリャンブ):王室の全ての部署を監察する部署
そこへ 谷使欣(コクサフン)が駆け込んで来る
2,000程の敵兵が クモ山からソンギ谷へ移動中であると!
『ということは… 大徳(テドク)山に向かうのでは?』
続いて大風(テプン)が駆け込んで来て
チュジン公の部隊が七谷(テルゴク)峠を越えたと報告する
クモ山…ソンギ谷…大徳(テドク)峠…ハッとする金春秋(キム・チュンチュ)
『都城です! 敵の狙いは…!
陛下がおられる月(ウォル)城です!!!』
立ち上がる善徳(ソンドク)女王!
都で決戦となれば 多くの民が犠牲になってしまう
月(ウォル)城への侵入経路である徳山峠にて敵を封じるようにと
上将軍(サンジャングン)金庾信(キム・ユシン)に命じるのだった!
※上将軍(サンジャングン):大将軍(テジャングン)の下の武官
毗曇(ピダム)軍 本陣では
チュジン公 虎才(ホジェ)公が 毗曇(ピダム)のもとへ!
そこへ廉宗(ヨムジョン)が 庾信(ユシン)軍の動向を伝えにやって来る
『2,000程で徳山峠に防御線を張っています!全面戦を行いますか?』
善徳(ソンドク)女王は
全面戦になる前に敵の気勢をくじかねば…と考えるが
敵の詳細な情報が無いまま 時ばかりが過ぎていく
毗曇(ピダム)軍 本陣では
チュジン公と虎才(ホジェ)公に 庾信(ユシン)軍を攻撃せよと命じながら
退却命令が出たら即刻従うようにと命じる毗曇(ピダム)
腑に落ちない表情で出て行く2人
残った廉宗(ヨムジョン)も 何かおかしいと思い始める
『ピルタンの部隊は?』
『待機中です 命令を出しますか?』
『…いや まだだ』
兵部令(ピョンブリョン)金舒玄(キム・ソヒョン)のもとへ
ヨドで 庾信(ユシン)軍が集中攻撃を受けているとの報告が入る…!
※兵部令(ピョンブリョン):新羅(シルラ)の軍の長官
『虎才(ホジェ)軍は撃退しましたが
宝宗(ポジョン)公とチュジン公の部隊に挟み撃ちされています!』
『ヨドから月(ウォル)城はすぐだ! 庾信(ユシン)軍の援護を!!!』
『はい!!!』
毗曇(ピダム)のもとへ 刻々と情報を届ける廉宗(ヨムジョン)
庾信(ユシン)軍に集中攻撃したことで 敵の兵が終結している
毗曇(ピダム)は 待機させていたピルタンの部隊に作戦開始の指令を出す
『他の部隊には退却命令を』
『えっ?!月(ウォル)城へ進軍するのでは?!』
『勿論… 違う』
報告を受けた金舒玄(キム・ソヒョン)は 我が耳を疑う
庾信(ユシン)軍を援護するため 周辺の部隊を集結させたのに
敵兵が全軍退却するなど 有り得ない事態だった
龍春(ヨンチュン)公が大慌てで駆け込み 善徳(ソンドク)女王に報告する
どういうわけか敵が退却したと聞き 金春秋(キム・チュンチュ)は考え込む
狼(ナン)山と武華(ムファ)山の兵をヨドに集結させたということは…
狼(ナン)山がガラ空きだということだと…!
『陛下 これはまさか…』
『ええ そうです』
春秋(チュンチュ)の考えが 善徳(ソンドク)女王にも分かった
敵が向かったのは月(ウォル)城ではない 明活(ミョンファル)山城だと…!
ようやく事態が飲み込めた龍春(ヨンチュン)公
善徳(ソンドク)女王は 深刻な表情になる
『都に 2つの権力が生まれることになる』
金庾信(キム・ユシン)もまた事態を把握し顔色を変える
明活(ミョンファル)山城の正門では
ピルタンの出迎えを受け 毗曇(ピダム)が入城しようとしていた
その後には 美室(ミシル)の一族と貴族達が続く
徐羅伐(ソラボル)では 王室の人間だけで会議が開かれている
春秋(チュンチュ)が 今回の事態の説明をする
敵はヨドを集中攻撃し 狼(ナン)山の兵を移動させ
少ない兵力で明活(ミョンファル)山城を占領した
月(ウォル)城と明活(ミョンファル)山城は2里も離れていない
神国700年の歴史においても また他国の歴史においても
城内で これだけの大軍同士が対峙するとは前代未聞である
『“美室(ミシル)の乱”では 徐羅伐(ソラボル)を離れたことが敗因となった』
『同じ轍を踏まないよう 策を練ったのです』
毗曇(ピダム)軍の陣営では 都城で2つの勢力が対峙するという現状を
多く世間に知らせるべきだと主張する美生(ミセン)
『このことを知れば 多くの貴族や民は 女王の能力と王権に疑問を抱く筈
そもそも女性の王など… 誰もが疑問に思っていたのだ!』
『女王への反意を多く知らしめ 都城での戦線を出来るだけ長く維持せねば』
『しかし月(ウォル)城では 一刻も早く解決しようとするでしょう』
会議の後 春秋(チュンチュ)は 善徳(ソンドク)女王と2人になる
今回の敵の動きには 毗曇(ピダム)が関与しているに違いない
美室(ミシル)と薛原(ソルォン)がいない今
このように大胆な策を立てられるのは
毗曇(ピダム)しかいないという春秋(チュンチュ)
『それ以上 言うな! そうだ 私もそう思っている
しかし… 違うと信じたい! そう願っているのだ』
そんな中 推火(チュファ)郡の官庁に 竹方(チュクパン)が現れた
上大等(サンデドゥン)に 陛下から渡す物があると言うと
サンタクが 今は不在だから預かると答える
『王命で来たんだ これは直接本人に渡さないと!』
毗曇(ピダム)は突然 女王を廃位させると言い出した
ならば都城に進軍を?と聞くと そうではないという
美室(ミシル)の一族と貴族達は 毗曇(ピダム)の考えが全く読めない
『多くの貴族が味方についている今 上大等(サンデドゥン)の自分を含め
和白(ファベク)会議の大等(テドゥン)は10人中7人に』
※和白(ファベク)会議:新羅(シルラ)の貴族会議
※大等(テドゥン):新羅(シルラ)の中央貴族の核心層
推火(チュファ)郡に行くべき筈の毗曇(ピダム)は
明活(ミョンファル)山城を掌握し 和白(ファベク)会議を招集した
そして前置きも何も無く 女王の廃位について…と議題を提起する
第1に
善徳(ソンドク)女王は 真興(チヌン)大帝が遺した領土を守れず
高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)に侵攻を許し
難攻不落と謳われた大耶(テヤ)城を奪われた
※高句麗(コグリョ):三国時代に朝鮮半島北部で栄えた国
※百済(ペクチェ):三国時代に朝鮮半島南西部にあった国
第2に
女性の君主として唐の使節団に見下され 神国の品位と基盤を揺るがした
第3に
阿育王の暗示が女王の衰運を示し 新王到来を示唆した
これは正に天の啓示ではないか
※阿育王:アショカ王
〈以上3つの理由により 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)と
和白(ファベク)会議は 女王の廃位を決意するものなり〉
至る所に貼られた掲示物の文面に 民は驚く
竹方(チュクパン)とサンタクも 民に紛れ困惑する
これが本当に毗曇(ピダム)公が書いたものなら まさしく反乱だと…!
『待てよ 毗曇(ピダム)公は明活(ミョンファル)山城にいるのか?
だとしたら反乱軍の拠点だ! でも陛下から頼まれたこれを渡さなきゃ!』
『行ったら殺されます!』
竹方(チュクパン)は 恐怖に怯えながらも
善徳(ソンドク)女王の言葉を思い返す
本当に真剣な表情で必ず渡してくれと…
『行かなきゃ!』
『行ったら必ず殺されますって!』
『お前も必要だ!来い!!!』
王室の会議では 龍春(ヨンチュン)公と金舒玄(キム・ソヒョン)が激怒している
上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)は 王命により推火(チュファ)郡に行った筈
だとしたら 上大等(サンデドゥン)不在の和白(ファベク)会議など無効だと…!
しかし万明(マンミョン)夫人が まだどうとも断定は出来ないと意見を述べる
春秋(チュンチュ)も 毗曇(ピダム)公本人が決議案を出したのだとしたら…と
この署名が確かに本人のものと断定した場合 大変な事態になると…!
そこへ閼川(アルチョン)が 慌てた様子で駆け込んで来る!
たった今インガン殿の前に 遺体を乗せた馬が現れたと…!!!
『ここ数日 姿を消していたフクサンの遺体です』
『王室を護衛すべき侍衛府(シウィブ)の兵士が なぜこんな目に?』
すると 遺体の首に何やら光る物が…
善徳(ソンドク)女王が蒼褪める
それは 唯一の証しとして毗曇(ピダム)に渡した指輪だった
(本当に毗曇(ピダム)が…!)
同じ時
ようやく明活(ミョンファル)山城に到着した竹方(チュクパン)達が
毗曇(ピダム)に直接 善徳(ソンドク)女王からの書状を渡していた
文面に目を通すと 毗曇(ピダム)は激しく動揺した…!
しかし簡単に信じることは出来ない!
『お前は春秋(チュンチュ)の腹心だ!これは春秋(チュンチュ)の仕業か!!!』
『いいえ違います!確かに女王陛下から頼まれました!信じてください!
王命だからこそ!命懸けで届けに来たのです!!!』
同行したサンタクも声を震わせ 竹方(チュクパン)は確かに昨夜から
推火(チュファ)郡で毗曇(ピダム)公を待っていたのだと証言する…!
愕然とする毗曇(ピダム)
しかし… 狂ったように大声で笑い出す
またしても騙されるところだったと…!
『春秋(チュンチュ)と徳曼(トンマン)に伝えよ! “私は生きている”と!
あれ程殺したかった私はこうしてまだ生きているとな!!!!!』
善徳(ソンドク)女王は 自分のもとに戻った指輪を握り締め考え込む
「私の誓いを記した“盟約書”です 陛下と私が1部ずつ保管するのです
もしも陛下に出来ぬ場合 時機が来たら私が公開します」
「私より先に陛下が他界された時は 盟約書に従います
朝廷の全ての政務と権力から身を引き 俗世を離れます」
「これで陛下の不安も無くなるでしょう どうかご安心を」
あの時の約束がすべて嘘だったとは思えないが… 事態は深刻だった
金春秋(キム・チュンチュ) 金舒玄(キム・ソヒョン) 龍春(ヨンチュン)公が
決議文が名分を持つ前に 一刻も早くご決断を!と迫る
『毗曇(ピダム)… 毗曇(ピダム)から上大等(サンデドゥン)の地位を剥奪し
神国の敵として宣布します! 反乱勢力を鎮圧し!神国の偉業を達成するように!』
ついに… このような王命を下す時が来てしまった…!
善徳(ソンドク)女王は 侍衛府令(シウィブリョン)に
殺されたフクサンについて詳しく調査するよう命じた
竹方(チュクパン)を追い返した毗曇(ピダム)は サンタクだけを呼び
自分を殺そうとした兵は 侍衛府(シウィブ)の者だったと話す
『その者を調べろ!』
『はい!』
このやり取りを 廉宗(ヨムジョン)の部下が盗み聞いていた
廉宗(ヨムジョン)は直ちに刺客を差し向ける…!
フクサンの家に向かう閼川(アルチョン)
しかし既に 家族は皆殺しにされていた!
ふと気配がして振り向くと そこには少女が震えながら隠れていた
『何があった?』
『フクサン兄さんが大きな仕事したからここを離れろと…』
『大きな仕事とは?』
『司量部(サリャンブ)の人… ヨム…廉宗(ヨムジョン)という人が…』
毗曇(ピダム)の命令を受け 調査に来たサンタクが
2人の会話を聞き 慌てて走り去る…!
一方 戻った竹方(チュクパン)から報告を受ける善徳(ソンドク)女王
毗曇(ピダム)は確かに明活(ミョンファル)山城にいたと…
『毗曇(ピダム)公は 陛下が自分を殺そうとしたと思い込んでおられます
文を読んでも信じようとせず 策略だと言って聞かないのです
“私はまだ生きている”と伝えろと… そう言われました』
そこへ 閼川(アルチョン)が駆け込んで来る!
全ては廉宗(ヨムジョン)の仕業だと聞き 絶句する善徳(ソンドク)女王
双方の話の辻褄が合い ようやく事態を把握する竹方(チュクパン)
『人と人との信頼は こんなにも脆いものか…
人の心を頼ることがこんなにも虚しいとは…』
『陛下… まずは何としても誤解を解かねばなりません!』
必死に訴える竹方(チュクパン)だが
絶望し切った善徳(ソンドク)女王は『もう何もしてやれないのだ』と…
そう呟き 突然胸を抑え苦しみ出す…!
『陛下!医官を呼びます!』
大丈夫だから…と竹方(チュクパン)を下がらせる閼川(アルチョン)
善徳(ソンドク)女王の心痛の程を推し量れる者は
この閼川(アルチョン)ただ1人であった
サンタクは 明活(ミョンファル)山城の門前に辿り着いたが…
そこで廉宗(ヨムジョン)に出くわし 一瞬の隙を突いて逃げ出す!
サンタクの様子から何かを掴んだと見て 部下に追跡させる廉宗(ヨムジョン)
崖の淵まで追い詰められたサンタクは 決死の覚悟で飛び降りる…!!!
サンタクの帰りを待ちながら 落ち着かない様子の毗曇(ピダム)は
善徳(ソンドク)女王からの文を読み返す
文末に書かれた“徳曼(トンマン)”の文字が 毗曇(ピダム)を苦しめる
そこへチュジン公が 貴族達を連れ入って来る
後ろから 美生(ミセン)と夏宗(ハジョン)もついて来た
毗曇(ピダム)は 善徳(ソンドク)女王からの文を後ろ手に握り潰す
この文の真意がどうであれ もはや取り返しのつかない事態なのだ
そんな事とも知らず夏宗(ハジョン)と美生(ミセン)が はしゃいだ声で
協力を申し出る貴族達が次々に現れている!と話す
あとは軍さえ到着すれば 何の憂いも無いと高笑いした
なかなか戻って来ないサンタクに痺れを切らし
外に出ようとする毗曇(ピダム)を 廉宗(ヨムジョン)が阻む
『どちらに行かれます?』
『仕事を頼んだサンタクが戻らないのだ』
『それより… 皆が集まったので上大等(サンデドゥン)から激励を!』
『…分かった』
そこへ 危急を知らせる伝令が到着する…!
善徳(ソンドク)女王のもとへは 金庾信(キム・ユシン)が報告に来ている
毗曇(ピダム)とその一派の殺害命令は 各城と全ての民に発布されている
都城での戦になることは避けられず 既に準備は整っていると…
たとえ 廉宗(ヨムジョン)の策略により毗曇(ピダム)が嵌められたとしても
全ては互いの誤解から生じた事態であったとしても もう後戻りは出来ないのだ
『策略だろうと誤解だろうと関係ありません
偶然がいくつも重なっていけば 必然になるということです
歴史はいつも そうやって作られるものです
でも…
私に確認すらしなかった毗曇(ピダム)が残念でなりません
その一方で 毗曇(ピダム)に申し訳なくもあります』
『申し訳ない とは?』
『今考えてみると 貴族達から私兵を奪うため 急に彼を好きになったのか
彼の勢力を排除したくて婚姻を選んだのか… よく分からないのです
ただ… 玉座を譲り毗曇(ピダム)と静かに暮らしたい
それは私の最後の夢で 確かに私の本心でした』
毗曇(ピダム)は 伝令が持ち帰った告示文を読み絶句する
それを拾い上げる廉宗(ヨムジョン)
〈毗曇(ピダム)を上大等(サンデドゥン)から罷免し 神国の敵として宣布する
神国を愛する民ならば 誰であれ 毗曇(ピダム)を刺殺せよ〉
告示文を読み上げた廉宗(ヨムジョン)は 伝令を詰問し
顔色を窺うように 毗曇(ピダム)に視線を移す
毗曇(ピダム)の表情は 絶望に打ちのめされたように暗い
(陛下は 玉座を譲って私と過ごしたかったのでは?)
善徳(ソンドク)女王は 三韓一統の夢に向かい 迷いを捨てる覚悟だった
そこへ閼川(アルチョン)が 武芸道場に民が集まっていると伝えに来た
陛下と神国を反逆者から守るため 皆 自発的に集まって来たのだと…!
決起して集まった民の前に立つ 善徳(ソンドク)女王
明活(ミョンファル)山城においては 毗曇(ピダム)が決起の声を張り上げる
互いが それぞれの立場と思いで 集まった者達に呼びかける…!
『神国は 無能な女王のせいで泣いています!』
『欲にまみれた貴族のせいで 神国に危機が迫っています!』
『女王を廃位し!!!』
『反乱勢力を制圧し!!!』
『新たな神国を!!!』
『神国の偉業を!!!』
『毗曇(ピダム)公 万歳!!!』
『女王陛下 万歳!!!』
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