善徳女王 第56話 それぞれの決断
庾信(ユシン)軍を率いる薛原(ソルォン)を中心に 作戦会議が開かれる
善徳(ソンドク)女王は 詳細な報告を受ける
薛原(ソルォン)が考えた防御策はこうだ
まずは 百済(ペクチェ)軍が必ず通る大徳(テドク)山に第1防御線を張る
敵の退路を封じた上で 尾根に潜ませた弓部隊2,000人が一斉に攻撃を…!
万が一 第1防御線が突破されたら…
第2防御線は死闘必至の壮絶な戦いとなるのだ
『私を信じて従って欲しい 必ずや神国を守るのだ!』
会議から戻り 薛原(ソルォン)は毗曇(ピダム)に会う
この戦に勝利すれば 一派は再び巻き返しの機会を得る
何としても推火(チュファ)郡で終わらせるのだと念を押す毗曇(ピダム)だった
一方 高島(コド)達は 庾信(ユシン)の牢の前で説得を続けていた
幾度となく“庾信(ユシン)軍”と口にする高島(コド)達
庾信(ユシン)は そんな軍は存在しないのだと
全ての兵は陛下の配下 陛下の軍なのだと言い聞かせる
『薛原(ソルォン)公に お会いしたいと伝えるのだ』
薛原(ソルォン)は 善徳(ソンドク)女王に謁見し
兵部(ピョンブ)の全権を渡して欲しいと嘆願していた
今回の出陣のみならず 三韓一統の大業にもひと役買いたいと…!
※三韓一統:高句麗(コグリョ)百済(ペクチェ)新羅(シルラ)の三国統一
『私の…最後の機会なのです』
『再び権力を握ろうと?』
薛原(ソルォン)の望みは 兵権だけに留まらなかった
この戦いに勝利し帰還した暁には 是非とも毗曇(ピダム)と婚姻を!と願い出た
善徳(ソンドク)女王は 毗曇(ピダム)の“恋心”が怖い…と語り始める
『真興(チヌン)大帝は 1つだけ過ちを犯しました
信頼するご自分の配下を すべて美室(ミシル)に奪われたことです
神国にではなく 美室(ミシル)に忠誠を誓う者達に阻まれ
最期まで後継者を立てられなかった!』
『……』
『私の死後も 毗曇(ピダム)は神国に忠誠を誓うでしょうか!
三韓一統の大業に 全精力を傾けるでしょうか!
薛原(ソルォン)公!どう思いますか?』
浮かない表情で出て来た薛原(ソルォン)
そこへ大風(テプン)が現れ 庾信(ユシン)の牢へ案内する
『百済(ペクチェ)軍は この10年で全く様変わりしました
陛下が 穀物の生産に力を注いでいた頃
百済(ペクチェ)は兵力増強に心血を注いでいたのです
特に騎兵の早さは群を抜き 1日に7里を進むほどです』
1日に7里と聞き さすがに薛原(ソルォン)も表情を変える
しかし… 庾信(ユシン)はなぜこんなにも全ての情報を伝えるのか…
この戦いに勝利することは 自らの進退に関わることなのに
『勝ってください 私のことは勝った後で考えればいいのです
薛原(ソルォン)公は ずっと“敗者の人生”を歩んで来られた
私も随分前に 同じ人生を選びました
陛下が私を死なせる時は きっと戦場で死なせるでしょう』
美室(ミシル)の弟 美生(ミセン)
美室(ミシル)と世宗(セジョン)の息子 夏宗(ハジョン)
美室(ミシル)と薛原(ソルォン)の息子 宝宗(ポジョン)
3人が集まって語り合っている
薛原(ソルォン)公が凱旋すれば 兵権が手に入り再び勢力を盛り返せるだろう
しかし… 高齢であることと ここ数年は戦に出ていないことが懸念される
そこへ 薛原(ソルォン)が入って来る
何か言いたそうな宝宗(ポジョン)
薛原(ソルォン)は その視線で感じ取る
2人きりになる父子
いくら璽主(セジュ)の頼みとはいえ そこまでする必要が?
狭心症の持病を隠してまで出陣するのかと 責めるように話す宝宗(ポジョン)
しかし薛原(ソルォン)は 再び出陣出来ることが嬉しくもあった
どうやら自分は 骨の髄まで武将だったと笑う薛原(ソルォン)であった
『いかに百済(ペクチェ)のユンチュンが優れた将軍であろうと
かつては私の足元にも及ばなかったのだ! ハッハッハ…』
薛原(ソルォン)はひとり 美室(ミシル)の祭壇の前に座り込む
『璽主(セジュ) どうやら毗曇(ピダム)は 人を恋する心が私と似ています
恋心など捨てよと仰った璽主(セジュ)に 似るべきでした
璽主(セジュ)の最期の頼みですので 私は従うつもりです
必ずこの戦に勝ち 毗曇(ピダム)に好機をもたらせてみせます
……お会いしたいです 璽主(セジュ)…』
そしていよいよ 出陣の時が来た
薛原(ソルォン)の出陣の宣言に続き
宝宗(ポジョン)が 声高らかに出陣の号令をかける!
進軍の兵を見送る毗曇(ピダム)と金春秋(キム・チュンチュ)
『薛原(ソルォン)公の意気込みは凄まじいものがありますね
あの気迫で百済(ペクチェ)軍に勝利した暁には
司量部令(サリャンブリョン)の お望みのものが手に入るでしょう』
※司量部令(サリャンブリョン):王室の全ての部署を監察する部署の長
薛原(ソルォン)率いる庾信(ユシン)軍と
ユンチュン将軍率いる百済(ペクチェ)軍は
それぞれに進軍し 戦いの時に近づいていた
善徳(ソンドク)女王に付き添い 言葉をかける竹方(チュクパン)
たとえ指揮官が代ろうと 無敗を誇る庾信(ユシン)軍に問題は無いと…!
それを聞き流し 先日頼んだ件の準備を…と念を押す善徳(ソンドク)女王
『それと 侍衛府令(シウィブリョン)に庾信(ユシン)の報告書を検討せよと!』
『……承知しました』
※侍衛府令(シウィブリョン):近衛隊の長
竹方(チュクパン)は 沈痛な表情で退室する
善徳(ソンドク)女王もまた 厳しい表情で押し黙った
竹方(チュクパン)が向かった先は サンタクのところだった
無理な要求だと渋るサンタクに金の巾着を握らせ 何とか聞き届けさせた
『外へ連れ出したりしないでくださいよ!話をするだけですよ!』
『分かった!分かったから!!!』
竹方(チュクパン)が入った尋問室にいるのは 復耶会の一味として捕らえられた
かつての 龍華香徒(ヨンファヒャンド)の仲間だった
『あ…兄貴!』
『まだ俺のことを兄貴と思うなら言うことを聞け!』
真夜中
黒い編笠に黒装束の竹方(チュクパン)が 山中に現れる
竹方(チュクパン)は尋問室で 復耶会への連絡方法を聞き出したのだ
「時と場所を書いた石を置いておくんです」
言われた通りに石を置くと 間もなく復耶会の見張り番が現れた
復耶会の砦では 雪地(ソルチ)が月夜(ウォルヤ)に報告している
百済(ペクチェ)軍が伊西(イソ)郡にまで迫り
押梁州(アンニャンジュ)が墜ちるのも時間の問題だと
深く考え込む月夜(ウォルヤ)
『何をお悩みですか?』
『私は 伽耶の民の命を預かっているのだ
私の大義と庾信(ユシン)の大義 どちらが正しいのか…』
そこへ部下が駆け込んで来て
何者かが会いたいと… 合図を送って来たと報告する
城内の復耶会の仲間は すべて捕えられた筈
この合図の方法を知っているのは 復耶会の者だけなのに…
雪地(ソルチ)は警戒し 部下を引き連れ月夜(ウォルヤ)を護衛する
『相手の人数は?』
『3人です』
見張りの部下が こちらに向かう3人を確認し報告に来た
『何者だ?』
『分かりませんが 1人は剣を持ち あとの2人は丸腰です』
3人は たちまち復耶会に取り囲まれてしまう
ただ1人 剣を持っているのは… 閼川(アルチョン)だ
素早く剣を構え 応戦状態の閼川(アルチョン)に…
『侍衛府令(シウィブリョン) 私がこの者達に会いに来たのだ 剣を下ろせ』
『ですが陛下!』
“陛下”と聞き 復耶会の兵達は動揺する…!
残る1人が笠を取ると… それは金春秋(キム・チュンチュ)だった
『侍衛府令(シウィブリョン) 騙して済まぬ
そなたに話せば必ず反対されると 陛下が仰ったのだ
月夜(ウォルヤ)! どこかで見張っているのだろう?
閼川(アルチョン)公以外 武器を持つ者はいない!
陛下が会いに来られた! 早く出て来ぬか!』
善徳(ソンドク)女王も その姿をあらわにした
ゆっくりと 前に進み出る月夜(ウォルヤ) その隣に雪地(ソルチ)
『手短に言うからよく聞け
1つ目 伽耶人に対する陛下の政策は知っているな?
2つ目 伽耶出身者の戸籍文書を全て廃棄する
つまり私の死後も お前達の出自を表す文書は存在しないことになる』
『……』
『3つ目 この内容が私の死後も永続させるよう勅書を残す
ゆえに 金庾信(キム・ユシン)を利用した復耶会を解体せよ!』
善徳(ソンドク)女王が勅書を残すということは
跡を継ぐ王達が いかなる理由でも内容を変更出来ないということだ
『それで… 私に何をお望みですか?』
『復耶会の名簿を全て渡してもらう
そして 蹶張弩(クォルチャンノ)部隊を武装解除し…』
『私の配下になってもらう!』
善徳(ソンドク)女王の言葉を受け継ぐ金春秋(キム・チュンチュ)
女王の配下ではなく 金庾信(キム・ユシン)の配下でもなく
金春秋(キム・チュンチュ)の配下になる ということだ…!
3日後の同時刻 この場所で返事を待つと!
月夜(ウォルヤ)は 驚きの表情で春秋(チュンチュ)に向き直る
『もしも私が…この提案を拒んだら?』
『お前のせいで金庾信(キム・ユシン)が死ぬ
お前のせいで伽耶の民が皆殺しとなる』
話し合いが終わり宮殿に戻ると 閼川(アルチョン)が
これまでに無い程の怒りで打ち震えている…!
近衛隊の長として 王を守るべき臣下として 到底許せることではなかった
『相談したら 間違いなく反対したであろう?』
閼川(アルチョン)の怒りの矛先は金春秋(キム・チュンチュ)に向く!
助けを求めるように 善徳(ソンドク)女王の方を見る春秋(チュンチュ)
忠誠心を拒まれた閼川(アルチョン)の怒りは収まりそうにない
『庾信(ユシン)のためです 伽耶や月夜(ウォルヤ)を切り捨てれば
永久に庾信(ユシン)を得られなくなる』
ようやく善徳(ソンドク)女王の真意を理解し 涙ぐむ閼川(アルチョン)
『月夜(ウォルヤ)も これくらいのことをせねば従わぬ
困難を乗り越えてこそ 人を得る者は天を得られるのだ』
『陛下…』
善徳(ソンドク)女王の執務室を出ても尚
閼川(アルチョン)の怒りは収まり切っていない
そんな閼川(アルチョン)に… 金春秋(キム・チュンチュ)が
今回のことで身に染みて学んだことがある と話す
『陛下は私に教えてくださったのだ
“頭で考えるだけでは人を得られぬ 大業を成すとはこんなにも大変なのだ”と
そして… 私と復耶会を繋いでくださった』
『それは どういう意味ですか?』
『陛下の死後 不安を抱く彼らと 陛下の死後 王位を狙う私
復耶会と私の利害は 見事に一致している
庾信(ユシン)に代わり王に据える者として 私を示したのだ』
考え込む月夜(ウォルヤ)
心配そうに見つめる雪地(ソルチ)
すると夜の闇に どこからか子供の泣き声がする
部下が声のする方に駆け寄る…!
『おいどうした? 泣くんじゃない なぜここにいるんだ?』
『お母さんがいない! お腹がすいたよぉ… うえ~ん…』
宮殿では
『復耶会の砦は突き止められそうですか?』
『私は真面目ではありませんが 仕事はきっちりこなしますよ』
『さすがは兄貴です!』
『実は… 私より賢い7つの子を送り込みました!』
『子供を?』
善徳(ソンドク)女王は 竹方(チュクパン)の前で久々に笑顔を見せた
それからしばらくして 早馬の知らせに驚く善徳(ソンドク)女王
部隊が到着する前に推火(チュファ)郡が陥落し 退却を余儀なくされ
現在 伊西(イソ)郡も陥落寸前であると…!
伊西(イソ)郡が陥落すれば次は徐羅伐(ソラボル)が危ない!
『チュジン公は直ちに援軍を率い伊西(イソ)郡へ!!!』
そこへ 薛原(ソルォン)公が戻ったとの知らせが入る
高島(コド)も大風(テプン)も… 誰もかれもが傷だらけだった
沿道で出迎える民は皆 我が目を疑った…!
やられたのは兵士だけではない
薛原(ソルォン)公もまた重傷を負い帰還した
『百済(ペクチェ)軍の中に 強力な遊軍がいます!
その機動力は凄まじく 神出鬼没なのです!』
※遊軍:本隊の指示なく 戦況で動く別動隊
高島(コド)達は すぐさま金庾信(キム・ユシン)のもとへ!
そして 敵の中に“鬼神”がいると…!怯え切った表情で報告する
『赤い兜を被った奴で… 今ここにいたと思うとすぐに別の場所から…!』
『あれはまるで鬼神… 鬼神です!!!』
薛原(ソルォン)公は すぐに寝込んでしまった
枕元で見守る毗曇(ピダム)
璽主(セジュ)の最期のお言葉に従ってくださいと
息も絶え絶えながら 何度も繰り返す薛原(ソルォン)公
『人を… 目標とするのは… 危険… です
もっと大きな志を…! 夢を… 持つのです…!
さもなくば… 私のような… 人生に… 2番手の… 人生に…』
虫の息の中から 必死に訴えかける薛原(ソルォン)公
いつしか毗曇(ピダム)の目にも涙が…
『薛原(ソルォン)公… 薛原(ソルォン)公!!!』
美室(ミシル)の戦友として 戦いの日々を送り
やがて美室(ミシル)の情夫となり 生涯を美室(ミシル)に捧げた薛原(ソルォン)公
その最期に 美室(ミシル)の遺志を毗曇(ピダム)に託し この世を去った
サンタクが 牢の中の金庾信(キム・ユシン)へ
薛原(ソルォン)公の手紙を届ける
〈庾信(ユシン)公の計算は間違っていました
ユンチュン将軍の騎兵は 1日に7里ではなく8里を超える速さです
遊軍を率いる赤い兜の男にご用心を〉
薛原(ソルォン)公の死に 美室(ミシル)の一族は悲しみに暮れる
何か遺書のようなものは無いのかと聞く美生(ミセン)
宝宗(ポジョン)は ただ息子である自分を按じていたと答え涙する
『何だよ!それじゃ私のことは?! いくら仲が悪かったからって…
私にもひと言くらい… 私のことも気にかけてくれたっていいじゃないかぁ!』
悪態をつきながら泣き崩れる夏宗(ハジョン)
ポロポロと涙を流す宝宗(ポジョン)
薛原(ソルォン)公が破れ これでチュジン公まで敗れたら…と心配する大臣達
そんな大臣達に向って龍春(ヨンチュン)公が
『こうなったら 庾信(ユシン)公が軍を率いるしかありません!』
『何を言うのですか!大罪人ですぞ!』
『徐羅伐(ソラボル)が陥落しても… 神国が消滅してもいいのですか!!!』
金舒玄(キム・ソヒョン)もまた 薛原(ソルォン)公の死を受け落胆していた
もはや増員出来る兵もいないとの報告に 無念さを滲ませる
こんな時に 息子が投獄されているとは…! と
司量部(サリャンブ)では 大臣達の進言に憤る美生(ミセン)
この期に及んで金庾信(キム・ユシン)を釈放しろとは…!
いきなり卓を叩きつけ 険しい表情の毗曇(ピダム)!
『罪人に国を預けるだと?!それが神国の臣下が言うことか!!!』
『司量部令(サリャンブリョン)!庾信(ユシン)公がお話があると!』
毗曇(ピダム)が牢の中に入って行くと
庾信(ユシン)は 必死に考えた戦略を語り始めた
伊西(イソ)郡が突破されたら 次は金城(クムソン)山だと
金城(クムソン)山を突破されたら次は押梁州(アンニャンジュ)
押梁州(アンニャンジュ)は丘と平野ばかりだから 機動力の弱い我々には不利だと
庾信(ユシン)の必死さに 毗曇(ピダム)はクスッと笑い
その笑みに 庾信(ユシン)が激怒する!
『毗曇(ピダム)!!!』
罪人が司量部令(サリャンブリョン)の胸ぐらを掴んだのだ
兵士が一斉に 庾信(ユシン)に向って剣を構える!
『私を殺したければ殺すがいい! 軍事権も奪え!
ただし神国を救ってからだ!それまで待て!!!』
牢の中の金庾信(キム・ユシン)に なぜこうまで敗北感すら感じるのか…
毗曇(ピダム)は 腹立たしさに涙を滲ませる
金春秋(キム・チュンチュ)は 善徳(ソンドク)女王と向き合っていた
手遅れになる前に 金庾信(キム・ユシン)を釈放すべきと訴える春秋(チュンチュ)
そこへ 司量部令(サリャンブリョン)が謁見を求めていると知らせが…
庾信(ユシン)の戦略をそのまま伝える毗曇(ピダム)
『陛下 この私が必ずや神国を守ります!』
『……』
何の言葉ももらえず 毗曇(ピダム)は退室する
『陛下』
『今夜だ』
月夜(ウォルヤ)との約束の夜だった
復耶会の砦では 全ての名簿を渡すなど とんでもないとの声が上がる
この状況で迷っている月夜(ウォルヤ)に対しても批判の声が上がり
まさか降伏つもりか!と罵声が飛ぶ
無礼だぞ!と一喝する雪地(ソルチ)!
『私が何か間違ったことを言ってますか?!』
『だがあまりに無礼ではないか!いつか伽耶が復興出来ると?!』
『だからって!名簿まで差し出し降伏するのですか!』
『戦で皆疲れ切っているのだ!それが分からんか!!!』
部下達の口論を いたたまれない思いで聞いている月夜(ウォルヤ)
約束の場所には既に 善徳(ソンドク)女王と金春秋(キム・チュンチュ)が…
時が過ぎても 一向に現れない月夜(ウォルヤ)
『竹方(チュクパン)! これ以上は待てない 場所は調べてあるな?』
『はい陛下 しかし…』
兵士は連れて来ていない
この状況で 復耶会の砦に行くということは…
約束の時間を過ぎても 口論が続いている砦に
突然 善徳(ソンドク)女王が現れる
護衛は閼川(アルチョン)ただ1人
『陛下の前である! 跪かぬか!!!』
誰ひとり跪こうとしない
出て来た月夜(ウォルヤ)に対し 礼を尽くす兵士達
善徳(ソンドク)女王は 月夜(ウォルヤ)に向って帳簿を差し出す
『お前達が伽耶人であることを示す帳簿だ!』
差し出した帳簿を渡さず かがり火の中に放り込む!
燃えだした帳簿を見て どよめきが起こる!
その頃 金春秋(キム・チュンチュ)と竹方(チュクパン)は兵を集めていた
『皆!急ぐぞ!陛下が危ない!』
『はい!!!』
月夜(ウォルヤ)と復耶会の兵士達に向って 説得を続ける善徳(ソンドク)女王
『神国に敵対し!金庾信(キム・ユシン)を殺し!私がお前達を殺し!
お前達は新羅(シルラ)人を殺す!そうして行くしかないのか!』
『……』
『本当にそれでいいのか!!!』
そこへ 金春秋(キム・チュンチュ)が侍衛府(シウィブ)を率いて現れた
侍衛府(シウィブ)が たちまち善徳(ソンドク)女王を取り囲み警護する
善徳(ソンドク)女王は 再び月夜(ウォルヤ)に向き直る
『これが私からの最後通告だ!』
そして 今度は金春秋(キム・チュンチュ)に向き直り
ここに残って説得を続けよ!と命じた
『説得に失敗したら 金春秋(キム・チュンチュ)!そなたと…
ここにいる復耶会の全員を生かしてはおかぬ!!!』
侍衛府(シウィブ)に守られ 善徳(ソンドク)女王は去って行く
残された金春秋(キム・チュンチュ)と月夜(ウォルヤ)は
どちらも同じく不安の表情で その後ろ姿を見送った
翌朝
竹方(チュクパン)が 善徳(ソンドク)女王のもとへ駆け込んで来る!
金城(クムソン)山の防御線が崩れ チュジン公の部隊が撃破されたと!
『百済(ペクチェ)の大軍が 押梁州(アンニャンジュ)に向っています!』
『すぐに便殿会議を!!!』
司量部(サリャンブ)では 廉宗(ヨムジョン)が毗曇(ピダム)に報告している
2万の敵軍が押梁州(アンニャンジュ)に迫り このままでは…
徐羅伐(ソラボル)が陥落するのも時間の問題だと…!
牢の兵士までもが移動を始め 動揺する金庾信(キム・ユシン)!
捕らわれの身では 状況さえ分からなかった
便殿会議
成す術の無い臣下達が ただただ善徳(ソンドク)女王の決断を待っている
そこへ 血相を変えた廉宗(ヨムジョン)が叫びながら飛び込んで来る!
『陛下ーーーっ!たった今… たった今!武芸道場にーーーっ!!!』
武芸道場の玉座に 金春秋(キム・チュンチュ)が座している
復耶会だった者達を従え 月夜(ウォルヤ)と雪地(ソルチ)が…
皆 新羅(シルラ)の軍服に身を包み 春秋(チュンチュ)の前に整列している!
金春秋(キム・チュンチュ)の配下となる 春秋(チュンチュ)軍であった…!
月夜(ウォルヤ)が服従の礼を尽くすと 兵士が一斉に跪く!
『復耶会の長! 月夜(ウォルヤ)は!
陛下と春秋(チュンチュ)公に兵を委ねます!!!』
報告を受けた龍春(ヨンチュン)公と大臣達は訳が分からず…
金春秋(キム・チュンチュ)が 善徳(ソンドク)女王の前に進み出る
『陛下 私 金春秋(キム・チュンチュ)は 陛下の命を受け
復耶会の全員の名簿と 陛下への忠誠を得ました!』
『ご苦労であった! では金庾信(キム・ユシン)を呼べ!』
既に軍服を身に纏った金庾信(キム・ユシン)が現れた!
それでもまだ大臣の間から 庾信(ユシン)公は罪人だ!との声が上がる
善徳(ソンドク)女王は 静かに立ち上がった
『金庾信(キム・ユシン)が率いてこその庾信(ユシン)軍である!剣を持て!』
持って来させた剣を 手に取る善徳(ソンドク)女王
金庾信(キム・ユシン)が その前に跪く!
『金庾信(キム・ユシン)!そなたを上将軍(サンジャングン)に再任し!
此度の戦における全権と!軍の総帥権を委任する!!!
大神国の領土を守り!神国を救え!!!』
剣を賜る金庾信(キム・ユシン)
その光景を見つめる毗曇(ピダム)の目には涙が滲む
復耶会のことも 庾信(ユシン)のことも 何も知らされていなかった 何も…
(陛下は 大事なことを何も話してはくれなかった…)
『上将軍(サンジャングン)!金庾信(キム・ユシン)!
身命を賭して戦います!!!』
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