善徳女王 第53話 仕掛けられた罠 

連行される月夜(ウォルヤ)を遮る兵士
尋問室から司量部令(サリャンブリョン)の執務室へ移すのだと…!

※司量部令(サリャンブリョン):王室の全ての部署を監察する部署の長

必死に動揺を隠す月夜(ウォルヤ)
遮った兵士は 復耶会の部下だったのだ…!

(どうしますか?)

それは 連行される前の密談の時のこと
逃げてください!と懇願する部下
しかし 逃げれば復耶会を認めることに
心が決まらないまま 決断の時が迫る…!

(どうかご決断を!)
(脱出する!)
(手配します!)

『この世の何処に伽耶の民がいる!!!
すべて神国の民であり私の民だ!!!!! 毗曇(ピダム)!』

庾信(ユシン)のひと言に激怒した善徳(ソンドク)女王は
毗曇(ピダム)に 調査結果を報告させる

『復耶会の綱領が見つかりました 長は月夜(ウォルヤ)と判明
現在は 各界に潜む密偵を捜索中です
陛下 司量部令(サリャンブリョン)毗曇(ピダム)が進言いたします!
月夜(ウォルヤ)が長と判明した以上 庾信(ユシン)との関係も調べねば!
上将軍(サンジャングン)金庾信(キム・ユシン)取り調べのご許可を!!!』

※上将軍(サンジャングン):大将軍(テジャングン)の下の武官

庾信(ユシン)は 善徳(ソンドク)女王を見上げた
怒りを鎮めることが出来ないまま 善徳(ソンドク)女王は涙を浮かべている
そんな2人と 冷酷なまでの毗曇(ピダム)を見つめる閼川(アルチョン)だった

復耶会の一味が 雪地(ソルチ)のもとに現れていた
縛られたままの雪地(ソルチ)に短刀を渡す

月夜(ウォルヤ)を連れ出した復耶会の部下は 最後の見張りに呼び止められる

『何処へ行くつもりだ!』
『司量部令(サリャンブリョン)の執務室だ!』

やっとのことで見張りを交わしたところへ 今度は廉宗(ヨムジョン)が…!

同じようなやり取りをし 行こうとしたその時
廉宗(ヨムジョン)の剣が兵士の喉元へ…!
一瞬の隙を突き 月夜(ウォルヤ)が廉宗(ヨムジョン)を蹴り倒す!
同時に雪地(ソルチ)も脱出し 月夜(ウォルヤ)の後を追う!

金庾信(キム・ユシン)の取り調べを!と詰め寄る毗曇(ピダム)のもとへ
血相を変えた廉宗(ヨムジョン)が 事態を伝えに現れる!

『脱走だと?司量部(サリャンブ)から?!
司量部(サリャンブ)の中にも復耶会の密偵が?!!!』

※司量部(サリャンブ):王室の全ての部署を監察する部署

善徳(ソンドク)女王の方へ視線を向ける毗曇(ピダム)
もう考えている余裕は無かった 善徳(ソンドク)女王は言い放つ…!

『上将軍(サンジャングン)を…取り調べよ! 許可する!』

毗曇(ピダム)の執務室では
薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)の報告を受け 廉宗(ヨムジョン)が
庾信(ユシン)軍主軸の 武官たちへの監視も強化せよと命じていく

徐羅伐(ソラボル)付近に 復耶会の拠点があることも突き止められ
更に 宮殿内で暗躍する密偵の捜索も続けられていた
こうして復耶会の存在が明らかになり 官僚の間でも議論となる

『庾信(ユシン)公に反逆の企みがあったのか?』
『とても考えられません!』

庾信(ユシン)を深く信頼する龍春(ヨンチュン)公が反論する
しかし 伽耶出身であることが誰の胸にも気にかかる
するとチュジン公が 問題の核心は別にあると口を挟む

『力の均衡が崩れつつあるのです』
『それはどういう意味です?』
『庾信(ユシン)公と毗曇(ピダム)公は 陛下の右腕と左腕
今回は左腕が右腕に嚙みついた…ということです』
『では 毗曇(ピダム)公の方に企みがあると?』
『ハッハッハ… それは分かりませんな』

花郎(ファラン)だった者達も 今回のことで議論を重ねる

上将軍(サンジャングン)である庾信(ユシン)への信頼は厚いが
やはり伽耶出身という事実が あらぬ憶測を呼んでいく

『無実の証明は難しいだろうな』
『簡単には終わらないだろう』

報告を受けた金舒玄(キム・ソヒョン)は 2人が逃亡した以上
庾信(ユシン)も無事では済まないだろうと… 息子を按じるのだった

 

尋問室で向き合う毗曇(ピダム)と庾信(ユシン)
自らの潔白を強く訴える庾信(ユシン)に対し
潔白かどうかは重要ではないと話す毗曇(ピダム)

『そなたの意志とは関係なく そなたを持ち上げる勢力が動き出したのだ』
『勢力…だと?』

金春秋(キム・チュンチュ)が 善徳(ソンドク)女王と向き合っている
こちらでも“勢力”についての議論が…

『庾信(ユシン)は既に 1人の個人ではない
個人を信じるのと 勢力を信じるかは別問題だ
庾信(ユシン)が伽耶の筆頭として拘束されているのは
神国にも伽耶人にも良くない』

『ですが 伽耶人が庾信(ユシン)の基盤だという事実は変わりません
その伽耶人を 庾信(ユシン)が捨てることは無いでしょう』

毗曇(ピダム)は 庾信(ユシン)に1つの提案をする
月夜(ウォルヤ)の首を献上し 身の潔白を証明しろと…

『月夜(ウォルヤ)を殺しても復耶会は消滅しない!次の主導者が現れる!
それでは陛下の これまでの苦労が無駄になる!』
『自分の基盤を失いたくないだけでは?』
『毗曇(ピダム)!!!』
『陛下も私も そなたを失いたくないのだ 分かってくれ!
伽耶を捨て 自らの勢力を捨て また一から始めるんだ』

春秋(チュンチュ)の意見を聞く善徳(ソンドク)女王
問題は“力の均衡”だと話す春秋(チュンチュ)

これまで毗曇(ピダム)は 意図せず互いの勢力を牽制して来た
そこまでは 善徳(ソンドク)女王の思惑通りだったと…
しかし毗曇(ピダム)の背後に 美室(ミシル)の残党と
司量部令(サリャンブリョン)としての新勢力が加わった
ここで庾信(ユシン)が失脚したら…

『復耶会を残せ… ということか?』
『庾信(ユシン)とその勢力を潰すことは 今は得策ではありません』

尋問が終わった毗曇(ピダム)に 廉宗(ヨムジョン)が近づく
結局庾信(ユシン)は何も知らなかったと聞き 捕えるのは難しいだろうと話す

『捕えはしない』
『え?』

脱出に成功した月夜(ウォルヤ)は 秘密の砦にいた
雪地(ソルチ)が真剣な表情で 残った者の名簿を持って来る

『たとえ組織の9割が壊滅しようとも 1割が残ればいい』
『しかし庾信(ユシン)公が窮地に立たされます』
『だから逃亡したのだ』
『何ですと?』

 

復耶会を捕えるつもりは無いという毗曇(ピダム)
それは一体どういうことか…説明を求める廉宗(ヨムジョン)

月夜(ウォルヤ)が 庾信(ユシン)と復耶会を大きくしたのは
“伽耶出身の王”を擁立するためだと言い出す毗曇(ピダム)

『それが庾信(ユシン)…だと?』
『庾信(ユシン)は間違いなく断った筈 だが月夜(ウォルヤ)は承知しない
2人の間には確実に葛藤が生じていた
庾信(ユシン)はどこまでも折れず 伽耶人は月夜(ウォルヤ)を圧迫し続ける
だから逃亡したのだ 庾信(ユシン)を追い詰めるために…!』

金庾信(キム・ユシン)という男は 状況に応じて信念を変えたりしない
だからこそ極限まで追い詰める必要があったのだと話す毗曇(ピダム)
まさに月夜(ウォルヤ)の心を読んだかのような推理は続く…

まったく同じ話を 月夜(ウォルヤ)自身から聞く雪地(ソルチ)
もはや月夜(ウォルヤ)の考えは 雪地(ソルチ)の及ぶところではない

『庾信(ユシン)を逃亡させるのだ!』
『ですが…庾信(ユシン)公が応じるでしょうか』
『大事なことは 逃亡させてしまえば…
庾信(ユシン)はもう二度と戻れないということだ』

毗曇(ピダム)は 見事に月夜(ウォルヤ)の考えを読んでいた

『庾信(ユシン)の逃亡が 月夜(ウォルヤ)が庾信(ユシン)を得る唯一の方法だ
実に面白いのは… 月夜(ウォルヤ)の願いこそが
この私の願いでもあるということだ』

庾信(ユシン)がいる尋問室に 善徳(ソンドク)女王が現れ
兵を率い月夜(ウォルヤ)を討て!と命じる
伽耶を捨てるつもりは無いが 復耶会を認めることは出来ないと…!

たとえ月夜(ウォルヤ)を討っても やがてすぐに次の長が現れ
伽耶人は増々復耶会に同調し 一層躍起になると 繰り返し説得するが…
庾信(ユシン)の思いは 善徳(ソンドク)女王の心に届かない

『伽耶のことだけでなく自分のことも考えるべきです 私のことも…』

見つめられて… 庾信(ユシン)は一瞬の狼狽を見せた
しかし気を取り直し 地位の降格 財産没収 職位の剥奪
どんな処罰も受ける覚悟だと訴える
たとえこの身を捨てようと 伽耶だけは捨てるべきではないと…!

執務室で 独り考え込む善徳(ソンドク)女王
そこへ毗曇(ピダム)が現れ 混乱を鎮めるため誰かが責任を取らねばと話す
たとえ庾信(ユシン)が潔白であっても それを信じる者は少ないと

月夜(ウォルヤ)が 独断で復耶会を暗躍させた
庾信(ユシン)は何も知らされず 渦中に引き摺り込まれたのだ
なぜ庾信(ユシン)はそれに気づかぬのだと…

遠い目をして庾信(ユシン)への不満を漏らす善徳(ソンドク)女王
毗曇(ピダム)は悲し気な表情で ただ聞いている

薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)から 今後の任務を聞く廉宗(ヨムジョン)

まずは 金庾信(キム・ユシン)を移送するという情報を流す
これを知った密偵が 必ずその機会を利用する筈と…
薛原(ソルォン)が得意とする反間計である

※反間計:兵法三十六計の 密偵を逆に利用する策

そこへ 泥酔した夏宗(ハジョン)が現れる
両親を失って以来 酒浸りの日々を送っている
間もなく現れる毗曇(ピダム)を警戒し 兄をたしなめる宝宗(ポジョン)
毗曇(ピダム)の名が 余計に夏宗(ハジョン)を刺激し 声を荒げ
司量部(サリャンブ)は復耶会のおかげで力を得た…!と言い放つ

『いっそ復耶会に褒美を与えるべきでは?!』
『それくらいにしてください!』

そこへ毗曇(ピダム)が現れ 皆が起立して迎えるが
夏宗(ハジョン)は立つこともままならなかった
復耶会に褒美をという“冗談”混じりの話題を聞き
思いげけなく同意した毗曇(ピダム)の反応に緊張が走る
こういう時の毗曇(ピダム)には 何かしら考えがあるものだからである
思った通り 密偵の疑いがある者に移送を任せようと言い出す

『今はまだ復耶会に利用価値がある
金庾信(キム・ユシン)に 戻れない橋を渡らせましょう』

司量部(サリャンブ)が 庾信(ユシン)を移送するという情報を知り
すぐに怪しいと察知する春秋(チュンチュ)…!

移送中の金庾信(キム・ユシン)
並んで歩く兵士が 突然庾信(ユシン)の腕枷を外す
…と同時に 枯葉の中から復耶会の兵士が躍り出る!
予想していたとはいえ 宝宗(ポジョン)達にも緊張が走る!
遅れて現れた雪地(ソルチ)が(助けに来ました!)と耳打ちした…!

(月夜(ウォルヤ)は何処だ!)
(まずは逃げてください!)

雪地(ソルチ)と共に走り去る庾信(ユシン)を確認し
宝宗(ポジョン)はほくそ笑む

『待て!』

宮殿内を慌ただしく走り回る兵士達
それを呼び止める春秋(チュンチュ)
立ち止まったのはサンタクが うっかり
庾信(ユシン)が逃亡したと口を滑らせてしまう…!

善徳(ソンドク)女王のもとへ報告に来たのは竹方(チュクパン)だ
庾信(ユシン)を移送する者の中に 復耶会の密偵が3人も紛れていたと…!

『毗曇(ピダム)…』
『はい?』
『毗曇(ピダム)を呼ぶのです!!!』

ニヤリと笑いながら 毗曇(ピダム)は更なる命令を出している
庾信(ユシン)について 復耶会との関係を示す証拠は無かったが
雪地(ソルチ)と逃げたことで 疑いが確信に変わったのだ

『それで…例の件は進んでいますか?』
『美生(ミセン)公が 今晩にも会合を開くそうです』

廉宗(ヨムジョン)の商団内で 会合が開かれた
その会合において 今回の一連の流れについて説明する毗曇(ピダム)

上将軍(サンジャングン)金庾信(キム・ユシン)
下将軍(ハジャングン)月夜(ウォルヤ)
隊大監(テデガム)雪地(ソルチ)の3名が
兵部(ピョンブ)を拠点に暗躍していたと…!

これを機に 兵部(ピョンブ)の立て直しを図るべく
チュジン公に大役をお願いしたいと言い出し
新たなる兵部令(ピョンブリョン)として 陛下に推薦すると明言した

『明日の便殿会議では 事態の深刻さを陛下に訴えてください』

 

便殿会議
金庾信(キム・ユシン)は逆賊であり神国の敵だとの声が上がる
その父親である金舒玄(キム・ソヒョン)にも 兵部(ピョンブ)を任せられないと!
更には 官職に就かせた伽耶人も排除すべきだと…!

『陛下 ご決断を!』

今まさに 神国の敵に仕立て上げられようとしている金庾信(キム・ユシン)は
月夜(ウォルヤ)の胸ぐらを掴み殴りつけていた…!
止めに入った雪地(ソルチ)をも殴り倒す!

『庾信(ユシン) 我が子を抱いたことがあるなら
1人の命の重さが分かるだろう!』
『それが何だ!!!』
『伽耶人は60万人だ!私はその60万人の命を背負っている!
60万の民は 80年も迫害されてきた!』
『陛下が伽耶人に与えた恩恵を忘れたのか!』
『陛下もいつかは死ぬ!いつ心が変わるとも限らない!』

月夜(ウォルヤ)の目から ハラハラと涙がこぼれる

『他に解決策は無い 伽耶人の王が必要なのだ!』
『私にその気は無い!この気持ちは変わらない!』

今度は 庾信(ユシン)の目から涙がこぼれそうになる
雪地(ソルチ)が 懇願するように説得する
気持ちは変わらずとも 状況は変化すると…!

『そなたはもう 宮殿には戻れない
逃亡したことで逆賊となった 神国の敵となったのだ!』

『皆でもう一度宮殿に戻るのだ!相応の罰を受けやり直そう!』
『そんなことが出来るものか!!!』

我が息子の逃亡を知った金舒玄(キム・ソヒョン)は
もう二度と戻れないだろうと 酷く落胆していた
庾信(ユシン)がこんなことを仕出かす人間ではないことを
誰もが知っているとしても… 逆賊となってしまった事実は覆しようも無いのだ

『結局 伽耶はこうなる運命だったのか…』

庾信(ユシン)と共に命懸けで戦場を生き抜いて来た
高島(コド) 大風(テプン) 谷使欣(コクサフン)の思いは特別だった

便殿会議の決議を受け 毗曇(ピダム)が善徳(ソンドク)女王に
金庾信(キム・ユシン)を神国の敵として宣布すべきだと進言する

『即位式の前日 聖君について話されたことを憶えておられますか?』

それはまだ 司量部令(サリャンブリョン)となる以前の毗曇(ピダム)と
善徳(ソンドク)女王になる前の 徳曼(トンマン)との会話だった

側近には常に厳格に接し 民には慈愛の心で接するのが聖君だと

「では 側近に甘く民に厳しく接したら暴君ですね」
「どちらにも優しいだけでは無能な王だ」
「つまり… 私にも厳しく接するから覚悟しておけ…ということですね」

目の前の毗曇(ピダム)が何を言わんとしているのか
善徳(ソンドク)女王は 無表情でただ一点だけを見つめていた

『庾信(ユシン)公が側近中の側近だということは周知の事実
厳正な措置を執らねば 民も臣下も納得させることが出来ません』

『お前の言うことは大義そのものだ』
『ありがとうございます』
『しかし』

毗曇(ピダム)が顔を上げると
善徳(ソンドク)女王が真っすぐにこちらを見つめている

『お前の私利私欲とも合致している
庾信(ユシン)を牽制する貴族達の利益にも合致する どうだ?』
『……利益と大義が一致するのなら 何よりではありませんか?』

毗曇(ピダム)は 明らかに狼狽した
善徳(ソンドク)女王は その微かに見せた動揺を見逃さなかった

毗曇(ピダム)が不在の司量部(サリャンブ)では
美生(ミセン)が 毗曇(ピダム)の才覚を称え 形勢逆転だと大喜びしている
その持論に納得する薛原(ソルォン)と夏宗(ハジョン)

『やはり血は争えないな』

かつての花郎(ファラン)仲間が 善徳(ソンドク)女王の前に跪く
上将軍(サンジャングン)を反逆者にしてはならないという進言に
善徳(ソンドク)女王は 不快感をあらわにする…!

『下がりなさい!!!』

竹方(チュクパン)は 再び金春秋(キム・チュンチュ)のもとへ!
こんな形で逆賊となってしまった庾信(ユシン)が気の毒でならない
是非とも春秋(チュンチュ)公から 陛下に口添えを願いたいと…!

復耶会が暗躍していたことも 庾信(ユシン)が逃亡したことも事実
毗曇(ピダム)はただ“仕事”をしただけで これが罠だという確証も無い

『それでも無念です!庾信(ユシン)公はずる賢い策とは無縁のお方
あんなにも全てに対して真心を尽くして来たお方なのに…!』
『真心… 真心か…』
 

竹方(チュクパン)の訴えに ある閃きを見い出した春秋(チュンチュ)
その足ですぐに 善徳(ソンドク)女王に謁見すると
早速 今回の件について意見を求められた

数々の功績を残した庾信(ユシン)を 神国の敵と宣布すれば
大変な分裂と混乱が起きることは必至
臣下たちは毗曇(ピダム)に従っているのではない
庾信(ユシン)の成長を警戒しているのだという春秋(チュンチュ)

『解決策は?』
『ありません』

即答する春秋(チュンチュ)の方に向き直る善徳(ソンドク)女王

これは毗曇(ピダム)の金剛計だという春秋(チュンチュ)
最も硬い石 金剛石に例え 決して破れない策のことをいうのだと

※金剛石:ダイヤモンド

『どうしても打ち破れないと?』
『庾信(ユシン)ならば… 1つ希望はありますが
庾信(ユシン)も将来を計る人間ですので 難しいでしょう』
『それは何だ』

自分の中の狼狽を隠し切れなかった毗曇(ピダム)
ただ1つの希望があると聞いた 善徳(ソンドク)女王

(どうしても打ち破れないのだろうか)

再びの便殿会議において
善徳(ソンドク)女王が 皆に向かって口を開く

かつて智證(チジュン)王が 徳業日新 網羅四方という旗印を掲げ
真興(チヌン)大帝がその遺志を継ぎ 神国と伽耶は1つになった
それらを踏まえ 伽耶人を神国の民として受け入れようという思いで
差別を撤廃し 彼らの土地を彼らに返したのだと…

『しかし彼らは復耶会を養成し!神国に背き!!反逆の大罪を犯した!!!』

激高する善徳(ソンドク)女王
これまでに見たことの無いその怒りに 誰もが表情を変えた
今まさに金庾信(キム・ユシン)を 神国の敵として宣布しようとしたその時!

『陛下! 陛下ーーーっ!!!』

 

善徳(ソンドク)女王の言葉を遮り 閼川(アルチョン)が駆け込んで来る
たった今インガン殿に 金庾信(キム・ユシン)が戻って来たと…!!!

その知らせは 毗曇(ピダム)のもとへも…
廉宗(ヨムジョン)が 血相を変え飛び込んで来た!

宮殿に乗り込む金庾信(キム・ユシン)を取り囲む兵士達!
庾信(ユシン)を守るようにして 高島(コド)達が円陣を組み
威嚇しながらインガン殿に進んで行く!

庾信(ユシン)は跪き 善徳(ソンドク)女王に対し口上を述べ始めた

『陛下! 上将軍(サンジャングン)金庾信(キム・ユシン)は!
処罰を受ける前に!陛下にお目にかかりたく存じます!!!』

金春秋(キム・チュンチュ)と閼川(アルチョン)を従え
善徳(ソンドク)女王が その場に現れた
たった今 神国の敵として宣布しようとしていた
その金庾信(キム・ユシン)が目の前に…!

(どうしても打ち破れないのだろうか)

「庾信(ユシン)ならば… 1つ希望はありますが
庾信(ユシン)も将来を計る人間ですので 難しいでしょう」
「それは何だ」
「真心です 金庾信(キム・ユシン)の真心
後先を考えず 正しい道を突き進む真心です」

金春秋(キム・チュンチュ)は 竹方(チュクパン)の言葉を思い返す

「庾信(ユシン)公はずる賢い策とは無縁のお方
あんなにも全てに対して真心を尽くして来たお方なのに…!」

(策に惑わされず 正しい道を進もうとする真心)
(策が通用しない 決して揺らぐことの無い真心)

『陛下! 上将軍(サンジャングン)金庾信(キム・ユシン)!
処罰を受けるため戻って参りました! どうか罰をお与えください!』
『何をしておるのだ! すぐに庾信(ユシン)を捕えよ!!!』

善徳(ソンドク)女王の命令に 臣下達がうろたえる
絶望の表情の庾信(ユシン)に背を向け 立ち去る善徳(ソンドク)女王
しかしその目の奥には 安堵の色が…

(ありがとう… 庾信(ユシン)…!)


☝よろしければクリックお願いします