善徳女王 第12話 奇跡の生還 

金庾信(キム・ユシン)は 龍華香徒(ヨンファヒャンド)の旗を
閼川(アルチョン)に手渡し 必ず生還しろと激励する
自分たちの犠牲を 決して無駄にはするなと…!
もし生還したら 罪は問わないと約束する石品(ソクプム)であった

金庾信(キム・ユシン)を先頭に 龍華香徒(ヨンファヒャンド)の面々は
あの死闘を繰り広げた川へと戻って行く

 

徐羅伐(ソラボル)では

宝宗(ポジョン) 林宗(イムジョン) 龍春(ヨンチュン)公が
帰還する兵士たちを待ち続けている
そこへ石品(ソクプム)と青龍翼徒(チョンニョンイクト)の郎徒(ナンド)たちが!
続いて 閼川(アルチョン)と飛天之徒(ピチョンジド)の郎徒(ナンド)たちも現れた
宝宗(ポジョン)が駆けつける
林宗(イムジョン)が心配そうに覗き込み 他の者たちは?と聞く 

『彼らは 囮となって百済(ペクチェ)の追撃兵を引き付けてくれたんだ』
『おそらく… 全滅だろう』

※百済(ペクチェ):三国時代に朝鮮半島南西部にあった国

 

その時 遠くの方から叫び声が聞こえる
金庾信(キム・ユシン)と龍華香徒(ヨンファヒャンド)の郎徒(ナンド)たちが
息も絶え絶えになりながら 無事に生還を遂げたのだ…!

真っ先に駆けつけたのは閼川(アルチョン)
閼川(アルチョン)は 軍率に従い負傷した部下たちを斬り捨てた
しかしいざ 自分が負傷した時 自分を斬れと命じたが
閼川(アルチョン)を敬い慕う部下たちは 涙ながらに斬れないと…

その時 軍率をものともせず異を唱えたのは徳曼(トンマン)だった
死ぬために戦うんじゃない 生きるために 生き残るために戦うのだと
皆を説得し 囮になって死ぬのではなく 見事に戦って勝ったのである
また敵に囲まれた時には 潔く散ろうと言う閼川(アルチョン)を無視し
庾信(ユシン)から教わった 訓練通りの守りで危機を脱したのだった

軍率を無視した徳曼(トンマン)

容赦なく斬ろうとした石品(ソクプム)を 閼川(アルチョン)は自ら止めた
龍華香徒(ヨンファヒャンド)はもちろんのこと
飛天之徒(ピチョンジド)たちまでが 徳曼(トンマン)の命乞いをしたのだった

閼川(アルチョン)は 龍華香徒(ヨンファヒャンド)の旗を庾信(ユシン)に返す
見つめ合う2人の目には もう憎しみの蔑みも無かった
固い同志の絆が生まれた瞬間だった
手渡された旗を しっかりと握りしめる金庾信(キム・ユシン)
倒れ込んだまま朦朧とした状態で 旗を見上げる龍華香徒(ヨンファヒャンド)

どれくらいの時間が過ぎたのだろう
深い眠りから目覚めた金庾信(キム・ユシン)
目を開けると そこには共に戦った郎徒(ナンド)たちの顔があった
消息不明だった父 金舒玄(キム・ソヒョン)の顔もあった

『父上… 父上っ!!!』

 

金舒玄(キム・ソヒョン)によれば 矢を受け気絶していたところを
誰かが馬に乗せてくれて助かったのだという

『いやはや親子揃って強運ですな 我々だって生きて戻れたのだし
きっとこれは天の神様が守ってくれてるんです そうでしょう?!』

竹方(チュクパン)の言葉に皆が納得し あらためて無事を喜び合う
こうして新羅(シルラ)に生還した花郎(ファラン)と郎徒(ナンド)たちが
宮殿において 真平(チンピョン)王の前にひざまずく

まずは兵部令(ピョンブリョン) 薛原(ソルォン)の功績が称えられた
真興(チヌン)大帝が広げた領土を守り抜き 神国の威信を高めた褒美に
5000束の領地が与えられた

※兵部令(ピョンブリョン):新羅(シルラ)の軍の長官
※神国:新羅(シルラ)の別称

続いて金舒玄(キム・ソヒョン)が 最大の功労者として称えられ
弟監(チェガム)から大監(テガム)に昇格し
今後は大等(テドゥン)として 和白(ファベク)会議への参加を許された

※大等(テドゥン):新羅(シルラ)の中央貴族の核心層
※和白(ファベク)会議:新羅(シルラ)の貴族会議

金庾信(キム・ユシン)には 押梁州(アンニャンジュ)の領地が与えられ
あらためて速含(ソッカム)城奪還の功績を称える真平(チンピョン)王

薛原(ソルォン)をはじめとする美室(ミシル)の派閥の面々は
功績を称えられながらも 苦々しい表情を隠さない

一方 武芸道場では
天明(チョンミョン)王女の前に
花郎(ファラン)と その郎徒(ナンド)たちが整列している
風月主(プンウォルチュ)虎才(ホジェ)が 進行を取り仕切る

※花郎(ファラン):美しく文武両道に秀でた青年の精鋭集団
※風月主(プンウォルチュ):花郎(ファラン)の首長

囮部隊としての任務を完遂した飛天之徒(ピチョンジド)は その功績を称えられ
龍華香徒(ヨンファヒャンド)もまた 花郎(ファラン)の鑑(かがみ)と称賛され
全員を 風流黄巻(プンニュンファングォン)に名を記すと…!

※風流黄巻(プンニュンファングォン):花郎(ファラン)の名簿を指す名称

 

十花郎が 龍華香徒(ヨンファヒャンド)を花郎(ファラン)として認めるとし
その旗が高々と掲げられ これで名実ともに 一人前の花郎(ファラン)となった

天に拳を突き上げ 歓喜に沸く龍華香徒(ヨンファヒャンド)の郎徒(ナンド)たち
何年もの歳月 ただただ訓練に明け暮れていた
バカにされ なじられ 悔しさに泣いた日々
戦うことへの恐怖 生き残るための殺し合い 大切な仲間の死
その全てを乗り越えて掴んだ栄光だった

宿舎でくつろぐ青龍翼徒(チョンニョンイクト)の郎徒(ナンド)たち
そこへ 竹方(チュクパン)と高島(コド)が雪崩れ込むように入って来る
花郎(ファラン)に昇格したことを ひけらかしに来た2人

『いい気になりやがって!』

偉そうにする2人に 掴みかかろうとするサンタク
すると今度は谷使欣(コクサフン)が現れ 続いて大風(テプン)までもが…

『おいお前ら! 誰のおかげで生き延びられたのか忘れるな!』
『俺たちが囮にならなかったら…』

そこへ侍女がやって来る
食事が出来たので 食堂へ来るようにと呼びに来たのだ
今後は 花郎(ファラン)に昇格した龍華香徒(ヨンファヒャンド)にも
国から食事が支給されるため 食堂で食べられるのだ
そればかりか 祝勝会への参加も許されると 侍女が丁寧に案内した

『あんな奴らに教えてやらなくてもよかったのに!』
『何でよ! あの人たちのおかげで助かったんでしょ? 心が狭いわね!』

侍女にまで言いたいことを言われ 言葉も無いサンタク
郎徒(ナンド)たちが些細ないざこざを起こしている時
花郎(ファラン)の長たちは 宴を開いていた
金庾信(キム・ユシン)に あらためて感謝を伝え酒を注ぐ閼川(アルチョン)
それを見ていた林宗(イムジョン)が口を挟む

『2人が仲良くなってくれて嬉しいよ』

そこへ 酔いが回った石品(ソクプム)が ふらつきながら庾信(ユシン)に近づき
龍華香徒(ヨンファヒャンド)の昇格を 皮肉たっぷりに褒め称える
表情が硬くなる庾信(ユシン)の隣で 閼川(アルチョン)が和ませようとするが…

『おい 随分と親しくなったもんだな だから軍令に背いても見逃すのか?』
『何の話だ?』
『軍令に背いた?誰のことだ?』

閼川(アルチョン)は経緯を説明し 生還すれば罪に問わないと約束したことも話す

『ああ問題にはしないさ だからこうして祝ってるだろ?!
それにしても… 閼川(アルチョン)郎をここまで惹きつけるとは大したものだ
王女様の依怙贔屓で風流黄巻(プンニュンファングォン)にも名を連ねたしな!』

『黙れ!!!』

とうとう堪え切れず 声を荒げる庾信(ユシン)
自分のことなら何を言われても構わない
しかし 王女様を侮辱する発言は どうしても見逃すことは出来なかった

『だって事実じゃないか 王女様の…』
『黙れ!』

次に声を荒げたのは 宝宗(ポジョン)だった

『俺はただ事実を…』
『黙れと言った! 聞こえなかったのか?』

宝宗(ポジョン)の一喝で静まり返る宴席
上座から 末席の庾信(ユシン)の隣に移動する宝宗(ポジョン)

『私の盃を受けてほしい 死んだ兵士たちと 生き残った庾信(ユシン)郎に乾杯!』

そこへ 天明(チョンミョン)王女が現れ 庾信(ユシン)を執務室に招いた
生還してくれたことへの感謝と 何もしてやれなかったことを謝罪する
むしろ 死地にいる父子を利用し 美室(ミシル)と取引までしたと

『それでこそ花郎(ファラン)の主では?』
『無礼な…』
『すみません 私は…』
『いいの 初めて会った時も あなたは無礼だった』

天明(チョンミョン)の手には 庾信(ユシン)に渡そうとして渡せなかった飾りが…
そして庾信(ユシン)が退室した後も 飾りを握りしめたままだった
先程の 庾信(ユシン)の言葉を思い返す天明(チョンミョン)
無礼だと言いつつ 主と認めてもらえたことは 素直に嬉しかった

美室(ミシル)の執務室

死んだと思っていた金舒玄(キム・ソヒョン)が生還し さらに力を得た
今のうちに手を打つべきだという側近たち
しかし美室(ミシル)は何も答えない

『璽主(セジュ)!舒玄(ソヒョン)を何とかしませんと!』
『……それは 惜しいことです』
『せ 璽主(セジュ)?』

※璽主(セジュ):王様の印鑑(玉璽)を管理する立場の役職

『何度も視線を超え 生還するたびに力をつけていく姿
まるで以前の… 薛原(ソルォン)公のようではありませんか
世宗(セジョン)殿は今夜 祝勝会を開くべきですね』

『ああ 花郎(ファラン)と郎徒(ナンド)の宴席は郎門(ナンムン)に
将軍たちの宴席は 別室に用意している』

※郎門(ナンムン):花郎徒(ファランド)の居住空間

ひときわ不機嫌な様子で執務室を出る夏宗(ハジョン)
普段なら決して薛原(ソルォン)公の肩を持つことは無いが 今度ばかりは違う
あろうことか今後は和白(ファベク)会議でも議論しなければならない

『仕方ないことだ 陛下の意向であるし 宮主(クンジュ)も反対しなかった』
『始末するつもりなら そもそも徐羅伐(ソラボル)には来させなかった筈
もしや… はじめからその気は無かったんじゃ?』

※宮主:王に仕える後宮を表す称号

美室(ミシル)の夫である世宗(セジョン)は
最も美室(ミシル)のやり方を理解している人物である
しかし金舒玄(キム・ソヒョン)については 合点がいかないことだらけだった
その息子夏宗(ハジョン)に至っては その欠片さえも理解出来ていなかった

『そなたの母は あ奴を育てようとしているのかもしれぬ
他の飼い犬が脅威を感じる程に… 育てるつもりのようだ
飼い犬というものは 空腹が過ぎても満腹が過ぎても役に立たない』

互いに忠誠心を競わせる… という意味だが
夏宗(ハジョン)はまったく理解出来ず

『母上って… 犬を飼ってましたっけ?』

この考えの無い息子は…と 世宗(セジョン)は深いため息をつく
一方 薛原(ソルォン)とその息子宝宗(ポジョン)は…

いつになく冷静さを失っている薛原(ソルォン)
まさか自分に対する美室(ミシル)の絶対的信頼が 揺らぐ日が来るなんて…!

『天運ある者を集めるのが璽主(セジュ)のやり方だった!
戦場で奴を始末するべきだったのだ! もはや時機を逃がしてしまった…
あの舒玄(ソヒョン)は 私の脅威となった!!!』

夜になり 将軍たちを招いた祝勝会で 美室(ミシル)が発言する
自分に対する誉め言葉が並ぶのを聞いていられず
金舒玄(キム・ソヒョン)が 美室(ミシル)の言葉を遮った
ただ運が良かっただけだと謙遜する舒玄(ソヒョン)
美室(ミシル)は その天運を得る者こそが真の勝者だと…!

深夜 闇に紛れ指示を出しているのは 宝宗(ポジョン)だ

不穏な動きとは裏腹に 上機嫌なのは龍華香徒(ヨンファヒャンド)たち
竹方(チュクパン)が 侍女を相手に脈診をしている
自分の体調を次々と言い当てるので 侍女はすっかり感心している
侍女の手を撫でながら イヤらしい目つきの竹方(チュクパン)に
いよいよ我慢出来なくなったサンタクが水を差す
しかし 自分の体調までも言い当てられ 驚いて言葉も出ない
サンタクを黙らせると 再び侍女の方を向く竹方(チュクパン)

酔った郎徒(ナンド)たちを見ながら 徳曼(トンマン)が歩いていると
騒ぎから逃れるように 金庾信(キム・ユシン)が独りで座っている
徳曼(トンマン)は隣に座り 久しぶりに庾信(ユシン)とゆっくり話した

『2回も救われました』
『恩に着るか?』
『はい』
『私にすべてを捧げるか?』
『え?』

少々悪酔いしているような庾信(ユシン)
なぜ戦をするんだろう…と 気にせず正直な思いをぶつける徳曼(トンマン)

『高句麗(コグリョ)も 百済(ペクチェ)も 新羅(シルラ)も…
みんな傷つくだけなのに どうして戦ばかりするのですか?』

『消えたくないんだ みな生き残ろうとして戦う
私の祖父の国は そういう戦いの中で消えたのだ』

『伽耶(カヤ)…ですか
でも どの国が残って支配しようと民の苦しみは変わりません』

『戦場で言ってたな “希望が欲しい”と
民は希望を与えてくれない王には背を向ける
しかし希望を与える王には 同じ夢を見てついていく』

『花郎(ファラン)がお仕えする王女様は? 夢を与えてくれる方ですか?』

宴席から帰ろうとする美室(ミシル)の後ろから 血相を変えた美生(ミセン)が…!
何やら耳元でひそひそと話し始め 美室(ミシル)は みるみる表情が険しくなる

『何処なの!!! 教えなさい!』

庾信(ユシン)と徳曼(トンマン)は まだ飲み続けていた
徳曼(トンマン)が切り出したことで 王女の話題に…
万弩(マンノ)城での 徳曼(トンマン)の証言が救いとなり
庾信(ユシン)が徐羅伐(ソラボル)へ来るきっかけにもなったと

もっと話したかったのに 庾信(ユシン)は酔い潰れて寝てしまった
そこへ 尼僧の姿になった天明(チョンミョン)が現れる
庾信(ユシン)が眠っていることを確認し 人目につかない場所へ移動する
少しだけ目覚めた庾信(ユシン)が その後ろ姿を見たが またすぐに眠ってしまった

一方 酒宴から離れた場所で 薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)の父子は…

金舒玄(キム・ソヒョン)暗殺という 軽率な行動に出た息子の胸ぐらを掴み
今すぐに中止させろ!と怒鳴りつける

『殺して解決するなら この私がとっくに殺している!』

抜かりなく準備したと言い張る息子に
薛原(ソルォン)は さらに怒りを爆発させる

『負け続ける人生に慣れるしか道は無いと 何度言ったら分かるんだ!
もっと我慢強くならなければ 璽主(セジュ)にはお仕え出来ないのだぞ!』

そこへ 美生(ミセン)が通りかかり 父子は平静さを装う
その後ろには 美室(ミシル)が…

『母上』
『宝宗(ポジョン) 何処なのです? 愚かな真似を仕出かす場所は!!!』

同じ時 徳曼(トンマン)と天明(チョンミョン)は
久しぶりにゆっくり語らう時を過ごしていた
徳曼(トンマン)の生還を 心から喜ぶ天明(チョンミョン)

庾信(ユシン)との語らいの余韻を引き摺る徳曼(トンマン)は
天明(チョンミョン)に 王女様を知っているかと聞く

『王女様が 万弩(マンノ)城で僕を郎徒(ナンド)にしたそうなんだ
僕は 王女様のことをもっと知りたい 一体どんな方なんだろう』
『なぜ知りたいの?』
『庾信(ユシン)郎が 全てを捧げる人だよ 僕にもそうしろと…
王女様が 本当に忠誠を誓うべき人なのかどうか知りたいんだ
自分が何者なのかを知りたくて郎徒(ナンド)になったけど
その生き方を曲げても そして母さんを忘れてもいいくらいの

それほどの価値がある方なのか確かめたい』

側近と共に街を歩いている金舒玄(キム・ソヒョン)を待ち伏せてるのは
宝宗(ポジョン)の命を受けた郎徒(ナンド)だ
弓を構え 今にも矢を射る態勢の郎徒(ナンド)
そこへ 薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)が駆けつける!
自分が下した命ではあるが 今 金舒玄(キム・ソヒョン)を討たせるわけにはいかない

薛原(ソルォン)が射た矢により 郎徒(ナンド)の矢は大きく外れ
矢の衝撃で 金舒玄(キム・ソヒョン)は 落馬こそしたものの一命を取り留める
なぜ邪魔が入ったのか分からぬまま 郎徒(ナンド)は逃走する!

そこへ 舒玄(ソヒョン)の部下の追跡を阻む形で

薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)が現れる

『ちょうど不審者を追っているところだ ケガは?』
『こちらは大丈夫です どうぞ追跡を!』
『宝宗(ポジョン)は郎徒(ナンド)を招集しろ チョンガンも来るのだ!』

舒玄(ソヒョン)の側近も 追跡封じのため連れ去る薛原(ソルォン)
それを見送る舒玄(ソヒョン)の表情には 疑心の色が…

徳曼(トンマン)と別れた天明(チョンミョン)は 徳曼(トンマン)の言葉を思い返す
庾信(ユシン)が 自分に全てを捧げると言っていたことを…
1人になった徳曼(トンマン)は 庾信(ユシン)の言葉を思い返していた
「私に全てを捧げるか?」と問われたことを…

沼地で 行きも絶え絶えに倒れていた自分を背負ってくれた庾信(ユシン)
自分もまた 母を背負って砂漠を歩いたことがあった
流砂の中に消えていった 母の最期の姿を思い浮かべる徳曼(トンマン)だった

そこへ突然に 郎徒(ナンド)たちの騒ぎが聞こえてくる
誰かを追っているようだ
今まで天明(チョンミョン)と会っていた倉庫に
追われている様子の郎徒(ナンド)が駆け込んでくる!
宝宗(ポジョン)の命で 金舒玄(キム・ソヒョン)を狙っていたのに
いつの間にか追われる身となった郎徒(ナンド)は
咄嗟に徳曼(トンマン)の腕を掴み走り出す!

『何だよ 放せ!』

郎徒(ナンド)は 薛原(ソルォン)の前に徳曼(トンマン)を引き摺り出し
あろうことか 犯人を捕まえたと報告したのだ
全てを察した薛原(ソルォン)と宝宗(ポジョン)
何がどうなっているのか分からず 徳曼(トンマン)は唖然とするばかり

尼僧の姿で 騒ぎの中を無事に戻った天明(チョンミョン)は…

うまく戻れたと ホッとするが 待っていた侍女の表情は硬い
部屋から現れたのは 父真平(チンピョン)王と 母摩耶(マヤ)王妃だ!
父王の表情は怒りに満ちている それとは対照的に心配顔の摩耶(マヤ)王妃

こんな真夜中に 尼僧の格好で郎徒(ナンド)と会うなど言語道断!
いくら天明(チョンミョン)が古い友人だと説明しても 聞く耳を持たない
真平(チンピョン)王は 娘を按じるあまり外出禁止の命を下す

同じ時 徳曼(トンマン)は

金舒玄(キム・ソヒョン)を狙った郎徒(ナンド)として捕らわれていた
それを知った金庾信(キム・ユシン)は 有り得ないと訴えるが…
困惑するばかりの万明(マンミョン)夫人

『徳曼(トンマン)は?!』
『兵部(ピョンブ)に連行されたわ』

この報告を受けた真平(チンピョン)王は どうも腑に落ちないと感じる
どうやら美室(ミシル)も同じ考えのようだ

『陛下 私に考えがございます この件には黒幕がいるようです
郎徒(ナンド)が捕えられた近辺で 逃げていく尼僧が目撃されています』

さらには 王宮に出入りしているような法衣ではなかったことから
百済(ペクチェ)が送り込んだ密偵ではないかと言い出す
すまし顔の美室(ミシル)は 『じきに見つかるでしょう』とほくそ笑む

天明(チョンミョン)は 徳曼(トンマン)の濡れ衣を晴らせない
なぜなら 王女が尼僧の姿で郎徒(ナンド)とあっていたなどあってはならないからだ
徳曼(トンマン)の 身の潔白を嘆願すべく 金(キム)父子が薛原(ソルォン)を訪ねる
しかし薛原(ソルォン)は 取り調べ中だとして取り合わない

徳曼(トンマン)は 厳しい拷問を受けながら尋問されていた
しかし 憶えの無いことは話せないし 天明(チョンミョン)のことも話せない

金庾信(キム・ユシン)は必死に嘆願するが
そもそも詐欺師たちと一緒にいた男は信用できないという薛原(ソルォン)
 

一方 天明(チョンミョン)は
侍女に庾信(ユシン)への手紙を託したが それも王の側近に見つかり成す術が無い
天明(チョンミョン)は 失望のあまり倒れそうになる

拷問の過酷さで気絶している徳曼(トンマン)の前に 庾信(ユシン)が現れる
何度も名前を呼ばれ 顔を上げる徳曼(トンマン)

徳曼(トンマン)が疑われている件は大きく2つ
本当に金舒玄(キム・ソヒョン)を討とうとしたのか
そして本当に百済(ペクチェ)の密偵なのかどうか である
全てに『いいえ』と答える徳曼(トンマン)
しかし 質問が尼僧の話題になると
万弩(マンノ)城で出逢った友達としか答えられず…
それでも その尼僧に証明してもらわねば命は無いと諭され
徳曼(トンマン)は ハラハラと涙を流しながら 寺の名と尼僧の名を口にする

『チルチョン寺の… チウンという尼僧です』

徳曼(トンマン)が捕えられたことで
龍華香徒(ヨンファヒャンド)の郎徒(ナンド)たちは 動揺していた
しかし 徳曼(トンマン)が暗殺だの密偵だなど どうにも信じ難い

『実は 俺見ちゃったんだ』

唐突に驚くべきことを話し出す竹方(チュクパン)
すると 背後から庾信(ユシン)の声が聞こえ 震え上がる一同

竹方(チュクパン)によれば 遊花(ユファ)のサムウォルに治療を頼まれ
ちょうど倉庫に居合わせ 徳曼(トンマン)と尼僧を見たのだと言う

※遊花(ユファ):郎門(ナンムン)に属する女性 庶民から美女が選ばれた

郎徒(ナンド)が遊花(ユファ)に手を出せば罰せられる
それが怖くて言い出せなかった竹方(チュクパン)だった

『断髪前の尼僧のようで 2人は古い友人のようでした
徳曼(トンマン)は 王女様のことを知ってるかと聞いてました

外の尼僧が 王女様のことなど知ってる筈が無いのに』

庾信(ユシン)は 徳曼(トンマン)の話と竹方(チュクパン)の話
そして 自分が見た尼僧の後姿を繋げて考えてみた

『なんて愚かなことを…!』

何かを思いつき 一目散に走っていく庾信(ユシン)だったが
王女様には会えず 落胆して戻ると 竹方(チュクパン)が…
たとえ罰せられようと 自分が証言して徳曼(トンマン)を救うと言い出す

『仲間内の証言など信じてはもらえない』
『じゃあ徳曼(トンマン)はどうなるのですか?』
『死ぬだろう』
『えっ?!!!』

何でも 美室(ミシル)と薛原(ソルォン)が 直々に尋問するのだという
これまで その尋問に耐えられた者は1人もいないのだと
 

『庾信(ユシン)郎 もしもですよ
徳曼(トンマン)を捕えた郎徒(ナンド)が犯人で 尼僧が目撃者だとしたら?』
『……それだ!!!』

何かを思いついた庾信(ユシン)


しばらくして 庾信(ユシン)が尼僧を見つけたとの報告を受ける宝宗(ポジョン)
場所はウヌン寺 尼僧の名はムグァンだと
既に龍華香徒(ヨンファヒャンド)が向かっていると…!

尼僧に証言され 徳曼(トンマン)が無実になれば
最初に徳曼(トンマン)を犯人扱いした郎徒(ナンド)が疑われる
そうなれば 宝宗(ポジョン)の身にも危険が及ぶ

 

情報に従い 証人となる尼僧を始末しようと画策するが
狙いを定める郎徒(ナンド)の鼻先に 剣が突きつけられた…!

金庾信(キム・ユシン)だ
郎徒(ナンド)確保の報告が入ると 尼僧が頭巾を外す
何と 尼僧に扮していたのは竹方(チュクパン)だった

一方 外に出られない天明(チョンミョン)は…

声をかけても返事が無いので 王の側近が中に入る
天明(チョンミョン)は 密かに部屋を抜け出したようだ
侍女を怒鳴りつけ 兵士も怒鳴りつけ 早く捜せと喚きながら出て行く側近
すると衣装棚の扉が開き 天明(チョンミョン)が…!
いなくなったと思わせ 人を追い払ったのだ

間もなくして 美室(ミシル)が見守る中 徳曼(トンマン)の尋問が始まった
そこへ 金庾信(キム・ユシン)が郎徒(ナンド)を従えて現れる

『証言するという尼僧は?』
『いません しかし偽の尼僧の命を狙う者を捕えました』
『何っ?!』

今度は庾信(ユシン)が 郎徒(ナンド)の尋問をすることに

今回 郎徒(ナンド)が使用した矢は 金舒玄(キム・ソヒョン)を狙った物と同じ
しかもこの郎徒(ナンド)は大伽耶(テガヤ)の子孫
新羅(シルラ)に媚びを売り生き残った金(キム)一族を恨んでいた
『黒幕は誰だ!』と詰め寄る庾信(ユシン)

郎徒(ナンド)は ほんの一瞬 美室(ミシル)に視線を向け
庾信(ユシン)が持つ剣に身を任せ 自ら命を絶った
そこへ 天明(チョンミョン)王女が来たとの報告が…!

郎徒(ナンド)の亡骸を見て驚く天明(チョンミョン)
徳曼(トンマン)は もうろうとした意識の中で王女を見る

『お… 王女様…?!』

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