⚔ 第2話 新国王の即位 ⚔

 

『公主様 怖い夢でも?』

『チェ尚宮… 弟が…! 弟が火の中に!!!』

 

貞明(ジョンミョン)公主が悪夢にうなされている同じ時

永昌(ヨンチャン)大君が住む宮殿の警備兵が襲われた

 

一方 王の薬湯を毒見した大殿尚宮のキム・ゲシは 小箱からいつもの薬を飲んでいる

いつにもまして沈痛な表情のまま ついには吐血してしまうキム・ゲシ

『医者に診てもらえ』と声をかけたのは 大北(テブク)派領袖のイ・イチョム

 

『長い間 ご苦労さんだったな』

 

同じ時 光海(クァンヘ)君は 強硬に王への謁見を望み

尚膳(サンソン)の制止を振り切り王の枕元へ!

 

※大北(テブク)派:光海(クァンヘ)君を支持する勢力

※尚膳(サンソン):王の最側近

 

就寝中の宣祖(ソンジョ)は 布団の中で声も出せずもがき苦しんでいる…!

ハッとして枕元に伏し父王の顔を覗き込む光海(クァンヘ)!

 

『鐘を鳴らせ!御医(オイ)を呼べ!!早く!!!』

『お…御医(オイ)を呼べーーーっ!!!』

 

※御医(オイ):王室の主治医

 

叫びながら飛び出していく尚膳(サンソン)

内官や尚宮たちが大慌てで走り回る!

独りになった光海(クァンヘ)君は 周囲に聞こえる大声で王を励ますが…

その手は 水を欲しがる王の傍から水差しを遠ざけている

 

『気道が狭くなっているところへ水を飲めば 苦しみが増すばかり

どうぞ… 最期の時を受け入れてください』

 

『き…貴様ーーーっ!!!』

 

『いずれこんな時が来るのに なぜあんなにも私を憎んだのですか!

心から尽くしてきたのに… 一度も分かろうとはなさらなかった!

それは私が息子ではなく… “政敵”だったからでしょう!』

 

断末魔の状態で水差しへ手を伸ばす宣祖(ソンジョ)

その手を掴み 振り払う光海(クァンヘ)!

 

『気に食わなかったでしょうね 何しろ 王様より数段賢いのですから!

私は 王様とはまったく違う王になる! そう… この国の王は… 私なのですよ父上!』

 

宣祖(ソンジョ)は その後も激しくもがき 苦しみ続ける

枕元で 万が一にも快復しないことを祈りつつ 光海(クァンヘ)君は“その時”を待っていた

 

仁穆(インモク)王后が2人の子を伴い駆け付ける!

永昌(ヨンチャン)を世子にと願っていた王が亡くなれば 2人の子の命は風前の灯火だ

しかし… 王后の願い虚しく宣祖(ソンジョ)は絶命した

 

やがて葬儀の準備が進む中

仁穆(インモク)王后は玉璽を手にし 押し寄せる不安に打ち震えていた

そこへ王后の父キム・ジェナムが駆けつけ 大君(テグン)の宮殿に賊が侵入したと話す

王后も予測していたことではあったが 現実となると恐ろしくてたまらない

 

『世子は 子供たちをあんなにも可愛がっておられたのに…』

『いいえ王妃様!いざとなって本性を現したのですぞ!信じてはなりません!』

『ではどうしたら…!』

『その玉璽と王妃様の命令書が無ければ 世子は即位出来ません!』

 

支持する世子が王座に就くのも時間の問題と 上機嫌のイ・イチョム

その笑顔は不謹慎だと激怒する臨海(イメ)君

 

『しかし王様のご逝去は好都合!天の助けですぞ! そうは思いませんか?』

『ふん!天の助けなど借りなくても 昨夜鐘が鳴らなければ永昌(ヨンチャン)大君を…!』

『今… 何と仰いました? 臨海(イメ)君様!!!』

 

大君(テグン)の宮殿の警備兵を襲ったのは臨海(イメ)君の手の者だった

王の危篤を告げる鐘が鳴らなければ 確実に大君(テグン)を暗殺していたと…!

 

『何と軽率な!!!』

 

イ・イチョムでさえ愚かな事をと絶句するが 臨海(イメ)君は何が悪いのか理解出来ない

まずはキム・ゲシに報告し 事の重大さを話すイチョム!

 

『そなたと共に長い時をかけ やっと事を成したというのに…! いっそ王妃を!』

『いいえ!今は待つのです きっと世子様が動くはず ご自分なりのやり方でね』

 

報告を受けた光海(クァンヘ)君は 兄の愚行に激怒する

 

『玉璽を受け取らねば私は即位出来ないのに なぜ王妃様を刺激したのです!

王妃様がどう動くか… 私たちだってまだ命の保証は無いのですぞ!』

 

『私は世子様のために良かれと思い… 私たちは一心同体では?』

 

『もう結構! 私を想うなら何もなさらないでください!

兄上に出来ることなど 何一つないのです!!!』

 

高官たちは 王の急死に頭を悩ませていた

宣祖(ソンジョ)が 永昌(ヨンチャン)大君を新たな世子にと考えていたことは周知の事実

このまますんなりと 世子が即位出来るとは言い難かった

 

イ・ウォニクが危惧する通り 世子を廃し 永昌(ヨンチャン)大君を擁立する動きがある

濁小北(タクソブク)派の領袖ユ・ヨンギョンが 同志を募り事を成そうとしていた

 

※濁小北(タクソブク)派:永昌(ヨンチャン)大君を支持する勢力

 

イ・ドッキョンは領議政(ヨンイジョン)や礼曹判書(イェジョパンソ)を捜し回る!

 

※領議政(ヨンイジョン):議政府(ウイジョンブ)の最上級文官

※礼曹(イェジョ):儀礼や祭礼を司る官庁

※判書(パンソ):最上級文官

 

しかし それより早く世子に見つかり…

 

『領中枢府事(ヨンチュンチュブサ)! どうか頼まれてはくれぬか!

承政院(スンジョンウォン)に顔が利く者はそなただけだ』

 

※領中枢府事(ヨンチュンチュブサ):中枢府(チュンチュブ)の最高責任者

※承政院(スンジョンウォン):王命を管理する秘書機関

 

『確かに入れますが これは明らかに越権行為です!』

『分かってくれ! すべては争いを防ぐためなのだ 無駄な血を流したくない!

王座をかけて争わないよう… 頼まれてくれ!』

 

16年もの長きに渡り ひたすら耐えてきた光海(クァンヘ)君である

功を立てれば立てるほど 民に崇められる分だけ 王に疎まれ憎まれてきた

即位への思いには並々ならぬものがある

長い年月ずっと見守ってきたドッキョンである

必ず大君(テグン)の命を守ると誓わせ 協力を約束する…!

 

夜の庭園に 貞明(ジョンミョン)公主の姿があった

宮殿に戻ろうとして 光海(クァンヘ)は 幼い妹に声をかける

 

『兄上(オラボニ)!』

 

不安そうな表情は 大好きな兄上の出現でパッと明るくなった

しかし途端に鳴き声になり 父上が亡くなってから悪夢にうなされると訴える

 

『夢の中で弟が死んでしまうの… 兄上 ただの夢でしょう?弟が死ぬなんて… 』

『貞明(ジョンミョン) 心配は要らぬ この兄上が約束しよう 怖いことは夢の中だけだ』

 

貞明(ジョンミョン)が行方不明との報告を受け 半狂乱になる王妃

暗闇の向こうから 世子に手を引かれ現れた娘に 悲鳴のような叫び声を上げ駆け寄る

 

『これはどういうおつもりですか! 世子!!!』

『どういうつもりとは? まさか私が貞明(ジョンミョン)を手にかけるとでも?』

『とぼけるな世子!!!』

 

思わず声を荒げる王妃の父キム・ジェナム!

 

『言葉を慎め府院君(プウォングン)! 一体何をしていたのかこちらが聞きたい

なぜこの場に府院君(プウォングン)が?』

 

※府院君(プウォングン):王妃の実父の称号

 

永昌(ヨンチャン)大君を擁立しようとする王妃派の者たちは

昨夜 大君(テグン)を襲撃しようとしたのは世子だとの確信があった

しかしそこへ 昨夜の犯人を捕らえたと ユ・ヒブンが賊を伴い参上する!

 

大君(テグン)を襲ったのは兄臨海(イメ)君だったと 事前に知り得たことは幸いだった

光海(クァンヘ)君は 賊を捕えることで 王妃に対し 兄の命だけはと嘆願することが出来た

 

そして…

 

王妃の前に一通の文書を差し出す

それは宣祖(ソンジョ)王が 王位を世子に譲ると書き遺した遺書であった

承政院(スンジョンウォン)に保管されていた遺書は イ・ドッキョンの協力で世子の手に…

もはや 世子を廃し永昌(ヨンチャン)を新たな世子にという事実は闇の中である

 

『遺書があるのに! なぜ私と話す必要が?!』

『争いたくないのです! 幼い妹と弟を殺してまで王にはなりたくない!

私が新たな時代を築けるよう… どうか私の手をお取りください!』

 

世子がどんな時代を築くか…ではない いかにして我が子を守り抜くか

仁穆(インモク)王后の選択肢は ただひとつしか無かったのだ

 

世子が去り 苦悩する王妃のもとへ 貞明(ジョンミョン)公主が駆け込んでくる

 

『さっきは兄上(オラボニ)と喧嘩したのですか? …あ 世子様でした』

『兄上(オラボニ)と呼びたいの?』

『……』

『正直に言ってもいいのよ』

『出来れば兄上(オラボニ)と呼びたいです だって大好きなんですもの!』

 

その願いが叶わないことを どうやって娘に伝えたらよいのだろう

仁穆(インモク)王后は 純真な娘の思いに応える術がないことに心を傷めるのだった

それから早々に 王妃から命令書が下る

新たな国王の即位は 先王の逝去から5日後というのが慣例である

もしや世子を廃する命令書では?!との憶測が飛ぶ…!

 

あまりに早過ぎる王妃の命令書は 世子をも動揺させるが…

どんな結果であろうと 逃げるわけにはいかない光海(クァンヘ)君であった

しかし 周囲の危惧を覆す形で 世子へ王位を継承することが告げられる

 

思いがけない命令書の内容に 濁小北(タクソブク)派の者たちが落胆の悲鳴を上げる!

 

『王妃様これはいけません! 世子はダメです! 大君(テグン)を失ってしまいますぞ!』

『誰かその者を捕えよ!!!』

 

濁小北(タクソブク)派の領袖ユ・ヨンギョンが 絶叫しながら連行されていく

 

『世子は命令書を受け取るように!』

『しかし王妃様 昨夜先王が亡くなったばかりでは…』

『都承旨(トスンジ) 申し上げなさい』

 

※都承旨(トスンジ):承政院(スンジョンウォン)の長官

 

『過去 後継者を指名しないまま睿宗(イェジョン)大王がご逝去され

貞熹(ジョンヒ)王后が即日 成宗(ソンジョン)大王を封じた事例がございます』

 

王妃の命により 玉璽が光海(クァンヘ)君の手に渡される

これで我が子たちの命が守られるのかどうか… ただ祈るしかない王妃であった

 

光海(クァンヘ)が晴れて即位した頃 キム・ゲシは静かに都を去る

 

朝鮮第15代王になった光海(クァンヘ)君は 玉座から官僚たちを見下ろす

その後 イ・ドッキョンは 例の文書は伏せると言い出す

文書が示す王は 明らかに永昌(ヨンチャン)大君を指しているのに…

何とも納得がいかないホン・ヨン

 

『私の記憶が確かなら あの即身仏はナム・サゴでしょう 先王時代の予言者です』

『この文書は ナム・サゴの最後の神託だというのか?』

 

※神託:神のお告げ

 

この神託が公になれば 間違いなく政争が起こるというドッキョン

天文学と易経を学んだドッキョンだからこそ未来が見えると…

 

『人の意志があればこそ 天の定めを変えられる そうではありませんか?』

 

イ・ドッキョンは 少年の頃 偶然にも2人の予言者が語り合う場面に遭遇した

ひとりはナム・サゴ そしてもうひとりの予言者イ・ジハムがドッキョンに言ったのだ

これからこの国は暗黒の時代を迎え 多くの罪なき者の血が流されると…!

 

(お前はその時代を生きねばならぬ だが決して忘れるな

たとえ荒廃した世の中でも 必ず人は悪に打ち勝てるのだ!

人の意志は 天の定めをも変えられるのだぞ!)

 

イ・ドッキョンが ホン・ヨンの屋敷を後にすると 向こうからカン・ジュソンがやって来る

ジュソンは 2人の少年を伴っている

ひとりは息子のカン・イヌ もうひとりはホン・ヨンの息子ホン・ジュウォンだ

いかにも賢そうな2人の少年は 是非とも弟子になりたいと申し出る

 

『ハッハッハ 何て奴らだ?』

『小生意気な奴らですので 弟子にすれば必ず後悔しますよ ハッハハハ』

 

競うように勉学に励む2人だが とうとうカン・イヌが音を上げる

ジュウォンに負けたくなくて猛勉強してきたが もう限界だと大の字に寝転がった!

 

『どうせ官職には就けないさ!』

『何を言う!』

 

大人になったら駙馬(フバ)になると言い出すイヌ

 

『駙馬(フバ)ってなんだ?』

『公主の婿のことを駙馬(フバ)というんだ』

 

同じ時

 

チェ尚宮は 塞ぎ込む貞明(ジョンミョン)公主に付き添いながら困惑していた

最近は食欲もなく 体調まで崩してしまいそうだった

そしてとうとう… 気絶してしまう…!

 

にほんブログ村