第46話 星が落ちる
『余は皆の衷情を支えにして
民心を惑わす逆徒の頭目 ピダムと追従する輩を始末する!』
民心を惑わす逆徒の頭目 ピダムと追従する輩を始末する!』
善徳(ソンドク)女王の 決意の言葉に
今は逆徒に傾いた民心を取り戻すことが急務だというチュンチュ
今は逆徒に傾いた民心を取り戻すことが急務だというチュンチュ
『戦乱と飢えに苦しむ民が 腹を満たしてくれる者に心が傾くのは当然です』
王室の財物を施して民の飢えを満たし 鉄騎兵を呼び寄せ王宮防備を強化すれば
必ず勝算があるというチュンチュの言葉に 不安を隠せない女王
必ず勝算があるというチュンチュの言葉に 不安を隠せない女王
鉄騎兵が辺境を離れれば たちまち百済(ペクチェ)が攻撃してくるのではと…!
『百済(ペクチェ)王が私を徐羅伐(ソラボル)に帰したゆえ
此度の内乱が治まるまで 侵攻は控える筈です』
此度の内乱が治まるまで 侵攻は控える筈です』
これを受け 女王は 閼川(アルチョン)に朝廷を導くように命じ
ヨムジャンには 王室の財物で民の困窮を救えと命じるのだった
ヨムジャンには 王室の財物で民の困窮を救えと命じるのだった
そしてクムガンには ピダムに追従する者を捕えさせ 国法の厳しさを示せと…!
ピダムは チュンチュが生還したと聞き 荒れ狂っていた!
いくらチュンチュでも 民心を取り戻すことは不可能だというサジン
そして 既に貴族の決議で摂政に推挙されたと 余裕の進言をするウルチェ
いくらチュンチュでも 民心を取り戻すことは不可能だというサジン
そして 既に貴族の決議で摂政に推挙されたと 余裕の進言をするウルチェ
『何と呑気なのだ! 民心というのは気まぐれなもので
貴族の決議は 権力に迎合して容易に変わるものだ!!!』
貴族の決議は 権力に迎合して容易に変わるものだ!!!』
ピダムの剣幕に 途端に不安になる重臣たち
『大王が王座にいる限り チュンチュやユシンは私に服従しないだろう!
この手で大王を 王座から引き摺り下ろせねば革命を成功させることは出来ぬ!!!』
この手で大王を 王座から引き摺り下ろせねば革命を成功させることは出来ぬ!!!』
一方 母シノのもとへ舞い戻ったヨナは 必ず助けると涙ながらに誓っていた
しかしそこへピダムが現れ なぜボムミンを逃がしたのかと問い詰める!
しかしそこへピダムが現れ なぜボムミンを逃がしたのかと問い詰める!
『奴を逃がして お前の命があると思ったか!』
『私の望みは ピダム公が王座に就くことだけです』
『私の望みは ピダム公が王座に就くことだけです』
何度も自分を裏切ってきたヨナを 今さら信じるピダムではない
それでもヨナは 無表情のまま話を続ける
それでもヨナは 無表情のまま話を続ける
『ボムミンが処刑されていたら 単身で敵地に入り命を捨てたボムミンの死が
人々の哀れみを買い 民心を乱したことでしょう』
『その言葉を信じろと?!』
『信じようと信じまいと それが私の本心です』
人々の哀れみを買い 民心を乱したことでしょう』
『その言葉を信じろと?!』
『信じようと信じまいと それが私の本心です』
ヨナの願いは 自分の命よりも母シノの救命であった
それを承知しているピダムは 身の代を持って来いと命じる…!
それを承知しているピダムは 身の代を持って来いと命じる…!
善徳(ソンドク)女王は 自ら群衆の前に立った
武力で民を従わせるのではなく 心から過ちを謝罪したのである
一国の王が 民に向かって頭を下げる姿を見て 民の間にどよめきが起こる…!
武力で民を従わせるのではなく 心から過ちを謝罪したのである
一国の王が 民に向かって頭を下げる姿を見て 民の間にどよめきが起こる…!
群衆に交じり この光景を見ている将軍ケベク
『新羅(シルラ)の女王徳曼(トンマン)!
民の苦しみを思いやれなかった不徳を… 謝罪いたします!
私は今後 民を天のように恐れ 両親のように敬い
我が子のように愛おしむことを 天に誓います…!
民の苦しみを思いやれなかった不徳を… 謝罪いたします!
私は今後 民を天のように恐れ 両親のように敬い
我が子のように愛おしむことを 天に誓います…!
新羅(シルラ)の民よ! 君主として頼む!
天命と大義に背いたピダムら逆徒の策動に動揺せず!
王室と朝廷を信じて 従ってほしい!
国難を克服して国運を立て直す日 私は必ずやお前たちの衷情と苦労に報いよう!』
天命と大義に背いたピダムら逆徒の策動に動揺せず!
王室と朝廷を信じて 従ってほしい!
国難を克服して国運を立て直す日 私は必ずやお前たちの衷情と苦労に報いよう!』
大王陛下 万歳の声が轟いた…!
善徳(ソンドク)女王の心は 見事に民心を動かしたのである
この光景を見たケベクは まさに聖君だと感心する
善徳(ソンドク)女王の心は 見事に民心を動かしたのである
この光景を見たケベクは まさに聖君だと感心する
『三韓のどの君主が 己の失政を 民の目の前で頭を下げ謝罪出来ようか』
『民心が 女王側に戻ったようです』
『民心が 女王側に戻ったようです』
ケベクの隣でファシも 認めざるを得なかった
しかしケベクは これで決まったわけではないとつぶやく
たとえ聖君であっても 天運と天時を得られねば 王座から引き摺り下ろされてしまうと!
しかしケベクは これで決まったわけではないとつぶやく
たとえ聖君であっても 天運と天時を得られねば 王座から引き摺り下ろされてしまうと!
キム・チュンチュは 単身ピダムに会う
斬られるかもしれない危険を冒し なぜ会いに来たのかと問うピダム
斬られるかもしれない危険を冒し なぜ会いに来たのかと問うピダム
『飛鳥や泗沘(ザビ)城からも生きて戻ったのに 徐羅伐(ソラボル)で何を恐れようか』
いつかピダムがしたように チュンチュは ピダムの前に手を差し伸べた
そして こうして手を差し伸べれば王座に就けてくれるのかと問う…!
ピダムに追従する貴族らは 息を飲んでこれを見守っている
そして こうして手を差し伸べれば王座に就けてくれるのかと問う…!
ピダムに追従する貴族らは 息を飲んでこれを見守っている
『ピダム公は 国運のために私を王座に就け三韓統一を遂げると言った!
ピダム公! 今からでも私の手を握ってくれるか?!』
ピダム公! 今からでも私の手を握ってくれるか?!』
※三韓一統:新羅(シルラ)・高句麗(コグリョ)・百済(ペクチェ)の三国統一
ピダムの目の奥に 戸惑いと困惑の色が見て取れる
『この手を握らぬということは 己が王座に就くために
私を試しただけだったと認めるのだな?』
私を試しただけだったと認めるのだな?』
狼狽し始めるピダム
『ひとりの心も得られぬ者が 民心を得て天下を取れるのか?
今からでも遅くない 大王陛下に罪を告げ臣下の道理を果たせ!』
今からでも遅くない 大王陛下に罪を告げ臣下の道理を果たせ!』
帰ろうとするチュンチュを 引き留めるようにしてその手を取るピダム!
今ここで手を取らねば 貴族たちの心さえ繫ぎ止められない…!
今ここで手を取らねば 貴族たちの心さえ繫ぎ止められない…!
『チュンチュ公と共に 新羅(シルラ)再興と
三韓一統を遂げたい気持ちは 今でも変わらぬ!
王座に就くのは 貴公ではなくこの私だ!
貴公が私の手を取り 王座につけてくれるか?!』
三韓一統を遂げたい気持ちは 今でも変わらぬ!
王座に就くのは 貴公ではなくこの私だ!
貴公が私の手を取り 王座につけてくれるか?!』
『既に太子が決まったのに なぜ逆心を抱く?』
『スンマン宮主が即位すれば聖骨(ソンゴル)は尽き
再び後継者論議が高まり 国は滅びる!!!
その前に私の手で女王の治世を倒し!新しい世を築くのだ!!!』
再び後継者論議が高まり 国は滅びる!!!
その前に私の手で女王の治世を倒し!新しい世を築くのだ!!!』
※聖骨(ソンゴル):父母共に王族に属する者
『黙れ! なぜ大義名分を忘れ 権力に目が眩みつまらぬ弁明で反逆を企てる!』
『私が逆徒の頭目なら チュンチュ公は何だ!!!
王座に就けてやると言っても それを拒む理由は一体何だ!!!』
王座に就けてやると言っても それを拒む理由は一体何だ!!!』
キム・チュンチュは 王座が怖いとつぶやく
君主の間違った判断が 数万の民の命を奪い得る王座が怖いと…!
君主の間違った判断が 数万の民の命を奪い得る王座が怖いと…!
『民心を見極められず 偽りの忠言に惑わされ
国を滅ぼし得る君主の座を むやみに欲することは出来ぬ』
国を滅ぼし得る君主の座を むやみに欲することは出来ぬ』
ピダムは 呆れ返って笑い出す
これこそが 王座に就き何を成すべきかと考えるチュンチュと
王座に就くことだけを目的とするピダムの違いである
これこそが 王座に就き何を成すべきかと考えるチュンチュと
王座に就くことだけを目的とするピダムの違いである
『まこと失望した!
三韓一統を成す前に 死体の山が築かれ 血は川のように流れるだろう!
犠牲を恐れていて どうして大業を遂げ三韓の民をまとめられようか!』
三韓一統を成す前に 死体の山が築かれ 血は川のように流れるだろう!
犠牲を恐れていて どうして大業を遂げ三韓の民をまとめられようか!』
『命を捨てる苦痛に耐えることは容易い
だが 己の民ひとりの命も救えぬなら 恥辱のあまり君主になどはなれぬ
まことに革命を遂げたいなら 数万の命を代償にせず
たったひとりの民のため 己を犠牲にせねばならぬ
それが真に三韓の民をまとめる君主の資質だ!』
だが 己の民ひとりの命も救えぬなら 恥辱のあまり君主になどはなれぬ
まことに革命を遂げたいなら 数万の命を代償にせず
たったひとりの民のため 己を犠牲にせねばならぬ
それが真に三韓の民をまとめる君主の資質だ!』
『大義名分だけでは 民の飢えを満たすことは出来ぬ!
私は槍剣で高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)を討ち
新羅(シルラ)再興を遂げる君主になるのだ!』
私は槍剣で高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)を討ち
新羅(シルラ)再興を遂げる君主になるのだ!』
こうしてやって来たのも 鉄騎兵が到着するまでの時間稼ぎだと言い放つピダム!
『心配するな 私が大王に 王座から降りる時間を与えた!』
徐羅伐(ソラボル)では ボムミンが 明活山城に戻ると言い出していた
この大事な時に なぜ騒ぎを起こすのかと 弟インムンが怒鳴りつけるが…
この大事な時に なぜ騒ぎを起こすのかと 弟インムンが怒鳴りつけるが…
『私を逃がしたことで ヨナとシノが危ない!』
国が危ないという時に女の心配をしている兄が インムンには信じられない
サムグァンも インムン同様に戸惑っている…!
サムグァンも インムン同様に戸惑っている…!
『2人を救えねば どうして逆徒を始末し 大業を遂げられようか!
インムン 伯父上と父上には内緒にしてくれ』
インムン 伯父上と父上には内緒にしてくれ』
チョングァムは ボムミンと生死を共にすると言い出す…!
そこへ ナンスンとチャビも同行すると進み出た
シノは鬼門の仲間であり ヨナは 亡き主君ピヒョン郎の娘のような存在なのだ
そこへ ナンスンとチャビも同行すると進み出た
シノは鬼門の仲間であり ヨナは 亡き主君ピヒョン郎の娘のような存在なのだ
※鬼門:骨品制度に属さない野人の集団
常に 父チュンチュを失望させてきたボムミンである
しかし 人を慈しむ心で言えば 最も父の気質を受け継いでいるのかもしれない
多々未熟で 思慮に欠けるボムミンではあるが…
しかし 人を慈しむ心で言えば 最も父の気質を受け継いでいるのかもしれない
多々未熟で 思慮に欠けるボムミンではあるが…
出発しようと門前まで行くと そこにはヨナが…!
涙ながらに 明活山城に取り残された母を救いたいというヨナ
わざわざヨナが来なくても ボムミンはそのつもりだったのだが
ヨナの目的は それだけではないようだ
涙ながらに 明活山城に取り残された母を救いたいというヨナ
わざわざヨナが来なくても ボムミンはそのつもりだったのだが
ヨナの目的は それだけではないようだ
『ボムミン様 お父上に会わせてください…!』
わざわざやって来たヨナに チュンチュは一応の感謝を伝えるが
ピダムの側近であるヨナの心変わりなど 到底信じてはいない
ピダムの側近であるヨナの心変わりなど 到底信じてはいない
『今は卑しい妓女ですが 王室の血を引く身です
ピダムが陛下の治世を汚すのを 見てはおれません!
この卑しい命! 大王陛下と王室のためなら喜んで捧げられます』
ピダムが陛下の治世を汚すのを 見てはおれません!
この卑しい命! 大王陛下と王室のためなら喜んで捧げられます』
チュンチュは即答しなかった
王宮にとどまることになったヨナは ピダムの言葉を思い返す
王宮にとどまることになったヨナは ピダムの言葉を思い返す
「母親の命を救いたいのなら 大王の命を奪え
大王は王座を守るために お前の生母を無残に廃し 妹のお前を見捨てたのだ」
大王は王座を守るために お前の生母を無残に廃し 妹のお前を見捨てたのだ」
大王崩御の知らせが届けばシノを放免すると ピダムは言ったのだ
真夜中の明活山城に ナンスンとチャビの姿があった
音もなく見張り兵を倒していく2人…!
ナンスンの合図で ボムミンとチョングァムが合流する
音もなく見張り兵を倒していく2人…!
ナンスンの合図で ボムミンとチョングァムが合流する
男たちが潜入路を作り チャビが 瀕死のシノを救い出す…!
しかし 救出は容易なことではない
たちまち新たな兵が現れ その後方からピダムが現れた!
たちまち新たな兵が現れ その後方からピダムが現れた!
今すぐにでもピダムを成敗したいボムミンを制し
ナンスンは 逃げることが先決だと叫ぶ!
ナンスンは 逃げることが先決だと叫ぶ!
参謀ヨムジョンは ボムミンらの逃走経路に兵を忍ばせていた
瀕死のヨナを背負っての逃走は困難であり すぐに追いつかれてしまう…!
ここは自分にまかせて シノを安全な場所へというチャビ
瀕死のヨナを背負っての逃走は困難であり すぐに追いつかれてしまう…!
ここは自分にまかせて シノを安全な場所へというチャビ
『シノ 必ず生き延びて!
シノやナンスンと一緒に 鬼門にいた時が… 一番幸せだった!』
『チャビ…』
シノやナンスンと一緒に 鬼門にいた時が… 一番幸せだった!』
『チャビ…』
チャビは力の限り戦った
全員が逃げ延びるまで 決して倒れず ひとりとしてこの先へは行かせまいと!
全員が逃げ延びるまで 決して倒れず ひとりとしてこの先へは行かせまいと!
そして チャビは力尽きた
輝かしい鬼門の時代 ナンスンやシノと野山を駆け回った頃を思って…
輝かしい鬼門の時代 ナンスンやシノと野山を駆け回った頃を思って…
逃げ延びたボムミンたちの前に キム・ユシンが兵を率いて現れた
その隣で サムグァンが申し訳なさそうに立っている
おお事になりそうで 思わず父ユシンに報告してしまったようだ
その隣で サムグァンが申し訳なさそうに立っている
おお事になりそうで 思わず父ユシンに報告してしまったようだ
『なぜ無謀なことをする!』
ボムミンの行動のせいで ナンスンまでが 恥を知れと叱責を受けた
ひとまずは 背中に矢を受けたシノを 何とか救命しようと医者のもとへ運ぶ
そこでユシンは チャビがいないことに気づく…!
ひとまずは 背中に矢を受けたシノを 何とか救命しようと医者のもとへ運ぶ
そこでユシンは チャビがいないことに気づく…!
チャビが 皆を生かすための人柱になったことを知り 驚くユシン!
引き返してみると そこには 多くの敵兵の死体が転がり
チャビの変わり果てた姿もまた横たわっていた
『チャビーーーッ! しっかりしろ!!! チャビ…』
ナンスンは 半狂乱でチャビの亡骸を抱きしめる!
ユシンは 茫然として動かないチャビを見つめた
『鬼門の砦に戻ろう… シノと私と一緒に行こう チャビ…』
医者のもとへ担ぎ込まれたシノもまた 命の火が燃え尽きようとしていた
手の施しようがなく もはや延命のための方法はなかった
ヨナが泣き叫び シノにしがみつく…!
『ヨナ… お前が生き甲斐であり… 心の支えだった…
どうか… 過去の恨みのせいで… 泣かないでおくれ… 私は… 死んでからも…
お前を守ってやる…』
それが母として ヨナに遺す最期の言葉となった
一方 百済(ペクチェ)の王宮では
将軍ケベクが ウィジャ王に 徐羅伐(ソラボル)の状況を報告していた
『新羅(シルラ)女王の大義名分だけでは
民心を掴んだピダムの兵には勝てぬでしょう 大勢は決したかと』
民心を掴んだピダムの兵には勝てぬでしょう 大勢は決したかと』
『挙兵の成否は兵の数ではなく 天運天時 民心に懸かっている
まだ分からぬゆえ 徐羅伐(ソラボル)の状況を引き続き注視せよ』
新羅(シルラ)辺境の鉄騎兵が 徐羅伐(ソラボル)に向かったことは既に知れ渡り
重臣らは 辺境の城を奪還する絶好の機会だと進言する
将軍らは 我先にと先鋒を願い出た
『チュンチュとの約束を破り 辺境の城を攻めれば 自ら権威を貶めることになる』
そんなウィジャ王の心境を理解する重臣は 誰ひとりとしていなかった
たまりかねて将軍ケベクが…
『朝廷の臣僚らは なぜ大王陛下を煽り 百済(ペクチェ)の国格を失墜させようとする
信義を重んずる大王陛下の意思に従い 王室と朝廷の権威を高めることが
辺境の城の奪還より大事だと なぜ気づかぬのですか!』
ケベクは キム・チュンチュに対し聞いたことがある
三韓一統を成すには 高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)を倒さねばならないのに
なぜ 三韓の和平を唱えるのかと
「私の夢見る三韓一統は 武器を溶かして農具を作る戦乱のない世だ
新羅(シルラ)と百済(ペクチェ) 高句麗(コグリョ)が和親を結び
三韓の民が 互いの国を行きかい
中原と北方の 大国との交易で民が豊かになる そういう世だ」
信義と大義をもって全力で尽くせば 必ず成し得ると 目を輝かせて話すチュンチュ
ケベクにとってはただ 叶わぬ夢のような話であった
結局は 互いの王室を槍剣で倒せねば 三韓一統は成せぬと…!
「たとえ さように不幸な事態になろうと
ケベク将軍の剣は 敵を斬り勝つためではなく
戦乱で苦しむ三韓の民を 生かすための剣であるべきだ」
善徳(ソンドク)女王は シノとチャビの死を知り 明活山城への進軍を命じた
キム・ユシンを大将軍に任じ 自らも出征するという…!
そして閼川(アルチョン)には 王宮にて継承者であるスンマン宮主を守れと命じていく
スンマン宮主は なぜ病を押してまで自ら出征するのかと問う
『君主は 己の身より先に 国と民の安危を考えねばならぬ
余が出征し賊軍を討滅するゆえ 宮主は王宮に残り 余に代わって王の責務を果たせ』
明活山城
大王が自ら出征するという情報を得たピダムは これを笑い飛ばすが
鉄騎兵1万が加勢するという事態に 参謀ヨムジョンは 油断禁物だと進言する
ピダムとて 決して楽観視しているわけではない
『直ちに出征準備を整えよ!
私が自ら出征し 奴らの気勢を一気にくじいてやる!!!』
こうしてピダムは 善徳(ソンドク)女王の軍勢と 真っ向から対峙することとなる
『キム・ユシン! 今すぐ逆徒を始末し お前の忠誠心を示せ!』
『大王陛下の忠義深い戦士たちよ!
逆徒を1人残らず斬り 王室と朝廷を守れ!!!』
一方のピダムは 善徳(ソンドク)女王を“暴君”と称し 一歩も引かない…!
『私は今日 暴君と乱臣賊子を斬り!
革命の大義を高め! 新羅(シルラ)に新しい世を開いてみせよう!!!』
長い年月を 辺境の地で戦い抜いてきたピダムである
いかにキム・ユシンが相手であろうと 決して負けぬ気概で立ち向かう!
こうした内乱を目の当たりにして 善徳(ソンドク)女王は嘆く
『新羅(シルラ)の民が槍剣を向け合い 血を流すのを見ると 胸が苦しくてならぬ…!』
いささか劣勢に思われるユシンの軍勢は
キム・フムスンが鉄騎兵を率いて合流する時を 今か今かと待っていた
体調の悪化を押して出征していた善徳(ソンドク)女王は しばし陣営に戻り
その時まで休むことにしようという
この戦いを見届けたい一念の女王ではあるが もはや限界が近づいていたのだ
ピダムの勢力を 一網打尽にしようと奮戦するものの
参謀ヨムジョンの画策で 鉄騎兵の進軍は遅れていた…!
陣営で休息をとる善徳(ソンドク)女王を狙い ヨナが毒薬を仕込もうとしている!
今まさに命を狙われているとも知らず
善徳(ソンドク)女王は 進撃命令が性急過ぎたのだと悔やむ
そして 侍女が運んできた薬を飲んだ途端 苦しみだして意識を失うのだった!!!
ユシンの軍勢を退けたピダムは もはや勝利を確信していた
今度こそはユシンの首を斬り 戦勝を祝ってやると豪語する…!
そこへ 大王が危篤との知らせが届き
あとは王座に就くだけだと言い 気を引き締めた表情になるピダム
『大王が崩御したら王宮へ進撃し 奴らを残らず斬り 王座に就いてやる!!!』
参謀ヨムジョンと共に夜空を見上げ ピダムは 天の啓示があるはずだとつぶやく
そして 2人が見ている前で ひときわ大きな流星が…!
『ヨムジョン 見たか!
流星が月(ウォル)城に落ち 王宮から炎が上がっている…!』
『王宮に流星が落ちたゆえ 黄竜の命運が尽きたのかと』
『ならば大王が崩御したということか?!
天が徐羅伐(ソラボル)の民に 大王の死を知らせてくれた!
天運は 私にあるようだ
兵士らに告げよ! 夜が明けたら月(ウォル)城へ進撃し 私が王座に就く!!!
新羅(シルラ)に新しい世を開く 盛大な即位式を挙行する!!!』
『ユシン 大王陛下には謁見出来ぬ』
『まさか大王陛下が… そういうことなのか?! ピダムが天運を得たというのか!』
『ユシン 天運は天が与えるものだが その天運を変えるのは人だ!
ピダムの天運をくじき 国難を打開する!!!』
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