赤王冠 24話(最終話) 宇宙征服の日まで 赤王冠

 

『シン君に釣り合う人になりたかったのに なかなかうまくいかないね』
『そうだな お前とは釣り合わない 見つめられないくらい眩しかったよ
それに お前のおかげで本当の世界を知った』

 

『宇宙征服おめでとう』

 

『何だそれ?』
『自分の星を脱出して 他の星も見るようになったから
きっとすぐに 宇宙征服出来るわ 宇宙征服を目指して アジャ!』

 

映画E.T.のように 人差し指をくっつけ合う仲睦まじい2人
そこへ 放火犯が捕まったと 侍従長が報告する
晴れ晴れしい知らせのはずなのに 侍従長の表情は苦渋に満ちている

 

“宮廷で暮らしながら 空よりも大きな恩恵を受けて参りました
私に 太子殿下のお頼みを 断ることなど出来ませんでした
残りの人生 悔い改めながら生きて参ります”

 

これは ソ尚宮が書置きした手紙である
ずっと太皇太后付きの尚宮として仕えていたソ尚宮
しかし その忠誠心は ヘジョン宮に捧げられていた
我が身を犠牲にしてでもシンに罪を着せ ユルを皇帝にする覚悟なのだ

 

『すでに召喚され 捜査を受けております』

 

うちひしがれる皇帝と皇后 太皇太后は言葉もない
ヘミョン姫は 不審な点が多過ぎると切り出す

 

『シンが ソ尚宮に放火を依頼するなんて どう考えてもおかしいです』

 

確かに ソ尚宮は明らかにヘジョン宮側であると 皆が知っている
なのにシンが依頼するということは 考えにくいことであり
それに従うソ尚宮ではないと 誰もが思うところだった

 

『残りの人生 聖祖陛下が守り続けて来た皇室を
固く守ろうと決心したのに こんな目に遭うとは…』

 

そしてクァク尚宮が 皇太子妃の携帯の通話記録を消したと証言した
正体の知らない人物に 通話記録を消せば金を渡すとそそのかされたと…!

 

尚宮たちの口座には それぞれ金が振り込まれ
とくにソ尚宮には 振り込み人不明の相手から 巨額の金が送金されていた

刑事たちは 皇太子を犯人に仕立て上げようとする動きがあると推理する

 

『ソ尚宮の口座を調べた結果 何度か資金洗浄が行われていましたが
最初の送金者は 太子殿下だと分かりました』

 

犯人に仕立て上げられた可能性を疑いながら
これは 無視できない重要証拠となる
シンの犯人説を どうしても払拭出来ないのだった

 

『申し訳ありませんが ソ尚宮の証言が確保された以上
太子殿下の召喚は避けられません』

 

刑事が ただ1点 気になることを質問する

 

『最初に振り込まれたのは スイス銀行からでした
スイス中央銀行に 口座をお持ちですか?』

 

『はい』

 

シンは フッと笑みを浮かべる
何から何まで用意周到に 自分は着々と犯人にされるらしい

 

なりたくてなった皇太子の座ではない
そしていつかは手放そうと思っていた座なのに
こうした形で追われることもまた 受け入れなければならないシンだった

 

皇后は ヘジョン宮の仕業だと確信がありながら どうすることも出来ないと嘆く
たとえその身がどう裁かれようと 家族だけは信じて守っていこうという太皇太后
皇帝は これまで息子に対し 散々つらく当たってきたことを悔いる

 

『親は 子供が頼れる最後の砦だというのに
太子と皇太子妃には 何の力にもなってあげられなかった
太子をかばうどころか… 冷たく当たってばかりいました』

 

シンは 放火犯とされれば当然 廃位となるだろう
皇太子として 最後に決済する事項について 侍従長に聞く

 

『文化財庁の承認を得られたので 太子殿下のサインさえ頂ければ
すぐに 明善堂の工事を始められます』

 

チェギョンの様子を見て シンは サインは後にすることにして2人きりになる

 

『おい泣き虫 また泣いてるのか?』
『…泣いてないわよ』
『明日 出発だろ?』
『うん』

 

シンは 明日召喚され そして廃位となり 宮廷には住めなくなる
そんな姿を チェギョンに見せないで済むことに 安堵していた
そして チェギョンのいない宮廷には 少しも未練はない
ただチェギョンと離れなければならないことだけが つらかった

 

『嘘でも “やっぱり行きたくない” そう言ってくれよ』
『私だってそうしたい でも 犯した過ちへの罰は受ける
国民と そう約束したから守りたいの この国の皇太子妃として』
『分かった 俺も 潔白が証明されるまで諦めないよ この国の皇太子として』

 

シンは 皇太子として 最後にユルとフェンシングで戦う
その戦い方にユルは…

 

『攻撃する意思はないってことか?』
『お前が仕組んだことじゃない』
『…なぜそう思う?』
『俺が知ってるユルは 少なくとも背後から斬りつけるような人間じゃない』

 

シンは ユルに古ぼけた封筒を渡す

 

『これは?』
『知ってるのは 俺だけで十分だと思ってた
でも考えてみたら 俺たち3人の因縁に終止符を打つのは
俺じゃない お前なんだ

お前が追い出された後 皇太子の座に就かされて 楽なことばかりじゃなかった』

 

『立場が逆だったら 僕もそうだったろう』

 

それ以上の議論はせず シンは去って行く
ユルは 渡された封筒の中の古い手紙を読んだ
封筒には 手紙と一緒に 睦まじく並ぶ皇帝と母親が映し出されていた

 

一方 チェギョンは 皇后の部屋に呼ばれていた

 

明日 旅立つ皇太子妃に 皇后からの贈り物が用意されている
チェギョンを見つめる皇后のまなざしは これまでになく穏やかだった

 

『嫁が来たら渡そうと 作っておいたのです
皇太子妃に 何ひとつしてあげられず申し訳ない』

 

『いいんです 全部 私の責任ですので』

 

『私は大君の妻として宮廷に入りました
最初から皇太子妃ではなかったので 親迎礼のような教育を受けたこともないし
華々しい結婚式を挙げることも出来ませんでした
正直 皇太子妃が羨ましかった』

 

皇后が 初めてチェギョンに 心を割って話している
チェギョンはただ その話に聞き入った

 

『皇太子妃として宮廷に入った時 とても不安でした
一国の母としてやっていけるか 皇室に迷惑をかけはしないか
いつも不安が先立っていました
そのうち 自分に厳しくすることだけが 最善なのだと思うようになりました
しかし 皇太子妃を見て 自分自身を振り返ったのです
私は宮廷に合わせるために自分を捨てて来たのに
皇太子妃は最後まで 自分を守り続けていました
あの頃に戻れるなら勇気を出して 皇太子妃のように本音で生きてみたい』

 

『皇后様…』

 

『こんな思いをさせて申し訳ないが
澄んだ心を持つ皇太子妃なら 分かってくれるでしょう』

 

涙が頬をつたうチェギョンの手を 優しく握りしめる皇后

 

『皇太子妃 私をお母さんと呼びなさい』
『え?』
『姑も 母親には変わりないわ』
『…お母さん』

 

皇后が チェギョンを認めた瞬間である
チェギョンもまた 皇后の手をしっかりと握り返すのだった

 

チェギョンの居室に 両親と弟が招かれた
明日には韓国を発つ娘のために 手料理を持参した母親
チェギョンだけでなく 女官たちも一緒になって美味しく頬張る

 

『体に気をつけてね 車の運転も
私の心配はいらないわ 砂漠に追いやられても オアシスを見つけるから』
『大人になったわね 親の心配をするなんて

 

『家族が増えたから 最初はぎこちなかったけど だんだん情が沸いてきたの
寂しくてつらかったけど ここに来て良かったと思ってる
ここで習った多くのことを生かして より広い世界へと旅立つわ』

 

ヘジョン宮は 来たるべき息子の太子就任に向け 準備に余念がない
何ひとつ 今の皇太子に劣ることがあってはならないと…!
そんな母親の前に ユルが現れる
晴れやかな笑顔の母親を 冷たく睨み付け…

 

『田舎の百姓になってもいいくらい愛してた人と 何で別れたの?』
『……どうしてそんなことを聞くの?』

 

様子がおかしい息子に気づき ヘジョン宮は小さく動揺する
急にどうしたのかと手を差し伸べるヘジョン宮
しかしユルは 汚らわしい物に触られたかのように 荒々しく撥ね退けた…!

 

『父さんが可哀想だ!!!』
『何ですって?!』
『夫の夢を代わりに果たすために 頑張ってきたのかと思ってた!
その中身に 嘘と欲望がうごめいていたなんて…!』
『ユル…』
『自分が望むものを手に入れるために 父さんと僕を騙したんだ!
よりによって… なぜ陛下なんだ!!!』

 

息子がすべてを知ってしまったと分かり ヘジョン宮は 言い訳しようとするが
ユルは もう母親の言葉など聞こうとはしない

 

『悪縁は悪縁を呼ぶ…! やっとその意味が分かったよ
僕がチェギョンを愛した理由も… チェギョンを手に入れられない理由も!!!
すべては運命だったんだ』
『……』
『どうしてこんなに 僕の運命は悲しいんだ
どうしていつも奪われてばかりなんだ…! どうして!!!』

 

シンとチェギョンは 2人だけの最後の夜を 噛みしめるようにして過ごす
少し距離を置いて離れて座るシン
それがぎこちなくて笑い出すチェギョン

 

『そばにいたら 止めてしまうかもしれない
一生… ここで俺を待っててくれ そう言ってしまうかもしれない』

 

『私たちは 別の道を行くの
シン君は 必ず皇太子として ここに戻って来てね
この前言ったでしょ? シン君は誰よりも皇太子にふさわしい人だって
私は 世界でいちばん素敵な女性になる』

 

『シン・チェギョンは… 今まで出会った中で いちばん輝いてる人だった』

 

『シン君は 今まで出会った中で いちばん寂しい人だった
今日のシン君を 目に焼きつけないと』

 

『どうして?』
『これが本当の姿だから 温かくて正直で 純粋な瞳』

 

テラスはいつも 傷ついたチェギョンと ユルが語り合う場所だった
でも今夜のテラスは 愛し合うシンとチェギョンが 一緒に夜空を見上げる場所になる

 

やがて2人は 互いの居室に戻っていく

 

最悪の出会いから 闘いとも呼べる葛藤の日々があった
嫌い合っているうちは まだ良かったのかもしれない
思いを寄せるようになった2人は うまく気持ちを伝えられず
また 相手の心を信じることが出来ずに苦しんだ

今では 片時も離れたくないほどの愛で 互いを想い合えるようになったのだ

 

翌朝

 

召喚に応じるため 宮廷を出るシン
最後に 侍従長に対し 今後の皇室を頼むという

 

『しばらく戻れないかもしれません 父をよろしく頼みます
僕にとってそうであったように 皇帝陛下にもあなたが必要なはずです』

 

チェギョンは シンを見送らず 静かに庭園を眺めている
そんなチェギョンの前に ユルが現れ 自分のせいでこんなことになったと肩を落とす

 

『宮廷から 3つの宝物を持って旅立つわ 愛 友情 そして家族
ユル君との友情は 一生忘れない』

 

チェギョンは 皇后から評されたように
どんな状況にあっても ユルとの友情を否定しない
それは 高尚な信念でもなく ただチェギョンの生き方そのものなのだ

 

『もし生まれ変わって シンより先に僕に出会ったら 僕を好きになってくれるかい?』

 

ユルは まるで死にそうな表情で すがるような目で訊ねた
そんなユルの前に進み出て その手を取り 優しく見つめるチェギョン

 

『私たちもこれから大人になる
大人になれば きっと考え方も変わるわよ』

 

ユルに導かれ チェギョンは宮廷の門の外へ出る
するとそこには 刑事に連行され 車に乗り込もうとするシンの姿があった

 

『シン君… シン君…!』

 

車を追いかけ走り出すチェギョン!
曲がり角の向こうに 車が消えても チェギョンは追いかけることをやめなかった
しかしもう無理だと悟り 声を上げて泣き出してしまう

 

微かな叫びが聞こえた気がして 車を停めさせるシン
最後の最後で 狂おしく抱きしめ合う2人を ユルは茫然として見つめるのだった

 

シンが行ってしまい チェギョンは 太皇太后の前で旅立ちの挨拶をする
ひざまずきながら そのまま号泣してしまうチェギョン
太皇太后は いたたまれなくなり チェギョンをしっかりと抱きしめた

 

『ごめんなさいね あなたを放っておくようなことはしません!
私を信じなさい くれぐれも体には気をつけて』

 

その場にはガンヒョン ヒスン スニョンも同席し すすり泣いている
高校の大親友とも しばらくは会えなくなるのだ

 

『行きたくないです…! 離れたくないです…!!!』

 

その頃 ユルは ひとり会見場に向かっていた
皇室の悪縁を絶つためにはこうするしかないと すでに古い手紙も燃やしていた

 

『誰かが終わらせないと』

 

それは 皇室の誰の許可も得ず 母親にも無断で
ユルが独断で開いた記者会見であった

 

『僕が真実をお話しすることで 皇室の名誉と対面に泥を塗るかもしれません
しかし 僕ひとりが犯した罪で 皇室を冒涜しないでください』

 

『大君様が 直接火をつけられたのですか?放火の動機は?』

 

『皇太子イ・シンにかけられた 景福宮(キョンボックン)放火の嫌疑は
すべて僕 義聖(ウィソン)大君が計画したものです
皇太子に放火の嫌疑をかけ 廃位させるのが 僕の目的でした』

 

付き添うキム内官は 苦渋の表情で目を閉じる

 

『それでは 単独犯行ということですか? 共犯者はいなかったのですか?』
『僕ひとりでやりました』

 

あまりに衝撃的な告白の会見となり 記者たちの質問が乱れ飛ぶ
皇太子妃とのスキャンダルについても 厳しい質問がされた

 

『元々は許嫁でしたが 今のご気分は?』

 

『世の中には 自分の手でつかめる因縁もあれば
つかんではならない因縁もあります それに…
最初から 何でもない因縁もあります
皇太子妃と僕は… 最後のケースだと思います』

 

質問に答えながら ユルは チェギョンとの出会いのシーンを思い浮かべていた

 

制服のスカートの下に 校則違反のジャージを履いて 教師に追いかけられていた
自分の前で大胆にジャージを脱ぎ 預かっててと叫んで走り去っていったのだ
ある意味ではシンと同じく ユルは チェギョンと出会って違う世界を知ったのだった

 

『事件の全貌を明かされた動機は?現在の心境はいかがですか?』
『本当に ひとりで行われたんですか?』
『皇太子妃様との関係についてお聞かせください!』

 

質問の嵐の中 キム内官が 会見の終了を告げ ユルを退席させた

 

ヘジョン宮は シンがいなくなった東宮殿にいた
ここが 新たな息子の居室になるのだと 満足げに眺めている

 

そこへ ペク・チュンハが 非常事態だと報告し携帯を渡す
それは ユルが会見を開いたという内容の電話だった
ヘジョン宮が企てた すべてを 自分の罪として告白したと…!

 

何もかもが水の泡となったことを知り
ヘジョン宮は 大型トラックに向かって車を激走させた…

 

それから時が過ぎ

 

ようやく皇室に平和が戻った
皇室は 皇太子の無実が完全に証明されたことに歓喜していた

 

『今までの 数多い悲劇の原因は すべて私にあると思います
私が すべての責任を取るべきでしょう
この辺で 下野するのが道理だと思います』

 

つまりは 皇帝の座を退き 次の後継者に譲位するという意味である

 

『余生を 草花に隠れ 本を読みながら生きていきたいと思います
太子には言いたいことがたくさんあるが 何から話せばいいのか分からない
太子 皇帝に即位し 聖君となってくれ
今まで 太子を信じてあげられなかった私に 言う資格はないかもしれんが
お前の心が許す時 許しを請う機会を与えてほしい』

 

『今 僕を信じてくれています それ以上 望むことはありません
ただ僕が心を決める前に ひとことだけ言わせてください』

 

ユルは 奇跡的に命を取り留めた母親に寄り添っていた
車椅子に座り まるで心を失くしたかのように茫然としているヘジョン宮

 

『生まれ変わったんだね おめでとう
ひとりになるのが怖かったんだ 戻って来てくれてありがとう 母さん』

 

ヘジョン宮の頬を いく筋も涙が流れる

 

『あんなに多くの罪を犯して… 許されるのかしら
……ごめんなさいね』

 

ユルは 母親の車椅子を押し 宮廷からひっそりと出ることになった
ヘジョン宮は 誰かに会いはしないかと 怯えながら背を丸めている

 

(二度と 戻っては来れないでしょうね)
(宮廷以外の場所でも やって来れたじゃないか)
(風が吹いてるわ またやっていけるかしら?)
(つらかったけど幸せだった それで十分さ)

 

 

香港 マカオ

 

 

元気に自転車で疾走するチェギョンの姿があった
行きつけのマーケットでも 通りすがりの商店にも すっかり馴染んでいる
道行く人に声をかけられ 自分からも声をかけ 現在の住まいに戻る

 

一緒に暮らしているのはチェ尚宮だ
唯一 宮廷からチェギョンの世話係として ついて来たのだ

 

『ピーターのお店から パイを買ってきました
温かいうちに食べましょう』

 

同じテーブルで 並んでパイを頬張る2人
宮廷とは違い すっかり仲良くなったようだ

 

『博物館の学芸員って 本もたくさん読まなきゃならないし大変そうですね』
『ですから 一生懸命 頑張らないといけないのです』
『分かってますって』

 

ところで… と チェ尚宮の服装についてダメ出しをするチェギョン
ここはもう宮廷ではないと 香港に合ったファッションを提案する…!

 

『こ…皇室の尚宮が禁ずべき法度の中のひとつに 贅沢と虚栄心があります』
『それ以上言ったら失踪しちゃうから! うわぁ…セクシー!』

 

チェギョンの部屋には あの“シン君人形”とテディベアがある
楽しく過ごす日々も 夜になれば やはりシンを思い出し
皇室を懐かしむチェギョンだった

 

翌朝

 

いつものように自転車で出かけるチェギョンの前に…

 

『シン君だ!!!』

 

はるばる韓国から チェギョンに会いにやって来たシン
チェギョンは シンにも ピーターの店のパイを食べさせた

 

『みんなどうしてる?』
『お父様とお母様は 温陽行宮でお過ごしだ』
『お嬢様は? じゃなくて…女皇陛下は?』
『大変そうだけど 頑張ってるよ』
『やっぱり 姉さんに皇位を任せて良かったよ』

 

『そうだ ユル君から手紙が来たの 皇太后様と元気でやってるって
あれから 会ったりした?』
『……いや』

 

何事もなかったように ユルを話題にするチェギョン
それにはまだ シンはついていけないようだ

 

話題を変える2人
チェギョンは マカオの素晴らしさを楽しそうに話す

 

『やっぱりお前は 宮廷よりこういうとこがお似合いだ』

 

チェギョンは 宮廷では絶対にあり得ないこと 自ら勉強をしている
外国の文化を学ぶことが 楽しくてしょうがないという

 

『その国の精神を理解する 一番の近道なのよ
次はスペインに行こうと思って』
『スペイン?!』

 

スペインの文化について 目を輝かせて話すチェギョン
世界を回り続けて そしてデザインの勉強もしたいという

 

2人で食事をして 居所に戻ると そこには太皇太后が待っていた

 

『おばあちゃん! 元気だった?』
『いけません皇太子妃様! 太皇太后様とお呼びください!』

 

そう叱るチェ尚宮の格好は 尚宮とは思えない派手な格好だ

 

『チェ尚宮も… ずい分変わりましたね』
『私がコーディネイトしました』

 

チェギョンは 太皇太后からシンの近況を聞く
太子の座にいた頃より 奉仕活動に積極的だという

 

『人間というのは 自分が世界の中心にいる時は自分しか見えませんが
一歩引いてみると 自分以外の人々が よく見えるようになるものです
人間は 死ぬまで勉強し 成長するものなのでしょう』

 

疲れたから部屋に戻るという太皇太后
それは本当に疲れたのか 2人きりにさせてあげたいからなのか…
シンは チェギョンを外へ連れ出す
マカオの夜景を見つめる2人

 

『お前には 外の世界がお似合いだ』

 

『そう見える? 私も自分が皇太子妃だったなんて信じられない
今のように 自由に見て 感じて 呼吸してると 生きてるって感じがするの』

 

『いつまでこうして暮らすつもりだ?』

 

『分からない 今は何も考えないようにしてるの
出来れば 誰にも邪魔されずに いろいろなことをしてみたい
今やらないと 永遠にそんな機会なさそうだし』

 

『じゃあ 俺と一緒にいたいなんて気持ちは これっぽっちも無いんだな
俺より 自分の夢が大事なんだろ?』

 

『バカね そういう意味じゃないわよ! 何も変わってないんだから!
帰ろう チェ尚宮さんに怒られちゃう!』

 

毎夜 チェギョンが “シン君人形”を抱いて塞ぎ込んでいることを シンは知らない

 

シンは 異国で伸び伸び暮らしているチェギョンが
もう皇太子ではなくなった自分を 愛していないのではないかと不安だった

 

そんな孫を 明るく励ます太皇太后
チェギョンの目を見れば 今でもシンを愛していることは確かだと
太皇太后は シンの前にペアリングが入った小箱を渡す

 

『聖祖陛下が 私を愛する証しとしてくださったものです
2人が心から愛し合ったその時に 渡すつもりでいました 今がその時です』

 

いくら亡き夫の約束とはいえ まったく知らない相手同士を結婚させ
責任を感じていた太皇太后であった
だからこそ 2人が心から愛し合ってくれて嬉しいのだ

 

『自分を信じ 相手を信じなさい』

 

その言葉に勇気を得て シンは チェギョンにプロポーズする
ペアリングを渡し 誠意を尽くして…

 

『本当の結婚をしよう』
『本当の結婚?』
『大人たちが決めた結婚に従うんじゃなく
俺が一生を共にしたいと思った女性に 思いを込めてプロポーズしてるんだ』

 

『……考えさせて』
『明日発つんだ』

 

翌朝

 

テーブルの上に 渡したはずの指輪の小箱が置かれていた
やはり 思いは伝わらなかったと シンは小箱を取り
誰もいない居所から出ようと車に乗る

 

すると… 助手席にはチェギョンが!

 

綺麗にメイクアップしたチェギョンが 空港まで見送るという
その前に スカーフがキツイから取ってとせがむ
言われるままにスカーフをはずすと… その胸元には2つのリングが揺れている!
途端に表情が晴れやかになり 笑顔を浮かべるシン

 

『私も シン君がいないと退屈よ』

 

教会で 太皇太后とチェ尚宮だけが参列する 質素な結婚式が行われた
神様の前で愛を誓い 教会の前で チェ尚宮が記念写真を撮る
チェギョンは 手に持っているブーケを チェ尚宮に渡した

 

『そろそろ結婚しないと』

 

その時…!
うっ…!と呻き声を上げ 口元をおさえるチェギョン
その様子を見て 慌ててシンが駆け寄る!
太皇太后には すぐに原因が分かった

 

『もしかして… 懐妊?!』
『えぇっ?!!!』

 

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