赤王冠 21話 皇太子妃、最大のピンチ?! 赤王冠

 

『愛しています 心から愛しています』
『今のひと言で 世間の噂と報道による誤解と疑問は 一気に消え去りましたね』

 

和やかなうちに会見が終了しそうになり 焦るチェギョンは
アナウンサーの締めの挨拶を遮り 話したいことがあると切り出す…!

 

『あの… 離婚をしようと…』
『そうなんです 僕たちは離婚まで考えていました』

 

“離婚”という言葉が出て アナウンサーは凍りつき スタジオにも緊張が走る
シンは 震えているチェギョンの手を握り これ以上は話すなと合図を送った

 

『昨夜 そこまで話すのはやめよう そう話し合ったのですが

 


皇太子妃は正直なので 結局明かしてしまいましたね』

 

終わろうとした会見を ここで終わらせるわけにはいかなくなった
アナウンサーは その経緯を聞かざるを得ない

 

『僕たちは 自分たちの意志で結婚したのではありません』
『新聞に書かれていた通り 政略結婚をなされたということですか?』
『そのような表現は 適当ではありませんね』

 

不躾になるアナウンサーの言葉を 要所で訂正しながら言葉を選ぶシン

 

『僕たちの結婚は 政治的であったり 政略的な意図等とはまったく関係ありません
もしそういう意図があったら 財界や政界の家筋の娘さんと結婚していたでしょう』

 

聖祖陛下と 皇太子妃の祖父が交わした約束であると話すと
アナウンサーは その事実を隠してでも守らなければならない結婚だったのかと聞く

 

『皇帝は嘘をつかないと言います
一般の人たちの約束と 皇帝の約束は違いますので』

 

これに対し 皇太子イ・シンは 強く拒絶したことを正直に話す
そして 当時思いを寄せていた女性に プロポーズまでしたのだと…!

何もかも否定するのではなく シンは 噂の部分について認め真実を明かした

 

『しかし最終的に決めたのは… 結婚を最終的に決めたのは僕たちでした
世の中には 一般常識では理解できないことが沢山あります
僕の周囲の変化が その1つです 今ではお祖父さまに感謝しています
それに… 僕よりも辛い決断をしてくれた皇太子妃にも 心から感謝しています』

 

いつもと違うシンが 国民の観ている前で心のうちを語り始める
チェギョンは しっかりと手を握られたまま その言葉を聞く

 

『平凡な女子高生が たった1人で入宮し味わった
寂しさと苦痛を みなさんも考えてみてください
自由に外出もできず 皇室で監視される生活を受け入れ
僕の妻になってくれた彼女を…
そんな生活が辛くて 涙を流すこともありますが
泣かないように 必死に耐えようとしてくれる 彼女を愛するようになりました

 

もう一度 よく考えてみてください
完璧ではありませんが 幼いながらも
自分の運命を受け止め 最善を尽くしている皇太子妃の愛を
皆さんも 感じられるはずです
あとは皆さんが 僕たちを認めてくださるのを待つだけです』

 

スタジオ観覧の一般人の中には すすり泣いている人もいる
思わず拍手が巻き起こり 感動のうちに会見は終了となった

 

しかし 皇室の反応はまったく違う…!

 

全国民の前で “離婚”を口にした皇太子妃チェギョンに対し 激怒する皇帝
咄嗟にシンが取り繕ったのは明らかなのだ!

 

『国民たちに模範を示すべき皇室が離婚だなんて!
皇太子妃のひと言が 今まで保って来た皇室の対面と権威を地に落としました!
こんなことで 国民の尊敬と愛を受けられると思いますか!!!』

 

とてもその場にはいられず 部屋に下がる皇帝
いつもは 寛大な笑顔で笑い飛ばす チェギョンの大いなる理解者太皇太后も
ショックのあまり 声を荒げて皇室に嵐が吹き荒れると嘆いた…!

 

チェギョンは 押し寄せるマスコミを掻き分け シンに守られながら車に乗り込む

 

(一体 何を考えてるの?
この手の温もりのように あれはシン君の本心なの?
それとも その笑顔と同じで ただのパフォーマンス?)

 

『今日のことだけど…』
『黙れ!』

 

車内のテレビ電話から 侍従長の声が響く
すべての予定をキャンセルし 皇室に戻れとの皇帝陛下からの命令だと…!

 

チェギョンにとっては 離婚を切り出せなかっただけのことだが
シンには どれだけの大問題なのか十分に分かっていた

 

皇帝と皇后の前に シンと並んで座らされ
身も凍るほどの皇帝の怒りを目の当たりにし チェギョンはようやく事の重大さに気づく
皇帝は 完全にチェギョンを無視し 皇太子であるシンを烈火のごとく叱りつけた

 

『皇室の歴史上 公式席上で
離婚という言葉が言及されたのは 今回が初めてだ! 一体 何があったんだ!
なぜ離婚なんて言葉を口にしたのだ!!!』

 

それは自分に対しての怒りの言葉なのに 皇帝はシンを叱りつけている
恐怖に怯えながらも チェギョンは必死に謝罪の言葉を繰り返す
しかしシンは 決して謝罪はせず 悪びれることもなく 平然と言い返す…!

 

『宮廷に似つかわしくない彼女を 皇太子妃として迎えた
皇室にも少なからず 責任があると思います』
『何だと?!!!』
『未だに皇室の言語規範さえも 習得できていない皇太子妃には
厳格な訓育と 礼節教育が必要だと思います』

 

悪いことをしていないのに 反省する必要などないと言い切るシン
ただ 罰として2人で謹慎すると…

 

勝手に席を立ったシンは チェギョンの手を引っ張り 退室する
反論などせず 怒りが解けるまで謝り続けるべきだというチェギョン!

 

『だったら俺に謝れよ』
『え?』
『今まで生きてきて 今日ほど切実にお願いをしたことはない
今日ほど卑屈に振る舞ったことも 今日ほど惨めになったことも…』
『……』
『お願いしたはずだ 今日だけは我慢してくれって
時機が来たら 必ず自由にするからって…!』
『シン君…』
『信じてたのに… 結局お前はその軽い口で! 俺の願いを踏みにじったんだ…!』

 

チェギョンは 自分がどれほど不安な気持ちだったか
離婚という言葉が これほどまでに皇室の権威を貶めるとも知らなかったと
必死に 自分の苦しかった心情を訴える

 

自分には決して言ってくれなかった愛の言葉を 会見の席で言われても
それをどうしても信じることが出来なかったチェギョンだった

 

『お前は 俺の気持ちなんて眼中になかったんだ
あれは本心だった…! 生まれて初めて言った言葉だ!!!
皇太子としてじゃなく 1人の男として初めてした告白を…
お前は簡単に踏みにじったんだ

 

『そんなつもりじゃなかったの…!』

 

『いつからか お前が勝手に 心の殻を破って入ってきた
俺の心をかき乱して! 俺の中の隠れた自分を引き出したんだ
心臓が壊れたみたいだった いつもお前が気になって… 会いたくて…!
お前といると 笑いたくなるんだ バカみたいに…
俺をこんなふうにしておいて… お前は離婚を持ち出した!
裏切ったのは俺じゃない お前だ …それを忘れるな』

 

今さらながらに チェギョンは 自分のしたことの重大さに気づき泣き崩れる
そして 自分が失ったものの重さと シンをどれだけ傷つけたかということも…

 

皇帝は 息子である皇太子に絶望し切っていた
このような息子と手を取り合い 皇室廃止論者と闘うことは出来ないと…!

 

『太子の資質の是非を問われても 仕方ないでしょう』

 

それに比べて… とユルの方が太子としての資質があると言われ
皇后は 今も皇太后に未練があるのかと問う…!

 

『だから義聖(ウィソン)大君を 皇帝にしたいのですか?!』
『皇后!!!』
『そうはさせません!
もし陛下がそういうおつもりなら 私は全力で太子を守ります!!!』

 

会見の席の皇太子の機転で 大事に至らなかったとはいえ
皇太子妃の口から“離婚”という言葉が出たことは 少なからず問題である
チェギョンの実家でも 家族が深刻な表情で心配している
皇室内で チェギョンが無事なはずがないことは 庶民でも想像はつく

 

『チェギョンを うちに連れてこよう! このままじゃチェギョンが死んじまうよ!』

 

そうは言ってみたものの 出来ないことは重々承知している両親だった
父親は 廃妃されるのではないかと心配になる…!

 

『チェギョン 廃妃にならないよね?』

 

ガンヒョンたちも 時代劇ドラマで知った情報で チェギョンの心配をしていた
高校生にも分かるほど 会見でのチェギョンは“ヤバかった”のだ

 

『不吉な予感がするわ』
『その上 例の不倫相手が見つかったら… あぁ…! 考えるだけでも恐ろしい!』
『可哀想なチェギョン…』

 

皇室では 皇太后ヘジョン宮が焦っていた
ガンヒョンたちでも考えるように 離婚を口にした皇太子妃の密会の相手が
今一度 関心の的になる可能性が大きいのである
その相手がユルだと知れれば 将来の皇帝の座が遠のいてしまう…!

 

『皇太后様 恐縮ですが 皇帝陛下が皇太子妃様をお許しになれば
宮廷の人間たちは 誰も今回の問題に関して言及出来なくなるでしょう』

 

『そうね あの子を利用するのも手ね』

 

シンは チェギョンに対し心を閉ざしてしまった
愛しているという言葉が本心だと知り 心から謝るチェギョンだったが
愛しているからこそ傷つき チェギョンを許すとは言えないシンだった

 

居室でひとり 思い出の画像を見つめるシン
それは 初めて2人だけで出かけた場所のチェギョンの姿
朝陽を見ようと出かけた時の 笑顔いっぱいのチェギョンの姿だった…

 

チェギョンもまた ひとりぼっちで考え込む

 

(まさかここまで大ごとになるなんて
入宮してからいつも笑ってたけど 本当はいつも不安でつらかった
見透かされないように笑ってただけ
可愛い洋服を着ても 他人の服を着てるみたいだった
皇太子妃という服は 私には重過ぎて 脱いで逃げたかったの
自分のことしか頭になかった
シンの気持ちなんて考えてなかった
ごめんね… 本当にごめん ごめんね… ごめんね…)

 

その夜は 皇室の誰もが 眠れぬ夜を過ごしていた

 

皇帝は 落ち着きを取り戻し 皇太子妃チェギョンが なぜ離婚を口にしたのか
何かを隠しているのではないかと考え始めていた
ヘジョン宮が ユルの名前が出ないように手配し
車を盗難した男は 証言を撤回していた
ならば やはり皇太子妃は実父といたのか…
やはり真実が別にあるようだと 皇后に意見を求める

 

『陛下は 私を愛していますか?
今日の会見で 太子が皇太子妃に対する愛を告白した時 心が締め付けられました
皇太子妃が 離婚を持ち出した直後にもかかわらず
ショックを見せず 皇太子妃への愛情を一生懸命に語る太子に 感動を覚えました
皇太子妃が羨ましいです
夫の愛情がある限り 世界中の妻たちは
どんな苦痛も どんな難関も乗り越えていける そう思いました』

 

皇后の話を聞きながら 皇帝は 何ひとつ答えることが出来なかった
どう思うかと聞きながら 心からの言葉に返事すらしない夫
皇后は このような寂しい年月を もうどれだけ過ごしてきただろうか…

 

翌朝

 

皇太子妃を呼び 朝刊を見せる皇后
やはりチェギョンが離婚を口にしたことは 大きな見出しになっている

 

〈離婚まで考えていた?! 皇太子の愛は真実なのか?〉

 

今さらこの事態を どう謝っても取り消せることではない
皇后は もっとも核心的な質問を チェギョンにぶつける
義聖(ウィソン)大君の気持ちは だいたい想像がつくとして
チェギョン自身が 義聖(ウィソン)大君をどう思うっているのか… である

 

『義聖(ウィソン)大君には 友達以上の感情を持ったことはありません』
『信じていいのですね?』
『はい 皇后様』

 

チェギョンが居室に戻ると 今度は 皇太后が呼んでいるという
ヘジョン宮は チェギョンを優しく見つめ 語りかける

 

『あなたはまだ 幼いのですよ 失敗をして当然です』
『……』
『これからどうするつもりですか?』

 

そう問われても チェギョンはどうしたらいいのか分からない
そんなチェギョンに 心から皇帝の許しを得たいのであれば
少々過激な方法を用いるしかないというヘジョン宮

 

『席藁待罪(ソッコテジェ)をご存知ですか?』

 

いくら頑なな陛下でも この作法によって謝罪の意を示せば許すだろうと
何も知らないチェギョンに 手を差し伸べる態度を見せた

 

翌朝

 

体調が優れないにもかかわらず 皇室の公式行事に参列するという皇帝は
皇太子に対して 参席しなくてもよいと言い渡す…!
侍従長が 慌てて取り成そうとする

 

『陛下 今日の 王立博物館の行事は 海外文化に対する皇室の意志を示す
皇室の公式行事でございます 太子殿下の同行が必須でございます』

 

『だから同行させたくないのだ!
今日の行事は 駐韓大使たちに 我々の優れた文化をお伝えする場なのです
文化財に対する見識が高い 義聖(ウィソン)大君を連れて行きます』

 

『お父様がそうおっしゃるなら 仕方ありませんね』

 

皇后は 皇帝の仕打ちも 皇太子の反応も どちらにも腹を立てる
息子である皇太子を差し置き 皇位継承2位の王子を同行させるとは
それがどれほど皇太子を貶めるものか 皇帝が知らないはずはない

 

そこへ義聖(ウィソン)大君ユルが現れ 皇帝が優しく呼び入れる
皇后は あまりにいたたまれなくて目を背けた

 

『皇太子もいらっしゃったのですね』
『文化財に対する見識が高いそうで』
『大君としての役目を果たしているだけです』

 

シンの皮肉に短く答え ユルはそれ以上は無視し 皇帝と話を進める

 

『朝鮮時代末期に搬出された 朝鮮王朝実録の返還を
東京大学に要求してはいかがでしょう』
『それは意味のある素晴らしいことだ!』
『では 許可をいただきましたので進行します』

 

義聖(ウィソン)大君付きの内官が
今日のこの日のために どれだけ義聖(ウィソン)大君が努力したかを報告する

 

『義聖(ウィソン)大君がいるから 私も心強い』
『恐縮でございます』

 

シンは 薄ら笑いを浮かべ 2人の会話を聞いている
この皇帝の ユルに対する特別な感情には ヘジョン宮への想いが込められている
過去のすべてを知ってしまったシンには そうとしか思えないのだった

 

我が息子が まるでそこにいないかのように無視し 行こうとする皇帝
すると途中の部屋で ムシロの上に正座し 謝罪の言葉を繰り返す皇太子妃が…!

 

『こんなことをしても こぼれた水は元に戻らん!
チェ尚宮 皇太子妃を連れて行きなさい!』

 

宮廷服に身を包んだチェギョンは それでも必死に謝罪を繰り返す
ユルは そんなチェギョンを 苦痛の表情で見つめる
あのスキャンダルの相手がユルだったことを 皇帝は知らない
チェギョンの告白は 皇后が極秘にすることを命じ
ヘジョン宮とシンも 知っていながら口外することはあり得ないのだ

 

『ひとつ聞こう 離婚を持ち出したのは 新聞で噂されている若い男のせいなのか?』

 

皇帝の背後で ユルは 苦渋に満ちた表情になる

席藁待罪(ソッコテジェ)をしながら その質問には口を閉ざすチェギョン

 

『もうひとつ聞こう 一緒にいたのは本当に府院君だったのか?』

 

“府院君”とは 皇太子妃の父親を指す
チェギョンは それにもこたえることが出来なかった
2つの質問に答えられなかったことで 皇帝をさらに激怒させてしまう
どちらの質問も 答えないことで認めた形になってしまったのだ

 

チェギョンの真っ直ぐな心が この皇室ではまったく受け入れられない
皇帝とユルが立ち去り シンが チェギョンの前に…

 

『立て お前がそんなことをしても 許して下さるようなお方じゃない』
『でも心から謝れば 許して下さるはずよ』
『まだ分からないのか!今の状況じゃお前の気持なんか通じないよ!
意地を張るのはやめろ!!!』
『ほっといて 私が何とかするわ』
『…好きにしろ!』

 

チェギョンは 席藁待罪(ソッコテジェ)をやめようとはしなかった
朝鮮時代には この許しを請う儀式で命を落とす者もある
飲まず食わずで ひたすら許しを請うという過酷な謝罪の礼法なのだ

 

シンは 明善堂に行く
侍従長から 歴史的重要な場所なので修繕は慎重に という皇帝からの命令を聞く

 

『明善堂は元来 王朝実録を保管していた書庫でしたが
実録を移してからは 殿閣として使われておりました』

 

『ここで… お父様と皇太后様のラブレターを見つけました』

 

仰天する侍従長!
今やその過去を知るのは 侍従長と皇后 そして当事者の2人である
聖祖陛下の命令により ヘジョン宮に国外追放を言い渡したのは侍従長なのだ

 

『あなたは 知っていたんでしょう? 書かれていた内容は事実なのですか?
ここは2人の 密会の場所だったんですね
やっとお父様の 義聖(ウィソン)大君への態度が理解できました』

 

『殿下…!』

 

『こんな因縁 僕に耐えられるでしょうか』
『私がお仕えしている殿下は…
試練を耐え抜く強い心を持ち合わせていらっしゃいます!』

 

公式行事の場から チェギョンを気にし ユルは 何度もソ尚宮に状況を確認する
席藁待罪(ソッコテジェ)を続けるチェギョンのもとには 太皇太后が来ていた
こんなことをする必要はないと説得するが チェギョンはどうしても許しを請いたかった

 

『皇帝はあの晩 誰といたのかを気にされています
そのために誤解をなさっているのです 正直におっしゃりなさい
誤解を解く道は それしかありません』

 

『ごめんなさい… 申し上げられません』

 

いつも助けてもらうだけの自分が 今度はユルを守りたいという気持ちと
皇后から固く口止めされているということがあって チェギョンは話せないのだ
話せば きっとまた大きな問題に発展していくと…

 

『こんなに皇太子妃を可愛がっているのに…
どうしても言えない事情があるのですね』

 

チェギョンの律義さが 今度は太皇太后の 思いやりの気持ちを損ねていく
結局は何をしても チェギョンは皇室の中で異端の存在になっていくのだ

 

公式行事の移動の車中で ユルは 皇太子妃を許してほしいと切り出したが
いかに皇帝に気に入られているとはいえ 大君が口を挟むことではなかった

 

行事を終えて戻ると チェギョンは憔悴しきった状態で
それでも 席藁待罪(ソッコテジェ)をやめようとはしない
それを見た皇帝は ますます不愉快になっていく…!

 

『これではまるで 私が嫁をいびっているみたいだ これ以上私を困らせるな!!!
そんなことをしても 犯した罪は消えやしない!』

 

『陛下!
もう少しだけ 太子に優しく接していただけませんか?』

 

チェギョンは ひたすらにお許しくださいと繰り返すことをやめ
皇帝に対し お願いとも意見ともとれる言い方で切り出した

 

『太子殿下は 陛下からいただいた万年筆を大事に 使わずにとってあるんです
何も言わなくても 何食わぬ顔をしていても
時にはお父様を恐れ 時には懐かしんでいます 愛情に飢えているんです
態度に表さなくとも 本当はお父様を愛しているんです』

 

『皇太子妃は… 私が太子を憎んでいるとでも?!
この世に 自分の子供を憎む親などいない!
子供の過ちを正すのが 父親の役目なんだ』

 

自分の過ちを許してほしい以上に シンを救いたかった
チェギョンは どうしても伝わらない思いに涙する

 

長い長い一日を宮廷で過ごしたシンは フェンシングの稽古をしていた
ユルは 席藁待罪(ソッコテジェ)を続けるチェギョンを どうして止めないのか
一度もチェギョンのところに行こうとしないシンを責め立てる…!

 

『あのまま倒れてもいいのか?』
『大袈裟に言うなよ お前には関係ないことだ』

 

『最低な奴だな もう少し君が優しい人間だったら 僕は彼女を諦めたかもしれない
でも君のような自分勝手で冷たい男に チェギョンは渡せない』

 

『いいかげんにしろよ 法度を破るにも限度がある』
『法度? 君の武器は法度だもんな 法度のせいで僕はすべてを奪われたんだ』
『そんなに法度が嫌なら 失くせばいいだろ』
『ああ そうするよ 僕が壊して見せる!』

 

『何だって? 何を考えてるか分からないけど
兄嫁を愛する汚い因縁なんて もうたくさんだ…!
これ以上宮廷に 汚い因縁を作るな』

 

シンの言葉にカッとなり ユルは その喉元に剣を突き付ける…!!!

 

『それ以上冒涜するな!!!
今度 僕の愛を侮辱したら ただじゃおかない!!!』

 

ユルは チェギョンへの愛を侮辱されたと激怒する
しかし チェギョンはシンの妻なのだ
そして“汚い因縁”という言葉が指すのは 自分とチェギョンのことではなく
皇帝と母親のことだなどとは 思いもしないユルだった

 

皇帝は なぜ皇太子妃が離婚を口にしたのか そのことを考え始めていた

 

『太子は 一度も皇太子妃のもとを訪れていないようです
皇后は これをどう思いますか?』

 

つまり 離婚を口にせざるを得ないほどの何かが 夫婦の間にあると…
皇太子妃が密会した相手を 必ず捜し出すようにと命じるのであった
その相手がユルだと知っている皇后は この命令にどう答えるべきか狼狽する

 

そして焦りだす皇太后
チェギョンを許すよう 皇帝にお願いしてという息子の頼みなど 聞いてはいられない
相手がユルだと知れれば もうユルの皇帝としての未来は消滅してしまうのだ

 

『もしかして… 母さんがやらせたのか?!』
『仕方なかったの あなたのためにやったことよ』

 

シンを責めている場合ではなかった
自分を皇帝にするために ヒョリンを利用し 今度はチェギョンを…!
ユルは 軽蔑の視線を母親に向け 退室する

 

すべては息子のためなのに…
夫を失い 皇后になれなかったヘジョン宮は 息子だけが希望だった
なのにその息子には 皇太子妃という愛する存在ができた
きっとすぐに自分を取り戻すといって励ますソ尚宮だが
ヘジョン宮には そうは思えない

 

『あまりにも似過ぎているわ』

 

尚宮らの説得にも応じず 翌日も チェギョンの席藁待罪(ソッコテジェ)は続く
悲痛な表情で 太皇太后に助けを求める義聖(ウィソン)大君ユル
まるで自らの妻のように 悲し気な顔のユルを見て 太皇太后は一同を招集する…!

 

皇帝と皇后 皇太后ヘジョン宮と義聖(ウィソン)大君ユル
そして ヘミョン姫と皇太子シンが 太皇太后の前に着席する
皇太子妃チェギョンを除く 皇室の“家族”が揃った

 

『幼い皇太子妃を なぜ放っておくのですか?』
『申し訳ありません』

 

皇帝の代わりに皇后が謝罪の言葉を口にし
皇太后が そろそろ許してあげてほしいと願い出た

 

『皇太子妃は 嘘をつきました
その上 一緒にいた相手を未だに明かそうとしません
潔白ならば 堂々と明かしてもいいでしょう!』

 

『僕と… 一緒にいたんです』

 

ユルのひと言で 一同は驚愕の表情になる…!
知っていた皇后と皇太后 そしてシンも
知らなかった太皇太后とヘミョン姫 そして皇帝も
しかしユルは もう黙ってはいられなかった

 

『あの日 皇太子妃が出て行かれるのを見て ついて行ったんです』

 

このことが何を意味するのか… 皇帝は 信頼し切っていただけにショックを隠せない
ヘジョン宮は 母親としてユルが取った行動の真意を代弁する
ただ友達として 落ち込んでいる皇太子妃を慰めただけだと

 

しかしその取りなしには耳を貸さず ユルを厳しく追及する皇帝!

 

『今からする質問に 正直に答えなさい!

もしや… 皇太子妃を想っているのか?!』

 

『はい 皇太子妃を… 心から愛しています』

 

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