赤王冠 19話 皇太子妃が家出? 赤王冠

 

『あんたって最低!』

 

あんなに仲睦まじかったシンとチェギョンは 最悪の関係に逆戻りしてしまった
シンは 何とか関係を修復しようと チェギョンの居住スペースに立ち入る

 

『出てって 今はシンの顔 見たくない』
『俺が悪かったよ 一瞬 理性を失ったんだ あの状況なら男は誰でも…
分かってくれよ 俺を怒らせたくないだろ?』
『……』
『反省してるんだ 許してくれよ』
『出てって…』
『いいかげんにしろよ 謝ってるじゃないか!』

 

『シン君は自分勝手過ぎる いつも世界の中心は自分なの
人の気持ちを考えようとも 理解しようともしない 私はシンのオモチャじゃない
シンの言う通りに 泣いたり笑ったりする人形じゃないの』

 

『その言葉は聞き飽きた 人形だの何だのってもうやめてくれ!』

 

『始まってもないのにやめろですって?! どこまで自分勝手なの?!
自分が悪くても 人に文句は言わせない!
そのくせ 人が少しでも失敗すると責め立てる!
ヒョリンのこともそう 何か聞こうとするとすぐ怒るし
人をバカにするのもいい加減にして!』

 

『またそれか? 何かあるとヒョリンの話を持ち出しやがって!』

 

『ヒョリンの話をするとドキッとするくせに!』

 

『…何だって? 勘違いするな! パーティーの時 悪かったのはお前の方だぞ』
『ヒョリンだったら あんなことしなかったはずよ』
『……』
『ひとりにして!』

 

『お前を軽く見てるわけじゃない
他の方法が思いつかないんだ』

 

別荘から宮殿に戻り 2人は太皇太后の前で挨拶をする
とても楽しい時間を過ごせたと語るチェギョン
太皇太后は 楽しかったかとユルにも聞いた

 

『ずっと胸に秘めていた言葉を パーティーの時に伝えることが出来
幸せな時間を過ごすことが出来ました』

 

『胸に秘めた言葉… 何だか切ない響きですね 私にも話してくれますか?』

 

ただ1人の人のための言葉なので 話せないというユルに シンの表情が強張る
なぜこの場でそんなことを言うのか… チェギョンは気まずい表情になる

 

『僕は楽しくありませんでした 非常識な人間がいたので そうだろ?』
『それは招待した側として申し訳なかったよ 僕なりに最善を尽くして準備したのに…』
『気にするな スリリングで いいパーティーだったよ』

 

太皇太后の前だというのに 口論になり始める2人
同席するヘミョン姫も 口を挟むことさえ出来ないほど気まずい雰囲気になる

 

2人の王子が同時に宮殿をあけることは 皇室の掟ではご法度である
それでも太皇太后が許したのは 2人の関係が修復できればとの配慮からだった
しかし その意に反して 2人は以前より険悪になってしまったようだ

 

『皇室の明るい未来のために 2人は協力していかなければなりません
そのためにはお互いに礼儀を尽くし 友愛を育んでいくことが大事なのです
2人は私の言葉をしっかりと肝に銘じてください』

 

ユルのことで シンと気まずくなってしまったチェギョン
自分勝手なシンに我慢出来ないことも事実だが ユルの気持ちも厄介だった

 

『経緯はどうであれ 私はシンと結婚したの
それが歪んだ運命だとしても 今更戻ることは出来ないわ』

 

ユルは 唐突に 幼い頃の思い出を話し始める
10歳の時 学校から帰ると 母ヘジョン宮が 浴室で自殺未遂をはかっていたと…!

 

『あれ以来僕は 母さんが僕を捨てて消えてしまったらどうしよう
父さんのように 僕ひとり残していなくなったらって 怖くて死にそうだったよ』

 

居室に戻ろうとすると シンが ユルに近づくのは不快だと切り出す
夫として 他の男性と親しくする妻を見たくないのは 正直な心情なのに
心をそのまま言葉にしたシンに チェギョンは反発する
たった今聞いたユルの過去に同情してしまっている

 

『お前が俺に怒ったのだって あいつのせいじゃないか』
『私とユルのことに口出ししないで!』

 

チェギョンは なぜこうまでユルにこだわってしまうのか
シンは 夫である自分より ユルを優先するチェギョンが理解できなかった

 

『シンは十分幸せじゃない』
『…何だって?』
『ユルは家族よ ユルはつらい思いをたくさんしてきたの
家族である私たちが 優しくしてあげないと』
『どうしてそんなことしなくちゃならない』
『家族だからよ』

 

“家族”と チェギョンは何度も口にした
チェギョンが考える“家族”の構図が シンには理解できない
皇位を巡る継承順を 水面下で争うような皇室で
チェギョンの思い描く“家族”の構図は 成り立つのだろうか

 

『ケンカして憎み合っても 最後には理解し合うのが家族なの
パパとママがそう言ってた』

 

シンは チェギョンの実家で 庶民の家族の姿を体験している
それは温かくて幸せな光景だった

 

『それは分かったけど いつまで怒ってるつもりだ?』
『怒ってなんかない 混乱してるだけよ 少し時間がかかりそう』

 

チェギョンが部屋に戻り シンは ヒョリンの思い出の品が入った箱を開ける
自分の心は しっかりとチェギョンに向いているのに
時々 ヒョリンとの思い出に触れたくなるシンだった

 

一方 皇后は 太皇太后に対し 公式記者会見について進言する

 

『それは 皇帝が国民たちと対話する 対国民談話ではありませんか?』
『そうでございます』
『それの何が問題なんですか?』

 

皇后は 詳細の説明を侍従長に委ねる

 

以前の会見が行われている最中 皇帝が 国民の見ている前で倒れてしまい
その病気はいまだに完治していない
皇太子が代行を務めるという方法もあるが 著しく評判が良くない皇太子を考慮し
今回は 会見を取り消すべきだと進言する侍従長

 

『以前 皇室の家族が集まった席で 皇帝がおっしゃっていたでしょう?
国民と共に歩む皇室だと なぜみなさんは避けようとするのですか?』

 

太皇太后は 批判を受けるのであれば真正面から受けるべきだとし
皇太子と皇太子妃に 会見を受けさせるように命じた

 

これを受け 古参のソ尚宮が 生放送であらゆる質問が飛ぶ会見で
皇太子の失態が放映されれば 皇室の権威に傷がつくと進言する

 

『だから… 人の話を最後まで聞きなさい!話の途中で口を挟まないで!!!』

 

太皇太后が ここまで声を荒げることは珍しい
常にユーモア精神で にこやかに話す太皇太后なのに…

 

『対国民談話以外の形でも 公式会見はできるでしょう?
トークショーのように 司会者と質疑応答の形にも出来るし
いくらでも方法はあるでしょう』

 

『しかしながら太子には 会見の経験が十分ではありません
その上 今回の公式会見には 各放送局が協力し
共同取材という形で 全国に生中継されるそうです』

 

皇后は 息子を守りたかった
常に失敗を恐れ 何とか息子を失敗させないようにと…
太皇太后は それではダメなのだと 皇后を諭すように導く

 

『いつまで温室の中に入れておくつもりですか?
太子と皇太子妃が 立派にやり遂げてくれるでしょう』

 

チェギョンは 学校でも憂鬱な表情を見せる
こんな人生でいいのか… 哲学的な悩みを口にするチェギョンにガンヒョンは…

 

『そんなこと考えてたらパンクしちゃうよ あんたの思考回路は至極単純なの!
そんなハードなこと考えてたら 容量オーバーしちゃうわ』

 

パーティーで チェギョンたち夫婦を見ていたガンヒョンは
シンの変化に気づいていた
もともとヒョリンを愛していたシンだったのに
シンが今好きなのは チェギョンだと感じることが出来たと話す

 

『そうなのかな?好きなのかな?

告白してから まだ答え聞いてないの もし好きだとしても それは情よ
いつも朝起きて 一緒にご飯を食べて学校に行ってるのよ
どんな人とだって それだけ一緒にいたら…
いつも一緒にいる人がいなくなったら 心配で寂しくなるのよ』

 

ガンヒョンは こんなチェギョンを初めて見た
常に直球勝負で真っ直ぐだったのに 屈折して物事を捉えるようになっていた

 

『毎日シン君のせいで泣いて… シン君のせいで苦しいの
宮廷で シン君だけを見て生活する自信がなくなったわ』

 

教室に戻ると 何やらクラスメイトが怪しい雰囲気
全員を代表して ヒスンとスニョンが チェギョンに質問する
チェギョンの母親が 皇太子妃の名前を使って保険勧誘をしているというのだ

 

『私の叔母さんも言ってた 最近あんたのお母さん評判悪いらしいよ』

 

これは 朝鮮時代で言えば 皇室の外戚が権威を振りかざして私腹を肥やすの図
心が弱っている時に 親友から切り出される家族の批判はつらい

 

『嫉妬してるのよ!人がうまくいってるから悔しいだけじゃない!』

 

ガンヒョンだけが チェギョンをかばう
でも 皇太子妃の母親だと言われたら 保険に加入するしかないと反論するスニョン
母親だけでなく 父親についても触れるヒスン

 

『あんたの父親 皇室に就職したんでしょ 保険の仕事は辞めた方がいいと思うよ
そんな噂聞くの嫌じゃない?』
『それに お父さんの評判も悪いの 天下りだって…』

 

自分も宮廷生活でこんなにつらいのに 両親まで悪く言われて
そんなチェギョンが相談する相手は やはりユルだった

 

『貧しくても真面目にやってきたのに…』

 

『だったら堂々としてればいい 悩む必要ないよ 噂なんか聞き流せばいい
皇室の一員になるっていうのは こういうことなんだ
心配だよ 君が皇室に合わせるうちに 自分を見失うんじゃないかって
法度と礼節が命の皇室で 君は宮廷の人形になれるかな?』

 

『分からない 努力してどうにかなるものでもないし』
『努力なんかしなくていい 今は合わせられても段々つらくなる
……君には自由でいてほしいんだ』

 

その時 講堂に向かうシンに気づく2人
もし公演があるなら 気晴らしに観てみようと 2人はシンの後を追う

 

シンの手には ヒョリンとの思い出が詰まった箱が握られている
講堂のステージで ひとりバレエのレッスンに励むヒョリン
激しく舞うヒョリンが バランスを崩して倒れ シンは咄嗟に駆け寄る…!

 

『いつ来たの? 忙しいんでしょ?』
『どこぶつけた?』
『ターンしてると たまにやっちゃうの』

 

痛がるヒョリンの足を 優しく撫でるシン
それを見てしまったチェギョンは 悲しく目を伏せる

 

『持って来た?』

 

シンは無言で 思い出の箱を差し出した
ヒョリンに請われ 思い出を返しに来ただけなのに チェギョンはそれを知らない

 

『バレエスクールの入学許可が出たの』
『そうか』

 

それ以上 何が言えるだろう
ヒョリンもまた シンに言える言葉が見つからない

 

『ヒョリン 俺はそんなに自分勝手か?』
『フフ…やっと分かったの?』

 

思いがけないヒョリンの反応だった

 

『私は長い間一緒にいたから あなたのことはよく知ってるけど
チェギョンはそうじゃない だからって私より チェギョンの愛が浅いわけじゃない
この前 言ってたでしょ? 私とシンは似た者同士だって
でもチェギョンはそうじゃない それを認めて上げないと
チェギョンに心を開いてあげて』

 

ヒョリンの気遣いを知ることなく チェギョンは講堂から立ち去っていた
あんな光景を目にしても シンを嫌いになれないチェギョン
悲しくて 寂しくて つらいのに 嫌いになれない
シンがいないと心配になるというチェギョンの話を ユルはじっと聞いている

 

『シン君も 同じ気持ちだったらいいのに』
『シンが 君と同じ気持ちなら 幸せな時間が永遠に続くと思う?』

『……』
『それは我がままだ 時間はいつか止まる いくら特別な時間でも…!
その時間が止まれば 残るものは何もない』

 

娘が苦悩しているとも知らないチェギョンの母親は
あろうことか皇太后ヘジョン宮に 保険の加入を勧めていた
皇室の人間を勧誘するという暴挙に さすがのヘジョン宮も戸惑う

 

皇太后殿で 謝恩品のお掃除ロボットを操縦する母親…!
そして 保険は暗闇を照らしてくれる光だと力説する

 

ヘジョン宮は そんなチェギョンの母親に…

 

『反対に考えることも出来るでしょう?
光が突然 暗闇に変わっても その暗闇を楽しみ
雨が降れば 静かに雨に打たれるのが 人生の醍醐味じゃありません?』

 

そこへ ユルが戻って来た
噂通りのチェギョンの母親と たじたじになっている自分の母親に苦笑する

 

『僕はまだ未成年なので保険に入れませんが 成人したらすぐに入りますので』

 

結局は勧誘に失敗し 憤慨して夫の経営する休憩室に行く母親
父親は 慰める言葉もなく ただ文句を聞いてやるしかない

 

『皇太子妃だった時から 態度がデカくて気に入らなかったのよ!
もう頭に来たわ!許せない!!! このまま引き下がると思う?!
しつこくつきまとって必ず加入させてみせるわ!見てなさい!!!』

 

『少し抑えた方がいいぞ ここの尚宮さんたちに聞いたんだが
俺たちが チェギョンの名前を使って金儲けしてるって 噂されてるらしい』
『な…何ですって?! 誰がそんなバカなことを!!!』

 

もともとは そんな母親ではなかった
時代劇と同じように 外戚が辿る末路になっていくのか…
真面目に働いているのに!と激怒する母親は 自分の変化に気づいていない

 

『とにかく変な噂を立てられたくなかったら 宮廷内での勧誘はやめた方がいい
噂がチェギョンの耳に入ってみろ! 幼心にショックを受けるぞ!』

 

チェギョンは 宮殿に戻っても居室にいたくなかった
今はシンと顔を合わせたくない 会えばきっと問い詰めて またケンカになってしまう
誰もいない宮中の片隅で ひとり涙を流すチェギョンだった

 

宮中の庭園では 皇帝とヘジョン宮が密会している

 

『最近 ユルと頻繁にお会いになっているそうですね
真面目で素直な息子です
私だけを信じ つらく寂しい外国生活を耐え抜いてくれた息子です
陛下 ユルを元の場所に戻してください』

 

『皇太后…』

 

『皇帝になるために生まれてきた子です!
いたずらな運命に その座を奪われたくないのです!!!』

 

『その資格を持つ者だけが 皇帝になれるのです』
『ならば明らかではありませんか!』
『まだ幼い王子たちです もう少し修行が必要でしょう
試練をどう克服するか それが重要なんです』

 

現代の韓国において 皇室だけが朝鮮時代のままだった
国民の象徴として存続する皇室なのに…

 

『陛下 試練と過ちは はっきりと区別してください!
太子は 運命の試練で苦しんでいるのではありません!
本人の犯した過ちのために苦しんでいるのです!』

 

シンは チェギョンを捜して明善堂に入る
居室以外に チェギョンがひとりになれる場所は ここしかないと思ったのだ
誰もいない明善堂の 山と積まれた書籍に目をやると
その中の1冊に 何かが挟まれている
それは父である皇帝と ヘジョン宮が睦まじく並ぶ写真だった
写真には 皇帝がヘジョン宮に宛てて書いた手紙が添えられている

 

“遠くで見守ることしかできない愛する君
僕がどれほど 君を愛しているか知ってるかい?
僕の魂に届くほど深く 君を愛しているんだ
宝石よりも輝き 真珠より美しい
宇宙で最も輝かしい真実と
清らかな信義を含んだ 君の唇を忘れることが出来ない
他の男のもとへ走った君を 木のように黙って見つめるしかない”

 

それは何ともおぞましい愛の告白だった
“僕”とは 父である皇帝であり
“君”とは ユルの母親ヘジョン宮である
そして“他の男”とは 交通事故で亡くなった孝烈皇太子のことなのだ…!

 

シンは 真っ直ぐに皇太后殿に向かう
皇太后ヘジョン宮は 息子ユルと 是非仲良くしてほしいと言って微笑む
友人というものがいないユルは ただ1人皇太子妃を友達だと思い親しくしている
皇太子が 同じ王子として仲良くしてあげてほしいと…

 

『皇太后様のお望みとあらば
喜んで皇太子妃と共に 大君の友達になって差し上げます』

 

これまでになく素直に答えるシン
すべてを知ってしまったシンの瞳は 凍るほどに冷たく輝き その表情は暗かった

 

その時ユルは 皇帝に謁見し 海外に持ち出された韓国の文化遺産に関し
地道に活動している成果を報告していた

 

『今後も韓国を代表し 文化財返還のために最善を尽くします』
『義聖(ウィソン)大君がいて心強い また来なさい』

 

同席するヘミョン姫は 皇帝のユルに対する期待の眼差しに気づく
その態度が シンに対するものと全く違うことも…

 

『太子に 海外文化財目録を渡してから もう大分経った
義聖(ウィソン)大君を見てみろ 太子とは違い あんなに努力してくれて』
『シンも危機感を感じないとね』

 

居室に戻ろうとするユルを 皇后が呼び止める
広く活動の場を広げるユルに 宗親会へ参加したことについて切り出した

 

『大君は 太子に続く序列2位の王子です
皇室の多くの人間が いつもあなたを見守っています それを忘れないように』

 

ユルの中には しっかりと野心がある
だからこそ こういう指摘は見過ごせない
表情を強張らせ 深刻な言い方で反論するユル…!

 

『皇后様 それは太子を侮るなという意味でしょうか?』
『義聖(ウィソン)大君 そのようなことをむやみに言うものではありません!』

 

『僕の行動について 皇后様が誤解をされているようなので申し上げたのです!
僕はただ 大君として自分に何が出来るか…
自分なりに考えて行動しただけです』

 

臆せずに挑みかかるこの態度に問題があると 皇后は警戒しているのだ
ヘジョン宮の 宮廷における野心は並々ならぬものがある
その母親の野心に 息子もまた洗脳されてしまっていると…!

 

『大君 考えも度を過ぎるとただの妄想になる』
『…肝に銘じます』

 

太皇太后が 公式記者会見を容認したことで
皇太子シンに対し 会見についての教育がされることとなった
もうすぐ教育が始まると促す侍従長に対し シンは 明善堂のことを切り出す

 

『明善堂は 使われていない建物なんでしょう?いつから使ってないんですか?』
『……』
『14年前から? それとも… もっと前から?』

 

激しく動揺する侍従長…!
うろたえる侍従長を シンはそれ以上追及しなかった
その態度だけで 自分が知り得たことが真実であると確信出来たのだ

 

チェギョンは 何事もなかったように 学生生活を送る
今は友達と過ごすことの方が 気持ちが楽だった

 

『こうしてると学生みたいね』
『あんたは学生じゃない 本業は学生! 皇太子妃は副業よ』
『逆じゃない?』
『学生証はあっても 皇太子妃証はないでしょ?』
『やっぱガンヒョンは大人だわ』

 

するとヒスンとスニョンが 勉学より男子出産でしょ?とからかう
ガンヒョンに比べ この2人は下世話の極みだ

 

『だってそうじゃん!皇太子妃の任務は
逞しい男子を産んで 皇室を繁栄させることでしょ』

 

一方 映画学科のシンは

 

監督として映画の作成に夢中になっている
真剣に取り組むシンにチャンギョンが どうせ映画監督にはなれないと口走る

 

『黙ってピント合わせろ!』
『分かったよ』

 

気にかけない態度で受け流すシン

 

放課後 チェギョンは迎えの翊衛士をやり過ごし
ガンヒョンたちと トッポッキの店で買い食いをする
後ろの席にシンが座ったことにも気づかず 驚異的な食欲を見せるチェギョン

 

『会見があるんでしょ? テレビって実物より2倍は大きく映るんだって』

 

『あんたたちとこうして トッポッキが食べたかったの!
みんなでペチャクチャ喋りながら お腹いっぱい食べたかったの!
こういう時間の大切さが 身に染みて分かったのよ だから今日は止めないで!』

 

3人は 自分たちの分もチェギョンに食べさせた
制服が破れそうなほどの大食いで 満足そうにのけぞるチェギョン
その時 チェギョンと背中合わせに座っているシンに ガンヒョンが気づく…!

 

『わ…私たち先に帰るわ!』
『何?どうしたのよ!待ってよ!』

 

慌てたチェギョンも 後方のシンに気づいた
気まずい雰囲気の中で シンに 食べ残したトッポッキをすすめるが

 

『悪いけど そういうの苦手なんだ』
『やっぱり私たちは違うのね 違い過ぎる 分かり合うことなんて出来ない…!
“王子と乞食”みたい 乞食は少しの間 王子になれるけど
本物の王子にはなれない』

 

大した違いじゃないと言っても チェギョンは譲らない
そこへ翊衛士が 店の前にマスコミが集まりだしていると報告する

 

『宮廷と学校の行き来だけでこうなると思ってなかった』
『私たちに与えられた平和はここまでね』

 

マスコミを突破するためだと シンは手を差し出す
この手を いつまで離さずにいられるのか… 今はその手を握るしかないチェギョン
不仲説が伝えられる2人に 容赦ない質問が飛ぶ

 

チェギョンは その心情とは裏腹に シンにかばわれながら車に向かう
悲しそうに実家への路地を見つめるチェギョン
シンは チェギョンの実家へ向かうよう運転手に命じた

 

『今日一日 泊まって来い 責任は俺が持つ』

 

皇太子妃が宮外に宿泊することは 簡単ではない
それをこんな突然に実現できて チェギョンは久々に シンを見て微笑んだ

 

昼間もあんなにトッポッキを食べたのに チェギョンは 母親の手料理を頬張る

 

『ママが買ってくれた車を乗るたびに ママのことを思い出すよ』
『そのために買ってあげたのよ』

 

夕食が終わり 家族4人は固まって眠ることにする
母親にしがみつくチェギョンを 父親と弟が囲んだ
すると突然… 母親が起き上がる…!

 

『ダメよ チェギョン! 宮廷に戻りなさい』
『嫌よ ここに泊まって行く! 許可ももらったのよ』
『一度嫁に行ったら 簡単に実家に帰って来ちゃダメよ
心配になって来たわ! やっぱり帰りなさい』

 

一時の感情で実家に帰り 今夜ばかりは家族で幸せになれる
でも これが宮廷に知れれば 苦労するのはチェギョンなのだ
母親は 心を鬼にして娘を諭す

 

『チェギョンは皇太子妃なの もう私たちの娘じゃないわ
早く行きなさい 皇族は一般人とは違うの! バレたら大変だわ』

 

皇太子が許したのに…! と文句を言っていた父親と弟も納得し
帰ることになったチェギョンは やはり不満で仏頂面のままだ

 

『宮廷にお嫁に行ったの 法度に従うべきだわ』
『帰りたくない… 私にとってはここが自分の家だもん』
『あんたの家はもう宮廷なの! 分かった?!』

 

宮廷に戻ったチェギョンは 早速 皇后に呼び出される
シンは内緒にしてやると言ったが すでに皇后が知ってしまったのだ

 

『皇后様が 大変お怒りでいらっしゃいます
皇太子妃様が タクシーでお帰りになったことが
状況室を通し 皇后様のお耳に入ってしまいました』

 

頭ごなしに烈火のごとく怒り狂う皇后に チェギョンは謝るしかない
そんなチェギョンをかばい チェ尚宮が 皇太子の許可を得てのことだと取り成す

 

『だからといって 見たいものを見て 行きたい所に行っては
皇室の法度なんて習得出来やしません!
そろそろ皇室に適応してもいい頃です!!!
入宮してから ひとつも成長していないではありませんか!』

 

うなだれて居室に戻るチェギョン
シンがそこで待っているのに それさえ視界に入っていないようだ
すべては自分が許可したことだと 皇后に談判するシン
これでは 許可した自分の立場がないと抗議する

 

『太子の立場を心配している場合じゃありません!
法度を教えるべき人が そそのかすだなんて 一体何を考えているのですか?!』
『そそのかしたのではありません 休ませてあげただけです』

 

誰よりも明るく生きるべき人が 窮屈で厳格な宮廷に閉じ込められて可哀想だと
少しは配慮してあげてほしいと頼むシン

 

『それは 皇太子妃が克服すべきことです
実家に足を運び始めたら 余計に宮廷生活が耐えられなくなることは
太子もよく分かっているはずです…!』

 

泊まることで手筈を整えていたのだ
それを途中で タクシーで宮廷に乗りつけたりしたら 騒ぎになるに決まっていると
シンはシンのやり方で 落ち込むチェギョンに話しかける

 

『そう言ったら気が済む? たまには慰めてよ』
『そんなこと出来ない それに慰めたって問題は解決しないよ』
『たとえ問題が解決しなくても お互いに慰め合って理解し合うのが人間なの
それだけでも力になるから』
『そんなこと… 言葉で伝えなきゃいけないのか?』

 

次第にイライラし始めるシン
チェギョンの言っていることは分かるが 自分の何が間違っているのかが分からない

 

『“チェギョン 大丈夫だよ” このひと言だけでいいのに…
本当はシン君に慰めてほしかったけど いつも違う人が慰めてくれた』

 

『それって… ユルのことか?』

 

またユルの話題になった
ここからどう口論になっていくのか チェギョンには十分に想像がつく
もうたくさん!というように その場から立ち去ろうとするが シンに引き止められる

 

『僕のどこが ユルに劣っているというんだ!』
『離して!』
『答えろ!俺のどこが劣ってる!』

 

『少なくとも ユル君は人の気持ちを大事にするわ』
『だから何かあると いつもユルの所に行くのか?
またユルに慰めてもらえよ!』

 

『どうしていつも 人を傷つけるの? 風に当たって来る』
『おい どこへ行くんだ!!!』

 

チェギョンは疲れ果てていた
事の起こりは 友達とトッポッキを食べたこと
あの時 シンが来ていなければ 何事も起きなかったのに

 

一瞬でも シンの優しさに触れて 実家で久しぶりに楽しんだのに
なぜこんなことになってしまったのか…
チェギョンは ひとり車を走らせ宮殿を出る

 

ちょうど車で戻ったユルが それに気づき 追いかけた

 

2人は 以前にも来た河川敷に車を停める
シンが指摘するように 今度もまた チェギョンを慰めるのはユルだった

 

『君が泣くたびに 自分が情けなくなるよ
両手が縛られて 何も出来ないのが悔しい』

 

もう二度と泣かないために もう二度と傷つかないために
元の場所に戻った方がいいというユル
チェギョンは その意味に気づかず どういうこと?と聞き返す

 

チェギョンは自分の妻になる人だった
本来は自分が皇太子であり チェギョンは自分の妻であると
ユルが言う元の場所とは そういう意味だった

 

優しく頬を撫でられて それをかわすように車の外へ出るチェギョン
しばらく散歩して戻ると チェギョンの車だけがなくなっていた…!

 

宮廷に警察を呼び 盗難届を出す羽目になった

 

またしても騒ぎを起こしたチェギョンを 冷ややかに睨み付けるシン
車を盗まれても宮殿に帰れたのは ユルと一緒だったに違いないのだ

 

『優しいユル君に慰めてもらったか?
お前を追ってる人間は多いんだ
妻と従兄弟が 夜中にデートなんかしてたら 誤解されても仕方ないな…!』

 

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