第47話 飛び散る火花 ![]()
成宗(ソンジョン)は 自分の足が遠のいたせいで王妃が嫉妬しているのだと
何とか廃位だけは食い止めようとするが…
『そのことではありません!尚宮を死なせたのです!!!
それも ただの尚宮ではありません
自分を育ててくれた チェ尚宮を死なせたのです!』
『……分かりました 私が厳しく叱っておきます』
『厳しく叱って済む問題だと思いますか?!!!』
やがて王となる世継ぎの母親が 徳を欠き嫉妬に駆られていては
王子を教育することができないという仁粋大妃(インステビ)
それでも笑顔を作り 何とか丸く収めようとする成宗(ソンジョン)
それが無理なことは 母の険しい表情から見て取れる
王のもとを下がると 扉の外では王妃ユン氏が泣き崩れてひれ伏している
それを 冷ややかに無視し 去っていく仁粋大妃(インステビ)だった
成宗(ソンジョン)もまた そんなユン氏を 中に入れようとはしない
『もう帰れ! 大妃(テビ)様の命令が下るまで謹慎するのだ!』
ユン氏の罪が嫉妬だけなら かばうことができたのかもしれない
自分が悪いのだと取り成すこともできた
しかし その徳のなさは 成宗(ソンジョン)が思う以上に深刻だった
王妃ユン氏は ふたたびチェ尚宮の部屋の前に来ていた
今更ながら 自分が犯した罪の重さに 胸を痛める
自分を恨んでも当然なのに チェ尚宮は 最後まで心配していたと
それを聞いて尚更 後悔の涙にくれるユン氏…
『許してください… 正気ではなかったのです!』
『王妃様!威厳をお保ち下さい』
『放っといて!!!』
王妃ユン氏は その後も激しい嫉妬と止められず
正気を失う事態に陥っていく
この時の涙が真実だとしても…
宮中に まことしやかに広がる噂…
王妃ユン氏が 計画的にチェ尚宮を始末したというのだ
実はすでに知れ渡っていることではあるが 卑しい出自について
また これまでの陰謀の数々を 唯一すべて知るチェ尚宮
王妃になった今 その存在が疎ましかったのだと…!
大王大妃(テワンテビ)のもとを訪れる王妃ユン氏
もはや頼れるのは 大王大妃(テワンテビ)だけであった
『得が足りない?!
母子を引き離し 王妃の廃位を求める女は徳があるの?!!!
王に会って 大妃(テビ)の横暴を止めさせるわ!』
しおらしく 自分のために姑と嫁が争うのは… とひれ伏すユン氏
『大妃(テビ)が嫁を叱るなら 私も姑として大妃(テビ)を叱るわ!!!
嫁なら当然 私に従うべきでしょ!』
大殿(テジョン)に乗り込んでいく大王大妃(テワンテビ)
王子を宮外に出し 王妃を廃位にするという嫁に
そこまでの権限があるのかと詰め寄る!
※大殿(テジョン):王が住む宮殿
『歳の上では私がいちばん上よ!
私も 王のすることに干渉しましょうか?!!!』
この大王大妃(テワンテビ)の口出しに 仁粋大妃(インステビ)が激怒する
王妃ユン氏は この2人の諍いを煽り 何とか廃位を免れようとするが…
その夜 成宗(ソンジョン)は 内官チョン・ギュンを座らせ 共に酒を飲む
内官の身分で 王と酒を酌み交わすなど 恐縮の極みであった
世宗(セジョン)大王の治世から仕えているチョン・ギュン
成宗(ソンジョン)は この老齢な内官に どうすべきかと尋ねる
『王様は お三方の間で板挟みになっておられます
こんな時は どなたに従おうと…』
『批判を浴びる』
チョン・ギュンは 当分の間は“お三方”を避けて過ごすことを勧めた
早朝から朝廷で政務を執り 午後は重臣の講義を聞き
夜は 側室の部屋を順番に訪ねればいいのだと…
一方 王妃ユン氏のもとへ母親が来て 娘の逆鱗に触れている
あれほど毒薬をと頼んだのに 母親が差し出したのは 呪いの札だった
逆上して札を引き裂くユン氏…!
『確実に消すには毒薬が一番なの!!!』
『王妃様…』
『早く出して!!!』
『……』
『私が死んでもいいの?!不安で息も出来ないのよ!!!』
懐から 毒薬が入った巾着を取り出す母親
ユン氏はそれを奪い取り ほくそ笑んだ
その頃 成宗(ソンジョン)は チョン内官の助言に従って
貴人(キイン)チョン氏のもとへ向かう
しかし気が変わり やはり昭容(ソヨン)オム氏のもとへ
結局最後に 淑儀(スギ)ユン氏の部屋に落ち着いたのだった
王が 何度も交泰殿(キョテジョン)の前を通り過ぎていることも知らず
王妃ユン氏は ヒャンイに 呪いの人形を埋めて来いと命令している
中宮殿の床下に浅く埋めて わざと見つかるようにしろというのだ
※交泰殿(キョテジョン)・中宮殿:王妃の居住空間
『呪い人形が見つかれば 疑われるのは貴人(キイン)チョン氏よ!』
同じ時 淑儀(スギ)ユン氏は 行く所がないという王に対し
今夜は王妃様のもとへ行くべきだと進言している
王子様がいなくなってから ひどく寂しがっているというのだ
『王様が 中宮殿に行かれてこそ 王室に平和が戻ります
ここにお泊りになれば 要らぬ波風が立ち
貴人(キイン)チョン氏に会われれば お腹のお子と王子様が比較されます』
淑儀(スギ)ユン氏が 切々と王に進言しているその時 王妃ユン氏は…
母親が持ってきた毒薬を 毎日少量ずつ飲むという
そして 毒薬が入った巾着を 貴人(キイン)チョン氏の部屋に隠すと…!
一気にチョン氏を殺すのでは疑われてしまう
それよりは 呪いと毒殺の疑いで失脚させる方がいいと考えたのだ
相手を毒殺するのも 自ら飲むのも どちらにしても危険なことである
母親は 何度もやめてくださいと懇願するが ユン氏は聞く耳を持たない
『あの女が息子を産んだら 王子の立場が危うくなるのよ
宮殿には味方がいないから 私が命を張るしかないの…!』
『大王大妃(テワンテビ)様がおられます』
『あんな老婆に何ができる?!』
『王様もおられます!』
『すでに愛想を尽かされた!!!』
そこへ 王の来訪を告げる内官の声が…!
成宗(ソンジョン)が 淑儀(スギ)ユン氏の進言を聞き入れて現れたのだ!
慌てふためくユン氏と母親!
毒薬と呪いの札を どうにか隠そうとするが…!
完全に隠し切れないまま 成宗(ソンジョン)が入ってくる
当然のごとく 泊っていくものだと信じているユン氏
部屋を片付け 沐浴をしたいと言い 別室で待ってほしいと懇願する
準備などいいと言いながら 久々に嬉しそうな王妃に 満足げである
飾り棚の下からはみ出た呪いの札を隠そうとしていると
気が変わったと言って 成宗(ソンジョン)が戻ってきた…!
観念した母親が 打ち合わせの通り 貴人(キイン)チョン氏の企てだと叫ぶ
貴人(キイン)チョン氏が 床下に呪いの人形を埋めたため
報復のつもりで 呪いの札を持ち込んだのは自分だとひれ伏した
どんな札か見たいと言われ 札を引き出そうとして巾着も見つかってしまう
その毒薬は ユン氏が 自ら飲もうとしたのだと釈明する…!
『大妃(テビ)様は 私を嫁として認めてくださいません
子を授かったから… 嫌々ながら身分の低い私を王妃に…』
『何を言う!身分などどうでもいいことだ!!!』
死をも考えていた王妃の苦しみに 成宗(ソンジョン)は心を動かされる
それから間もなくして 中宮殿の床下から 呪いの人形が発見された
翌早朝 宮中は騒然とする…!
王妃ユン氏は 側室から呪いをかけられていたことを ここぞと告白する
証拠をつかみながら これまで追求しなかったのは 時機を待っていたのだ
大王大妃(テワンテビ)は激怒し これは重罪だと言い放つ…!
成宗(ソンジョン)は 領議政(ヨンイジョン)チョン・チャンソンを呼びつけ
どう対処すべきかと意見を仰ぐ
王妃は自決まで考えたのだと 憤る成宗(ソンジョン)…!
※領議政(ヨンイジョン):国政を統べ全ての官吏を代表する官職
そこへ 仁粋大妃(インステビ)が飛び込んで来て
呪いの人形も札も無視し ただ 王妃が毒薬を持っていた一点を追求する!
『王を害するつもりだったら?!』
『まさか!』
『王よ!!!
王はこの国の父です! 王にお仕えする王妃に毒薬が必要でしょうか!』
『自決用だと言っていました!』
『信じるのですか?!』
あまりに純粋な息子を 笑い飛ばす仁粋大妃(インステビ)
『嘘の涙とため息で 王の同情を買い 王妃になった女です
そんな女が自決を考えますか?!』
居場所がなくて 退室したいチョン・チャンソン
しかし 仁粋大妃(インステビ)は それを許さない…!
王妃が王を毒殺しようとしたのに 領議政(ヨンイジョン)たるものが
王室の問題だといって 見て見ぬふりをするのかと怒鳴りつけた!!!
しかし 成宗(ソンジョン)は 敢然として自決用だと言い張り
これを受け 仁粋大妃(インステビ)は 徹底的に調べ上げると豪語する!
禁府都事ユン・ジャミョンが 兵を率い王妃ユン氏の実家に向かう
逆賊として 兄ユン・グを捕えようというのだ…!
『逆賊だと言っている! 母さん…どうしよう!』
『知らないわ! 王様は信じてくれたのに…!』
ユン・グは 行くあてもないまま裏口から逃げ出し
母親以外の 嫁と使用人がすべて捕えられた!
この捜索で見つかったのは 柔術の秘法書だけであり
あとは 使用人の尋問で吐かせるしかなかった
これに対抗するのは 大王大妃(テワンテビ)である
先に呪った貴人(キイン)チョン氏が悪いのだと激怒し
監察府(カンチャルブ)に命じ チョン氏の部屋を捜索させる…!
※監察府(カンチャルブ):内命婦(ネミョンブ)を監督・調査する部署
ユン・ジャミョンは 女官ヒャンイを捕えようとするが
ヒャンイの引き渡しを 徹底的に拒絶する王妃ユン氏
ジャミョンは 交泰殿(キョテジョン)を兵士に包囲させた…!
ことごとく妨害してくる大王大妃(テワンテビ)の背後には 王妃がいる
仁粋大妃(インステビ)は確信していた
少しも悔いていない王妃ユン氏の 闘うという意思を…!
その頃ユン・グは 密かに右承旨イム・サホンを訪ねていた
サホンは 取り合えず ユン・グをかくまうというが
今回ばかりは かばい切れないという
大妃(テビ)に逆らうとは あまりに大それた王妃の失敗だと…!
ユン・グは 今のことではなく 将来を考えろと居直る
王子が王位に就けば その時は 王妃と対立した者は皆 粛清されると!
この王室の争いに 重臣たちは戦々恐々とする
大妃(テビ)に逆らえば職を失うかもしれない
しかし 王妃に敵対すれば 次の王から粛清されてしまうと…!
ユン・サフンは このままでは一族滅亡の危機だと嘆く
司憲府(サホンブ)が 一族の者ばかりか使用人まで調べ上げているという
王妃の問題とは別に 水面下で大妃(テビ)による反撃が始まっていたのだ
※司憲府(サホンブ):不正の摘発・法的処置を行う法権を持つ官庁
『受けて立ちます!
負ければ 大妃(テビ)が実権を握ります
そうなれば 真っ先に狙われるのは 王妃ではなく私です
状況は私たちに有利です
王妃は今も王の寵愛を受け 王子まで生んだのです』
これが 大王大妃(テワンテビ)の 最大の誤算である
成宗(ソンジョン)の心は 確実に王妃ユン氏から離れ始めているのだ…
仁粋大妃(インステビ)は 我が息子成宗(ソンジョン)に対し 切々と説く
王子が王位に就けば 今の王妃が大妃(テビ)になる
ユン氏に 王室の重鎮になる資格があるのかと…!
『徳がないのは分かっています ですが…』
『では 廃位しなければ!!!』
もう一度だけ機会を与えてはと… 気弱に取り成そうとする成宗(ソンジョン)
『後日 王子に復讐されるのが怖いのですか?
ならば王子も廃さねば!』
『母上… 王子に何の罪が?!』
『王妃の息子なら同罪です!!!』
『血も涙もないのですか!!!』
この成宗(ソンジョン)の怒鳴り声を 扉の外で大王大妃(テワンテビ)が聞く
王は再び 仁粋大妃(インステビ)と決裂した…!
ほくそ笑み 部屋に戻る大王大妃(テワンテビ)
『はい 血も涙もありません
夫を失ってから 2人の息子と私邸に戻り どれほど涙を流したか…
血も涙も その時枯れ果てました…!
王よ 1人の力では聖君になれません
多くの忠臣に支えられ 役人が皆 清廉潔白でいてこそ
聖君になれるのです!』
『私が言い過ぎました お許しください』
切っても切れない 母と息子の絆を 大王大妃(テワンテビ)は知らない
自分の息子たちとは結んだことのない 固い絆の深さである
そんな大王大妃(テワンテビ)の報告を聞き 王妃ユン氏はホッとする
廃位などあるはずがない できるわけがないのだと…!
その夜
仁粋大妃(インステビ)は 夜を徹して自問自答する
子を思う母の心… 自分こそが最も痛感しているその思いに揺れていた
しかし 一夜明けると ハン・チヒョンが止めるのも聞かず
毅然として昌徳宮(チャンドックン)へ向かう
いよいよその時が来たと 待ち構える大王大妃(テワンテビ)…だった!

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