第39話 亀裂 ![]()
宮殿の高台にある庭園で ソンイは 成宗(ソンジョン)と向き合い
自分はもうすぐ死ぬだろうという
側室選びは 自分と王様を引き裂くためのものであり
引き裂かれるくらいなら 死んだ方がマシだと訴える
指きりで 絶対に捨てないことを誓おうとする成宗(ソンジョン)
しかし 母である仁粋(インス)王妃の話を持ち出されると黙ってしまう
そんな成宗(ソンジョン)を抱きしめるソンイ
『私は王様が好きです 王様に捨てられたら生きていけません』
『心配するな 私がずっと守ってやる』
再び王の心をつなぎとめたソンイに チェ尚宮は満足する
たとえ側室になれなくても 寵愛されることがいちばんだという
しかし ソンイはそうではなかった
側室どころか 必ず王妃になって見せると豪語する
仁粋(インス)王妃は 側室候補の娘に会う
兵曹参知(ピョンジョチャムジ)ユン・ホの娘である
これに憤慨する大王大妃(テワンテビ)だが
兄サブンは ユン・ホの名を聞き笑い出す
我々の又従兄弟であり 遠縁だが親戚だというのだ
ユン・ホの娘は 11歳ながら徳を滲ませる娘であり 側室候補ではあるが
王妃になってもいいと考えるほど 仁粋(インス)王妃は気に入った
しかも親戚筋に当たるため 反対される名分がないのである
勝手に会って決めたことに 不快感があるものの
大王大妃(テワンテビ)は 賛成するしかなかった
ただし…
側室は 1人ではダメだと言明する
子孫が極めて少ない現状では 3人は選ぶ必要があるというのだ
これもまた 仁粋(インス)王妃が反対する名分がなかった
憤慨して居所に戻る仁粋(インス)王妃
チヒョンは 何が問題なのかとなだめる
王様が 自分から離れてしまう! と叫ぶ仁粋(インス)王妃
『女色に溺れさせるのが目的なのです!』
弱り切ったチヒョンは ハン・ミョンフェに相談するが
ミョンフェは まだ粋嬪(スビン)様の心が分からないのかと笑う
『粋嬪(スビン)様は 謹厳で潔癖な方だと言われているが
実はとても嫉妬深いのだ 独占欲も強い ウハハハ…
大王大妃(テワンテビ)様は 権力を手放したくない
そのためには 王様と粋嬪(スビン)様を遠ざけねばならぬ
だから女をあてがうのだ! ウハハハ…』
大王大妃(テワンテビ)は 粋嬪(スビン)の嫉妬心を見抜いていた
嫁の頃から 息子との関係を見ていれば 分かることである
11歳の側室なら 息子を奪われることはないと
嫁の考えが 手に取るように分かるのだ
『私が裏をかいてやるわ!』
その夜 仁粋(インス)王妃は 王のそばを離れなかった
夜を徹して 息子の学問につき合った
それは ソンイのもとへ行かせないためでもあり 息子のためでもあった
扉の向こうのパク尚宮は これでソンイも終わりだとつぶやく
チョン内官が 誰に従うべきかは慎重に決めるべきだというのだった
“不孝者は罰せよ 世子を替えてはならず 側室を妻にしてはならない”
この言葉を 繰り返し朗読させる
その声は 大殿(テジョン)の外まで聞こえていた
目に涙を浮かべ 暗闇に佇むソンイの耳にも…
※大殿(テジョン):王が住む宮殿
翌日 ソンイは宮外へ出る
本家に乗り込み 家系図を手に入れるつもりだった
本家は 異母兄の代になり 食べる物にも困るほどに貧しかった
異母兄は 父親が本妻を捨てたことを恨み 頑として渡そうとしなかったが
目の前に差し出された金品の前に屈服するのだった
家系図の流れを辿ると 思わぬ大人物に行き当たる
癸酉靖難(ケユジョンナン)の功臣 シン・スクチュである
※癸酉靖難(ケユジョンナン):首陽(スヤン)大君が政権を奪取した政変
ソンイは母親に このシン・スクチュから推薦書をもらえという
そんな大人物に…とためらう母を叱り飛ばし 有無を言わせない
シン・スクチュは 突然やって来たソンイの母親に懇願された
そして翌日 今度は 大王大妃(テワンテビ)に呼び出されたのである
側室選びで 自分が目をつけた娘に粋嬪(スビン)が難癖をつけていると
それは昨夜 ソンイの母親から聞いたことと一致した
『家柄や性格を指摘しては 側室に出来ないというの
王の生母だから 無視はできないし…』
ここでスクチュはハッとする…!
大王大妃(テワンテビ)と仁粋(インス)王妃の諍いに
まんまと巻き込まれてしまったスクチュであった
受ければ仁粋(インス)王妃を敵に回し 断れば…
いずれにしても 目の前にいるのは大王大妃(テワンテビ)である
執務室で 深いため息をつくシン・スクチュ
たかが側室だというハン・ミョンフェ
このミョンフェは そういえば正室の父だったと 思い出すスクチュ
仁粋(インス)王妃は 大王大妃(テワンテビ)に呼び出され
ソンイが側室になることを 承諾させられた
功臣が推薦しているのだから 断れないというのだ
忌々しい表情で出てくると 仁粋(インス)王妃はチェ尚宮を睨みつける
今度裏切るような真似をしたら許さないと…!
『思い上がるなと ソンイに伝えて 身の程をわきまえろと』
(身の程をわきまえろ?! 勝負はこれからよ
ソンイが息子を産んでも 強気でいられる?!)
仁粋(インス)王妃の背中を睨みつけるチェ尚宮だった
やがて2人の娘が 正式に “淑儀(スギ)”に任命された
側室は数が多いため 史書に名前が記録されないことが多かった
※側室の品階:嬪・貴人・昭儀・淑儀・昭容・淑容・昭媛・淑媛
だがこの日 側室になった2人の娘は 後日 相次いで王妃となる
このあと ソンイが波乱を巻き起こそうとは 誰1人として想像しなかった
ソンイは 夢にまで見た側室になった
『淑儀(スギ)様』と呼びかけるチェ尚宮
もう誰も公に “ソンイ”と名前で呼び捨てる者はいないのだ
ソンイは “淑儀(スギ)ユン氏”となったのである
チェ尚宮は 感無量で拝礼する
『お母様のおかげです このご恩は 何があってもお返しします』
『ご恩だなんてとんでもない 私こそ大恩を受けました』
亡き父の棺を買うために 宮殿に売られたソンイ
あの日心に誓った思いは 今でも変わっていない
『何としてでも王妃となり この世を手中に収めてみせます
万人が この私の足元にひざまずくのです
そしてこの私を蔑んだあの方には 血の涙を流してもらいましょう』
仁粋(インス)王妃付きの尚宮は チョン尚宮に代わった
もともと洗踏房(セタッパン)の女官だったチョン尚宮は 緊張しきっている
それでも 誠実そうなチョン尚宮に 仁粋(インス)王妃は満足げだった
※洗踏房(セタッパン):宮廷の洗濯を担当する係
『王は 何しているのかしら』
この夜 成宗(ソンジョン)は 母のもとへは行かず
側室になったソンイのもとへ向かった
しかしソンイは 今日はお世話できないと言い出す
まずは側室として 正室の王妃様に挨拶してからというのが道理だという
そんなことは どうせ王妃には分からないという成宗(ソンジョン)
そんな王をなだめ ソンイは本当に 王を追い返してしまう
道理を重んじるソンイに感心し 成宗(ソンジョン)は引き返した
急ぐことはない
いまはしっかりと 王の心を得ることだと ソンイはほくそ笑む
実は この正室への挨拶について議論があった
挨拶に行くべきだと言った仁粋(インス)王妃に対し
病中を見舞うのは無礼であると 大王大妃(テワンテビ)が諌めたのだ
その時 仁粋(インス)王妃は 自分の非を認め引き下がった
ソンイは 敢えて仁粋(インス)王妃が先に命じたことに従ったのである
成宗(ソンジョン)を感心させたうえで
大王大妃(テワンテビ)と仁粋(インス)王妃を仲違いさせる
それがソンイの狙いだった
恭恵(コンヘ)王妃は ソンイの前で血を吐いた
母親が激怒してソンイを追い返す!
ソンイは この光景を見て 王妃の死期を察したのである
大殿(テジョン)では 仁粋(インス)王妃が激怒していた
行くなと言った王妃のもとへ 断りもなく出かけた淑儀(スギ)ユン氏
それを諌めるどころか 護衛にと兵までつけた成宗(ソンジョン)王
しかし成宗(ソンジョン)は 何がいけないのかと食って掛かる
もしユン氏に過ちがあれば それは即ち自分の過ちだと言い放つ!
息子が意中の女をかばい 初めて母親に抗った瞬間であった
じっと我が子を見据え 仁粋(インス)王妃は 無言で立ち上がる
あまりの衝撃に 足元がふらつき パク尚宮が支え 出て行った
その背中に 成宗(ソンジョン)の叫びが聞こえる
『何が悪いのか分からない! 聞かなければ治せない!!!』
息子が母に抗ったのが最初なら
母親が 息子を突き放したのも 初めてのことだった
『私の息子は… もう立派な大人だわ』
この顛末を聞いた大王大妃(テワンテビ)は 大喜びする
昔 桃源(トウォン)君が 父親に逆らったことを思い出す
あの父親の息子なのだと 笑いが止まらない
今こそ 息子に刃向かわれて 嫁が苦労する番だと…!
宮殿に戻って経緯を聞いたソンイは すぐに謝るべきだという
しかし成宗(ソンジョン)は意地になっていた
それなら 自分が謝りに行くと言い出すソンイ!
『ひどく叱られるぞ』
『覚悟の上です まさか死ねとはおっしゃいません!』
イライラして ソンイは王を諌める 側室の立場を分かってないと…!
いかに王様に寵愛されようと 目上の方に睨まれたら殺されるという
側室の上には王妃が 王妃の上には…
大妃(テビ)や大王大妃(テワンテビ)がいるのだと叫ぶ!
『王様が味方すれば私は恨みを買い いつか宮殿から追放されます!』
『王の私も お前を守れないのか?』
『お母様に謝ることが 私を守る唯一の方法です』
ソンイに促されて 母のもとへ行く成宗(ソンジョン)だが
王の訪問に返事もなく 中の明りは消えてしまった
翌朝 大王大妃(テワンテビ)のもとへ 朝の挨拶に行く成宗(ソンジョン)
いつもはそこに 仁恵(イネ)大妃と仁粋(インス)王妃がいるはずだった
しかし 仁粋(インス)王妃だけがいない
大王大妃(テワンテビ)は この事態を楽しんでいるようにも見える
『ところで 淑儀(スギ)が王妃に挨拶したそうね 感心ね
挨拶するのは当然よ』
病中を見舞うのは無礼だと 諌めたのは大王大妃(テワンテビ)である
王の次に挨拶しようと 2人の側室が外で待っている
今夜こそは 王様をお泊め下さいと チェ尚宮が耳打ちする
しかしソンイは 徹底的にじらすつもりだった
『意のままにならないからこそ 夢中になるのです』
成宗(ソンジョン)は 仁粋(インス)王妃の居所を素通りした
これを知った仁粋(インス)王妃は 鼻で笑う
取り成そうとするパク尚宮が ソンイの名を出した瞬間 激怒する
女官上がりの側室など 認める気はなかった
大王大妃(テワンテビ)は ソンイを特別に可愛がる
高慢ちきな嫁を苦しめる この側室が 大いに気に入ったのである
ソンイは 自信に満ち溢れていた
(お母様 王様を私の虜にします
そして王妃様は重病の床… 次の王妃は誰かしら?)
常に冷静で厳格だった仁粋(インス)王妃が
淑儀(スギ)ユン氏に 嫉妬の炎を燃やしていた

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