4話 
ホテルの部屋に戻ったユル
そこへ イギリスの母から電話が…
イギリスでも嘉礼行列の中継がされていたという
『ユルもテレビに映るかと思って くまなく探したのよ
お父さんのお墓には行ってきた?
ここの整理が終わったから 明日ソウルに出発するわ』
ユルは 慌てて到着時刻をメモした
『もうすぐね
これまで私たちをのけ者にして のうのうと暮らしてきた人達に
私達が生きてるということを見せてあげなきゃ
私達を悲惨な目に遭わせて 自分らは豪奢な暮らしをしてきたはずだから
今度は自分達が 血の涙を流す番だっていうことを
分からせてあげましょうね 心配しないで お母さんに任せて』
***** * ***** * *****
皇太子の住居である東宮殿は 2つに分けられているの
元々は書筳堂という伝統韓屋の建物の1つだったんだけど
その横に洋館が建てられて 2つになったのよね
今はその書筳堂が 皇太子の教育専用の場として使われていて
洋館は 皇太子の生活空間として使われているのよ
東宮洋館は 大きな温室みたいなパビリオンを間に置いて
皇太子専用空間と 皇太子妃専用空間に分けられているの
同牢が終わると 私は
これから自分が使う皇太子妃専用の住居に案内されたの
***** * ***** * *****
その頃 ミン・ヒョリンは
コンクールを終え 同行した舞踏家講師と一緒にパーティーに参加していた
≪ヒョリンは我が国の夢であり 私の希望です≫
教え子を絶賛する講師に 同席するイギリス人男女が…
≪ロイヤルバレエスクールの夢でもありますよ≫
≪入学にあたっての書類です≫
≪我が校でも例にない条件で 入学していただこうと思っています
入学を承諾してくれますね?≫
感激したのは むしろ本人より講師の方だった
ヒョリンは 歓喜した表情で答える
≪ご厚意に感謝いたします≫
すると目の前のテレビに 韓国からの中継映像が映し出される
途端に表情が曇るヒョリン…!
≪そうだわ ヒョリンは我が国の皇太子様と同じ
韓国最高のエリートが集まった名門芸術学校に通っています≫
青ざめて席を立つヒョリン
異国の地で得たもの
そして 韓国で失ったものとが 頭の中を駆け巡る
テレビの画面には 皇太子妃になったチェギョンの顔が映し出されている
ホテルの部屋の電話が鳴る
講師が 半狂乱で戻って来てと叫んでいる
席に戻ったヒョリンに 講師が必死にサインをするようにと促す
(あなたの夢だったんでしょ?
授業料免除なのよ!もう一度読んであげようか?!)
しかしヒョリンは 静かに契約書を置いた
≪申し訳ないです 条件に不満があるわけではないのですが
ロイヤルバレエスクールには 入学できません≫
韓国では
皇太子妃チェギョンの 今後の教育について話し合われていた
四書三経の前に“孝敬”から始まるのだが
チェギョンは 漢文教育に慣れていない
皇太后はそれを気遣い ハングルの解釈本で講義するようにという
そして皇后に 皇太子妃教育の基本は何かと質問する
『正しい言葉遣いと行動 そして凛とした品格を育てることでございます』
『皇后は 名家のご出身で
幼い頃から基本的な礼儀作法を しっかり身につけていますから
宮廷生活に不自由な思いをしたことがなかったでしょう?』
皇太后の言い方に 戸惑いを見せる皇后
『皇太子妃は 皇后と違って慣れない点が多いことでしょう
ですから皇后は その点を十分に理解して教育しなければなりません』
少し引っ掛かりを感じながらも 承知しましたと答える皇后
今回の皇太子妃選定に 皇后が不満を感じていると
皇太后は 十分に承知している
『孝烈太子の事故の後 急に皇帝が皇位に就くことになった時
その時 見せてくれた 皇后の積極的な内助の功なくしては
混乱していた皇室が 今のように落ち着くことはなかったでしょう
私はこれまで そぶりを見せないでいましたが
皇后の功を高く買っていますよ』
東宮殿で迎える初めての朝
チェギョンは 実家で過ごすのと同じに寝坊する
緊張の1日が過ぎ ようやくぐっすり眠れた
用意された豪華な寝巻には手を付けず 持ってきたパジャマ姿…!
『朝見禮のご準備がありますので 急がなければなりません』
『今 何時ですか? ……ヤバい!寝過ごした!!!
顔はどこで洗えばいいんですか?!』
自分の荷物の中から ジャージを出して着ようとするチェギョン
しかしジャージは どこを探しても見つからず
パジャマのままで東宮殿を歩き回る
『これが私の部屋?!』
入ったこともないが ホテルのスイートルームよりもまだ豪華だ!
こんなの テレビドラマか旅番組でしか見たことない
ひととおり確認した後 正装し 夫婦そろって朝の挨拶
皇太后の 神妙な物言いに チェギョンはまた睡魔が…
『年寄りが若い子を前にして 古めかしい話をしてしまいましたね』
ハッとして姿勢を正すチェギョン
皇帝が 今日から皇太子の翊衛士(イギサ)は14人から3人にするという
※翊衛士(イギサ):ボディガード
『学校の中ではなく 校門の外で待機させるように命じてある
そして皇太子妃も これからは翊衛士(イギサ)の護衛を受けることになる
不便で面倒なこともあるかもしれないが 最小限の護衛は必要だからね
保護されることを 楽しんでくれるといいんだが』
『はい陛下 保護してくれてありがとうございます』
その答え方がぎこちなく 微笑ましくて 皇太后は思わず笑ってしまう
そこでシンが 約束は守ってくれるのかと聞く
東宮を昌徳宮(チャンドックン)に移すという話だった
『それは… 昌徳宮(チャンドックン)はまだ改装が終わってませんので』
歯切れの悪い皇后の答えである
『結婚前に こいつと結婚さえすれば すぐ移すと言いませんでしたか?』
『皇太子! 皇太子妃の前で失礼ですよ』
どうやら “お偉い方がいる正宮”から離れたかったのは シンのようだ
チェギョンの為ではなく それを条件に 結婚に同意したらしい
『どうせこいつも知ってますから! 僕が全部話したんです
僕との約束を守る気なんて 全然ないんでしょう?! 行くぞ!』
逆上し チェギョンの手をつかみ 退席しようとするシン
じっと目を閉じる皇太后
皇帝と皇后は おろおろするばかり…!
東宮殿に戻ると 今の“逆上”は全部 芝居だと笑うシン
あんなに険悪なムードの言い争いが演技だなんて…!
『皇太子が正規の宮(クン)を離れるってことが
簡単に了承されるわけないことぐらい 知ってたさ
だからちょっとオーバーに出たんだ
少し子供じみてはいるけどな 反抗期の少年みたいな… 分かる?』
そんな遊び心のシンの画策も知らず
“大人”たちの雰囲気は 最悪な状況になっていた
『皇太子と そんな取引をしていたんですか?』
『恐れ入ります 皇太后様
幼い頃は素直で 大人の話をよく聞く子供だったのに
いつの日からか すれた態度を見せるようになって
やはり 王立高校に送るべきでした 陛下が私の意見を少しでも…』
『やめなさい!
問題の本質はそこじゃないんです それが分からないのですか?!』
皇太后の前で口論を始める皇帝と皇后
『彼は 君の思い通りに“飼育”されたと言っても過言ではありません!
幼い頃は よく話を聞いていた子が なぜあんな風になったと思いますか?
反抗することしか分からない 愚か者になってしまったのです!』
一方 東宮殿では
侍従長が チェギョンを護衛する翊衛士(イギサ)を連れてきた
皇太子妃付きの 女性護衛官だ
『3人とも皆 武術の有段者でございます』
舞い上がっているチェギョンを フン!と笑って見ているシン
ところでオジサンは誰?という質問に 侍従長はかしこまる
『遅ればせながら御挨拶申し上げます
私は 宮内の総責任者であり 殿下を影で輔弼(ほひつ)致します
侍従長でございます』
『侍従長? つまり内侍(ネシ)? ……この時代に! ククク…ッ!』
頬を染めて笑い出すチェギョンが
何を想像したのかが丸見えで シンは情けなくなる
そこで 微笑みながら侍従長が説明を始めた
『宦官(かんがん)と内侍(ネシ)を 混同なさっているようですが
皇太子妃様がご存知の 宮(クン)で仕えた 去勢された男は
宦官(かんがん)と申しまして 私のような侍従は 殿下と陛下のお側で仕え
宮内の事務を総合的に担当する 現代で言いますと専門職でございます』
説明を聞いているうちに 自分が失礼な想像をしてしまったと気づき
チェギョンの顔から笑顔が消える
『高麗(コリョ)時代の内侍(ネシ)は 最高のエリート役人だったんだぞ!
皇室の侍従は 高麗(コリョ)時代の内侍(ネシ)と同じさ』
『そうだったんだ オジサン 誤解してすみません』
『“オジサン”ではなく 今後は侍従長とお呼びくださいませ 皇太子妃様』
部屋に戻り ベッドに大の字に寝転ぶチェギョン
『私は皇太子妃よ ちこう寄れ! 私の世話をしなさい!
はい 皇太子妃様! ウフフ…』
そこへ チェ尚宮が…!
慌てて飛び起きるチェギョン!!!
(聞かれた!)
『改めて御挨拶申し上げます 教育担当のチェ尚宮でございます』
『え?お姉さんがまた私の教育を?! …マジっすか!』
『内需司(ネスサ)より 報告書類をお渡しするため
内官がお待ちでございます』
『内需司(ネスサ)って?』
『皇室の資産を管理する 官庁のことでございます
お疲れでしたら 午後に変更致しましょうか?』
『そこまでする必要は…』
“内需司(ネスサ)の内官”という人は
皇室から皇太子妃に譲渡される 財産を記した帳簿を持ってきた
株式と預金 保険をはじめ 土地と不動産が詳しく書かれているという
『取りあえずサンキューでした ペコリ!』
元気よく チェギョン流の挨拶をする
どうリアクションしていいのか分からない内官は 苦笑して出ていく
帳簿をペラペラとめくったところで 詳しい内容は分からなかった
ただ 数字の0の数が…
『一、十、百、千、万、十万、百万、千万、億… 億?!!!!!』
何度数えても“億”!!!
宝くじに当たった人のような 笑い出していいのかさえ不明な感動!
『大金持ち少女シン・チェギョン 万歳! ……万歳!!!!!』
“服 靴 香水 デジカメ 携帯電話800万画素!”
登校途中の車の中 懸命に欲しい物リストを書き込むチェギョン
その不気味な笑顔を 気持ち悪そうに見つめるシン
『さっきからニタニタ 何笑ってんだ?』
『笑おうが泣こうが 別にいいじゃん…
大金持ちになって嬉しいからに決まってるじゃない!』
産まれた瞬間からすべてを与えられていたシンには分からない心境だ
チェギョンにもまた シンの苦悩など 見えてもいなかった
車を降りた瞬間から 生徒が群がり 携帯での撮影が始まる
これまで遠巻きに見ていたシンの状況が 自分の身にも…
約束通り 翊衛士(イギサ)の3人は 門の前でシンから離れる
後ろを歩くチェギョンは 有頂天に手を振りピースサインをしている
『あの…』
教室に向かうチェギョンを呼び止めたのは ユルだった
綺麗に洗濯し アイロンまであてられたジャージを差し出している
あの日 チェギョンは ユルの前でジャージを脱ぎ捨て逃走したのだ
『あ 私のジャージだ …で?あなた誰ですか?』
『覚えてない?』
『もしかして 転校生?
この前の転校生よね?! 先生に没収されたと思ってたのに』
ジャージが戻って 上機嫌で教室に入るチェギョン
いつものようにみんなに挨拶を…!
でも 誰も挨拶を返してくれない
みんなそっぽを向いてしまった
シンはいつも通りだ
むしろ護衛が遠巻きになって 自由を得た
友人たちも そんなシンの周りで気が楽になったようだ
『初夜はどうだった?』
『何かあったのか?』
『お前らが想像してるその1%もなかったぜ
いや 7%はあったような…』
思いっきり手に噛みつかれたことを思い出した
とてもそんなことは話せないが…
『あれ? ヒョリンじゃん』
友人たちは 気を利かせて先に行く
なぜヒョリンがここにいるのか… シンは無表情で突っ立ったままだ
一方 友人たちに総スカンを食らったチェギョンは
教室から離れて沈み込んでいる
その隣には ユルが…
『正直 私だってウンザリよ 超サイアクじゃん!
超平凡な子が いきなり皇太子妃だなんて 話にならないじゃんね
シンデレラストーリーでもあるまいし! とにかくついてない話よ
これから頑張らなきゃね 自惚れずにいつもの私のままで
とにかく ありがと!』
『お礼なんて 俺は何もしてないぜ』
『そんなことないよ 私の話 聞いてくれたじゃん
よかった あんたみたいないい友達ができて』
チェギョンはまだ ユルの正体を知らない
継承2位の王子で 本当は自分の相手かもしれなかったなんて…
その頃 シンとヒョリンは…
自分のことを 練習しか知らない“バレエ馬鹿”だったというヒョリン
そして 人生の喜びや悲しみ 怒りとか秘密を表現できる
そんなバレリーナになりたいという
そのためにも これからは思いっきり遊ぶと…
『あんた絶対後悔する 私を待たなかったこと 一生後悔するわ』
ひとことも答えないシンに ゲームオーバーだと笑うヒョリン
『それでもヒョリンと 遊んでくれるでしょ?』
『……』
『心配しないで 私があんたを誘惑すると思う?
私のこと 見くびってない? あんたもバカね 私なんかよりずっとバカよ…』
そろそろ授業開始の時間になり 教室に戻るチェギョン
すると みんなから話があるから 教室の前に立てと言われる
つるし上げに遭うのかと 覚悟を決めて教壇に立つチェギョン
『みんなありがとう これくらいのイジメなら まだマシよね
机と椅子は退けられてないんだから…』
……と! そこで一斉にクラッカーが!!!
途端に盛り上がる教室! 泡スプレーの中 ケーキが登場!!!
『ジャジャーーーン! おめでとうシンデレラ!』
『お祝い申し上げます 皇太子妃様!』
『私と花束 見分けつく?』
『おめでとう!!!』
感激しているチェギョンの耳元で ガンヒョンはささやく
『喜びすぎないで あんたはもう人妻なんだから
人生終わったも同然よ! アハハハ…』
『もう終わっちゃったの?
でも先生より先に結婚する生徒なんて 聞いたことないわ!』
担任も 毒舌を浴びせながら祝福する
『先生もグルだったの?』
『そうしないと 私がこいつらにイジメられるんだから!』
結局は みんなに愛されているチェギョンを見て ユルは嬉しかった
下校時間になり チェギョンは ユルへの感謝を撤回する
『あんたもグルだったとはね!』
『仕方ないだろ 頼むから参加してくれ お前の優れた演技力を見せろって』
ユルと別れ チェギョンは車に乗り込む
その隣に座っているのは皇太子イ・シン
ユルは 笑顔満面のシンに手を振り 見送った
(そこは俺の席だ 分かってるのか? この俺の席なんだ…!)
遠い場所から ヒョリンもまた 黒塗りの車を見つめている
思いきれないシンへの思いは 行き場のないまま心に積もる
これからは遊ぶと宣言したヒョリンを シンの友人たちが誘う
しかしまだ それに応える余裕はなかった
東宮殿に向かう車の中
チェギョンは 実家がある路地を 恨めしそうに眺める
『自転車に乗って学校通ってたのに… 自転車に乗りたいなあ』
実家に寄りたいという頼みに シンは 無言でテレビ電話を受ける
毎日ひとりで受けていたスケジュール報告を 今は夫婦で聞く
<下校後には書筳堂にて 殿下は21世紀の立憲君主制教育を
皇太子妃様には 孝敬教育を受けていただきます>
実家では
娘は元気でいるのかと 父親が深くため息をつき心配している
電話しようとする夫を 厳しく止める妻!
里心を思い出させてはダメだと あまりにも冷たい妻が憎らしい…!
街角の花屋
偶然にもそこで ヒョリンとユルが 偶然に再会する
互いに 空港で会った相手だと気づく
『携帯電話は直したんですか?』
『いいえ あの日でダメになっちゃって』
新しい携帯を見せるヒョリン
シンの友人“○○電子の次男坊”がくれたのだ
ユルが選ぶ鉢植えに ヒョリンが どうして花束じゃないのかと聞く
『根っこのない花は嫌いなんです』
それを聞き ヒョリンもまた鉢植えにすると言い出す
まだ互いの立場を知らない2人
この2人もまた 不思議な縁でつながっている
ユルが用意した鉢植えは 母親のためのものだった
2人の 空港での再会に フラッシュが焚かれた
『お帰国をお祝い申し上げます 皇太子妃様』
ヘジョン宮を“皇太子妃様”と呼ぶのは 新聞社の局長チェ・ジノ
記者だったジノは 長い年月の経過の中で局長になっていた
『君がユルだね』
『義聖(ウィソン)君様です』
『若かった頃のイ・ス… 孝烈太子にそっくりだね』
親しげに話すチェ局長は 孝烈太子の友人だった
2人の 心強い協力者である
2人が食事をするホテルに ヒョリンの姿があった
同じように買ったヒョリンの鉢植えは
ここで行われた謝恩会で 失望させた講師に渡すためのものだった
ユルの姿を見かけ 声をかけるヒョリン
『こんばんわ ミン・ヒョリンです 同じ学校の友達です』
『こんばんわ ユルの母です』
この挨拶で 互いの名前を知る2人
そこへ 舞踏家講師が駆け寄ってくる…!
ユルの母ソ・ファヨンは 講師の先輩なのだという
『ファヨン先輩は 14年前と全然変わってないのね 前より若くなったみたい』
ユルを見て 本当に似ていると絶賛する
王子様みたいだと叫び 本当の王子様に向かって失言だったと笑う
『久々に会えて嬉しかったわ それと…
私が帰国したことは誰にも言わないで』
足早に車に乗り込むヘジョン宮は 知人に会ったことを喜んでいないようだ
本物の皇太子妃だった人だという講師の言葉に 驚くヒョリン
『孝烈太子が事故に遭ってなかったら 当然ファヨン先輩が皇后の座にいて
当然あの息子が 皇太子だったってわけよ!』
皇室では
皇后が 確実に帰国するヘジョン宮を 警戒している
日時は分からないものの 今日にも極秘で帰国するはずだと…
すでに帰国し 姿を見せている義聖(ウィソン)君を監視する必要がある
皇帝の前で 不安を口にする皇后
『14年間 全く連絡がなかったのに
よりによって 陛下がこのような時に戻って来るとは
近々 ヘジョン宮も帰国すると聞き 心配でなりません』
常に反目しあう2人だったが これについては共通の不安を抱えていた
思わぬ形で皇帝と皇后になった2人は
ヘジョン宮と義聖(ウィソン)君の思いを 十分に承知しているのだ
元皇太子妃 ヘジョン宮は 宗親の皇族たちと会う
イギリスにいた間 夫の墓を守ってくれた者たちである
同時に 2人を支援する者たちでもあった
『私たち たくさんつらい思いをしてきたわよね でもこれからが始まりよ
欲張ったりはしない 私達が失った分だけ それ以上でもそれ以下でもなく…
急に動いたりはしない 少しずつ… ゆっくりと… 分かった?』
ユルは うなずくしかなかった
一方 チェギョンは 豪華な食事を不満げに眺めている
じっと見守られ 何を食べたのか 実況で記録される落ち着かない食事…
食事ばかりではなく 映画鑑賞の時間まで決められているという
それも 皇帝が好む映画を 皇帝と同席で…
『それはいつから?』
『今日から』
『え? マジで?! 食後は少し休もうかと思ったのに』
『休めるわけないだろ
訓育復習をまず先にして その後に映画鑑賞さ』
皇帝との映画鑑賞は 予想通りつまらなかった
それでも 鑑賞後はお茶を飲みながら感想を言わなければならない
時代劇の感想を 素直に口にするチェギョン
『韓服が本当に美しいと思いました
以前までは韓服というと 赤、イエロー、群青色そんな色だけだと思ってました
でも 宮廷で毎日韓服を目にしてると 色彩豊かなことに気づいたんです
昔から我が民族は 白衣民族だと言われてますが
私は 色衣民族だと思うんです』
『色衣民族か…』
『花、紅葉、木、空、蛍火…
映画の中で映し出される自然の風景のように
韓服の中には 我が民族の自然の色が盛り込まれている気がします』
皇帝は チェギョンの感想を喜びの表情で称える
またこうして 一緒に鑑賞してほしいと言われ
それにどう答えたらいいのか…
かしこまろうとして チェギョンの舌がもつれた
『ハハ… 構わないから楽に応えなさい』
『はい 喜んで!』
東宮殿に戻る2人
シンの携帯には ヒョリンから着信が
乗馬クラブからの報告だけだと言い 事務的に話すヒョリン
自分たち2人が出ないせいで 乗馬クラブは廃部になりそうだと…
その会話を横目に チェギョンは実家に電話する
涙ながらに喜ぶ父親に 金持ちになったと報告すると
その電話を奪い取り 母親が…
突然に成績がよくなった保険相談員の収入で 借金は返済できるという
『そのお金は 国民の税金なんだから 無駄遣いしちゃダメよ!
じゃあね おやすみ!』
あっけなく電話は切られてしまった
***** * ***** * *****
どうしてこんなに虚しいんだろう
ママが保険相談員のシンデレラになったということは
もう借金取りに追われる必要はないってことなのに 全然嬉しくない
皇太子妃になりさえすれば 問題は全て私が解決できると思ってたのに
この虚しい気持ちは何?
***** * ***** * *****
やりきれない気持ちを抱え シンの専用空間の方を覗き見る
***** * ***** * *****
あいつ どうしたんだろう
幼い子供みたいに テディベアを抱いてるなんて
何か胸が痛むことがあって あんな悲しい表情をしているのかな?
好きな子と結婚できなかったから? そのショックで?
それじゃあ この私は何なのよ!
『超サイテーな気分!』
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