盾02 第31話 喪中の駆け引き 盾02

功臣たちが 世祖(セジョ)の弔問に訪れた

しかしこれを ユ・ジャグァンが阻む

国葬都監が決まるまでは 通すわけにはいかないと…!

※国葬都監:王の葬儀の責任者


ホン・ユンソン チョン・インジらが 強硬に通ろうとする

ユ・ジャグァンの合図で 兵士がこれを取り囲む!

大妃(テビ)殿では

なぜ功臣を阻むのかと 貞熹(チョンヒ)大妃が憤る

クィソン君とナム・イは ひれ伏して罵声を浴びている

すでに 国葬都監はハン・ミョンフェとシン・スクチュに任せたはずだと

王妃の主張に対し 2人は あくまでも領議政(ヨンイジョン)の役目だという

※大妃(テビ):先王の妃

※領議政(ヨンイジョン):国政を統べ全ての官吏を代表する官職

『なぜそこまでこだわるの!!!』

若い重臣が そこまで老臣を排除するのかと憤る大妃(テビ)

しかし それには列記とした理由があった

『喪中は 国葬都監が朝廷の長になるのです』

『領議政(ヨンイジョン)は何を?!』

『領議政(ヨンイジョン)だけでなく 王様も政務を執れません

“孝”が国の根幹のため 喪中の執務はこれに反するからです』

もともと 字も読めない大妃(テビ)である

王室のしきたりについても その知識がなかった

『ハン様がその気になれば 朝廷を掌握できるのです』

クィソン君の言葉に 本当なのかと息子睿宗(イェジョン)王に聞く

そして 自分は無学だから そこまで気づかなかったと…

ようやく大妃(テビ)の納得を得て 2人は下がった

ナム・イは ジャグァンに駆け寄り 今後の対策を講じる

世祖(セジョ)の生前 兵を動かしたことで ナム・イは追い詰められていた

『ハンが国葬都監になれば 我々は粛清される』

睿宗(イェジョン)王は やはりハン・ミョンフェを推すべきだと言い出す

しかし粋嬪(スビン)の腹心であるミョンフェが 大妃(テビ)には信じられない

※粋嬪(スビン):後の仁粋大妃(インステビ)

『お忘れですか 粋嬪(スビン)様は父上に 譲位を勧めました』

『魂胆があるからよ!』

『粋嬪(スビン)様一家は 数少ない親戚です

遠ざければ 私たちは孤立無援も同然です』

『粋嬪(スビン)はあなたの王座を狙っているのよ!』

睿宗(イェジョン)王は 何とか2人を和解させたかった

任を受けたユン・サブンには 荷の重い話であった

その夜 サブンは ハン・チヒョンの案内で 粋嬪(スビン)の私邸に赴く

粋嬪(スビン)ハン氏は 部屋に祭壇を作り 自ら煎れた茶を捧げている

ご霊前に参れない立場だから 自分なりの供養をしているという

突っ立ったままのサブンは 促されてようやく座り込んだ

『癸酉靖難(ケユジョンナン)を話し合われた部屋ですな

歴史的な場所です』

『大妃(テビ)様は 今も深くお悲しみですか』

※癸酉靖難(ケユジョンナン):首陽(スヤン)大君が政権を奪取した政変

粋嬪(スビン)の方から切り出され サブンは話しやすくなる

サブンが 粋嬪(スビン)に対面するのは 今日が初めてである

何かと口汚く罵ってきたが その人となりを見てきたわけではなかった

実は話が…と言った瞬間 じっと見つめられ 言葉を失うサブン

その眼力に圧倒され 話せなくなってしまう

『国葬都監の件ですか』

『なぜお分かりに?!』

『大妃(テビ)様の最も信頼するお方が 夜半に来られたのです』

察しがつくと言われてさらに気が楽になり サブンは饒舌になる

それでもまだ 本筋には入れなかった

『ご要望は何でしょう 私が頭を下げましょうか?』

慌てだすサブン

あまりに物分かりがよく 先手を取られタジタジになる

もうどうにでもなれと サブンは包み隠さず大妃(テビ)の悩みを話し出す

こういった意味では 思慮深い弟サフンよりも適任だったかもしれない

サブンは 何とか溝を埋めて和解できないかと 真っ向から頼み込んだ

『粋嬪(スビン)様が歩み寄ってくだされば

大妃(テビ)様はハン殿を 国葬都監に任命されます』

粋嬪(スビン)は 快く承諾し 明日にでも会って話し合うという

あまりに簡単に事が進み サブンは大喜びで帰っていった

翌日

粋嬪(スビン)を前に 大妃(テビ)は 国葬都監はクィソン君に任せるという

それは結構だと 笑顔で応える粋嬪(スビン)

きっと説き伏せに来たのだと思っていた大妃(テビ)は 拍子抜けする

『誰がなろうと私は構いません』

『私の無学を笑いに来たの?魂胆はお見通しよ』

だったら何で来たのかと言わんばかりに喧嘩腰である

ハンを国葬都監にして国政を牛耳る気だろうと

クィソン君から得た知識を振りかざす大妃(テビ)

『喪が明けるまで 国葬都監が政権を握るのでしょう?

残念ね 無学な私を手玉に取れなくて!』

どうだとばかりに嫌味を言う姑

粋嬪(スビン)は 小さくため息をついた

『その間 王様が政務を執れないこともご存知ですね』

『それがどうしたの?』

『喪主が政務に関わるのは 親不孝になります』

『だからクィソン君に政務を任せるの!!!』

終始 喧嘩腰の姑に 粋嬪(スビン)は静かに話し続ける

『宮殿の主は お義母様です

服喪期間中は お義母様が国を統治なさいませ

王様は喪主の役目を果たし

国葬都監は 上王(サンワン)様のご葬儀を 盛大に行う義務があります

ですから 政務はお義母様がお執りになるのです』

部屋の外では 気を揉んでいたサブンが 音を立てずに拍手する

粋嬪(スビン)は 大妃(テビ)に 摂政になることを勧めたのである

この国はお義母様のものだと言い じっと姑を見つめるのだった

大妃(テビ)の答えを待たずに 粋嬪(スビン)は立ち上がる

言うだけのことは言ったので もう帰るというのだ

まだ話したそうにする大妃(テビ)

思いもしなかった名案を授けられたものの 不安で仕方ないのだ

『この国の未来は お義母様次第です』

大妃(テビ)殿を出ると ハン・ミョンフェが待っていた

粋嬪(スビン)が何をしに来たか ミョンフェには察しがついていたのだ

『国葬都監になったら 第一の標的はクィソン君の部下です

ナム・イの手から 軍事権を奪ってください』

粋嬪(スビン)が去った後 サブンが大妃(テビ)を焚きつける

この国を治めるのは大妃(テビ)様だと そう言った真意は

ハン・ミョンフェを国葬都監にしても 大妃(テビ)様に従うということだと

サブンは 興奮状態で妹を諭す

『策略に嵌めるつもりでは?』

『味方につければいいのです!

政務は粋嬪(スビン)様が処理してくれます』

『それが心配なのです!私に操り人形になれと?!!!』

そんなことはさせないと豪語するサブン

常に目を光らせ 監査し 粋嬪(スビン)が何もできないように監視すると!

ハン・ミョンフェが 国葬都監に任命された

朝廷の長であるクィソン君が果たすべき任務が ハンの手に落ちたのである

直ちに入宮せよという命を持って パク尚宮が私邸を訪れる

しかし粋嬪(スビン)は これを固辞した

『大妃(テビ)様のお力では 山積みの政務を…』

言いかけて 慌てて口を閉じるパク尚宮

以前 王族を批評して散々叱られたことがあった

しかし粋嬪(スビン)は ただ微笑むだけだった

大妃(テビ)殿では

都承旨(トスンジ)クォン・ガムが 今日中の決裁が必要だと

山ほどの上奏文を持ってきていた

※都承旨(トスンジ):王の秘書機関の長


しかし大妃(テビ)は 書簡を開いたまま絶句する

字が読めないため 何ひとつ決済することができない

『上王(サンワン)様の葬儀に関する 人事案件なのです!』

それならハン殿に…と答えても

どうしても内旨が必要だと食い下がられてしまう

まさか字が読めないとは言えない

頼りにしていた粋嬪(スビン)は 顔を見せようともしない

チョン・ギュンの取り成しで退室した都承旨(トスンジ)が舌打ちをする

字が読めないなら黙って裁可すればよいのだと…!

慌ててその口をふさぐチョン・ギュン

大妃(テビ)は 疲れ果てていた

“この国の主”と言われ 舞い上がってしまったことを後悔し始める

粋嬪(スビン)は 入宮するにあたり 姉桂陽(ケヤン)君夫人を呼ぶ


数か月間の留守を 頼むためである

再び実家から戻った嫁のことが気がかりであった

どうにも病弱で これでは子孫が望めるとは思えなかった

12歳になったチャサン君は もう嫁との初夜は済ませただろうかと

桂陽(ケヤン)君夫人は 面白そうに話す

連れてきた女官ソンイに “教育係”を任せては? と切り出す

女官に女性の扱いを教えさせるのは

子孫繁栄が重要視される 両班(ヤンバン)に家には普通だというのだ

※両班(ヤンバン):貴族的特権階級

思いがけず 粋嬪(スビン)は興味を示す

これを立ち聞きしているソンイは 嬉しさに飛び上がるのだった

粋嬪(スビン)が入宮すると 溜まっていた上書がみるみる片付いていく

『なぜ横にどけるの?』

『急を要さないものもあります

緊急な案件だから 裁可を急ぐのではありません

急を要するからこそ 先延ばしにすることも』

『どうして?』

『官吏は賢いから わざと急ぎの案件を作り上げ

その隙に 己の利になる案件を通すのです』

なるほどと思いながら それでも数か月のことだと

大妃(テビ)は 覚えても無駄なことだという

それに対し粋嬪(スビン)は 昔のように言いたいことを口にする

『お義母様 喪が明けるまであと3年もあります

それに 王様に万一のことが起きたら お義母様が政務を執るのです』

嫁に諭されて やはり字を習っておくべきだったと しみじみつぶやく

昔から どんなに教えても とうとう身につけることはなかった姑である

大殿内官チョン・ギュンは この会話を聞いていてもいいかどうか戸惑う

粋嬪(スビン)は 扉の外で待つ都承旨(トスンジ)に

裁可した上書を渡すように言い 今後は出向くことはないと命じた

内官に届けさせるから 承政院(スンジョンウォン)で待てと

※承政院(スンジョンウォン):王命の伝達と王への報告を行う官庁

粋嬪(スビン)の働きに 重臣たちは驚くばかりである

一方 兵曹判書(ピョンジョパンソ)から部隊長に降格されたナム・イは

クィソン君に不満をぶつける

座して死を待つよりは 決起すべきだとけしかけた

※兵曹判書(ピョンジョパンソ):軍事を司る官庁の長官

喪中を理由に動こうとしないクィソン君に見切りをつけ

ナム・イは 単独で決起すると言い出す

ジャグァンは ナム・イの後については行かなかった

執務室から出てくるハン・ミョンフェを待ち 自己紹介をする

ユ・ジャグァンは 逆境を克服して武人となり

その後 科挙に首席で合格し 官吏の道を歩んだ

身分の壁に 出世の道が閉ざされると

多くの陰謀に加担し 名を上げた人物である

出世の為なら手段を選ばぬ この男が後に 多くの命運を握ることになる

1日の政務が終わり 粋嬪(スビン)は 大妃(テビ)殿で共に夕食を取る

出された料理に肉が入っていることに気づいた粋嬪(スビン)は

大妃(テビ)様に失礼だと 烈火のごとく激怒した

大妃(テビ)様の健康状態を気遣ってのことだと 答えた尚宮を

口答えするのかと怒鳴りつける

料理は全て下げられた

粋嬪(スビン)は 姑の好物が肉だと知っている

尚宮を叱りつけはしたが 夜食には肉をと言ってなだめるのだった

パク尚宮は 震え上がる尚宮たちを見てほくそ笑む

どんなふうに粋嬪(スビン)が 大妃(テビ)を操っていくのか

それが見ものだと言い 笑いをこらえるのだった

その頃 ハン・ミョンフェの妻は 再び娘が戻され激怒していた

馬鹿にするにもほどがあると 夫の部屋に怒鳴り込もうとする

側室チョソンが どうせ何もできないくせに!と妻をたしなめ引き戻す

妻と側室の騒ぎを聞きながら 笑い出すミョンフェ

高官の妻といってもあの程度だと…

そんなミョンフェの前にかしこまっているのは ユ・ジャグァンだ

側室の息子である自分は 出世できないと言い出す

自分は門番だったが 領議政(ヨンイジョン)まで昇りつめたというミョンフェ

『功を立てても認められぬ悔しさに負けて 罪を犯しました』

ジャグァンは ナム・イの詩が書かれた書状を差し出す

繰り返し読むうちに ミョンフェの表情が一変する…!

この詩こそが ナム・イの首を討つ名分になるのだった

宮殿では

粋嬪(スビン)が 用意された部屋で休もうとしていた

チェ尚宮を呼ぶようにと言われ パク尚宮は戸惑う

酒に溺れ 暴れるチェ尚宮は 縄で縛られ監禁状態で生きていた

『私を恨んでいるのね』

『ただの逆恨みです』

その頃 私邸では ソンイが楽しそうに布団を敷いている

その部屋には入らず チャサン君は夜空を見つめていた

『若奥様が心配なのですね』

『母上が恋しいのだ』

『今朝まで一緒だったのに?』

『私たち兄弟の為に苦労されているのに 私には何もできない』

『ご存知なのですね』

『それくらい私にも分かる!』

そんなチャサン君を引き寄せ 抱きしめるソンイ

どんなに恋心を抱こうと 今はまだ 母親のように愛するだけだった

『昔を思い出しました よく私の蒲団に潜り込んできましたね』

『一人寝が怖かったからだ』

だったら添い寝すると言われ さすがに照れて チャサン君は拒否する

ソンイは 有無を言わさず部屋の中に引っ張って行く…!

その様子を 桂陽(ケヤン)君夫人に報告する侍女サムウォルは

ソンイが哀れでならないとこぼす

あんなに好きなのに いつかは捨てられる運命なのだ

桂陽(ケヤン)君夫人は 何不自由なく暮らせるのに

何が哀れなのかと 一向に気遣うつもりもないのだった

一方 大殿内官チョン・ギュンは パク尚宮の部屋で肉を頬張っている

喪中で公に食せない肉を 水剌間(スラッカン)から調達してきたのだ

※水剌間(スラッカン):王の食事を用意する所


内官と尚宮の栄華を極めている2人は 時おりこうして過ごし

宮中のことを話し合っているのだ

大妃(テビ)様は 粋嬪(スビン)様を入宮させたことを

後悔し始めるだろうというパク尚宮

嫁と姑の攻防は 宮中で語り草になっているのだ

そして 粋嬪(スビン)が チェ尚宮を侍女にしたいと言ったことについて

チョン・ギュンは 気の毒だが 酒浸りのままでいてもらおうと話す

それが 2人にとっては最も都合のいい状況であると…

粋嬪(スビン)は眠らず 世祖(セジョ)の祭壇へ行く


そこには 内官と尚宮しかおらず 兵士は常駐していなかった

王の意向だとしても 何とかするようにと 内官に命じる粋嬪(スビン)

祭壇で祈り続ける睿宗(イェジョン)王の両足は 血が滲んでいた

『真冬なのに東屋に?』

『息子の道理ですから』

『国の王統を受け継ぐ大事なお体なのです ご自愛なさいませ』

粋嬪(スビン)を“義姉上”と呼び おそらく自分は長生きできないと

睿宗(イェジョン)王は目を伏せた

『私の息子は まだ赤子です

だから 月山(ウォルサン)君たちを大君(テグン)に封じましょう』

『…王様』

『王室の為です 他の理由はありません』

『私は王様を恨んでおりません ただ息子たちを守るために…』

『分かっています 代わりに斉安(チェアン)大君を守ってください

この約束は 2人だけの秘密です』

立ち上がった睿宗(イェジョン)王は 歩くことも困難な様子である

粋嬪(スビン)は 座るようにと言い 熱い湯と綿布を持ってこさせる

血だらけの包帯を解き 手当てをする

熱い湯で傷を洗いながら 粋嬪(スビン)は涙ぐんだ


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