ぐにゃぐにゃ 第9話 ウンスの心、ヨンの真意 ぐにゃぐにゃ

『近衛隊チェ・ヨン以下 隊員 王命にて参上しました』

重臣が進み出て チェ・ヨンは先王を惨殺した謀反人だと進言する

それは何の咎で? と問う恭愍(コンミン)王

『先代と結託したというのならまだしも

余に敵対した謀反人を殺したのが罪か?

近衛隊長は 一度として余の命に背いたことなどない

それを謀反人呼ばわりとは何事か!』

恭愍(コンミン)王は 高麗(コリョ)の王として チェ・ヨンを昇格させ

近衛隊に特別の権限を与え 今後は 隊への軍政干渉を一切禁じた

会議が終わるとキ・チョルは 間者として配置した王妃付きの女官から

昨夜以降の経緯を報告させた

王が自ら 王妃のもとへ出向き 高麗(コリョ)の正装を差し出したのだという
王に敵対しているはずの王妃が これを受け取ったと…!

『夜が明けるや 讞(おん)部に王命が下ったのです』

『脱獄後 王のもとへ参ったのは昨日の午後

一夜のうちに すべて事が進んだわけか たった一夜で…

王は弁髪をやめ胡服を脱ぎ捨て 近衛隊を呼び寄せる気概を見せた』

※弁髪:主にモンゴル周辺の男性の髪型

※胡服:唐代に流行したイラン系の服装

『王の兵力は 近衛隊の100名のみ 大臣衆は私が抱き込んでおる!

開京(ケギョン)と皇宮を守る鷹揚軍も龍虎軍も 私の配下』

『今や 医仙も兄上の手にあります』

チェ・ヨンは 王に謁見し まずは宮中を清めねばと進言する

つまり… とヨンの叔母チェ尚宮が その真意を説明する

『王様を取り巻く “人間の言葉を話すネズミ”の駆除でございます

宮殿に巣食っておりますゆえ』

参理チョ・イルシンは 口やかましいが 10年も連れ添った功臣であり

最近は禁軍(クムグン)への根回しに忙しいようだという

※禁軍(クムグン):王を護衛する王直属の部隊

『鷹揚軍と龍虎軍は キ・チョルの掌中にありますが

キ・チョル直属の私兵より俸禄が少なく 手なずけやすいのです』

チョ参理は 帰国するや皇宮の倉庫の鍵を握ったのだと…

その情報力に 目を丸くする恭愍(コンミン)王

『“宮中にチェ尚宮 外に手裏房(スリバン)”ですね』

“手裏房(スリバン)”に興味を示す王

いずれ改めて紹介するというヨン

兵力を集めるには 何と言っても資金が必要だが

“資金源”の重臣たちは皆 キ・チョルの側についている

言うことを聞くだろうかという王の問いに チェ・ヨンは…

『奪う以外… まず無理でしょう』

『先に 医仙を取り戻したい』

自分のせいで医仙が奪われたと 王は気にしていたのだ

『7日でその心をつかんだ者が医仙を得る』

『なら 医仙の心を確かめましょう』

王のもとを下がると チェ尚宮は チェ・ヨンを問い詰め

医仙を慕ってはならぬと釘を刺す

否定しても通用しない

キ・チョルが手に入れたいと思っている医仙を慕えば 医仙に害が及ぶと!

『あの者は 何でも掌中に収める一方 手に入らない者は抹殺する

医仙の無事を願うなら 目を合わせず 名前も口にせず 想うことも…』

『妙な勘繰りはよしてくれ!!!』

数日前 医仙ユ・ウンスは チェ・ヨンのことを考えていた

そして そばにいた千音子(チョヌムジャ)に気づき 話しかける

千音子(チョヌムジャ)は 獄中のチェ・ヨンを殺せと命じられたことを話す

舎兄キ・チョルに命じられたのは 医仙が“生かせ”といえば殺し

“殺せ”といったら生かせと言われたのだという

これに憤慨したウンスは キ・チョルの部屋に怒鳴り込んだのだ

「死刑判決なら最高裁の判事に頼むのね!

ここでは介錯人と言うべきかしら?!」

激怒しているのは分かるが 何を言っているのか理解できないキ・チョル

「だからお心が欲しいのです

心が私にあれば あの者に用はないはずです 違いますかな?」

「それは脅し?」

「まさか 問いかけを脅しとは心外です

心を下さるなら そちらをお召しいただきたい」

今 ウンスは あの時キ・チョルが用意した服を着ている
現れたキ・チョルに 自分は監禁されているのかと聞く

『囲えば心が手に入ると思うの?!』

『天界語で取引は“ディール”だとか』

キ・チョルは 元の滅亡を予言したウンスに 地図を開いて見せる

いつどのように元が滅び 次に どの国が興り どんな大国になるのか

それを知り 世の中を変えたいのだという

しかし 韓国史や世界史は得意じゃないというウンス

『こうおっしゃいました

民が望む者を王に選び 民のための政(まつりごと)を行うのだと』

『歴史は勝手に変えられないわ

誤って書き換えれば 未来が壊れてしまう』

衰退の一途を辿る高麗(コリョ)は 元に帰属させるべきだというキ・チョル

しかし 元が滅びるのであれば他の国に売り渡し その国ごと手に入れると

『誤解だといったら?

私は天から来た者でなく 歴史も分からないと言ったら…』

『その時は 私をだました妖魔になる

医仙ではなく 妖魔なのですか?』

そこへ 近衛隊長チェ・ヨンが来たと 千音子(チョヌムジャ)が告げる

キ・チョルが止めるのも聞かず ウンスはチェ・ヨンのもとへ…!

チェ・ヨンは ウンスに視線もむけず キ・チョルと話す

ここに置いて行った 自分の剣を返してほしいと それが頼み事だった

話しかけようとするウンスを遮るチェ・ヨン

『府院君様と参内なさった つまりお心はこの屋敷に?』

『……』

『王は そう判断なされたが』

『私はここに監禁されてる

出たいと言えば あなたは戦って血を流すわ

私は大丈夫 利用価値があるから大切にしてくれてる』

2人の姿が見える位置で キ・チョルは様子を窺っている

ウンスは キ・チョルに見えないように チェ・ヨンの服の裾をつかむ

『あなたが殺されるかと思った そう脅されたから… 会えて安心したわ

慶昌君(キョンチャングン)には綺麗な服を着せた

絹は許してもらえず 白い麻の装束を』

『天界では嘘をつきますか? 嘘も方便です』

意味深な言葉を残して チェ・ヨンは去った

その帰り チェ・ヨンは何者かの攻撃を受ける

応戦しながら 面倒でたまらないと叫ぶ

それは 手裏房(スリバン)の一団だった

屋根の上から 薬売りの男女が声をかける

『新王の飼い犬になったらしいな どれ 吠えてみろ!』

まったく… と笑ってみせるチェ・ヨン

今月中に近衛隊を辞めるという話は どうなったのかと詰め寄る男女

『天の医員ってのは本物か?』

チェ・ヨンは 新王に尽くす忠臣が必要だとだけ話した

その情報力で 人を集めてほしいと

その頃ウンスは 門を警備する私兵といがみ合っていた

どうしても外に出ようと聞かないウンスに困り果て

キ・チョルは 部屋に閉じ込め鍵をかける

そこへ チェ尚宮が 王の使者として現れた

チェ尚宮によれば 王妃が危篤に陥ったのだという

もともと 天の医員が治療したため 医仙でなければ治せないという

もはや医仙の心は府院君にあり 許可を得たいと申し出る

是非ご協力いただきたいと

チェ尚宮は そこまで言うと キ・チョルに近づき その耳元に

王妃様からの内々の話もあると囁いた

王妃の脈をとる侍医チャン・ビン

その深刻そうな表情を盗み見て 間者の女官がキ・チョルに報告する

危篤という話が本当だと確信し キ・チョルは申し出を承諾した

王妃殿を見舞う恭愍(コンミン)王

『このような難儀をかけ 合わせる顔もない』

『難儀ではありませぬ』

意識不明のはずの王妃が起き上がる

この身を捧げても役に立ちたいと 王妃が自ら願い出たことである

『ですが私は いつも王様を怒らせてばかり

お心に添わぬことが つろうございます』

キ・チョルは 千音子(チョヌムジャ)を伴い 医仙ウンスを皇宮へ連れ出す

出迎えたチェ尚宮が 共の千音子(チョヌムジャ)を留め置き

キ・チョルと医仙ウンスだけを 奥の方へ案内する

歩きながら 異変に気づくキ・チョル

『待て 坤成(コンソン)殿ではなく 康安(カンアン)殿なのか?!』

通されたのは 先日御前会議が開かれた康安(カンアン)殿であった

恭愍(コンミン)王が現れ 続いてチェ・ヨンが現れた

『王様 尋問をどうぞ!』

『尋問… ですか?!』

状況が飲み込めないキ・チョル

すると チェ・ヨンが 医仙ウンスに向き直る

『医仙 天界の名はユ・ウンス

この女人は先月5日 幽閉中の慶昌(キョンチャン)君を訪ね

天界にお連れするとそそのかし 2日間 連れ回しました』

キ・チョルはじっと目を閉じ ウンスは目を丸くしている

恭愍(コンミン)王は キ・チョルに聞く

チェ・ヨンが 屋敷から医仙を連れ去ったと言うが それは可能かと

医仙が屋敷を出たのは キ・チョルが屋敷から出したとしか考えられないのだ

仕方なくそれを認めるとチェ・ヨンが…

『指示したのは江華(カンファ)郡主アン・ソンオ

慶昌(キョンチャン)君と医仙をかくまい 私チェ・ヨンに取引きを持ちかけた』

そこへ 近衛隊が アン・ソンオを連行してきた


同時に千音子(チョヌムジャ)が 包囲される

音功の使い手であろうと 皇宮で術を使えば謀反人である

王の前のアン・ソンオは キ・チョルの足元に取りすがる

知り合いかと問われ 知らないと言い切るキ・チョル

『医仙に問う 誰の命に従った?』

『待ってよ!私と一緒にいたで…』

言い終わらないうちに チェ・ヨンが視線で訴える

ウンスは “嘘も方便”というチェ・ヨンの言葉を ようやく理解した

言われるままに証言するウンス これを受けチェ・ヨンは…

『江華(カンファ)郡守
アン・ソンオは 慶昌(キョンチャン)君治療のため

屋敷にかくまいました そればかりか 私にこう言ったのです!』

「慶昌(キョンチャン)君様が命じられたら どうするおつもりか

復位を望み 力を貸せと頼まれたらどうする?」

あの日 アン・ソンオが持ちかけた戯言を 王の前で語るチェ・ヨン

その内容は 謀反と思わせるに十分だった

恭愍(コンミン)王は アン・ソンオを罷免し その財産を没収すると言い渡す

『たいした財産だ おや 税の3分の2が政客に収められておる

もしや 徳成府院君(トクソンプウォングン)のところに?』

『違います…』

『ならばよい』

アン・ソンオの処罰と共に 医仙も処罰せねばならないと言い

恭愍(コンミン)王は ウンスを捕え 牢獄へ連行せよと命じた

“謀反”を疑われ“処罰”といったら 現代人のウンスにも意味は分かる

徳成府院君キ・チョルは まんまと医仙を奪われてしまった


激しく抵抗しながら ウンスが連行された先は 王妃の部屋だった

危篤だと聞いた王妃 魯国(ノグク)公主が出迎え

同席するチェ尚宮が事情を説明する

『徳成府院君を裁くには影響が大きく

代わりに 江華(カンファ)郡守を処罰しました』

事情は理解したが ウンスの怒りは収まらない

勝手に連れてこられたこの世界で 何度となく理不尽な目に遭った

そして今度は 嘘とはいえ謀反の罪に問われ

典医寺(チョニシ)での居住を義務付けられたのである

※典医寺(チョニシ):高麗(コリョ)後期 宮中で治療を担った官庁

チェ・ヨンの脛をしたたかに蹴り上げたウンスは

やり場のない怒りに泣き出し 目の前の侍医チャン・ビンに抱きつく

チャン・ビンは チェ・ヨンと視線を合わせ 戸惑いながらウンスを連れて行く

心を穏やかにする茶を煎じ チャン・ビンは 静かに話す

本来の居場所ではない世界で生きる感覚

ウンスは苛立ちをそのままチャン・ビンにぶつける

そして 火苦毒に侵され苦しむ 幼い王に何もしてやれなかったこと

その王を 近衛隊長は剣で刺したのだと…!!!

『火苦毒では救う術はなく いかに苦しまず死を迎えるかだけです

でも私なら 隊長に剣は抜かせません』

武人が かつての主君を殺めることが どんなに苦しいことか…

そして隊長が殺めたのは 己の心なのだというチャン・ビン

さっぱり意味が分からないウンス

『あの事があって 隊長は 皇宮に残る決心を

隊長はずっと願っておりました

皇宮を去り 自由に生きたいと』

一方 医仙を奪われ 江華(カンファ)島からの貢物が手に入らなくなり

苛立つキ・チョルは 次の策を考え 再び医仙に会うと言い出す…!

典医寺(チョニシ)の薬草園に乗り込み 医仙ウンスを捜す

『華佗(カダ)の形見が3品あるとお伝えした』

『それが?』

『2品目をご覧になりませぬか?

私と内々で 他の者の目の届かぬ所にて』

1品目は 明らかに現代の医療器具だった

ウンスは 自分の中の好奇心に従い キ・チョルを自室に通す

『天界ではこう言うわ とっととカードを見せろとね』

差し出された物は 書物だった

『長年の苦労の末 文字の一部は西域の数字と分かりました

だが 他が読み解けず』

『私に読めというのね 見せて』

包みを開いた途端 凍りつくウンス

革張りの“書物”の表紙には「DIARY」とある

『これが… 華佗(カダ)の形見なの?』

『そうです』

『数百年前の物よね?』

『華佗(カダ)は千年前の御仁です』

革の表紙を開き 今にも朽ち果てそうなノートの頁をめくる

それは紛れもない… ウンス自身の手帳だったのである…!!!


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