稲妻 第14話 衝撃の再会 稲妻

婚礼の準備には 大勢の使用人が駆り出される

チョン・ジョンは 荷運びの使用人の中に スンユに似た男を見かけるが

まさかそんなはずもないと苦笑する

しかし それは見間違いではなかった

スンユは 支度を終えたセリョンの部屋に忍び込み 背後から襲いかかる!

花嫁の入場を待つ一同は あまりに遅いことに不審を抱き

ユン氏夫人が様子を見に行く

支度の部屋には争った跡があり セリョンの姿が消えていた!

セリョンがさらわれたことで 婚礼は中断され

錦城(クムソン)大君の決起も 迎え撃つ首陽(スヤン)の謀略も流れた

シン・ミョンは 婚礼衣装を脱ぎ捨て 直ちに犯人の捜索に向かう!

人が入るほどの大袋を抱えた馬が駆け抜けたとの情報を得て

麻捕(マポ)の渡し場に向かうシン・ミョン

スンユは 妓楼の納屋に忍び込み セリョンを袋から出した

そのまま縛り付けると 何食わぬ顔で部屋に戻り

首陽(スヤン)宛に書状を書く

その頃首陽(スヤン)を囲み 思案に暮れる一同は

錦城(クムソン)大君の仕業ではないかと疑っていた

偽の謀略の情報を流し セリョンをさらったのではと…

『それは違うでしょう』

ただ1人 ハン・ミョンフェだけが異を唱えた

何の徳もないことをするはずがないという

そして…

『お嬢様を連れ去った者が誰であれ

この件も 首謀者は錦城(クムソン)大君でなければ』

思いもよらぬ提案に 皆 動揺する

ただ首陽(スヤン)だけが 納得したように決断した

『漢城府(ハンソンブ)に連絡し 錦城(クムソン)を捕えよ!』

私邸に戻った錦城(クムソン)大君とチョン・ジョンは

計画が中止になったことを王女に報告する

自分たち以外に首陽(スヤン)大君を恨む者がいるというのか…

言い出せないが チョン・ジョンはやはり

スンユに似た男を見たことが 気にかかっていた

『まさか そんなはずは…』

『何です?』

言ってみたが やはり気のせいだと 王女に一笑されてしまう

そこへ 漢城府(ハンソンブ)の兵が乱入し 錦城(クムソン)大君を捕らえた

首陽(スヤン)大君の命令だと知り 激怒した王女は

チョン・ジョンと共に 弟王を訪ね 無念の報告をする

※漢城府(ハンソンブ):都の行政・司法を担当する官庁

『私にひと言の相談もなく そのような命令を?!』

『落ち着いてください』

『今回は黙っていません!

また無実の者に濡れ衣を着せるのでしょう』

端宗(タンジョン)王の怒りは 想像以上だった

だとしても 何が出来るというのか…

チョン・ジョンは ためらいながらも 今回決起するはずだったことを告白する

※端宗(タンジョン)王:朝鮮第6代国王

『つまり 錦城(クムソン)叔父上の計画が

首陽(スヤン)叔父上に知れたと?』

『そのようです』

端宗(タンジョン)王は 錦城(クムソン)大君を

漢城府(ハンソンブ)から義禁府(ウイグンブ)に移すよう命じた

何としてもその命を救いたかったのだ

※義禁府(ウイグンブ):主に重罪人を扱う検察に似た機関

一方 麻捕(マポ)の妓楼で

スンユは セリョンが侍女に言っていた言葉を思い返していた

「私はあの方の影になりたかった あの方は私の影に…」


監禁されたセリョンは ようやく意識を取り戻し 必死に縄をほどく

自分をさらったのがスンユだとは気づいていない

入って来た気配に 棒切れを振り回す!

振り向きざまの その顔を見た瞬間 凍りつくセリョン

死んだと思っていた愛しい顔がそこにある

思いがけない再会に 泣きじゃくるが…

『お前の知るキム・スンユは この世にいない

父の敵の娘と 俺を裏切った親友 …似合いの夫婦だ!

生き抜いて 殺しに来いと言ったな 俺の手にかかり死ぬ日を待っていると』

『先生…』

『口先だけか? お前の待ち望んだ日が来た 待ってろ!すぐに殺してやる』

どんなに憎んでも足りない

なのに 憎めば憎むほど 心が痛むスンユだった

やがて夜になり シン・ミョンの一団が チョヒの妓楼に着いた

スンユは 隠し扉から逃げ 捜索の兵士から隠れ

納屋からセリョンを引きずり出し 逃げようとする!

しかし その行く手を阻んだのは ソクチュだった

ソクチュは 女を人質にすることが復讐かと スンユを諌める

そんな卑怯な真似を 亡き父上が喜ぶのかと…!

なぜそれを?という表情のスンユ

『そんな奴とは思わなかった 出て行け!

皆に迷惑がかかる前に消えろ』

行く所がないと言っていたスンユを ソクチュは追い出した

スンユは セリョンを連れて出て行こうと 着替えの服を渡す

婚礼衣装のままのセリョンの胸元から 巾着が落ちた

割れた指輪を拾い集めるセリョン

『もう割れたものです』

『割れていても ある方から頂いた心です …昨日 お寺に?

ずっと 後をつけていたのですか』

動揺するスンユ

今でも心は変わっていないと セリョンは思いたかった

そうであってほしいと…

『心から感謝します 生きていてくれて… 本当に感謝します』

その心を見透かされまいと スンユは わざと邪険にした

捜索を続けるシン・ミョンの目を盗み 妓楼を抜け出す2人

スンユはセリョンを 山中の廃屋に連れ込んだ

『いつ 私を殺すのですか』

『…俺は 父を殺すためのエサにされた

お前も 首陽(スヤン)を殺すためのエサにする』

決して相容れない運命だと 分かっていながら涙がこぼれる

『何だ あんな残忍な父親でも 失いたくないか

血にまみれた父親が そんなに大切か』

『……』

『そんな目で俺を見るな!』

潤んだ目で見つめられ 逆上するスンユ!

『お前も父親と同類だ!父親の胸に剣を突き刺し 家族皆の首を斬ったら

お前のことも むごたらしく殺してやる!分かったか!!!』

気が触れたように叫ぶスンユを 思わず抱きしめるセリョン!

どんなに抵抗されても セリョンは腕をほどこうとしない

きつくきつく… 狂おしく抱きしめた

『どんなに… つらかったのでしょう

考えも及ばぬ苦痛に耐えたのですね』

『……』

『私を殺すことで その苦痛が消えるなら… 何度でも命を差し上げます』

迷いを跳ね除けるように セリョンから離れ その首に剣を突きつける

その首には ひと筋の傷跡があった

「命懸けでお前を助けようとした 信じるか?」

最後に シン・ミョンが言った言葉が 思い返された

スンユは耐えきれず 外へ飛び出す!

首陽(スヤン)の屋敷に 矢文が射られた

“娘は預かった 明日午(うま)の刻 仁王(イナン)渓谷の岩場に1人で来い

兵を従えるような真似をすれば 娘の命はない”

一夜明けた

セリョンは 自分1人を殺して復讐を終わりにしてほしいと懇願する

自分だけを殺して 悪夢から覚めてほしいと…

『バカを言うな お前の父親は報いを受けるべきだ』

『父の非道な行いは許されませんが 先生の処刑を止めたのも父です』

鼻で笑うスンユ

『だったら 大勢が乗った船を 海に沈めさせたのは 一体誰だ?!

父親の本性を知らぬようだな

流刑に見せかけ 俺をはじめ政敵を皆殺しにしたのだ!』

衝撃を受けるセリョン

スンユの恨みの深さは 到底分かることは出来ない

それほどに セリョンは守られて生きてきたのだ

『先に攻撃してはならぬ 娘を救うと同時に 相手を生け捕りにするのだ

私が命じるまで 決して殺してはならぬ』

渓谷の岩場に向かうスンユ

絶対に 兵が待ち伏せているはずだというセリョン

それでも構わなかった

たとえ殺されても 死ぬ前に首陽(スヤン)を討てればそれでよかった

『命を大切にしてください』

『お前たちを殺し 家族の恨みを晴らせるのなら 俺の命など惜しくはない!』

『ご家族は生きています!!!

お義姉様とアガンを連れて 遠くへ逃げてください

先生にとって それが最善の道です』

『もう黙れ!!!』

身を捨てて復讐しようとしている時に 心を乱すセリョンが憎かった

その胸ぐらをつかみ 睨みつける

岩場にやって来た2人を 高台から見張っているシン・ミョン

セリョンを引っ張る黒装束に覆面の男が スンユだとは気づかない

今にも飛び出そうとするシン・ミョンを 必死に部下が止めた

しかし 生け捕りにせよという命令に従う気はない

セリョンを守るため 絶対に犯人を殺す気だった

スンユに狙いを定め 弓を弾くシン・ミョン

セリョンに矢を向けるスンユ!

『罪のない娘を放せ!』

首陽(スヤン)が現れた

振り向く2人

『顔を隠すような小心者が この私に刃向う気か!!!』

『お前の命を差し出せば娘は返す!』

『分かっておる 娘を放し私の命を奪え!その矢を私に放つがいい』

『……』

『何をためらってる!』

歩みを進める首陽(スヤン)

スンユが放った矢は 首陽(スヤン)に命中した

その瞬間!シン・ミョンが矢を放つ!

矢は スンユの前に躍り出たセリョンを貫いた…!!!

 
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