第6話 死者伝言 ![]()
(あの子供だ… ハンジ村のトルボク!)
逆上して侍女を揺さぶるトルボクを 仲間たちが抑えつけ
気を失ったままのソイを 女官たちが連れて行く
「お前のせいだ!お前が読めなかったせいだ!
お前のせいでみんな死ぬんだ!」
悪夢にうなされ 目を覚ますソイ
付き添っていたトックムが 心配して顔を覗き込む
『どうして鋳字所(チュジャソ)へ行ったの?ユン・ピル学士に会いに?』
『……?』
※鋳字所(チュジャソ):活字を作り本を印刷する部署
『知らなかったのね 鋳字所(チュジャソ)で学士の遺体が見つかった』
『!!!!!』
カン・チェユンが ソイに会い話を聞きたいと押しかけていた
それは無理だと断る尚宮 ソイは言葉を発することが出来ないのだと…
頭を抱える世宗(セジョン)を 便殿へと促すチョン・インジ
続く殺人事件と 官僚たちの追及をどう治めるのか…
予測通り チョ・マルセンが やはり義禁府(ウイグンブ)が動くべきだと進言する
※義禁府(ウイグンブ):重罪人を扱う検察のような機関
『まさにそれだ! 今 最大の問題はユン・ピルの死だ
鋳字所(チュジャソ)は再建すれば済むことだ
必ず侵入者を捕らえて 再び起きぬように防げばいい
しかしユン・ピルは生き返らない
必ず犯人を捕らえて ユン・ピルの魂を慰め 国法の尊厳を保つ!』
その頃 カン・チェユンはソイと向かい合っていた
チェユンの質問に 筆談で答えるソイ
『なぜあの時間に鋳字所(チュジャソ)へ?』
(なぜそんなことを?兼司僕(キョムサボク)が知るべきは事件の状況と証拠だ)
※兼司僕(キョムサボク):騎兵を中心とした親衛隊の精鋭軍
『広平(クァンピョン)大君の女官が なぜ鋳字所(チュジャソ)に用がある?』
(私に疑いでも?広平(クァンピョン)大君に用を言いつかった
その内容は兼司僕(キョムサボク)ごときに話せない)
どこまでも強気に言い返してくるソイを 鼻で笑うチェユン
逃げた賊の特徴を聞くと それはまさにユン・ピルを連れ去った仮面の男だった
それは自分も見たことだと声を荒げるチェユン!
ソイはチェユンを睨みつけ 紙に何かの文様を描きはじめた
男がしていた腕輪の文様だという
『あの短時間にすべて覚えたのか?』
『私は 一度見るだけですべて覚えられる』
『は!信じろというのか?!』
するとソイは スラスラと何かを書きはじめた
それは この取調室に入る途中にある 兼司僕(キョムサボク)の配置票だった
通りすがりに見ただけの配置票を ソイは間違いなく書き写したのだ!
そこへ 広平(クァンピョン)大君が現れ ソイの才能を認め
確かに自分が用を言いつけ 使いに出したのだと証言する
チェユンは ソイを釈放するしかなかった
鋳字所(チュジャソ)の焼け跡では カリオンがユン・ピルの検死をしていた
検死所に運び 詳しく調べるという
『肺から異物が出れば 火炎による窒息死でしょう』
『今度は火炎か… 土と水 そして火』
『え?それは?』
『いや 何でもない』
チェユンの背中を睨みつけるカリオン
(確かに “土 水 火” と言った ホ・ダムの死因を?)
その時 チョン別監がチェユンを連れに来る
世宗(セジョン)王が呼んでいるというのだ
同じ時 カン・チェユンがトルボクだと気づいたムヒュルは
部下に命令し チェユンを内密に神武(カンム)門に呼び出す
※神武(カンム)門:慶福宮(キョンボックン)の北門
カン・チェユンを待っていると 部下が1人で現れた
王に呼ばれ チェユンは便殿に向かった後だという
ムヒュルは便殿へ急いだ!!!
玉座の前にひれ伏すカン・チェユン
4人の内官(ネグァン)が王の前にいて チェユンの背後には護衛官が…
事件の概要を詳しく説明せよと言う世宗(セジョン)
カン・チェユンは ユン・ピルが連れ去られたところから
詳しく説明するために立ってもいいかと尋ねる
舞空術の動作の説明をしながら 次第にその構えを取っていくチェユン
世宗(セジョン)を睨みつけ 説明しながら…
その時!
ムヒュルが飛び込んできて チェユンの動きを封じた!!!
チェユンは 構えた姿勢を崩すしかなかった
『ここは便殿だ 身を自由に振る舞ってはならん
膝をつき ひれ伏し 礼を守るべきだ!』
『そういたします』
再びひれ伏し 説明を続けるチェユン
見たこともない高度な術でユン・ピルを連れ去り
その行方を追い 鋳字所(チュジャソ)に辿りついたと…
イ・ドに迫りながらも 今は 何も出来ずに去るしかなかった
(あれでよかった かろうじて成功率は5割 よく我慢した
7割でもなく9割… それを待つ! 俺はハンジ村のトルボクだから)
『私が思っていたより 実に賢い者のようだな』
『殿下… トルボクです』
『トルボク?誰だ?』
『戊戌(ムスル)年
シム・オン大監(テガム)の一族と奴婢を皆殺しにした生き残り
ハンジ村のトルボクです!』
世宗(セジョン)の顔が強張る
『あのトルボクが 兼司僕(キョムサボク)のカン・チェユンです
宮廷への配置転換を望んだそうです 栄達のためとお考えですか?』
「殺してやる 父さんの仇を討ってやる!」
『昇進などではなく御酒を願いました なぜでしょうか!』
『この長い年月が過ぎても… ここまで来たというのか』
『暗殺者です… 暗殺が目的です!』
『死んだのは私のせいだ 私のせいで父親が死んだ
私のせいで家族が殺された トルボク… カン・チェユン…』
すべて自分が処理するので しばらく見ぬふりをしてほしいというムヒュル
しかし世宗(セジョン)は 考えるから待てと答える
『陛下の計画に従うソイが あれほど慕っている者です』
『ソイは死んだと思っている』
『ですから ソイが事実を知ればどうなることか…』
『ソイには決して知られてはならぬ!』
『殿下!』
『待てと言ったはずだ!!!!! ムヒュルは何もせずに命令を待て!』
若き日 王である世宗(セジョン)に向かって 石を投げつけた女官がいた
すぐに成敗しようとした護衛官を止めた
王と知っていながら石を投げるとは 相応の理由があるに違いない
しかし その女官はひと言も弁明をしない
このソイこそ あの日 王妃 昭憲(ソホン)王后が助けたタムであった
王妃から事情を聞く世宗(セジョン)
「もともと話せないのか」
「あの日 言葉を失いました」
世宗(セジョン)はソイに謝罪し 涙をこぼしたのだ
あれからソイは 世子(セジャ)広平(クァンピョン)大君付きの女官になり
世宗(セジョン)の計画に協力する 良き理解者である
爆発の現場にいて犯人を見たソイを訪ねる世宗(セジョン)
思えばソイの家族も 王妃の一族も 自分のせいで死んでしまったと嘆く
ソイは “王様の責任ではありません” と書き記す
激昂してその紙を破り捨てる世宗(セジョン)!
『この国のことはすべてが私の責任だ!
花が枯れても洪水が起きても私の責任だ!
それが王だ… すべての責任を負い弁明など必要ない!
それこそ朝鮮の王なのだ!!!!! それをお前まで否定するのか!!!
同志が私の命令で死んだ!私が殺したのだ!』
一途に王を見据え ソイは紙を捧げる
(殿下の責任ではありません)
破られても破られても… ソイは書き続けた
あの日 殺されても構わない覚悟で 石を投げつけたソイが
王の責任ではないと訴え続ける
筆を持つソイの手を握りしめ 世宗(セジョン)は涙する
その涙を拭おうとするソイの目にも涙が…
『泣くでない… 御命だ 私のために一粒の涙も流してはならぬ
(私を殺すために お前が慕っているトルボクが帰ってきた)
お前が揺らげば… 私も揺らぐ 揺れるでない これも王命だ』
泮(パン)村の検死所では ユン・ピルの遺体が解剖されていた
喉を詰めていた物は 金属で作られた活字を印刷するための物だった
これは死者伝言だというカリオン
“一” “口” “亡” “己”
喉元から出た4つの文字が刻まれた金属
これらを世宗(セジョン)に報告するカリオン
『これを知る者は?』
『私は話していませんが カン・チェユンが広めております』
『何?!』
カン・チェユンは 12回も科挙に落ちて 泮(パン)村で暮らすという
ハン・カノムという男を検死所に呼び入れ 4つの文字の解読をさせる
この男が 村でいちばん口の軽い男だと聞いたからだった
そしてチェユンは ユン・ピルの遺体の足に 小さな刻印を発見する
ハン・カノムの口は留まるところを知らず 泮(パン)村全体が噂に溢れ
4つの文字の解読は 宮中にまで持ち込まれ 皆が推理に明け暮れた
『俺は自分の能力が分かっている
この解釈のために何もする気はない そんな能力はない
ユン・ピルは賢いから簡単には解けない』
『だから噂として流せば 士大夫が解釈してくれる?』
『いや 誰も容易には解けない 何らかの暗号だと思う
誰かが耐えられず動くはずだ それまで適当に待てばいい』
それよりも カン・チェユンは ユン・ピルの足の刻印が気になっていた
同じ刻印がホ・ダムの肩にもあったからだ 同じ組織の一員に違いないと…
カン・チェユンは危険だと 重ねて進言するムヒュル
先ほどカリオンは もう1つ報告していた
「カン・チェユンは “乾溺死功” を知っています
コ・インソル ホ・ダム ユン・ピルの死を
五行思想の “土 水 火” と理解したようです」
(あの幼いトルボクが 私を殺す目的でそれほど苦労したのか 大した奴だ)
考え込む世宗(セジョン)に ソイが暗号の意味を尋ねる
分からなければ解こうとするはずなのに
解こうとしないのは 知っているからではないか? …と
『知っている』
(それなのに なぜお話にならないのですか?)
『信じられないからだ …とても信じられぬ』
泮(パン)村から戻る途中 市場での乱闘騒ぎに直面する
太平館の明国人が暴れているようだ
※太平館:中国から来た使者を滞在させた建物
関われば面倒なことになると 傍観するチェユンとチョタク
すると ある男が現れ 流暢な中国語を話し 挙句に武術でねじ伏せてしまう!
怪しげな明国人の女が現れ 無礼を詫びると
明国人たちを引き連れ 去って行った
2人は宮中に戻ると 集賢殿(チッピョンジョン)に向かう
責任者に会いたいと申し出るチェユン
今は副提学が不在で直提学しかいないと言う学士たち
何と 奥から出て来たその直提学とは
先ほど見事な武術を使ったあの男だった!
武功ではムヒュルの次だと説明するソン・サムムン
『単刀直入に申し上げます 学士の身体検査をさせてください』
思いがけない申し出に戸惑う直提学シム・ジョンス
ちょうど戻った副提学チョン・マルリは激怒する
なぜかという問いには 捜査の秘密上答えられないが
この検査が 今後の変事を防ぐかもしれないと 重ねてお願いするチェユン
それは脅迫だと さらに激怒する副提学チョン・マルリ
2人は結局 何も出来ずに追い出されてしまう
引き続き 暗号の解読をする学士たち
こんなことをしててもつまらないと サムムンが言い出し
ペンチョンを飲みに行こうと誘う
その頃 チョ・マルセンがチョン別監を厳しく詰問していた
ユン・ピルの遺体の隠し場所に案内せよと…!
遺体は処理し 葬儀も済ませたと言うが
それを信じるマルセンではなかった
夜になり チェユンとチョタクは張り込みをしていた
高官から女官に至るまで 誰がどこに呼ばれていくのか…
するとそこへ パルポが慌てて駆け込んでくる
ユン・ピルの遺体が消えてしまったと言うのだ!
駆け付けてみると カリオンがオロオロと慌てふためき 言い訳をしている
仕方なくチョ・マルセンを連れて来たチョン別監も 戸惑いを隠せない
行首(ヘンス)トダムのもとで 仮面の男が報告している
『遺体を運び出したと?どんな連中だ?』
『分かりませんが 未熟な腕前でした』
『ホ・ダムやユン・ピルと関係がある者だろう
犯人が誰かを探って 次の命令を待て』
『はい』
2人の遺体を運び出したのは ソン・サムムンとパク・ペンチョンだった!
運び込まれた遺体を前に 老人が困り果てている
『チョン・インジ大監(テガム)に知れれば殺されます どうすれば…!』
『ただ黙っていればよい もういい』
何を確かめたいのかと聞くペンチョン
ソン・サムムンは いつもの陽気で軽薄なサムムンではなかった
行首(ヘンス)トダムが 敬意を払い ある男を迎える
常にトダムに指示を与えるこの男こそ あの直提学シム・ジョンスだった!
『この死者伝言は 本当に私たちのことか』
『ユン・ピルを尋問した時 そうだと答えたそうです
ですから この暗号は私たちのことのようです
ですが なぜ私たちを意味するのか分かりません』
サムムンとペンチョンは 遺体を隈なく調べ 小さな刻印を発見して驚く
その刻印は 2人の体にもあるからだった
『天地契員は私たちだけではない
殿下は 私たちが分からぬ計画を…』
同じ時 チョン・インジが 暗号の意味を世宗(セジョン)に聞いていた
大提学であるインジにも解けない “死者伝言”であった
なぜお前に分からぬのかと聞く世宗(セジョン)
『この意味が分かる者は この世に8人しかいない
天地契員でも分からぬだろう』
トダムの元で 解けない暗号に苛立つシム・ジョンス
世宗(セジョン)は 文字が書かれた紙を縦と横に移動しながら組んでいく
そして “亡” 以外の3つの文字を組んだ
すると… チョン・インジが驚愕してそれを読む!
『ミル…!』
『我々だけの文字で意を伝えたのだ』
『それでは… “亡”の字は何ですか?!』
世宗(セジョン)は “亡”の文字に筆を入れていく
そして出来上がった2つの文字を読む!
『ミル… ボン… “密本(ミルボン)”!!!』

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