κ 風の国 第11話 κ

<ここまでのあらすじ>


西暦4年 朱蒙(チュモン)の孫でユリ王の三男 無恤(ムヒュル)が生まれた

しかし喜びは束の間

生まれた赤子は 両親や兄弟を殺して ついには実の子まで殺し

高句麗(コグリョ)を滅ぼす呪われた運命だと予言される

※高句麗(コグリョ):ユリの父 朱蒙(チュモン)が建てた国


大神官は 高句麗(コグリョ)のために赤子を殺すよう懇願する

しかし 王である前に父親であったユリ王は 自らの手で殺すことはできなかった

熱い血と心臓がないという意味で 無恤(ムヒュル)と名付けられた

無恤(ムヒュル)は 世間から離れた場所へ送られた

壁画長ヘアプに託された無恤(ムヒュル)は

朱蒙(チュモン)の墓の壁画を描きながら 自分の正体も運命も知らずに育つ

だが 外の世界に強い関心を抱く青年になっていた

友人マロと共に無恤(ムヒュル)が洞窟を出た夜

扶余(プヨ)のテソ王が送った黒影(フギョン)の襲撃に遭う

テソ王の狙いは… 朱蒙(チュモン)の神剣

※黒影(フギョン):敵国の王や太子の暗殺を企てる秘密部隊


洞窟を出た無恤(ムヒュル)は 武術を習い逞しく成長する

高句麗(コグリョ)兵となった彼は 国境を越えるという過ちを犯す

そして 密偵と疑われて死の危機に直面する

しかし そこで無恤(ムヒュル)は運命の女性ヨンと出会う

ヨンは 拷問された無恤(ムヒュル)の手当てをし 彼に強い印象を与えた

弟の危機を知ったヘミョンは ユリ王が扶余(プヨ)を訪問している状況下で

扶余(プヨ)の国境守備隊を攻撃して 弟を救う

このことで 扶余(プヨ)のテソ王に非難されたユリ王は ヘミョン太子の権力と地位を剥奪した

自分がヘミョンの実の弟だとは知らないまま

自分を守るために危険を冒してくれ 人生の目標まで与えてくれたヘミョンに

一生仕えることを決心する無恤(ムヒュル)

“広い世界を見せる”と言うヘミョンと共に 扶余(プヨ)を訪れた無恤(ムヒュル)は

運命の相手 ヨンと再会を果たした

ヨンの後を追った無恤(ムヒュル)は 予期せぬ事件に遭遇する

テソ王の黄龍(ファンニョン)国訪問が記された 暗号を入手するのだった

無恤(ムヒュル)は ヘミョンと共にテソ王を襲撃する

しかし ヘミョンが殺したのはテソ王の影武者であり

テソ王はユリ王に対し 自分の目の前でヘミョンを殺せと命じる

ヘミョンの死は 無恤(ムヒュル)に誤解を与えた

ヘミョンを殺したのは扶余(プヨ)ではなく高句麗(コグリョ)であり ユリ王だと…

『この剣でユリの心臓を刺せ

ユリを殺して戻れば お前たちは扶余(プヨ)の貴族となり

子々孫々まで富と栄華を享受するだろう』

マロと共に高句麗(コグリョ)を目指す無恤(ムヒュル)は

国内(クンネ)城を目前にして寄り道をする

ヘミョンが命を落とした場所に立ち あらためてユリ王への復讐を誓うのだった

※国内(クンネ)城:高句麗(コグリョ)の都城

ユリ王は 夢枕に立つヘミョンの幻影に苦しんでいた

眠れないまま 情報総監となったヘアプの執務室に赴く

※情報総監:王命で情報の収集と調査をする官職

『夢でヘミョンが 泣きながら私を見ていた

扶余(プヨ)を攻めずして 敵が討てるのかと聞くのだ!』

『陛下 太子様は誰よりも陛下のお心を理解されております

どうか… 苦しまないでください』

その頃ヨジン王子は チュバルソを従えて市場に来ていた

我が儘なヨジンに手を焼くチュバルソは 用を足しに行く

1人になったヨジンは すれ違いざまの通行人とぶつかってしまう

それは 高句麗(コグリョ)に潜入した無恤(ムヒュル)とマロだった

2人を呼び止めるヨジン

『前に会っていないか?』

『…いいえ』

確かにヨジン王子は無恤(ムヒュル)の顔に見覚えがあったのだが…

早々に王子の前から立ち去った2人

『バレてないよな なぜ王子が護衛もつけずに1人で外にいるんだ?』

『…行こう』

高句麗(コグリョ)にいる仲間の屋敷を訪ねるが 無恤(ムヒュル)は罠に気づく


『扶余(プヨ)の密偵は足袋を履く時に

結び目を高句麗(コグリョ)とは逆にする

だが奴は高句麗(コグリョ)と同じ結び目だ 逃げるぞ!』

仲間のパニャと他の密偵は殺され そこで待ち伏せていたのは

高句麗(コグリョ)兵だったのだ…!

一方チュバルソは ヨジン王子を外へ連れ出したことで

情報総監ヘアプから叱責を受ける

そこへ 扶余(プヨ)の黒影(フギョン)が現れたと報告が入る

現場に駆けつけるヘアプとクェユ

『今すぐ大輔(テボ)に伝え城内の検問の強化を!』

『はい!』

※大輔(テボ):高句麗(コグリョ)の最高官職名

仲間と協力してユリ王を暗殺する計画だった無恤(ムヒュル)とマロは

このまま扶余(プヨ)に戻るわけにもいかず困惑する

その頃 1人扶余(プヨ)を去ったヨンは亡き父タクロクの言葉を思い返していた

「ヨンよ お前は生きてくれ 扶余(プヨ)を去ったらすべて忘れなさい

扶余(プヨ)への憎しみも 陛下への恨みも持つな

憎しみや恨みで 人生を潰してはならん

ヨン お前だけは幸せになってくれ」

山野を駆け巡り ヨンは逃げ続けるのだった

無恤(ムヒュル)とマロは 最後までヘミョン太子を守り続けたマファンを頼る

しかし マファンの屋敷に入って行くペグクを見て驚く

『2人は通じてるのか?!』

情勢に応じてどちらにも寝返るのが 奴隷商マファンだ

毎晩のように城を抜け出すヨジン王子を利用し ヘアプを消そうと提案する

 

今夜も抜け出そうとチュバルソを呼ぶヨジン王子だが

どうしても応じないチュバルソに苛立ち

今度は 侍女のヨナを供にして城を抜け出すのだった

ヨジン王子に見張りをつけていたペグクは マファンの言う通りだったと確認し

さっそく最高長老サンガへ報告する

『天が与えてくれた好機です

王子を監禁して沸流(ピリュ)部が救ったように見せれば

王の信頼を取り戻せます』

※沸流(ピリュ):高句麗(コグリョ)を母体とする部族

『この機に殺しましょう』

『ヨジン王子を殺す?!沸流(ピリュ)部の女を王妃にする計画は?』

『気弱な王子とはいえ いつかは虎になるでしょう 我々に牙を剥く可能性も

これを機に 王子を消すべきです

幸い 黒影(フギョン)が来たとの話があるので

黒影(フギョン)のせいにすれば問題ありません』

『…好きにやれ』

ペグクが差し向けた刺客は すぐにヨジン王子を捕らえるが

そこへ現れた黒覆面の2人組が 王子を救う

同じ頃城では ヨジン王子の母ミユ夫人が 息子を案じて狼狽していた

城を抜け出たうえ失踪となれば 大輔(テボ)クチュをはじめ

情報総監ヘアプらの責任問題に発展することは免れない

クェユが 市場のはずれでヨジン王子の帯飾りを発見する

その壁には おそらく襲われた時の短剣が突き刺さっていた

すぐに短剣の持ち主を捜すよう命じるヘアプ

その様子をじっと見張り マファンに報告する手下コンチャン

『ヘアプよ悪く思わないでくれ お前が邪魔をするからだ 仕方ない!』

名案を提供した謝礼を頂きに サンガを訪ねるマファン

しかし状況は最悪の状態だった

ヨジン王子を捕らえたのはペグクが送った刺客ではなく 別の誰かだという

そのうえ 王子を襲った痕跡として

ペグクの部下の短剣が押収されてしまったのだ

青ざめるマファン

サンガは もし今回のことが沸流(ピリュ)部の仕業だとユリ王に知れれば

人知れず殺してやると マファンに警告する

『奴を殺しましょう!』

『フフフ… まだ利用価値がある男だ』

助けてくれたと思った相手に連れ去られたヨジン王子と侍女のヨナは

納屋のような場所に閉じ込められていた

一方 短剣の持ち主が判明したヘアプは ペグクの屋敷を家宅捜索する

当のヨジン王子はいないのだ ペグクは余裕の表情でそれを受け入れる

無恤(ムヒュル)は ヘミョン太子と交わした言葉の数々を思い出していた

「扶余(プヨ)では隠密行動だ “太子”と呼ぶな」

「だったら 何と呼べば?」

「…“兄貴”がいいな 呼んでみよ」

「……」

「構わない 呼んでみなさい」

「……兄貴」

「そう呼ばれると 嬉しいな」

恐れ多いと感じながらも “兄貴”と呼ぶと ヘミョン太子は嬉しそうだった

「確かに怒りとは 戦いの時に力に変わるものだが

怒りだけでは生きられない より強い力がある」

「それは一体 何ですか?」

「自らそれに気づく時が来るだろう」

今は亡きヘミョン太子に 心で語りかける無恤(ムヒュル)

(教えて下さい より強い力とは何ですか?)

無恤(ムヒュル)は覆面を外し ヨジン王子の前に姿を現す


『お前は 兄上に仕えていた…!』

ヨジンの驚きには目もくれず

その首筋に剣を突きつけ 侍女ヨナに向かって言い放つ

『よく聞け お前はこれから国内(クンネ)城へ戻り ユリ王に伝えろ

“王子を救いたければここに来い” とな

1人ではなく 兵士を連れてくれば 王子の命はない』

サンガとペグクは ユリ王の前でヘアプと対立する

濡れ衣を着せられたうえ 王子は見つからなかった

その責任として総監であるヘアプを罰してほしいと言うのだった

ユリ王は ヨジンが見つかった時にその責任を問うと答え

沸流(ピリュ)部に王子の捜索を命じ

見つけられなければその責任も問うと言い サンガとペグクを牽制した

奴隷商マファンは いつものように買われてきた女たちを値踏みする

すると 黄龍(ファンニョン)国から来たという奴隷の中に 見覚えのある姿が…

侍女ヨナが役目を終えて戻るまで ヨジン王子は1人だった

どうして兄に仕えていた者が自分を拉致するのか… 理解できなかった

『私は親を知りません 兄弟もいません

太子様しかいません 私にとって太子様は 父であり兄なのです』

『陛下は兄上の父だ!』

『子を捨てたのに父親だと?!!!』

『……』

『獣も子のために命を捨てるのに 人間が子を捨てるなど

国のために命を懸けた太子様を…! そんな人間が父親だと?』

『兄上のことは…』

『“兄”と呼ばないでください 兄と弟はお互いに助け合い

痛みを分かち合う仲です それでこそ“兄”や“弟”と呼べるのです

しかし王子様は 太子様が血を流している間 何をしていたのですか!』

『……』

『太子様が哀れです

ここには 国のために戦う者を守る王も

命を懸ける息子をいたわる父親もいません

王子様を救いにユリ王が来るかどうか 気になりませんか』

『こやつ 陛下を試す気か!』

『ええ そのとおりです

太子様を捨てた王は ヨジン王子をどうするのか試すのです

今度も自分を守るため 王子様を捨てるでしょう

万が一姿を見せればその時は… 太子様の敵を討ちます』


☝よろしければクリックお願いします