第8話 ![]()
黒装束に身をまとい 身軽に塀を越え屋敷に忍び込む龍(ヨン)
ここまでになるには セドルとの厳しい特訓があった
『塀越えは力じゃなく要領だ』
『要領?』
『見てろ』
宙に舞うかのように身軽に塀を越えるセドル
どんなに説明されても 体が思い通りに動いてくれない
塀を登ったら今度は 音もなく着地する練習を
次は 気配を消して歩く訓練
『盗賊の足はお化けの足だ 真の盗賊は絶対に気配を感じさせない
盗賊を捕らえる捕卒(ポジョル)は 聴力を鍛えるべし』
塀を越え 忍び足で歩き 扉の前に来たら…
『扉破りは必ず短時間で』
セドルは 山の中の 戦の時に武器を作っていた鍛冶場に
龍(ヨン)を連れて行く 若い頃 ここで錠前を作り開ける練習をしたと話す
廃墟のような建物だが おかげで誰も来ない
龍(ヨン)はここで 若き日のセドルと同じように 錠前を開ける練習をした
『虫の触角並みに手の感覚を鍛えろ 中に管を支える溝がある
その溝に串が達した瞬間 錠前がささやくんだ その時だ そっと静かに外せ』
シム・ギウォンの屋敷の執事が殺され 胸元から抜き取られた布切れは
ピョン・シクの手から仁祖(インジョ)に渡り 筆跡が違うと燃やされた
しかし本物は 執事の足袋の中にあり 司憲府(サホンブ)の役人が持ち帰った
イ・ウォノの一件から シム・ギウォンの謀反まで すべてが濡れ衣だった
憤る一同だったが 慎重に行動しなければ… と話し合う
すべての修行を積んだ龍(ヨン)は 戸曹判書(ホジョパンソ)の屋敷に忍び込む
剣が保管されている蔵で あの文様の剣を探していると
そこへ 突然に扉が開けられた
イ・ミョンが 仲間の刑曹判書(ピョンジョパンソ)に財産の隠し方を指南している
『半月後に 私の隠し金はすべて清に送ります
財産の隠し場所に清ほど安全な地はありません』
龍(ヨン)の存在に気づかず そのまま出て行く
なおも剣を探し続ける龍(ヨン)だが 剣はなく 代わりに長い筒を発見する
何だろうと見ていると 見回りの兵士が塀の瓦の足跡に気づく
『盗賊だーーーっ!!!』
龍(ヨン)は長い筒を持ったまま 屋敷を脱出する
塀の外で中を確認するが あっさりとその場に捨てて立ち去った
そこへテシクが現れ 捨てられている筒に気づく
筒の中の紙を広げ それを掴み走り出すテシク
酒場に持ち帰ったテシクは 紙に描かれた絵の人物が父親だと泣き出す
そんなバカな…と思うコンガルとポンスンだが テシクは信じて疑わない
イ・ミョンは 蔵からなくなっている絵画に大騒ぎする
明国一の画家 陳洪綬が描いた 詩人陶淵明の人物画であり
50万両は下らないという名画だったのだ
『錠前は開いていたが 中には誰もいなかった? 何とも奇妙な話だな』
いつもの都事(トサ)に付いて現場を確認するシフ
蔵の中を見渡すと 奥の方に奇妙な仮面が見えた
シワンが 今回初めて都事(トサ)として 捜索することになった
シワンは敢えてシフを 牢の藁を取り換える仕事に就かせ
捜索隊には入れなかった
その頃セドルは…
捕卒(ポジョル)になるからと盗みの技を教えたのに
試験がどうなったのか 龍(ヨン)から何も言ってこないと訝しむ
すると 作業場の奥から包みが出てくる
何だろうと開けてみると それは捕卒(ポジョル)の服だった
姉のヨニを助けようとして盗んだものだったが セドルは大喜びする
いつの間に試験を受けて合格したのかと…!
ヒマ組の砦に顔を出した龍(ヨン)は 次はいつ官吏の屋敷に行くのかと聞く
するとヒボンが 南人(ナミン)派の奴らを懲らしめてくれと言われてると答える
『南人(ナミン)?』
『お前は知らないんだな
龍(ヨン) この世界で生きるには 政局にも通じてないとダメだ
今は西人(ソイン)派が権力を握ってる
奴らに取り入れば ヘタな両班(ヤンバン)よりいい暮らしができる』
『西人(ソイン)?』
『それじゃ ひと仕事するか』
捜索から外され 牢の藁を換えるシフ
仕事が終わり歩いていくと 塀のそばに何かが落ちている
それは 今捜索中の絵が入っていた筒だった
市場の通りで粥を食べているセドルが 突然役人に捕らえられ
自宅にはシワンが部下を引き連れて乱入し家宅捜索が始まった
捕らえられたセドルは 何が何だか分からない
『お前は町で一番の蔵破りだったそうだな』
『俺は何もしてません!盗みはとうにやめて真人間になったんです』
『連れて行け』
『本当に何もしてません!俺は無実です!旦那様!』
前科者の家を捜索したが何も出てこず 焦るシワン
そこへシフが 拾った筒を持って来る
家をメチャクチャにされ途方に暮れている母タンを見て 心が痛むシフだった
ようやく家が片付いた頃 セドルが帰宅する
事情を知らないセドルは上機嫌だ 土産に魚を買ってきて
おまけに大金を持っている タンはまたセドルが盗みを…!と睨みつける
前科者の家をあきらめ今度は酒場と宿屋を捜索するシワン
そしてとうとうテシクが捕らえられた
絵は拾っただけだと話しても 信じてもらえるはずもなく 拷問されるテシク
父ピョン・シクも 本当に犯人なのかと疑いはじめ 焦るシワン
塀を乗り越えて忍び込んだ犯人は機敏な人物であり
テシクはどう見ても塀など登れそうになく 見当違いだと判断するシフ
知らせを聞いた龍(ヨン)は 捕らえられたテシクに会いに行く
清の捕虜になった父親に会えずに このまま死ぬのかと嘆くテシク
テシクを助けようと 古株の都事(トサ)に泣きつく龍(ヨン)
盗んだ絵を部屋に貼り 隣近所に見せびらかすなどあり得ない
確かに拾った物で 盗んだ奴は別にいると訴えるが 聞き入れてもらえない
そこで今度は 王様に直訴しようとするが…
なかなか王様に会えず 直訴しようにもできない龍(ヨン)は
門前でポンスンたちが騒ぎを起こしている間に 塀を越えて中に入る
“王様 私の友人は無念です”
横断幕を屋根の上に掲げ ドラを鳴らし騒ぐ龍(ヨン)
『王様!どうか私の直訴を聞いてください!!!』
すぐに捕えられたものの 龍(ヨン)は王様に会うことができた
『どんな事情があって直訴に参ったのだ』
『私の友人が道端で絵を拾って 盗賊と間違えられ
今 義禁府(ウィグンブ)で酷い目に…
濡れ衣を着た友人のために 再捜査をお命じ下さい』
『刑曹判書(ピョンジョパンソ) 直訴は刑曹(ピョンジョ)の担当だろう?』
『はい さようです』
『そなたが責任を持って再捜査せよ 無実の民に無念な思いをさせられぬ』
※刑曹判書(ピョンジョパンソ):法律・刑罰を扱う官庁の長官
『王様 ありがたき幸せにございます』
『幸せなど… そなたは実に目が輝いておる
そなたが友を思う心も実に美しい 真相を明かすことを約束しよう』
機嫌よく帰ろうとして 龍(ヨン)は引き返し…
『王様 両班(ヤンバン)が遊んでいる間にも
外では民が無念を抱え 夜を明かしています
彼らの無念にも 耳を傾けてください』
この言葉に 両班(ヤンバン)である側近たちが表情を変える
仁祖(インジョ)は 自ら民の前に出て直訴を聞く
民の直訴をすべて解決するようにとの命令に
刑曹判書(ピョンジョパンソ)は反発する
『大明帝国は滅亡し じき清が大陸を統一するはず
だが私は清に睨まれておる
今信じるべきなのは私の力となってくれる民だけだ
しかし私は 二度の戦で民の信頼を失った
今からでも 民に信頼される王になる』
外で 龍(ヨン)が無事に出て来るのを待っていたポンスンは
宮殿の前の広場で帯飾りを拾う
これは…
兄と一緒に助けた両班(ヤンバン)の少年が持っていたものだと気づくポンスン
誰が落としたのか分からないが これは確かにあの帯飾りだと確信する
再捜査に はじめは喜んだ龍(ヨン)だったが…
『此度の再捜査は すべて解決された
だが戸曹判書(ホジョパンソ)宅の絵画盗難事件は
再捜査を実施したものの 犯人はチャン・テシクであると再確認された
これに対し王様は たいそうお嘆きになった
直訴した者はムチ打ち100発と強制移住の刑にするが
王様の命により 刑を免除する』
刑を免除した王を賛辞する歓声が上がったが テシクの罪は変わらなかった
龍(ヨン)は 蔵の中で戸曹判書(ホジョパンソ)が話していたことを思い出す
「半月後に 私の隠し金はすべて清に送ります
財産の隠し場所に清ほど安全な地はありません」
『見てろよ イ・ミョンの野郎!』
再び 龍(ヨン)は戸曹判書(ホジョパンソ)イ・ミョンの屋敷に忍び込む
…が 蔵の扉を破ろうとして驚く
『鍵穴がない!ちくしょう!』
それは 大金を持ち帰ったセドルを タンが怒るところにさかのぼる
「何のお金なの?!!!」
「実はな 戸曹判書(ホジョパンソ)宅の蔵に盗賊が入った
あんな錠前を開けるとは 並の奴じゃない」
「それで?!!!」
「秘密の錠前に取り換えてやったんだ お化けだって開けられないぞ」
「秘密の錠前?」
つまりそれが鍵穴のない錠前で セドルは報酬をもらったのだった
龍(ヨン)が 鍵穴がないことには開けられずに苦戦している蔵の中では
イ・ミョンがピョン・シクを招き 戻ってきた絵を見せている
シクは 蔵の奥の仮面に気づく
『木心漆面(モクシムチルミョン)だ
新羅(シルラ)の時代に作られた仮面で 漆を塗ったものだ
あの目には黄金がはめ込まれている』
『黄金の目玉ですか?!!!被ってみてもいいでしょうか?』
『どうぞ』
その頃 今まさにテシクが処刑されようとしていた
女将シムドクが泣き叫び 靴屋のコクトゥが… 鍛冶屋のフンギョンが…
セドルが… コンガルとポンスンが なすすべもなく見守っている
同じ時
戸曹判書(ホジョパンソ)の屋敷から出てきた荷車が
途中の道に木が倒れていて迂回を余儀なくされ
通った畑で爆撃に遭う 爆撃がおさまり気づくと 荷車が消えていた…!
同時にイ・ミョンが蔵を確認すると 蔵の中はもぬけの殻
陶淵明の人物画には 梅の一枝が描き足され…
“再び 参上”
の文字が書き込まれている
加えて清へ運ぶはずの荷車が消えたと報告が入り 悲鳴を上げるイ・ミョン
処刑される寸前に 知らせを受けたシワンが血相を変えて走っていく
役人がテシクの縄をほどく
『助かったぞ 本物が現れた』
やっと現れた龍(ヨン)が 解放されるテシクを見て涙する
『姉上… 今度はうまくいったよ』
イ・ミョンの蔵で調査しているシフが 盗賊のカラクリを見破る
すでに鍵を破り中にいた盗賊が黒装束で仮面の後ろに隠れていた
それを証明するかのように 仮面の下には畑の土が…
仮面を被ろうとしたピョン・シクだったが 宴の席が整ったとの知らせに出て行く
見事な推理に感心したイ・ミョンは 荷車の捜索をシフに一任する
先に来て畑の調査をしているシワンは激怒するが…
一方酒場では 無事に解放されたテシクを祝う宴が開かれていた
捕卒(ポジョル)になった龍(ヨン)のおかげだと自慢するセドルにポンスンが
龍(ヨン)は捕卒(ポジョル)じゃないし ヒマ組のゴロツキになっていると話す
憤慨したセドルが龍(ヨン)を懲らしめに…!
テシクが自分の部屋に行くと そこには龍(ヨン)がいた
自分のために直訴までしてくれたと感激するテシク
『ごめん』
『何が?』
『たださ 何となく…』
帰宅した龍(ヨン)を待っていたのは 鬼の形相のセドル
『受かったって思い込む方が悪いよ』
『捕卒(ポジョル)の試験に落ちてよかったよ
今後は科挙の勉強だけすればいい』
『科挙は受けないよ ヒマ組で働く』
『こいつ 何言ってるんだ!!!』
『本来は俺なんか受けるべきじゃない
受験資格はあっても庶民じゃ合格できない
両班(ヤンバン)の単なる引き立て役だ!これが現実だ 目を覚ましてくれよ!』
『だからってゴロツキなんかに…』
『うまくやればヘタな両班(ヤンバン)より裕福になれる
金を稼いで出世するんだ!!!』
『……』
言葉もないセドル
後ろからタンが ほうきで龍(ヨン)を叩く!
『このバカ息子!!!父さんになんて口を!!!お前のために父さんは…!』
何かを口走りそうになるタンを 必死に止めるセドル
ほうきが壊れ素手で殴りつけるタン
殴られながら龍(ヨン)は涙を流す
自分を救ってくれて生かしてくれた人だと
龍(ヨン)には十分に分かっていたのだ
夜になり 家の前で泣きながら座り込んでいるセドル
『夜を明かすつもり?帰ってこないわよ』
『龍(ヨン)の言うことは正しい…』
『だから他人の子に愛情を注ぐなと言ったのに』
『可哀相な奴 本当は高貴な子なのに俺みたいなバカな奴に連れてこられて』
『何を言うの!あなたじゃなきゃ あの子は死んでたわ!』
『ゴロツキだなんて… どうしたらいい?』
『みんな私の罪よ… 龍(ヨン)も… チャドルも…』
龍(ヨン)はまた かつて自宅だった屋敷の庭に来ていた
イ・ミョンの屋敷の蔵には 古株の都事(トサ)とシフが再び来ていた
『どうして再び来たのでしょう 落書きするため?』
『他人が罪を被って死ぬのを防ぐためかと』
『だとしたら カッコいい奴だな』
『なぜ よりによって紅梅なのでしょう』
紅梅の木の下で 龍(ヨン)は亡き父に語りかける
(父上 奴は分かるでしょうか 僕が描いた血色の梅の意味を)
龍(ヨン)のかつての自宅には ウンチェの叔母が住んでいた
謀反人の屋敷とは思えないほど 手入れされて綺麗になっていた
その屋敷に遊びに来たウンチェが 思い出の梅の木に登る
あの少年が引っ張り上げてくれて ウグイスと梅の話をしてくれた…
…と 思い出に耽っていると 枝のそばの塀の上に人影が!
狭い塀の上で その青年は昼寝をしているようだ 興味深く覗き込むウンチェ
目を覚ましウンチェを見つめ返すその青年は…
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