◆ チュノ~推奴~ 第8話#2 身受け ◆

『では1時間後に 元の場所に集まろう』

馬と食料をすべてソルファに売り飛ばされ 金も使いこまれてしまった3人は

町で“脅し”をして稼ぐことに…

『行き先は?』

『裏通りへ』

『民家をあさる』

『俺は大通りで引っかける 話しかけてひるんだら後ろめたい証拠だ』

『言われなくても分かってるよ』

散り散りになる3人

大通りのテギルは…

『捕盗庁(ポドチョン)の者だ 号牌(ホペ)を出せ 行ってよし』

※号牌(ホペ):満16歳以上の男子が携帯した名札

テギルがうろついているそばを 空腹のソルファがフラフラと歩いている

互いに気づかない2人…

『捕盗庁(ポドチョン)の者だ 号牌(ホペ)を見せてくれ』

『号牌(ホペ)…ですか?』

言うなり男は逃げ出した

無謀にも追いついたテギルと戦おうとする

あっさりやられる男

『自分の犯した罪が分かるな?』

『見逃してください!昔のことではありませんか どうかお願いします』

『お前を捕まえるために全国を渡り歩いた 苦労したんだぞ』

『目をつぶって下されば何でもします』

『ウソをつくな…本当か?何でもだな?』

『もちろんです!』

『まあ楽にしろ 殺すために捕まえたんじゃない 穏便に処理するためだ』

『エヘヘヘ…』

『いくら払う?』

『え?何のことでしょうか?』

『自分の国の言葉も分からないのか?いくら払えるかと聞いてる』

裏通りのチェ将軍は…

『号牌(ホペ)を見せろ』

『まったく あんたたちは根っからの悪人だな

俺を捕えても 家族には指1本触れるな』

『家族が?』

『息子と娘がいる 俺は奴隷でもいいが子供たちに罪はない』

『逃亡者か?』

『知らなかったと?』

『有り金を出せば見逃してやる』

民家のワンソンは…

『癸丑(みずのとうし)の10月生まれか その年の者の号牌(ホペ)は

ハンノキで作られてる これは桐だぞ どういうことか説明してもらおうか

これは偽物だろ?』

その頃ソルファは サダン(旅芸人)の一座と出くわしていた

『座長さん…』

『再会できてうれしそうね 死んだ姑にまた会えた気分だろ?』

『許してください』

ソルファの頬をしたたかに打つ女座長

『殺しはしないから安心しなさい 連れてきて』

『はい』

泣きながら男たちに引きずられていくソルファ

騒ぎに気づき 通りかかったテギルがその様子を見た

『お願いだからやめてください…』

『今夜から客を取ってもらうわよ 以前の倍働かせるわ』

『体を売るなら死んだ方がマシよ!』

じっと見ているテギルに ソルファも気づく

『お兄さん…お兄さん助けて!』

『兄貴たちはここにいるだろ?』

容赦なく男たちが引きずって行く

目の前の光景に テギルは過去を重ねていた

清の兵士に引きずられていくオンニョンを ただ縁の下に隠れて見ていた自分を…

「テギル様!テギル様!テギル様…」

出て行って助けることができなかった

弱かった過去のテギル…

♪明るい月と星が輝く 窓からはまばゆい月が見える♪

♪あの月と星を ご覧なさい 星の下では男女が燃え上がる♪

♪こっそりとじゃれあってる なんてステキなの 私のいとしい人♪

『また変な気を起こしたら 裸で歩かせるよ 稼ぎなさい!』

♪男は首を吊ろうとする 縄を使えば交換する物がない♪

♪何てステキなの 私のいとしい人♪

悲しい表情で観客の前に踊り出るソルファ 
チマで見物料を集める

いやらしい男たちは チマをめくってソルファを辱めた

ある者は金を口にくわえてソルファを待つ

ソルファは口移しで金を受け取った

泣いてしまいそうな自分を奮い立たせて ソルファは踊り続ける

何人目かの男の前に座った時

ソルファの動きが止まった

男は同じように金を口にくわえてソルファの方を向く

『元に戻ったな』

『最悪よ』

『行くぞ 来い』

『ひどいわ もっと早く来てよ』

ソルファは大粒の涙を流しながら テギルに抱きついた

抱きつかれて大の字に寝転んだまま じっと目を閉じるテギル

一方民家のワンソンは 泣きわめく家族を尻目に家財道具を運び出している

『どうしたらいいんだぁ…』

『葬式でもあるまいし 泣かなくてもいいだろ』

テギルとソルファは 女座長に睨みつけられている

『漢陽(ハニャン)の時の奴です』

『強者が浮つくとおかしくなるのね 旅芸人にホレるなんて』

『今度会ったら殺すと忠告しただろ?』

テギルの後ろでおびえるソルファ

『お前に話はない あんたが座長か?』

『何に見えるのよ 見れば分かるでしょ』

『いくらだ』

『何が?』

『こいつを見受けしたい いわばお互いに商売人だろ?

会う度にもめずに 今日清算しよう』

『悪い話じゃないわね いくら出せるの?』

『200両だ』

200両と聞いて 女座長ばかりかソルファも驚く

『それは…本気なの?』

『何だ?足りないのか?』

『分かったわ 200両で手を打ちましょ』

『物分かりがいい 受け取れ』

女座長に向かって金を投げるテギル 明らかに小銭だ

『まさか これだけ?』

『15両ある またどこかで会ったら残りを払う』

『ふざけやがって!』

殴りかかってきた一座の男を倒し 観衆に向かって叫ぶテギル

『控えろ!学のない奴でもこれが何か分かるな?

金は漢陽(ハニャン)のオ補校(ポギョ)の所に取りに来い

ごねたら淫行の罪で捕えるぞ!』

『かかれ!』

結局最後は乱闘になる

一足先に川原に戻ってきたチェ将軍とワンソン

得意げに稼ぎの品を広げるワンソン

『見てくれよ 140両と木綿が4反 銀のかんざしと指輪 真鍮の器だ アッハハハ…

いくら稼いだ?』

『30両ずつでいいのに巻上げすぎだ』

『どうせなら思い切りやるべきだろ? 見せてくれ』

片手に握りしめた小銭を出すチェ将軍

『これだけなのか?隠してるんだろ?』

『30両近くある…』

『兄貴はお人よし過ぎる!あきれるよ まるで俺だけが非道みたいだ

生活のためだぞ』

『誰かが稼げばいい』

『俺が稼いだ物は俺の取り分にする!』

『テギルはまだか?』

『きっとボロ儲けしてるはずだ』

 
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