善徳女王 第18話 語られる真実 

ソヨプ刀を持っているという謎の人物からの書信
閼川(アルチョン)率いる郎徒(ナンド)たちは この者を捕えに来た
しかし精鋭の中には その張本人が紛れ込んでいたのだ
果たして王様は ソヨプ刀の持ち主をどうするおつもりかと…

王様と落ち合う筈の場所に現れたのは 乙祭(ウルチェ)大臣だ
そもそも陛下への書信を 乙祭(ウルチェ)は見せていない
双子の片割れの亡骸に添えた筈のソヨプ刀
その持ち主が現れたのなら それはあってはならないことなのだ

『今から起こることは極秘事項だ 決して口外してはならん!
必ずこの場所に不審な者が現れる 捕えられなければ…殺せ!』

これこそが 徳曼(トンマン)が知りたかった答えだった
自分が何者であるかを示すソヨプ刀
それを持っている者は 殺される運命にあるのだ…

『護国仙徒(ホグクソンド) 持ち場へ!』
『飛天之徒(ピチョンジド) 持ち場へ!』

黒覆面の中に動揺を隠し 徳曼(トンマン)も命令に従った
しかし 皆とは違う方向へ走っていく…!

(殺す?殺すだって?なんで? 美室(ミシル)も!陛下も!
なんで?どうして?!!!)

その時 後ろから誰かに呼び止められる
背後から剣を突き付けるのは… 林宗(イムジョン)だ!
黒装束で見えないが 怪しい動きの部下を見逃す筈はない
所属を聞かれるが 答えれば声で見破られるだろう

一瞬の隙を突いて 徳曼(トンマン)は走った!
この不審な行動で確信し すぐさま仲間を呼ぶ林宗(イムジョン)!
すばしっこく逃げ回る徳曼(トンマン)は なかなか捕まらない

閼川(アルチョン)が向かった先に 徳曼(トンマン)は潜んでいた
微かな物音に気づき 振り向く閼川(アルチョン)
意を決して草むらから飛び出す徳曼(トンマン)
斬り合っているうちに覆面が外れ 徳曼(トンマン)の顔が…!

『お前は…!』

剣がぶつかり合う音を聞きつけ 仲間たちが近づいて来る
仲間が来れば もう一巻の終わりだ
閼川(アルチョン)は迷う

『閼川(アルチョン)郎 借りを返すなら今です』
『何っ?!』
『酒じゃなくて もっと大きなもので返すって言いましたよね?
今です! 今お願いします!!!』

どうすべきか答えが出ないまま
閼川(アルチョン)は 徳曼(トンマン)を草むらへ逃がした…!

一方 祖典(チョジョン)で調べ物をした天明(チョンミョン)は

思わぬ事実を知ることになり どうにも受け入れられないでいた

『私は… 双子なの?!』

2人で見せ合った耳の後ろのアザは ほとんど同じ形だった
でもだからって… 双子と?

天明(チョンミョン)は 確信が持てないまま王妃のもとへ!
唐突に 自分は双子なのかと聞かれ みるみる表情が変わる王妃
“御出双生 聖骨男尽” 王に双子が生まれれば聖骨(ソンゴル)の男子が絶える
娘が 知る筈の無い予言の言葉を口にした
もはや隠し通せないと諦めの表情に

しかし 次々と死んでしまった弟たちの話になると…

『宮主(クンジュ)が 私の耳元で言ったのです “お前をせいよ”と』
『違うわ!そなたのせいじゃない! 私が…私が悪いの
私が双子を産んだから!!! 私が悪いのよ… うぅっ……!』

ただただ泣き崩れる王妃
真実を知り衝撃を受けながらも
天明(チョンミョン)は 号泣して王妃を抱き締めるのだった
しばらくして…
ようやく冷静さを取り戻した母と娘は
消し去った過去を紐解くように 話し始めた
生まれてすぐ亡くなったため 双子だったことは内密にしたという

『その子は… 私の後に生まれた?』

『そうよ 耳の後ろのアザまでそっくりの女の子だった』
『……』

アザまで同じだというのに 王妃は女の子だと言った
双子の片割れは徳曼(トンマン)だと確信し始めていたのに…

そこへふいに 美室(ミシル)が訪ねて来る
ようやく絵が完成したので 天明(チョンミョン)に贈りたいのだと

それは 真興(チヌン)大帝が虎を退治している様子が描かれた絵だった

『なぜこの絵を私に?』
『この絵から 大帝のことを知っていただきたくて
“人を得た者が時代の主となる” 大帝のお言葉です』

人を得るには 望みを叶えてやるか 相手の恐れるもので脅すかだという

『王女様は 庾信(ユシン)と徳曼(トンマン)の望みは何か
或いは… 何を恐れているのかご存じで?』

戸惑いの表情の天明(チョンミョン)を前に 美室(ミシル)は
彼らがなかなか良い主に恵まれず 心配しているのだと言い放つ
ギラギラと挑戦的な目つきの美室(ミシル)に対し
天明(チョンミョン)は あくまでも冷静だった

『彼らが欲しいのですね そうでしょう?
素晴らしい絵とご忠告に感謝します もう遅いのでお帰りを』

徳曼(トンマン)が宿所に戻った頃には もう皆寝静まっていた
乙祭(ウルチェ)大臣の指令の言葉が思い出される
美室(ミシル)も王様も… 皆が自分を殺したいようだ
そして結局は 自分が何者なのか分からないままだった

(王女様のことも… 信じちゃいけないのかな
庾信(ユシン)郎 私はどうすれば?)

同じ時 絵の中のソヨプ刀を見つめる天明(チョンミョン)
ソヨプ刀について 多くを語らなかった徳曼(トンマン)
毎夜 美室(ミシル)のもとに通ったのなら この絵を見てる筈

(徳曼(トンマン)が私に嘘をついた…
何を隠してるの? どうして嘘を? …どうして?)

ヨハム山

いつものように ひたすら修練を続ける金庾信(キム・ユシン)
誰に対してぶつけていいのか分からない怒りを 岩に叩きつける
両親の言葉が どうしても頭から離れない

「幾多の苦難を乗り越えやっと生き延びて来た一族だ!
先人の苦労も知らず何を言うか! もっと分別を持て!」
「もう軽はずみなことはしないで!常に自重し怒りを抑えるの!」

無心になろうとして 夢中で岩を打つ庾信(ユシン)
するとそこへ 相談しようと徳曼(トンマン)がやって来る
しかし 集中している姿を見て声をかけられずにいる
どう話せばいいかも変わらず 結局立ち去る徳曼(トンマン)

入れ違いに 天明(チョンミョン)が現れた
やはり声をかけられないのか… 小川の方へと歩いて行く
小川には 思いつめた様子の徳曼(トンマン)が佇んでいた

今だけは昔に戻って 友達のように話したいという天明(チョンミョン)
しかし徳曼(トンマン)は 心を閉ざしている
あくまでも距離を置いた口調で 取り付く島もない

『私に… 嘘をついていないか?』
『……』
『もしや私に… 隠し事があるのか?』
『いいえ 何も』

じっと鋭い視線で睨みつける徳曼(トンマン)を
天明(チョンミョン)は 寂し気に見つめるのだった

ソヨプ刀を持っている人物を 始末出来なかった乙祭(ウルチェ)
花郎(ファラン)に対し このことは内密にと厳しく命じる
解散しようとして 閼川(アルチョン)だけが残った
大罪人とだけ言われ追跡したが どうにも腑に落ちない
その人物が徳曼(トンマン)であれば尚更だ

『国の秩序を乱した大罪人だ!』

驚愕する閼川(アルチョン)
徳曼(トンマン)が国の秩序を乱した?!
答えを渋る乙祭(ウルチェ)に しつこく食い下がって聞いたが
ますます腑に落ちない閼川(アルチョン)だった

その頃竹方(チュクパン)は
密命のついでに盗んだ物を眺め ほくそ笑んでいた
これを売り捌いて海狗腎を買うのだと…!
あれだけ言われたのに…と心配顔の高島(コド)

※海狗腎:精力剤 オットセイの生殖器

『ほんとに良かったのかなあ』
『ひとつ置いて来たらひとつ持って来るもんさ! イヒヒヒ…』

乙祭(ウルチェ)は あの夜の当直に聞き取りを行い
翡翠製の水差しが無くなっていることを突き止めた

そして美室(ミシル)側では 既に一連の流れを把握していた
密かに花郎(ファラン)まで動かし 大々的な追跡を行うとは…
ただの盗難で 乙祭(ウルチェ)がここまでする筈が無い

すると美生(ミセン)が
上書が置かれている大化(テファ)殿に忍び込み
たかが水差しを盗んで終わるわけが無いと言い出す

『盗んだのではなく 何かを置きに来たのでは?』
『なるほど! 陛下に何かを知らせたいために』

さすが我が弟!と満足げに微笑む美室(ミシル)
続けて詳しく調査するようにと命じていく

徳曼(トンマン)が立ち去った後も
天明(チョンミョン)は 庾信(ユシン)の修練が終わるのを待っていた
ようやく気配に気づいた庾信(ユシン)

万弩(マンノ)郡にいた頃と今 どちらがいいと思うか?と聞かれ
庾信(ユシン)は あの頃も今も何も変わらないと即答する
さらに 信じていた者を疑ったことはあるかと聞かれ

『一度疑った者のことは信じません
また 一度信じた者を疑うことはありません』

きっぱりとした庾信(ユシン)の答えに
納得したように立ち去る天明(チョンミョン)

そこへ 閼川(アルチョン)がやって来た
他言無用と厳命されたが 庾信(ユシン)に全てを打ち明ける
上書に触れた大罪人を捕え損ねたと

『なぜ上書を?』
『知るもんか お前が聞いてみろ!』
『何?』
『犯人は徳曼(トンマン)だ 一度は捕えたが逃がした
お前の郎徒(ナンド)だ あとはお前が決めろ!』

乙祭(ウルチェ)のもとへ 林宗(イムジョン)が報告に来た
市場に 水差しを売りに来た者がいると…!
その者は 水差しと海狗腎を交換して行ったというのだ
どうやら郎徒(ナンド)の仕業らしいということで
乙祭(ウルチェ)は ある策を講じるのだった

武芸場に 全ての郎徒(ナンド)が集められ扉が閉められた
まさか自分の出来心が招いた事態とは 知る筈も無い竹方(チュクパン)
物々しい雰囲気に 訓練のためではないと察する郎徒(ナンド)たち
誰もが不安な表情で ざわめきが広がっていく

すると再び扉が開き 衛兵が郎徒(ナンド)たちを取り囲んだ
風月主(プンウォルチュ)虎才(ホジェ)が叫ぶ
泥棒を捕えるため 宿所を捜索中であること
これから順々に身体検査をするということだった
動揺する竹方(チュクパン)が 高島(コド)に確認する

(例の物は?!)
(ここにある!)

徳曼(トンマン)は 別の意味で動揺していた
ここで女だとバレるわけにはいかないのだ…!

郎徒(ナンド)は 5人ずつ前に呼ばれ上着を脱いでいく
じきに徳曼(トンマン)の順番が来るだろう
幕の向こうで 上着だけでなく全裸になっている影を見て
絶体絶命の心境でうろたえる徳曼(トンマン)!
その後ろでは 隠し持っている証拠の品に怯える高島(コド)

事態が大ごとになったことで
乙祭(ウルチェ)が上書を抜き取った件も 王の知るところに…
激怒した真平(チンピョン)王は 直ちに乙祭(ウルチェ)を呼べと怒鳴る

最後に残った龍華香徒(ヨンファヒャンド)
次に呼ばれれば全てが終わる…!
竹方(チュクパン)は焦りに焦った
半泣きで怯える高島(コド)から 海狗腎を受け取る

(生で食えるわけねえだろ!)
(バレたら殺されちゃうぅ…!)

観念して自分が食べるかと思いきや!
油断している高島(コド)の口の中に押し込む…!!!
吐きそうになりながら 今更出すわけにもいかず苦しむ高島(コド)

とうとう龍華香徒(ヨンファヒャンド)の番になった
最初の5人の先頭は徳曼(トンマン)
続いて竹方(チュクパン)高島(コド)と続く

『上着を脱げ!』

蒼褪めた表情の徳曼(トンマン)
安堵の表情の竹方(チュクパン)
高島(コド)はやっとのことで海狗腎を呑み込み白目を向いている

他の者たちが全員脱いだのに 徳曼(トンマン)はまだ脱がない
不審な様子に衛兵たちが身を乗り出し 郎徒(ナンド)たちも注目する
仕方なく のらりくらりと上着を脱ぎ始めたその時…!
真平(チンピョン)王の側近が 慌てふためき駆け込んでくる!

『大等(テドゥン)様!今すぐ宮殿へ!!!』
『何事だ!』
『へ…陛下がお怒りでございます!!!
すぐに大化(テファ)殿へお越しください!!!
陛下も既に向かっておりますのでお急ぎください!!!』

ただ事ならぬ側近の様子に 乙祭(ウルチェ)が走って立ち去る
それに続く衛兵たちもいる中 身体検査は中断されたのだった

先に大化(テファ)殿に到着した真平(チンピョン)王は
目の前に突然現れた人物の前で驚愕していた
隠し部屋から抜け出した昭火(ソファ)が 放心状態で立っていたのだ

(そ…昭火(ソファ)…?)

突然現れた不審者から 陛下を守るように衛兵が立ちはだかる
今にも昭火(ソファ)を斬りつけようとする!
そこへ上神官(サンチョングァン)誓理(ソリ)が駆け付ける

※上天官(サンチョングァン):祭儀を司る総責任者

『陛下!大変失礼致しました!心を患っている神官です
以後注意いたしますので お見逃し下さい!』
『わ…分かった』

連れられて行く昭火(ソファ)の姿を 乙祭(ウルチェ)も目撃した
一連の事実は 王妃から天明(チョンミョン)にも告げられる
ソヨプ刀を持っていると言って 王に近づこうとする者がいたと…

豹変した徳曼(トンマン)の態度
そして今回のことで 確信を持つ天明(チョンミョン)だった

乙祭(ウルチェ)の勝手な行動を諫めるつもりだったが
反対に詰問される真平(チンピョン)王
『昭火(ソファ)を取り戻さねば!』とうろたえるばかりの王に
今は状況を把握すべきです!と語気を強める乙祭(ウルチェ)

誓理(ソリ)が連れて行ったということは
昭火(ソファ)は 美室(ミシル)の保護下にあるに違いない
では ソヨプ刀の持ち主は昭火(ソファ)なのか?
しかし あの状態で上奏を書いたとは考えにくい
だとすれば… 美室(ミシル)の可能性が高い…!

そこへ偵察していた龍春(ヨンチュン)公が戻って来る
誓理(ソリ)は その者と神殿に入って行ったと
あの者は誰かと聞かれ口ごもる2人
乙祭(ウルチェ)すら たった今知ったばかりなのに
この重大な秘密を まだ公には出来ないのだった

誓理(ソリ)の報告を受けた美室(ミシル)は…

心を病んでいると言いながら 自由に宮殿内を歩けるとは
柒宿(チルスク)も 昭火(ソファ)について多くを語らない
そして 陛下の様子が妙だったとの報告に眉をひそめる

美室(ミシル)の質問に
柒宿(チルスク)は 昭火(ソファ)の名を“チョンニン”と偽った
殺せと命じられた女を殺せず こうして宮殿に連れ帰ったのだ
知られたらどうなるかは明らかだった

『柒宿(チルスク)は嘘をついている
美生(ミセン)に確かめさせましょう』

結局郎徒(ナンド)たちの身体検査は中止となった
絶体絶命を逃れた徳曼(トンマン)だったが 激しく苛立っていた
じゃれ合う2人を威嚇して どこかへ行ってしまう
皆が宿所に戻ると 部屋は捜索されたまま物が散乱していた
そこへ 捜索を終えた兵士が鍵付きの木箱を返しに来る
鍵は壊され 中身を調べられたようだ

『これは… 徳曼(トンマン)のだ!』

木箱の中には 膝宛てのような物が入っている
皆が首を傾げている中 竹方(チュクパン)だけは真剣な表情に…
過去の 徳曼(トンマン)の言動や行動を思い返す
そういえば…
徳曼(トンマン)と 一度も小便をしたことが無い
そういえば…
徳曼(トンマン)を背負った時 胸のふくらみを感じたような…
さっきも なかなか上着を脱ごうとしなかった…!

『おいお前たち!徳曼(トンマン)と風呂に入ったことは?!』
『無いよ 体に傷があるんだってさ』
『庾信(ユシン)郎も 訳ありだから放っとけって』

確信を持った竹方(チュクパン)!

『あぁーーーっ!何で気づかなかった?
遊び人のこの俺様が!!! あーーっ!くそっ!焼きが回った!』

1人で納得して出て行く竹方(チュクパン)
何も分からない一同は 何だ? と首を傾げる

夜になり 天明(チョンミョン)は密かに庾信(ユシン)を呼び出す
そして徳曼(トンマン)に関する全てのことを話し始める

自分も徳曼(トンマン)も 文孥(ムンノ)公に会おうと捜していたこと
不思議な縁を感じて ずっと行動を共にしていたこと
さらには 自分が双子で生まれたこと
その片割れが ソヨプ刀と共に宮殿から連れ出されたこと
そしてその子が成長し この徐羅伐(ソラボル)に戻って来たこと
全ての状況が… 徳曼(トンマン)に当てはまるのだと…!

同じ時
竹方(チュクパン)は 徳曼(トンマン)を無理矢理倉庫の中へ!
そして 抵抗する徳曼(トンマン)を押さえつけ脈を測ろうとする!

『やめてよ!僕はどこも悪くない!』
『お前… 女だろ?』

サッと顔色が変わり 誰にも言わないで!と懇願する徳曼(トンマン)
特に 庾信(ユシン)郎には知られたくないと…!

『庾信(ユシン)郎はもうご存じだろうよ
お前は訳ありだからそっとしとけって言ったそうだ』
『な…何っ?!庾信(ユシン)郎が知ってる?!!!』

一方 真実を聞かされた庾信(ユシン)は驚きのあまり声も出ない
天明(チョンミョン)は ただ1つだけ辻褄が合わないことがあると話す
自分の片割れは女なのに 性別だけが徳曼(トンマン)と違うのだと
それを聞き 深く考え込む庾信(ユシン)

『どうしたの?』
『王女様のお話が全て真実だと仰るなら…
徳曼(トンマン)は… 女です』


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