‐ 本ブログは 韓国ドラマ『六龍が飛ぶ』のあらすじを
解説を交えながら 「完全ネタバレ」形式で描いています
あらすじだけ読みたい方は 虫めがね印の解説部分を無視してお読みください -

 

ナイフ 六龍が飛ぶ 8話 ナイフ

『あの方? あの方とは誰だ』
『おい答えろ 将軍様が聞いているのだぞ!』
『あの方は… あの方は…』
『ここにいる!!!』

暗闇の中から現れた影が 笠を取った時
李芳遠(イ・バンウォン)は驚きのあまり声を上げた!

(あ! あれは… 新朝鮮の主は…! 長平門のチャントガルだ!!!)

『私は鄭道傳(チョン・ドジョン) この者たちの首長であり
この者たちを咸州(ハムジュ)に送った者だ』

※チャントゥガル:蒙古語で“最強の男”の意
※咸州(ハムジュ):李成桂(イ・ソンゲ)が治める辺境の地

李成桂(イ・ソンゲ)より先に 李之蘭(イ・ジラン)が噛みついた
『女真族が狙う厳重区域に多くの間者を送り 混乱させたのは何故だ!』 と

『そう それが1つ目の理由です
ここを女真族から守り 将軍の咸州(ハムジュ)を更に強化する
この東北面が完全に安定することが 最初の目的です』

『軍律を乱しておいて 生き残れると思うのか!!!』と之蘭(ジラン)

『ならば… どこでなら生き残れますか?
この高麗(コリョ)で生き残るにはどうすべきですか?
生き残る… それこそが咸州(ハムジュ)を目指した2つ目の理由です
私と ここにいる者たちは全員 生き残りたくてここに来た』

憤って声を荒げているのは李之蘭(イ・ジラン)だけである
誰もが道傳(ドジョン)の話に聞き入り 成桂(ソンゲ)までもが聞き入っている

『将軍はこれまで体を張って戦い 大勢の者を助けて来ました
ですが… 流民審査の場で皆の事情を聞きましたか?
都堂(トダン)は 戦を口実に村から多くを巻き上げていた
倭寇に殺される民より 都堂(トダン)の悪政で死ぬ民の方が多い』

※都堂(トダン):高麗(コリョ)後期の最高政府機関

李成桂(イ・ソンゲ)将軍もまた 民たちと同じ心境の筈だと
だからこそ皆が咸州(ハムジュ)を目指したのだと 熱く語る道傳(ドジョン)
都堂(トダン)の“あの3人”を殺さねば 誰ひとり生き残れぬのだと…!

『将軍に受け入れてもらえねば 皆死ぬしかありません
知らぬふりをして生きられるのですか? 将軍はそういう人ですか?
今この場で 行き場の無い民たちを皆殺しにするか…
“あの3人”を殺す先陣に使うか お決めください!』

鄭道傳(チョン・ドジョン)に集まっていた視線が
今度は李成桂(イ・ソンゲ)に集中していく

李信積(イ・シンジョジク)が 静かに跪いた
そして自分の父親が “あの3人”に屈したことを恥じ 自害したと話す
共に自害しなかったのは…“あの3人”を断罪するためだと声を震わせた…!

『どうぞ私を先陣にお使いください!!!』

信積(シンジョク)の言葉に また1人…また1人と民たちが進み出る
そしてプニも… 先陣になりたいと進み出た
死んだ者たちではなく こうして今も生きている人たちのために戦いたいと…!

『元気でさえいたら 頑張って働き税を納める民たちです!
この人たちのためにも! 先陣として戦いたいのです!』
『先陣に使ってください!』
『他に行く所がありません!』
『どうか先陣に!!!』

女も子供も老人も… その場の民たちが口々に嘆願の声を上げた

その夜
趙英珪(チョ・ヨンギュ)は 芳遠(バンウォン)を質問攻めにする
あの長平門で 武器ではなく飴を高く掲げて歌った人が
新しい国を創るという“洞窟の主”なのかと…!
芳遠(バンウォン)は鄭道傳(チョン・ドジョン)を“三峰(サムボン)先生”と呼び
いかに凄い人物なのかを 熱く語って聞かせた

虫めがね三峰(サムボン)とは
鄭道傳(チョン・ドジョン)の雅号である
雅号とは 文人・画家・書家などが 本名以外で使用する風流な別名のこと
趙小生(チョ・ソセン)の雅号は赤狼(チョンラン)
鄭夢周(チョン・モンジュ)の雅号は圃隠(ポウン)
このように主要登場人物は それぞれ“雅号”で呼ばれることが多く
人物名と併せて“雅号”を把握することで 物語をより分かりやすく楽しめる虫めがね

『なぜ三峰(サムボン)先生は将軍のもとへ?』
『新しい国の王になる人だからだ』
『えっ?! 王ですと?!!!』
『父上は 三峰(サムボン)先生が初めて指揮下に置く人なんだ』

李成桂(イ・ソンゲ)は 鄭道傳(チョン・ドジョン)を呼び出した
なぜここに来たのだ?という問いに 道傳(ドジョン)は
乙卯(いつぼう)年 長平門事件の話を切り出した

『士大夫(サデブ)があなたに協力要請をしましたが…
私は“李成桂(イ・ソンゲ)将軍を信じるな”と言いました
ただ良い人になろうとするだけで 決して責任を取らない人物だと
実際に… 李仁謙(イ・インギョム)に懐柔されたでしょ?』

答えになっていない!と 憮然として
ならばなぜここへ来たのだと 再度聞き返す成桂(ソンゲ)

道傳(ドジョン)は 成桂(ソンゲ)が阿只抜都(アキバツ)を撃退した話に触れた
部下を差し置き自ら進んで戦い 兵士のひとりひとりを労って歩く
戦場の民からは何ひとつ略奪せず 誰の記憶にも“良い人”として残ると

※阿只抜都(アキバツ):東アジア近郊を荒らし回ったとされる倭寇の首領

褒めているようでありながら その言い回しは嘲笑にも聞こえ苛立つ成桂(ソンゲ)
だから結局 何が言いたいのだ!と詰め寄る

『それでいて 決して政界に入ろうとしない
なぜだ? 政界に入った途端に“良い人”ではいられなくなるからだ!』
『一体私の何を知ってそこまで言うのだ!!!』

2人の会話を 物陰から李芳遠(イ・バンウォン)が盗み聞いている
道傳(ドジョン)は 成桂(ソンゲ)の人となりを決定付ける瞬間を見たのだという
それは雲峰(ウンポン)村で 偽の倭寇が捕らえられた時のことだった

飢えた家族を守るため倭寇を装い 村人を襲って穀物を略奪した男が捕らえられた
自分たち家族が暮らす村で 同じ村人を襲ったのだ
『裏切り者か?』という成桂(ソンゲ)に 男は真っ向から反論した

『なぜ裏切りになる? 都堂(トダン)の奴らは土地や穀物を奪って行ったのに
高貴な者どもは裏切りじゃなくて 弱者だから裏切りになると?!』
『貴様… 恥を知れ!!!』
『恥?どこが恥だ? むしろ誇らしい!!! 家族が飢えずに済んだ!
何もせずに息子を死なせる男より!ここまでした自分が誇らしい!!!
だから殺せ!俺を殺せばいい!俺は誇らしく死んでやる!!!』

『本当は恥ずかしいのだろう? 息子に顔向けが?
恥ずかしいから殺せと言うのだろう!!!』

李成桂(イ・ソンゲ)は この男の悲鳴にも似た反論に
犯した罪はあまりに重く 死罪では軽過ぎるとして殺さなかった
残った歳月を 罰を受けながら生き永らえろと…

『“私の下で倭寇を倒す先陣を率い 償って生きろ” そう言いましたね
その時 気づいてしまったのです 将軍にとっての戦は“何かへの償い”なのだと
ただただ高麗(コリョ)の民が平穏に生きられるようにと 戦っておられる』

言い当てられたような戸惑いの表情になる成桂(ソンゲ)
物陰で聞いている芳遠(バンウォン)も 複雑な表情になる

『しかし 都堂(トダン)の“あの3人”がいる限り 将軍の願いは叶いません
“あの3人”を倒し… 新たな国を創りましょう!』

息を飲む李成桂(イ・ソンゲ)
李芳遠(イ・バンウォン)もまた いよいよ本題だと身を乗り出す…!

『“高麗(コリョ)”ではダメです
私が作る新しい国の王に… 私は… あなたを選んだのです』
『…え?』

芳遠(バンウォン)が予想していた筋書きとは違っていた
まさか… まさか三峰(サムボン)先生ではなく 父上が王に?!

陣営では
趙英珪(チョ・ヨンギュ)が無恤(ムヒュル)に
芳遠(バンウォン)は李成桂(イ・ソンゲ)将軍の息子なのだと説明していた
それを聞いた途端 よし!とばかりに大喜びする無恤(ムヒュル)!
将軍の息子を助けたとなれば 出世の道が拓けたことは間違いないと…!
英珪(ヨンギュ)は 浮かれる無恤(ムヒュル)を一喝し
芳遠(バンウォン)が 一時的に預けた剣を奪って行く

一方 芳遠(バンウォン)は
独り暗闇の中で考え込んでいた
なぜ三峰(サムボン)先生は自ら王にならないのか… なぜ父上を王に?

『父上では… 弱過ぎる!』

李成桂(イ・ソンゲ)もまた 深く考え込んでいた
鄭道傳(チョン・ドジョン)に言われた一言一句が 頭の中を駆け巡る

「この咸州(ハムジュ)を 新たな国の拠点にするのです
“安辺策(アンピョンチェク)”に押印して頂きたい 都堂(トダン)で必ず通します!」

※安辺策(アンピョンチェク):新国家の陣地を造るための法案

考えているところへ 芳遠(バンウォン)が入って来る
息子が暗闇から盗み聞きしていることには気づいていた
父親がどうするつもりか どうしても聞きたい芳遠(バンウォン)だが
成桂(ソンゲ)は 詳しく話して聞かせるつもりは無いようだ

『ただ偶然に会った学者の戯言に 私が心を動かされるとでも?
あの組織の処分は明朝に言い渡す!』
『いいえ!あの方は立派な方です!圃隠(ポウン)先生も認めています!』

※圃隠(ポウン):鄭夢周(チョン・モンジュ)の“雅号”

あの申し出を受けるなど有り得ないと斬り捨て
ましてやこんな物に押印するわけが無い!と言い切り 出て行く成桂(ソンゲ)
激しい失望の色を見せ 頑なな父親の背中を睨みつける芳遠(バンウォン)

(趙小生(チョ・ソセン)を殺したからでしょう?)

消え入りそうな息子の呟きに 足を止める成桂(ソンゲ)
芳遠(バンウォン)はもう声を潜めなかった

『双城総官府の門を開かず…! 父上はあの場で死ぬべきでした!
最後まで堂々と戦って死ねばよかったのです!』

顔面蒼白で振り返る李成桂(イ・ソンゲ)
今にも泣きそうな顔で 李芳遠(イ・バンウォン)がもう一度呟く

(趙小生(チョ・ソセン)を… 殺したでしょう?)

『殺したからには… 義理も… 自責の念も… すべて捨てるべきでしょう!
裏切り者の家と笑われたなら!裏切りを家訓にすればいい!!!』
『お前は… なぜ知っているのだ』
『あの日… あの場にいたからです 10歳の時 桃花殿(トファジョン)で…
あの李仁謙(イ・インギョム)に… あの悪党に跪く父上を見たのです!』

※桃花殿(トファジョン):李仁謙(イ・インギョム)の屋敷

驚愕し 言葉を失う李成桂(イ・ソンゲ)
あの年頃の子供にとって父親は あまりに偉大でこの世の全てだったと
とうとう堪え切れずに涙を流す芳遠(バンウォン)

『あの3人の悪党の蛮行をご存知ですよね! 父上はあの3人より悪党ですか?
決してそうではないでしょう! なのに出来ないと?!
父上ほど王に相応しい人物はいません! 民の悲惨な話に心を傷める人です
なのになぜ 自らを罪人だと決めつけて諦めるのですか?!』

『お前や鄭道傳(チョン・ドジョン)が いかに私に王の資質があると言おうが
私は決して… 前に出てはならない人間なのだ 前に出た途端 恥知らずとなる
私は決して表舞台には立たない お前の父親とは…そういう人間なのだ』

もう何を言うこともなく 失望し切った表情で出て行く芳遠(バンウォン)
入れ違いに 李之蘭(イ・ジラン)が入って来る

李芳遠(イ・バンウォン)は 陣営を飛び出し草むらに寝転んだ
夜空を見上げながら 自分の中の激しい怒りと闘う
そして… 覚悟を決めたかのように陣営に戻って行くのだった

深刻な表情の芳遠(バンウォン)を見かけ 気になって後を追うプニ
芳遠(バンウォン)は 誰もいない父親の天幕に忍び込む
そして覚悟を決めたように 安辺策(アンピョンチェク)に押印した…!

(父上が始めなければ 何も始まらないのだ…!)

『何してるの?』
『!!!!!』

連絡係を務めるプニが 怪しい行動をする芳遠(バンウォン)を見咎めた
知らせに走ろうとするプニを 力任せに止める…!
芳遠(バンウォン)は 押印した安辺策(アンピョンチェク)を持って
李信積(イ・シンジョジク)の天幕へ向かった

『父上から預かった 三峰(サムボン)先生に渡してくれ
父上からの伝言だ “これを持って行き自身を証明しろ”と』

信積(シンジョク)は 確かに押印されていることを確認した

『父上は こうも言われた
今夜中に咸州(ハムジュ)を発てと
明日になれば気が変わるかもしれない と』

芳遠(バンウォン)の言葉に ひと言も言い返さない信積(シンジョク)
その表情に一抹の疑念を見抜いた芳遠(バンウォン)は 更に言い足す

『父上は… 決断するまでに相当悩んでおられた
だから父上の言うように… 迅速に動くことが賢明かと』

芳遠(バンウォン)は プニのもとへ戻った
縛られ 猿ぐつわされたプニは 怒りの表情で抗議する!

『李成桂(イ・ソンゲ)将軍は… 俺の父親だ』
(……えっ?!!!)

身動き出来ず言葉も発せないプニを相手に 自分語りをする芳遠(バンウォン)
10歳のあの時 初めて行った開京(ケギョン)は最悪だったと
道端に死体が転がり 物乞いに服を剥ぎ盗られ 貴族達は…
美味い子豚の丸焼きのために 出産後の女を拉致し母乳を飲ませていたと…!

話しを聞きながら プニの中の記憶が繋がった
目の前にいる青年は あの時の若様だと…!

『こんな悪党の貴族達は 父上がやっつけてくれると信じていた
でも違った 息子は知ってしまったんだ 偉大な父上にも弱さがあると…
おかげで俺は… 人より早く大人になった』

三峰(サムボン)先生は たった1つだけ間違っているという芳遠(バンウォン)

『三峰(サムボン)先生の壮大な計画を 引き受けられる程強くない!
父上という人は… 悩み過ぎるし!苦しみ過ぎるし!考え過ぎて行動に移せない!
たった一度の人生なのに… 人生は一発勝負なのに…!』

だから父親に代わって 安辺策(アンピョンチェク)に押印したのだと
そう話し終えると 芳遠(バンウォン)はようやくプニの方を見た

『お前に噛まれた時も 穀物倉庫を燃やした時も 身ぐるみ剥がされた時も…
お前に縛られて置き去りにされた時も ずっと味方でいたろ?
だから今度は 俺の味方になってくれ…!』

プニの表情に怒りの色が無いことを確認し 縄をほどこうとする

『叫ばないな? 泣くのもダメだ 噛むのもダメ! わかったか?』
(すべての問いに コクリと頷くプニ)
しかし縄をほどいた途端! 力任せに芳遠(バンウォン)の向う脛を蹴る!!!

『問題が起きたら責任を取って!
早く大人になったですって?!
大人というものは 自分で責任を取るものよ!!!』

天幕を出たプニは 遠い昔を思い出す
取っ組み合いのケンカをした挙句 互いに大泣きした

「父上はチャントガルじゃなかった!
チャントガルじゃなかったんだ!!!」

※チャントゥガル:蒙古語で“最強の男”の意

そう叫びながら号泣していた 幼き日の若様…
たまらなくなり 引き返すプニ!
芳遠(バンウォン)は 暗がりに寝転んで夜空を眺めていた

一夜明け
李信積(イ・シンジョジク)が 鄭道傳(チョン・ドジョン)が発ったことを伝える
まさか たった1人で発つとは意外だった

『開京(ケギョン)にも師弟が?』
『流罪になっていたのだ 誰もいない』
『え?ではどうやって安辺策(アンピョンチェク)を通すので?!』

一方 桃花殿(トファジョン)では
洪仁訪(ホン・インバン)が訪ねて来ていた
これまでとは違う高圧的な態度に 驚きを隠せない李仁謙(イ・インギョム)

『我々が責任を果たすためには権力が必要だ!
税を引き下げても良いが 見返りが無いことには…』
『断ったら?』
『断れるのですか? 我々の他に誰が閣下を助けると?
一体誰が兵を出し!誰が朝廷の運営に物資を出すのですか?
どうか賢明なご判断を! 信じていますよ閣下!』

一方的に言うだけのことを言い ろくに礼も尽くさず退室する仁訪(インバン)
背を向けたまま 深く考え込む仁謙(インギョム)
既に崔瑩(チェ・ヨン)将軍からも 税を下げねば連合は解消だと言われているのだ
権力の中央に君臨している筈が 今や孤高の虎となった

『やはりあの者を動かすしかないのか… 北落師門…』

花事団(ファサダン)では 仁訪(インバン)の一派が集まり
李仁謙(イ・インギョム)の新たな動きに 戦々恐々としていた

※北落師門:李成桂(イ・ソンゲ)の星座
※花事団(ファサダン):妓楼

この妓楼の大房(テバン)であり 知財商人の草英(チョヨン)が最新の情報を明かす
閣下は 李成桂(イ・ソンゲ)将軍を都堂(トダン)に呼ぶつもりなのだと…!

※知財商人:情報を売買する商人

『まさか…そんなことが可能なのか?!』
『何かの聞き間違いでは?!』
『将軍が味方につけば… 皆さまの出番は無いでしょう』

吉太味(キル・テミ)ほど李仁謙(イ・インギョム)の怖さを知る者はいない
『だからダメだと言ったじゃない!!!』と半狂乱に騒ぎ立てる
禹学朱(ウ・ハクチュ)と韓具営(ハン・グヨン)も 気が気では無い

洪仁訪(ホン・インバン)は 黙りこくって微動だにしない
業を煮やした学朱(ハクチュ)が 矢継ぎ早にまくし立てる!

『将軍の軍事力と閣下の財力があれば朝廷は回ります!
もはや我々の出る幕は無い! どうするのですか!!!』

しかし…

得意げに策を講じたと報告する仁謙(インギョム)を 崔瑩(チェ・ヨン)が一喝する
一体 国の防衛を何と考えているのだと!これまでに無い怒りをあらわにした

『将軍がいるからこそ辺境が守られている!
国境を脅かしてまですることか!!!
女真族が虎視眈々と狙っているのだぞ!!!
あの新羅(シルラ)の美室(ミシル)さえ!
我が身の保身より国境の兵力を重視し 召喚を止めたのだ!』

一方的にやり込められ 意気消沈して崔瑩(チェ・ヨン)の執務室を出る
(あの占い師の言うことを聞いたばかりに…!)と苛立つ仁謙(インギョム)
すると… 行く先に吉太味(キル・テミ)たちが待ち構えている
仁訪(インバン)は 先日とは打って変わって黙り込んでいる

この手の平返しはどういうことか…と問う仁謙(インギョム)

『閣下のことをいちばんに理解している私が説得したのですよ
閣下が李成桂(イ・ソンゲ)将軍を嫌っているのは良く存じていますから!
我々のせいでご決断なさったのでしょう? ええ!存じていますとも!』

必死に訴える太味(テミ)に続き 仁訪(インバン)も…
李成桂(イ・ソンゲ)将軍の件はどうか無かったことに…と懇願する
これまで通り 税率も国政も何もかも閣下の思う通りにすると…!
無かったことにも何も… 崔瑩(チェ・ヨン)将軍から一喝され万策尽きていたのだ

(なるほどなるほど…
北落師門に道があるとは… このことだったのか)

ただ北を向いただけで 何もせずともこうなった
笑い出したい気持ちをどうにか抑える仁謙(インギョム)であった

洪仁訪(ホン・インバン)は 桃花殿(トファジョン)を後にした
まだ自分の力が足りぬということか…と 輿の上でじっと考え込む
そんな仁訪(インバン)を 民衆に紛れて見つめる者がいる
タンセとカップンだ

『あれが洪仁訪(ホン・インバン)よ』
『あれは長生き出来ない相だな』

批国(ピグク)寺に 李仁謙(イ・インギョム)が現れた
西域から来た占い師に褒美を届けに来たのである
崔瑩(チェ・ヨン)将軍から一喝され 一時は殺せと命じたが…

占い師は 財宝の箱の中から宝石を1つだけ取り出す
過分な“お布施”を頂いては 神眼が曇ってしまうと…

『神眼と申したか?』
『ええ 神眼も無く人の吉凶禍福を口にすることは出来ません』
『では… 今後もよろしく頼みたい』

この占い師こそ あのヨニである
タンセが救えずに絶望した あの幼馴染のヨニであった…!

このヨニと仁謙(インギョム)のやり取りを 適龍(チョンリョン)和尚が盗み聞き
逐一 洪仁訪(ホン・インバン)に報告した

『話にならん! 占いごときで李成桂(イ・ソンゲ)将軍を?!』
『そもそも将軍の都堂(トダン)入りを阻止したのは閣下ですのに…
西域から来たという占い師に お会いになりますか?』
『……会おう』

捕えられたヨニは 動じることなく憮然とした態度を崩さない

『神眼をお持ちの占い師様なのに ご自分が捕まることは予測出来なかったので?』
『私の守護星は南方の天樽󠄀… 天樽󠄀に海王が…』
『天樽󠄀は双子座! 南方ではなく西方! 貴様は何者だ!
なぜ閣下に李成桂(イ・ソンゲ)のことを吹き込んだ!!!』

適龍(チョンリョン)和尚の追及に 初めて動揺を見せるヨニ!
洪仁訪(ホン・インバン)がほくそ笑む
しかしヨニは 居直りの態度で笑い出す

『私はただの大道芸人だ! ある学者に金10両で頼まれた
そちらの学者様は… いくらくれるので?』
『50両だ 即金で出そう 誰に頼まれたか言え!』

挑戦的な表情で 仁訪(インバン)を睨み返すヨニ

『確か… その学者様の従者が “三峰(サムボン)”と呼んでいた』
『何だと?!!!』

何としても鄭道傳(チョン・ドジョン)を捜せ!と怒鳴る仁訪(インバン)
捜すにしても 相応の金が要るという適龍(チョンリョン)和尚

『いつ誰が払わないと言った!!!金ならいくらでもある!!!
いいから捜せ! 必ず捜し出すのだ!!!』

仁訪(インバン)が出て行きひとりになると
適龍(チョンリョン)和尚は じっと屈辱に耐えた

(今は耐えるのだ 適龍(チョンリョン)よ… あ奴は人間ではない
あれは俺の… “金庫”に過ぎないのだからな…!)

気を取り直し 洪仁訪(ホン・インバン)を見送りに行くと…
輿に乗ろうとした仁訪(インバン)が 突然地面に転がった!!!
有り得ないことだが 輿の担ぎ棒が折れている
怒り狂った仁訪(インバン)が 斧を持ち出し力任せに輿を叩き壊す!

(仁訪(インバン)よ…)

こんな時は声をかけずに静観すべきだと
適龍(チョンリョン)和尚は 配下の者に目配せをした

(おい… 洪仁訪(ホン・インバン)…)

輿を打ち付ける斧の音で 何者かの声がかき消されている
まだ誰も その声に気づく者はいない

『おい! 洪仁訪(ホン・インバン)!!!』

突然の大声に 仁訪(インバン)が振り向くと
そこには 鄭道傳(チョン・ドジョン)が立っている…!!!

『久しぶりではないか 師兄』

8年もの間捜し回って 何の手がかりも無かったのに
まさか本人が自ら現れるとは 思ってもみなかった
再び寺に戻り 向き合う2人

いかにも懐かしむように 儀礼的な挨拶をする仁訪(インバン)
そんなに我が身を按じてくれていたとは…と言いつつ
巷に流れる噂はどれも恐ろし気なものばかりだという道傳(ドジョン)

『なぜそんなにも変節を?』
『変節か… 子供の頃に遊んだ玩具は今どこに?
大人になって要らなくなったのでは? 大義!仁義!正義!!!
そんなものはもう… 要らなくなったのだ!』

※変節:自分の信念を変えること

『そんなことはいい! なぜ李成桂(イ・ソンゲ)を担ぎ出し邪魔をするのだ!
イ・ウンチャンと繋がりが? 何を企んでいるのだ!!! 暗殺でもするのか?』

『そこまで知ってるなら話が早い イ・ウンチャンとは無関係
長平門で別れた後は その消息すら知りません
大道芸人の女を利用したのは… 師兄にご自分の立場を知っていただくため』

『何だと? お前みたいな物乞い儒者が! どの口で言うのだ!!!
この私は3大権力者のひとりなのだぞ!!!』

『過酷な拷問を受けて 心をくじかれたのでしたな
この私も 若き頃の信念や大義など思い出しもしません
流刑地では 絶望と恐怖に駆られ 眠れぬ夜を過ごした
それでも たったひとつのことは忘れたことが無い
師兄も…同じ思いだったのではないですか?』

『お前ごときが!!! 私と同じだと?! 笑わせるな!!!
一体何が!!! 私と同じだと言うのだ!!!』

『李仁謙(イ・インギョム)!!! 崔瑩(チェ・ヨン)!!!
必ず奴らを倒してみせると! そう思っていたのではないですか!!!』

ただ声を荒げ 道傳(ドジョン)を侮辱していた仁訪(インバン)だったが
その表情が変わり 真剣に話を聞く姿勢になった

『何が言いたいのだ』
『力を持ちたい! 権力が欲しい! そのためには師兄が必要です!!!
師兄は決して仁謙(インギョム)には勝てません!
しかしこの私が… 仁謙(インギョム)の上に立たせて差し上げます!』

呆れた顔で笑い出す仁訪(インバン)
『お前が私のようになど…なれる筈が無い!』と言い放つ!

『師兄のようにはなりません! 犬畜生のようになれるわけがない! しかし…
李仁謙(イ・インギョム)と崔瑩(チェ・ヨン)を倒すまで!
共に戦うことは出来るでしょう』

『その次は! その次はどうするのだ?!
一緒に倒してその後は… どうなると?!!!』
『その後? さあそれは…
この高麗(コリョ)を巡り 一世一代の勝負に出るのも面白いかと ハッハッハ…!』

批国(ピグク)寺から解放されたヨニは 歩きながら占い師の格好を脱ぎ捨てる
そして 約束の場所で鄭道傳(チョン・ドジョン)に会い跪いた

『本元様』

ヨニは 道傳(ドジョン)の指示で占い師の格好をしたが
占いの知識は程々でよいと言われていた
天文に精通している適龍(チョンリョン)和尚に見破られ
ボロが出るくらいが丁度いいのだと

すべては鄭道傳(チョン・ドジョン)の筋書き通りになったのだ
仁謙(インギョム)が李成桂(イ・ソンゲ)に頼るしかない状況も
崔瑩(チェ・ヨン)が激怒して反対することも すべて筋書きの中だ

『安辺策(アンピョンチェク)は 洪仁訪(ホン・インバン)が通すだろう
ヨニ 私は… イ・ウンチャンを殺した犬畜生と手を組むぞ!』
『乱世なのです もう過去を振り返りませんように』

(ウンチャン いよいよ始まるぞ! どうか最後まで見守っていてくれ…!)


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