https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191227-00010000-wedge-kr

北朝鮮女子サッカー、謎の東京五輪辞退は韓国・文政権への最後通告か

記事抜粋

 一体、何が起こっているのか。韓国の聯合ニュースが25日に報じたところによれば、

サッカー女子の北朝鮮代表が、来年2月に韓国の済州島で開催される東京五輪アジア

最終予選の出場を取りやめたという。アジア・サッカー連盟(AFC)に対し参加しない意向

を伝え、その詳しい理由は明らかにされていないとのことだ。

 サッカー女子のアジア出場枠は2。東京五輪の最終予選ではA組、B組それぞれの上位

2チームが来年3月開催のプレーオフに進出して争う。韓国はB組に組み込まれ、ここには

ベトナム、ミャンマー、そして北朝鮮も入っていた。しかしサッカー女子でアジア強豪国の

北朝鮮が参加を取りやめたことで代替出場国も加わらず相手は格下のベトナム、

ミャンマーのみとなり、韓国のB組1位突破が確実視されるようになった。

 対するA組で1、2位突破が見込まれそうなのはそれぞれオーストラリア、中国。プレーオフ

ではB組1位とA組2位が対戦することから韓国国内では実質上、五輪出場権のかかる

準決勝で戦力の拮抗する中国に勝てば「東京行き」のキップを手にできると主要メディアも

大騒ぎしている。ネット上の反応を見る限り、韓国国内のユーザーたちの反応もおおむね

「歓迎」の意向を示しているようだ。

 北朝鮮はFIFA(国際サッカー連盟)の女子ランキングで7位・オーストラリア、

10位・日本の後塵を拝しているとはいえ、アジア3番手の11位。開催国として

東京五輪出場権を得ている日本を除けば、アジアの2枠に入る可能性は高いとみられていた。労せずして北朝鮮が“消滅”してくれただけに、大韓サッカー協会(KFA)や韓国女子サッカー関係者、多くの韓国国民も「ガヌン・ナリ・ジャンナリダ」(「棚から牡丹餅」の意味を成す

韓国語のことわざ)を連呼している。

 だが、冷静に状況を鑑みれば北朝鮮の決断は不可解だ。サッカー女子代表に関しては今月18日まで韓国・釜山で行われていた東アジアE-1選手権にも出場権を得ていながら、

一方的に不参加を表明。台湾に出場を譲る格好となった。しかも北朝鮮は同大会を3連覇中で満天下にスポーツ強国であることを誇示する意味でも、出場には大きな意義があったはずだ。しかしながら、あっさりと辞退。「?」は漂うものの、その背景には政治的要因が絡んでいるのは言うまでもあるまい。

南北関係の悪化だ。大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼実験とみられる「重大実験」を繰り返すなど金正恩朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の度重なる挑発行為は、

ますますエスカレートする一方。対北への融和政策を唱え、自身の支持率キープに

つなげようと目論んでいる韓国・文在寅大統領にとっては由々しい事態と言っていい。

何とかスポーツを通じても南北友好ムードを深め、2045年までの朝鮮半島統一を

成し遂げたい――。

 そんな夢物語のようなシナリオをぶち上げることで文大統領は支持率回復につなげたいところだったが、どうやら絵に描いた餅で終わりそうな気配となっている。

北朝鮮側が女子サッカー代表チームのアジア最終予戦参加を辞退したことは、

文政権に対する「最後通告」と韓国国内のスポーツ関係者の間で見る向きが

強まりつつあるからだ。

KFAと密な関係を築く在日の韓国人ウォッチャーはこう解説する。

「北朝鮮側は文大統領がスポーツと政治を一緒くたにし、融和政策を浸透させて

南北統一に向かおうとする手法に猛反発している。特にそれを韓国主導で成し遂げようと

旗を振り、自らの人気取りの材料にするつもりであることも見透かしている。

つまりは『韓国なんかでお前たちの思い通りの試合などやらない』という

文政権に対する北朝鮮側の絶縁メッセージとも解釈できます」

スポーツを巡っても北と南の亀裂は決定的なものとなっている。それでも文政権は

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を抱き込み、24年の冬季ユース五輪を

韓国と北朝鮮の南北合同共催構想を具現化させる方向へ導こうとするなど「夢」を諦めるつもりはない。その先にある2032年夏季五輪の南北共同誘致も言わずもがなだ。

 だが、韓国国内のスポーツ関係者たちは文政権の南北融和政策に

もはや辟易しているのが現状のようである。前出の韓国人ウォッチャーは次のようにも続けた。

 「東京五輪に向けてバスケットボールの女子、ホッケーの女子、柔道の混合団体、

ボート男女の4競技などで南北の合同チームによる出場権獲得もIOCから承認を得られていたが、そのうちホッケーの女子は五輪予選に参加できずに断念

他の競技も残された時間は僅かかしかなく、今のままでは頓挫するでしょう。

 ただ、韓国国内では北朝鮮について『いい加減に“夢”から覚めよう』という姿勢が強まっている。もちろん“夢”とは、南北統一を夢見る文大統領に対する皮肉。

結成する側の選手たちも『なぜ政治的な問題に自分たちが付き合わされ、

利用されなければいけないのか』との疑問の声が噴出しているのです。

 10月に平壌で行われたカタールW杯予選で北朝鮮の選手たちから韓国代表の面々が

危険な反則プレーを乱発されたこともあって『あんな野蛮な国と一緒にチームを結成

することなどできない』と口にする者も少なくない。

こうした真実を文政権は見定める必要性があると思います」
 北朝鮮に大きく振り回される文政権のダッチロールまがいの南北融和政策によって、

韓国のスポーツ界は人知れず悲鳴を上げている。

新田日明 (スポーツライター)