クルーズ船客が次々失踪37人 審査簡素化悪用か 不法就労していた中国人も

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 「爆買い」に代表される訪日外国人客が増加する中、福岡、長崎両県に寄港した大型クルーズ船の外国人乗客がいなくなるケースが相次ぎ、昨年1月以降の失踪者が計37人に上ることが両県警への取材で分かった。入国審査の簡素化を悪用した不法入国が増えている恐れがあるとみて、関係当局は警戒を強めている。

 国土交通省によると、昨年の外国クルーズ船の寄港回数は博多港(福岡市)が245回で全国1位、長崎港(長崎市)は128回で全国2位。両県警の調べでは、博多港の失踪者は昨年13人で、今年は若松港(北九州市)も含め7人。長崎港は昨年11人で、今年は佐世保港(長崎県佐世保市)も含め6人に上るという。国籍別では37人中34人が中国人だった。

 福岡県警筑紫野署は今年5月、博多港から入国し、行方が分からなくなっていた中国人の男を入管難民法違反容疑で現行犯逮捕。男は逮捕前日、ツアーバスで訪れた太宰府天満宮(同県太宰府市)でいなくなっていた。男は当時「腹痛でバスの集合時間に間に合わなかった」と供述していた。両県警などによると、37人のうち、発見できたのは13人しかおらず、12人は寄港地の県外で見つかった。不法就労していた中国人もいたという。

 不法入国増加の要因とみられているのが、入国手続きの簡素化。

買い物時間などが限られているため、大勢の乗客がスムーズに入国できるよう、法務省入国管理局は昨年1月、一部の船を対象に入国時の査証(ビザ)取得を不要とし、テロ対策として2007年から義務付けていた顔写真撮影も取りやめた

 これによって「以前より審査が甘くなり、低所得者でも気軽に旅行に来られるようになった」(捜査関係者)という。クルーズ船の料金は1人数千円程度から。ビザの取得手数料(約3千円)も不要なため「不法就労目的で、クルーズ船を利用する手口が広まるのではないか」との懸念が捜査関係者に出ているという。

 観光立国を目指す政府は20年に年間訪日客4千万人を目標に掲げる。九州・沖縄を管轄する福岡入国管理局の担当者は「不法残留がこれ以上増えると、観光立国を目指す制度の根幹を揺るがす。関係機関と協力して厳格に対応していきたい」と話す。

=2016/10/07付 西日本新聞朝刊=


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