韓国サッカー界の大物に“金銭疑惑”浮上 FIFA会長候補・鄭夢準氏



      


国際サッカー連盟(FIFA)会長選への立候補を表明している韓国サッカー界の大物に、金銭疑惑が直撃している。

FIFA元副会長で韓国サッカー協会の鄭夢準(チョン・モンジュン)名誉会長が、パキスタンなどへ送った寄付金に疑義が生じ、FIFA倫理委員会が調査に着手した-と韓国メディアが報じたのだ。汚職事件で信頼失墜した組織の立て直しが期待される会長候補に、疑惑が指摘される非常事態。会長選の戦況にどう影響するのか。


米連邦捜査局(FBI)が暴いた汚職事件を受けて、辞意を表明したゼップ・ブラッター会長の後任を選ぶ会長選は、来年2月に行われる。

 立候補の締め切りは10月26日だが、現時点で、フランス代表や強豪ユベントス(イタリア)で活躍して「将軍」と呼ばれた、欧州サッカー連盟(UEFA)のミシェル・プラティニ会長や、ブラジル代表やフラメンゴ(ブラジル)で華麗なプレーを披露し、日本代表監督も務めたジーコ氏ら、かつてのスーパースターが出馬の意向を明らかにしている。


こうしたなか、鄭氏が出馬表明したわけだが、何と記者会見の2日後(8月19日)、韓国・聯合ニュースが疑惑を報じた。米ブルームバーグの報道を引用する形で、FIFA倫理委員会が鄭氏の過去の寄付金を調査している-と伝えたのだ。

 記事によると、鄭氏は2010年、洪水が発生したパキスタンに40万ドル(約5000万円)、大地震に見舞われたハイチに50万ドル(約6250万円)を支援したが、FIFAは、これらが11年1月の副会長選を控えた時期だったことを問題視し、寄付金の使途などを調査するという。

 ハイチへの寄付金に関しては、汚職事件で起訴されたワーナー元FIFA副会長が私的に流用したとも報じられている。鄭氏はこの副会長選で敗れ、1994年から務めていた副会長の座を失っている。

 疑惑が事実であればFIFAの闇は深いが、聯合ニュースによると、鄭氏側は疑惑について「純粋な人道支援さえ政治的に利用しようとするFIFAの倫理に反した態度に慨嘆を禁じ得ない」と反論しているという。

 鄭氏とは一体、どのような人物なのか。

 1951年、韓国屈指の財閥、現代グループの創業者の六男として、釜山で生まれた。名門ソウル大学卒業。韓国国会議員7期目のベテラン政治家で、かつて与党・セヌリ党の前身であるハンナラ党の代表も務めた。FIFA副会長時代には、日本の単独開催が濃厚だった2002年サッカーW杯を日韓共催に持ち込む“剛腕”を見せつけたが、国内での評判はあまり芳しくないようだ。

 韓国事情に詳しいジャーナリストの室谷克実氏は「政界で支持する人物をコロッと変えることも多く、政治行動を評価する向きは少ない。過去にソウル市長選に出馬して落選したが、当然の結果だろう。現代重工業の大株主なので資産は豊富だが、人望は乏しい」と語る。

 FIFA会長選の状況も極めて厳しい。実は、疑惑が浮上する以前から劣勢が指摘されていた。

 現段階で本命視されているのは、前出のプラティニ氏だ。欧州を中心に高い求心力を誇り、日本や韓国が所属するアジア・サッカー連盟(AFC)も推す方針を発表している。南米や北中米カリブ海の各連盟も、プラティニ氏支持に回るとみられている。

 鄭氏は立候補に必要な「FIFA加盟5協会の支持」を得られるかも見通せない状況だという。

 「数年前に副会長選で落ちた人物が、会長になろうということがおかしい」(前出の室谷氏)という見方もあるが、今回の金銭疑惑は、鄭氏をさらに窮地に追い込むことになるのか。


http://t.co/FHOzt6qEJb