ラジと初めて出会った日の翌日の話です。
彼は、刑務所のような私の安宿まで時間通りに迎えに来てくれました。
インド人には珍しく、ラジは時間を守る。
インド人によっては、あーだこーだ言いながら1時間以上待たせることも少なくないんです。
それでめちゃくちゃ文句言っている人もあんまり見ないし、許し許されるおおらかな社会が、日本みたいにガチガチ社会から来た私には心地良かったりもする。
ラジが乗ってきたのはトゥクトゥクという、バイクと車の間みたいな三輪カーでした。
後部座席にバックパックと私を乗せて、ジャイプール中心部にある彼の知り合いのプチホテルに向かいました。
めちゃくちゃステキ☆というわけではないけど、昨夜の宿よりはずっとまし。金額もリーズナブル。
早速チェックインすることに。この宿がその後、私の定宿となります。
原則として、現地に住んでいるインド人男性は、旅行者の部屋の方まで行くのは禁止されているそうな。
特に男女となると、同意があったなかったで、いろいろ面倒臭いことが起こる可能性があるからですね。
でも、この宿はラジの知り合いの経営するところだったので、ラジは顔パスで、私の部屋まで着いてきました。
荷物を運び入れて、遠慮もなくベッドの上に座って、部屋を見回したりしていました。
おいおい。
私の荷解きが終わるのを待って、部屋を出たところのホテルのテラスでお茶を飲もうということになりました。
(つまり、部屋では何も起こらなかったわけです。でもあのとき、もしそういう関係になっていたら、今の私たちはなかったかもしれない。)
吹き抜けの明るいテラスのテーブルに腰掛けて、私たちはどれくらい話しただろう。
朝の10時くらいから夜の7時くらいまで、ずーっと話していたと思います。
宿のおばさんが、2時間弱に1回くらい、私たちにチャイを運んで来てくれました。
それが5回目くらいになったとき、遂にそのおばさんは私たちに
「ねぇ、ちょっと聞いてもいい? あなたたち朝から一体何を話しているの?」
と聞いてきた。
それで私たちは初めて自分たちがランチを食べるのも忘れて話し込んでいることに気が付いたんです。
何を話しているかって・・・?そういえば何を話してるんだろうね。
決して、難しい環境の話でも政治の話でもなく、なんてことない話でした。
どっちかというと、哲学的な話だった。どんな思想で生きているかとか、自分にとって大切なこととか。
くだらないジョークとか。
でも尽きることがなくて、なんだか古い知人にでも再会したような、昔話を懐かしむような、そんな感覚でした。
これだけ話をして、このときの私の感想は、
こんなに私みたいな人がいるんだ・・・!
でした。
一を言って十を理解する。ふたりの中心にあるコアな部分は同じなんだなーとひとり秘かに感動してました。
性別も人種も見た目も育ってきた環境も違うはずなのに。
やっとお腹ぺこぺこなのに気がついて、夕飯を一緒に食べて、また次の日も会う約束をしてバイバイしました。
つっこみラジの一言
君の部屋に行ったとき?
うーん、何かあったらいいなと思わなかったわけではないけど、僕は何も望んでなかったよ。
とても大切な人だと思ってたから。
時間を忘れて話したよね。
僕は、ついに神様が自分を理解してくれる人を送ってくれた!って思った。
だから・・・
あのときは、結婚しているとは言い出せなかった。
