完璧な準備は、たいてい間に合わない
準備が足りない状態で始めるのは怖い。よく分かります。ただ、何年かやってきて確信していることがあります。準備が完璧に整うことは、まずありません。理由は単純で、始める前には分からないことが多すぎるからです。何が問題になるかは、動いてみないと見えない。だから机の上で準備できるのは、想像がつく範囲だけ。そして実際に起きる問題の大半は、想像の外から来ます。私自身、初めての事業を始めたとき、かなり準備したつもりでした。計画も立てた。想定される問題への対策も考えた。ところが実際に起きたのは、考えていたのとまったく別のことでした。準備が無駄だったとは思いませんが、準備の精度と結果は、思ったほど連動していなかった。それ以来、考え方を変えました。準備を完璧にするのではなく、始めるのを早くする。そして、修正できる余地を残しておく。具体的には、最初の版はあえて簡素にします。作り込むほど、直すのが惜しくなるからです。時間をかけて作ったものほど、間違っていると分かっても捨てられない。これは自分でも驚くほど強く働きます。だから、捨てやすい状態で世に出す。反応を見る。そこから直す。この順番のほうが、結果的に早く形になります。もうひとつ、始めてから分かることの価値は、調べて分かることの何倍もあります。実際にお金を払う人がどこで迷うか、どの説明が伝わらないか。これは動かさないと絶対に分かりません。ただし、誤解のないように言うと、何も考えずに飛び込めという話ではありません。失う金額の上限は決めておく。やめる条件も決めておく。この二つさえあれば、あとは始めながら考えても致命傷にはなりません。準備すべきなのは、事業の完成度ではなく、退路のほうです。もし今、準備が終わったら始めよう、と思っていることがあるなら。その準備、いつ終わりますか。日付が答えられないなら、たぶん終わりません。不完全なまま始めた人だけが、次の景色を見ています。