(S)


 そういや…こいつらは、どっちがどっちなんだろうな…

斗真のが背が高いし…いや、でも体格的にそんな差はないしな~…

案外、松潤の方が… ん?


何か、智…顔、赤くないか?


こいつらのエッチ事情より、智の体調のが大切だからな…!


「智?」


「…ふぇっ?」


「顔赤いけど…暑いのか?」


「えっ…違っ…/////」


「お茶と塩飴買ってたろ、ほら、出せ」


「え?うん…」


ペットボトルのキャップを外して、智に渡す


「ほら、飲んどけ」


「うん…」


コクコクとお茶を飲む智…


「飴も、もう1コ食っとけ」と、口の中に放り込んでやる


「…大丈夫だからっ…/////」


「本当か?」


「うんっ…/////」


智の額に手をあてる… 熱は…無さそうか…




10分程、歩くと俺らが通ってた小学校が見えてくる…

来るの、卒業式以来だよな…


「懐かしいな…」


「そうだね…」


「まだ4年しか経ってないのにな…」


4年…しか経ってないんだな……何か、もう…ずっと前のことのように思える…


正門を抜け、中に進んでいくと……


右手の体育館から、左手の職員室や保健室のある校舎に繋がってる渡り廊下があって……


あの渡り廊下……


一瞬で、あの頃に引き戻される……


卒業式の日…智に謝ろうと思って声をかけたら…


智は、あの渡り廊下を逃げるように走っていってしまった…て、実際、逃げられたんだけど…


俺は…あの時、あの廊下の途中で立ち止まったまま…ショックで暫く動けなかったんだよな…


……なんて、感傷に浸ってると…


「…翔くん?」


「ん?」


不意に呼ばれて、見ると、智の泣きそうな顔が目の前にあって…


「どうした?気分悪いのか?」


「え…ううんっ…」


もしかして…こいつも…あの頃のこと思い出してたとか…?


俺との思い出……小学生の頃なんて、良い思い出、1つもねぇからな…


「大ちゃんっ、櫻井くん!」


「うん?」


「俺らのクラスのタイムカプセル、花壇の奥のびわの木の傍に埋めたでしょ」


「…そういえば、そうだったね」


「そうだったな…」


「もう、皆、そっちの方に移動してるらしいよ」


「あ~、じゃあ行くか」


「うん」


松潤のクラスは、校庭の別の場所に埋めてるらしく、またあとでなって、別行動になった


「ほら、2人とも早く行くよ~」と、斗真が俺と智の手を引いて、花壇の奥に歩いていく…


(あ……)


斗真に手を引かれて、もう1つ思い出した…


小6の運動会の時に…


斗真が、『写真、撮ろうよ』て言って、手を引っ張ってきて…『うん』て、隣に立ったら…


斗真は、その近くを通った智の手も引いて、『大ちゃんも一緒に撮ろっ』


『えっ…?』て、呆気にとられてる智が、斗真の反対隣に立たされたところで、シャッターが下ろされて…


俺と斗真と智の3ショットが撮られたんだよな…


後日、斗真がその時の写真をくれて…


俺…その写真を…智宛の手紙と一緒に…


タイムカプセルに入れたんだった…




(O)


 翔くん…


何か、思い出してるの…?

そこに…僕は、いるの…?


「…翔くん…?」と呼ぶと…


「ん?」て、切なそうにしてた表情がこっちを向いた途端、「どうした?気分悪いのか?」と心配そうな表情に変わる…


「え…ううんっ…」


探るように僕を見る翔くん…

どうしよう…泣きそうなの…バレるかも…と思ったら……


「大ちゃんっ、櫻井くん!」て斗真くんの声がして…

皆、タイムカプセルを埋めた奥の花壇に移動したらしくて、「俺らも行こ~」て、僕と翔くんの手を引いて歩きだした…


(あっ……)


斗真くんに手を引かれて、小6の運動会の時を思い出した…


斗真くんが誰かと写真を撮ろうとしてる傍を通りかかったら…


『大ちゃんも一緒に撮ろっ』て手を引かれて、『えっ…?』て言った時には、シャッターが切られてて…


斗真くんの反対隣にいたのが、翔くんて分かって、僕は、すぐその場を離れたんだけど…


後で、斗真くんが、その時に撮った写真をくれて…

僕は、その3ショットが、なんか嬉しかったんだよね…

それで…20年後には、またこんな風に写真が撮れたらいいのになって…

翔くんへの手紙と一緒に、この時の写真もタイムカプセルに入れたんだよね…



「掘り起こせたみたいよ」


「えっ…」


斗真くんの声にハッとする


しまった、ぼ~っと思い出に浸ってた…💦

あれ…翔くんは?

さっきまで隣にいたのに…いつの間にか、びわの木の回りで、元クラスメート達の輪になってる前の方に移動してる


「大ちゃんも…自分の手紙、回収したいの?」


「え…そう…だけど、なんで…」


そう言うと、「待っててね」て、斗真くんも輪になってる前の方に行ってしまう


え、もしかして…僕の手紙、持ってきてくれるとか?いやいや、人任せにしちゃダメだよね…


『あ、これ、俺のだっ』

『私の見つけた!』

『私のもあったっ』


皆…それぞれ見つけてるみたい…


あ、ダメだっ…待って待って…僕…


封筒の表は、たぶん、翔くんの宛名しか書いてないかも…

慌てて、前の方に行こうとしたら…


「…見つけたよ」て斗真くんが戻ってきて…封筒を僕の手に持たせてくれた…


「ありがとお…」


「…櫻井くんのこと足止めしとくから…中身、確認してきなよ」


「えっ…あ…うんっ」


そうだ…翔くんに宛てた手紙ってバレたら、見せろって言われるかも…


僕は、その場から、コソッと離れて……今は空っぽの飼育小屋がある横の倉庫の陰に身を潜める…


皆の声は、少し遠くに聞こえる…けど、ここならたぶん大丈夫…


封筒を開けると、運動会の時の翔くんと斗真くんと僕の3ショットの写真が入ってて…僕のだ…と胸を撫で下ろす…


写真を戻して、何気なく封筒の表側を見ると、薄くなってるけど、宛名が書いてあって…


そこには、『智へ』て……

えっ?僕宛て…てことは…コレ、僕のじゃない…

でも…この写真が入ってるってことは…

それに…

僕のこと『智』て呼び捨てしてたのは…

翔くん…

この手紙…翔くんが書いた手紙だ…

ドキドキ…


僕は…封筒の中から、もう一度、写真と……


折り畳んで入ってる手紙を取り出した……











わ~…!こんなところで切って、ごめんなさ~い