こんにちは!先月からずっと下書きに入れてたんですけどね……どうせなら、桜の咲く時に上げようかな~…と待ってました…(笑)実家近くの桜は数日前から咲いてましたが…この辺りにも…やっと……春が来たかな?🌸🌸🌸🌸🌸✨








 約束したその日…


君は、来るんだろうか…



中学生の頃…


同級生だった彼…


彼は、僕の初恋の人だった…


彼の大きな瞳に、柔かそうな唇に…


一目で恋に落ちたんだ…


1年、2年は隣のクラスだった…


中3になり、同じクラスになって…


思いきって話しかけたたら…


1年の頃から、自分も友達になりたいと思ってたんだ…ってはにかんだ笑顔に…


僕の心は完全に彼に捕らえられた…


同性同士だしね…


実る訳がない、この初恋…


それでも、彼とは友達でもいいから、ずっと繋がっていたかった…!


でも…


中学を卒業後、彼は父親の海外転勤で、日本からいなくなってしまう…


いつ帰ってくるかはわからない…


この頃はスマホなんて持ってなくて…


海外なんて…もう、二度と会えないような…


遠い…遠い場所に感じていた…


それなら…と、僕は、せめて、忘れないでいてほしいと…彼に告白することを決意した…


それで春休みに…



学校の裏にある、丘の上の桜の木の下に君を呼び出したんだ…


そしたら…


僕が好きだって言う前に…


『智くん…俺は、貴方が好きです!』


て、彼の方から言ってくれたんだ…


そして…


彼と約束したんだ…


10年後の今日…


また、この桜の木の下で会おうって…



ねぇ…



翔くん…覚えてる…?




高校の途中で、親が離婚して…


父親と姉ちゃんが、家に残り


僕は母親についていって…


名前も、成瀬智から、大野智になった…


母親の実家で暮らすようになった…


じいちゃんは、昔から、僕の絵を誉めてくれて…


好きなら、ずっと描き続けなさいって…


高校生になっても、絵を続けていた僕のことを喜んでくれて、美大にまで行かせてくれた…


美大卒業後は、絵の勉強に海外にも行った…


必死だった、その頃は…


翔くんを思い出さない日もあったかもしれない…


それでも…


10年後…


君に会えると信じて…


僕はずっと頑張ることが出来たんだ…!



約束の日が再来年にせまった頃…


海外にいた時に、知り合った…


デザイン事務所の相葉さんと、ギャラリーのオーナーの松本さんから、個展のお話をいただいた…


海外では、そこそこ売れた僕の絵…


でも、日本ではまだ無名の画家で…


僕には、まだ早いんじゃないかって思って、断ろうと思ってたんだけど…


じいちゃんと、親友のニノが…


早いも遅いもないんだって…目の前のチャンスを逃すバカがどこにいるんだって…


背中を押してくれた…



僕は、描きたい風景があった…


中学卒業した後に…


10年後に、またここで会おうって約束した…


あの丘の上の桜の木の絵を…


うん!


あの桜の木の絵を描こう…!


僕は、約束したその場所を訪れた…


愕然とした…


だって…


約束の場所には…


マンションが建ってて…


あの丘も…桜の木も…


どこにもなかったんだ…


ショックで、涙が止まらなかった…


塞ぎ込んでる僕に、ニノが言ったんだ…


約束の場所が無くなったなら…


僕が描いて…


あの丘と、桜の木を…


約束の場所を再現すればいいんだって…


僕は…


記憶の中にある…


君との約束の場所を…


必死に思い出しながら…


約束の日に…


必ず会いたいんだって…


願いをこめて…


絵を描いた…





そして…


月日が流れ…


個展の日を迎える…


個展期間は2週間…


最終日が、


翔くんとの約束の日になる…


相葉さんや松本さんが、町の至るところに…


個展のポスターを貼ってくれた…


本屋さんや、雑貨屋さん…町内の掲示板や銭湯にも…松本さんのギャラリーのガラス窓にも…


そして、あの桜の木があった場所…


そこのマンションの近くにもポスター貼ってくれていた…


どこかで、このポスターを見たら…


ポスターに載ってる桜の木の絵を見たら…


思い出してくれるだろうか…


翔くんは…


僕との約束…覚えていますか?



個展は、思っていたより盛況で…


まさかの観覧者数に、驚きを隠せなかった…


それでも…


たくさんの人の中に…


翔くんらしき人は来ないまま…


個展期間は過ぎていき…


今日は最終日…


10年前に約束したその日を迎える…


翔くんは…


来てくれるのだろうか…


もしかしたら…


来ないかもしれない…


僕は、会場にいたけれど…


翔くんが来るかどうかわからないのに…


ずっと待ってるのが怖くなって…


会場にある控え室に籠って、出られなかった…


もし、ここに来なくても…


まだ、あの桜の木の跡地…


マンションの方に来てくれるかも…


いや…


そもそも、日本にいなかったら…


マンションの方にも、ここにも来ないかも…


不安が頭の中を占めていく…


「大ちゃん!」


と、相葉さんが慌てた様子で控え室のドアを開けた…


「どうしたの?」


「一番奧に飾ってる、桜の木の絵…あの絵の前に立って、ずっと見てる人がいるって…」


「え…」


でも、あの絵の前で、立ち止まる人は、今までも何人もいたけど…


「ずっと…その場所から動かないんだって…!」


もしかして…


来てくれたの…?


僕は、控え室から飛び出して…


その約束の場所の…


桜の木の絵のところまで走った…



翔くん…



翔くん…



翔くん…なの?



桜の木の絵の前に佇む…



男性の後ろ姿が見えてくる…


背も伸びてるし…


あの頃とは違う…大人な後ろ姿…


でも…あの立ち姿…


あのなで肩具合は…



「翔くん…?」



その後ろ姿の男性に声をかけた…



「え?」



と、振り返ったその男性は…



背も伸びて、少し大人っぽくなってるけど…



大きな瞳と柔かそうな唇は…



あの頃のままで…



間違いなく…



10年前の約束の相手が…



そこにいたんだ…