(S)


 今年は… 年末から風邪をひいて熱を出して…

寝込んだまま 年が明けた…


あ~あ、ツイてない…

毎年、元旦に初詣に行ってたのにね…


もう三が日も過ぎて… テレビ番組も通常に戻りつつある…

もう、すっかり風邪も治って、寝てるのも飽きたから、ベッドから出て 伸びをする…


とりあえず、運動不足で鈍ってる体をどうにかしようと、ウォーキングがてら、近所の小さい神社にお参りに行ってくるか…と家を出て歩き始める

マンションの下まで来て、初詣の約束をしてた相手にLINEしようかと思ったけど…

休みだし、まだ寝てるかもな…と手にしたスマホをポケットに突っ込んだ…


少し早足で歩いて、神社まで来て鳥居を潜ると…

見覚えのある華奢な後ろ姿を見つける…

そっと近づいて横に立って見ると…

手を合わせ、必死に拝む貴方の横顔… 何を願っているんだろう…

神様も、こんなに可愛い人から必死にお願いされたら、願いを叶えたくなるんじゃね~の?

今年は 健康祈願かなって思ってたけど…あまりにも必死に願ってるその姿を見たら…

この、隣で一生懸命 拝んでる可愛い人の願いが叶いますように…と願ってしまう…

目を開けて、隣を覗き込むように見ると…

長い睫毛が揺れて…その瞳が開き、こちらを見上げた…


「…翔くん!」

「…やっと気づいたか(笑)」

「風邪、もお いいの?」

「うん、熱も下がったし、もう大丈夫だよ」

「…良かったぁ~…!」


心底 ホッとしたような表情にドキリとする…


「初詣、行けなくて ごめんね」


いつもは、ここじゃなくて、電車で もう少し大きな神社に 行くんだよね…


「全然いいよ…それに、ここで会えたしね」

「今年は、ここで初詣か」

「ふふ…うん、それに ここの神様、早速 願い事 叶えてくれたし…」


そういえば…必死に拝んでたよね…


「何を…お願いしてたの…?」

「えっ……と……それは…」

「もう、叶ったんでしょ?教えてよ」

「……………翔くんの風邪が早く治りますようにって…」

「えっ……/////」


俺の風邪が治るようにって…あんなに必死に願ってくれてたの…?

俺の顔を覗き込むようにして…


「ふふ… 治って良かったね♪」

「うん…/////あ~、だったらさ、他のことお願いすれば?」

「え… 他のこと?」

「うん、そう…俺の風邪は治ったからさ」

「あ…そか、じゃあ~…」

「うん…?」


智くんは、う~んと 考えるようにして、あっ!と俺のことを 見て… パンパンと手を叩いて合わせ…


「今日、このあと、翔くんがファミレスで奢ってくれますよ~に♪」

「…ぶっ(笑) そんなお願いで いいの?」

「叶えてくれる?(笑)」


手を合わせたまま、片目を開けて、俺を窺う智くん…

そんなの神様に 願うまでもないでしょ…


「お安いご用ですよ♪」



ファミレスで、ブランチを済ませた帰り道…


「翔くん、本当に奢ってもらって良かったの?」

「うん」

「僕の分、払うよ…」

「いいよ!風邪ひいて、ずっと寝てたからお年玉も使ってないしさ」

「そか、じゃあ、ごちそうさま♪」

「い~え♪」

「次は、僕が奢るからねっ」

「うん…あ、そうだ」

「ん?なに?」

「結局、智くん、神社でお願い事してなくない?」

「えっ…したよ…」

「俺の風邪が治るようにでしょ?」

「うん」

「それ、願う前から治ってたから…やっぱ行こ」


そう言って智くんの手を引いて歩き出す


「えっ…どこに?」

「さっきの神社♪」

「え~…」


そうして、神社まで戻ってきた


「…翔くんは?」

「俺は さっきお願いしたよ」

「…ちゃんと、お賽銭 入れた?」

「えっ?」


あれ?

そういえば、俺、さっき小銭 入れたっけ…?

智くんは、ふにゃっと笑って…


「2人でやり直しだねっ」

「だね」


今度は、ちゃんと賽銭箱に小銭を投げ入れ、お辞儀してパンパンと手を叩く…

そして…願い事は… さっきと同じで いいや♪


(智くんの願い事が叶いますように…!)


そう願ったと同時に…


『翔くんと、この先もずっと一緒にいられますように…!』

「「えっ!?」」


今の声…


「智くんの…?」

「翔くんの…?」

「えっ!?」

「えっ!?」

「智くんの声が聞こえた…/////」

「…翔くんのも…/////」

「「…………………」」


俺と この先も一緒にいられるようにって、願ってくれてたよな…


「ねぇ、智くん」

「…なに?」

「…さっき願ってくれたのって…」

「え…うん…」

「…親友として…?」

「え…と…それは……/////」


智くんの頬が一瞬でピンクに染まった…


「ね、俺と一緒にいたいって事だよね?」

「そ…だけど…ってか、翔くんの願い事なにっ…僕の願い事が叶いますようにって…」

「えっ… ああ…(笑)」

「自分の願い事 しないとでしょっ…」

「あれが、俺の願い事だから…」

「…翔くん…?」

「俺の…好きな人の願い事が叶うといいなって思ったんだ…」

「え…好きな…人…って…」

「まさか…この状況で わからないとか…?」

「…翔くんの…好きな人は…僕…?」

「そうだよ…俺の好きな人は 智くんだよ」

「あ…/////僕…も…好きっ…翔くんが好きっ」

「うん…嬉しいよ…」

「僕もっ…嬉し…んっ…ん…」


智くんの唇に、短く口づけた…


「…なっ…そ…外でっ…/////」

「誰も いないよ?」

「かっ…神様の前じゃんっ…んんっ…ぁ、またぁ…/////」


んはは…顔 真っ赤にして、可愛いな…♪


「神前で、ちょうど いいじゃん」

「なっ…なにがっ…/////」

「誓いのキス♪」

「えっ?」

「神様の前で、この先もずっと智くんと一緒にいるって、誓いのキス!」

「誓いの…キス…/////」

「うん」

「だったら…もう一度…/////」

「うん…ずっと、一緒にいよう…」

「うんっ…んんっ…」


そして、俺と智くんは もう一度誓いのキスをした…


神社からの帰り道…


「ねぇ 智くん…」

「うん?」

「来年の初詣も、さっきの神社に行こうか?」

「あ…うんっ」

「その前に、御礼参り 行かないとな」

「お礼参り?」

「願い事 叶えてもらったから、神様に そのお礼をね」

「あ…うんっ…いつ…?」

「…そうだなぁ…智くんと俺が結ばれた次の日とか?」

「結ばれた…?」

「えっ…だって、俺と智くん、今日から恋人同士だよね?」

「え…あ…そっか…うん…/////」

「だったら…この先…ねえ?」

「ねえ?…って…え?」


マジか… 惚けてるのか…本当に分かってないのか… これは…また個人的にあの神社に参拝するべきか…?


翌月…


智くんと結ばれた訳ではないけど…神社に御礼参りに訪れた…

智くんと結ばれた次の日になんて…いつになるか分からないしね…

それでも、智くんと気持ちが通じ合えたことに感謝を伝える…


(神様、願い事が叶いました…ありがとうございます)と…手を合わせた…


顔を上げた時…曇っていた空が晴れてきて…

神前に日の光が差し… 俺と智くんの前途は明るいんだって、そう約束されてる気がした…


そして…


その半年後の夏休みに入った初日…
 

智くんが大切すぎて…なかなかキスより先に進めないでいる俺は…個人的に その神社に行くことに… 


ほんの少しでも…勇気をもらおうと…鳥居をくぐると…


え…?


見覚えのある 華奢な後ろ姿を見つける…


俺は、そっと近づいて、横に立つ… 


手を合わせ、必死に拝む智くん…

何を願っているんだろう…


すると、またあの時のように聞こえてくる…


『翔くんと…キスより先に進めますように…!』


えっ…マジ?

同じこと 思ってたの?


俺は、あの日と同じように…


この隣で、一生懸命 手を合わせて拝んでる 可愛い人の願い事が 叶いますようにと… 


そっと願った…










   END




☆こんにちはw
いつも お話 読んでくださってありがとうございます!また短編を挟んでしまいました…(^^; ノートに書き上げてから、下書きに入れるまで時間が かかってしまいました(単に億劫だっただけ…笑) 無理やり1話完結にした感はありますが…ご容赦ください…!m(__)m
そして、不思議な出来事に触れてないことも…(^^;
別部屋でも、内容は違いますが、あちらでは、『negai』というお話を上げています…w あっちは1話完結で終わらせられなかったです…前後編となります…w
また別のお山の2人のお話になります♪良かったら、あちらのお話も 読んでみてくださいw