闇に浮かぶ影-2(短編小説) | 柴犬 豆柴の胡南

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腕の痛みよりも恐怖に体が硬直している。


暗闇に少し目が慣れきた。


闇よりも更に黒い影が。浮かんでいるのが、なんとか見える。


1~2メートル位離れているだろうか・・・

自分の間合いの中に奴がいる。


以前やっていた空手の血が騒ぐ・・・

何かものかも、分からない奴にやられてたまるか?


素早く中段辺りに廻し蹴りを蹴りだした。

しかし手ごたえは全く無い・・・空を切ったようだ。


体が思いのほか緊張し思うように動かない。


それも当然だ、こんな状況になったのは初めてだ。

喧嘩もした事は無い。

スポーツとして空手をやっていただけだから。

だが、今はそんな事、言っている場合ではない。


もう一度蹴ってみるがやはり空を切るだけだった。


スッテップを刻み体をほぐしてみる。


影は、殆ど位置を変えていないようだ。


だんだん辺りの状況が見えるようになってきた。

体をほぐしたので、緊張もほぐれてきたようだ。


影の高さは2メートル以上はある。

形から想像して一番近い形は熊だろう。

しかしこんな都会の真ん中に熊が居る筈は無いが・・・


今度は更に一歩踏み出し頭辺りに渾身力を込めて跳び蹴りをした。

手ごたえがあった・・・壁を思いっきり蹴ったように足に激痛が走った。


つぅ・・・・


着地と同時に脇腹に痛みが・・・・

なにかバットのような物で叩かれたような痛みだ。


だが、このまま倒れてしまったらそれは、即、死を意味するだろう。

なんとか踏みとどまり、しゃがんだ状態から一気に拳を突き上げた。


人間なら、丁度、顎の辺りをアッパカットされた感じで、そのままコンクリートに頭から倒れこんでいるだろうが・・・


そのくらいの感覚が拳に残っている。


その直後・・・奴の影が小さくなっていくのが分かった。

逃げていったのだ。


ほっとした俺は、一週間後病院で目を覚ますまで昏睡状態で生死をさまよっていた。

脇腹を叩かれた為、内臓が破裂していた為だ。


今、考えても、あれが夢だったのか・・・現実だったのか・・・分からない。

ただ、拳に残った感覚だけは今も残っている・・・・・・・・・