前歯が抜けた
ネットで調べたところ、側切歯という歯
どセンター2本の隣に生えているやつ

今から30年前
京都の大学まで、岸和田からママチャリで行った。距離にして約90キロ
ひいひい言ってたどりついたのだが、ひたすら1国を走ったので全く楽しくない
帰りはタイヤを外して、当時乗っていた車に乗せて帰ってきた

で、ここからが問題なのだが、タイヤをはめて、工具を使わずネジを指で締めた
こういうネジはね、逆ネジになってて、走っている間に勝手に締まるんですよ
賢しらにそんなことを言って…

ある日、もう夕暮れ時だった
くだんのママチャリを漕いでいた私
鼻歌を歌いながら立ち漕ぎしていて、歩道の段差が近づいてきたのでヒョイと前輪を浮かせた
暗くて見えなかったが、その拍子に前輪はステーから脱落、そのまま前方に飛んでいった
それに気づかなかった私は、顔面から路上に叩きつけられた
歯が脱臼して唇を突き抜け、口と鼻の周りがぐちゃぐちゃの血まみれ

通行人に介添され、近くの町医者に運ばれた
その町医者は大学の同級生だった女の子の実家
午前中の診察が終わると、隣の酒屋がやってるスタンドで軽くやって、夕方はほろ酔いで診察してた
先生「お、えらい派手に転んだな。安心しろ前より男前に縫ったるからな」
絶好調の先生。しかし縫い始めるとたちまち額に玉のような汗
「難しい、むずかしい」
これはもうダメだと思った。酷い顔になるんだろな
結局16針縫ったが、傷は残ったものの幸い2枚目の顔のままだった。先生ありがとう

で、この時血まみれになったTシャツを脱がせようと看護師さんが引っ張るんだが、私は頑なに拒否した
看護師「もうビリビリだし、早く脱いでください!」
アンプ「んー、んぐー」

ボトッ
Tシャツが脱げた拍子に足元に拳銃のモデルガンが転がり落ちる
お気に入りのコルトガバメント
いつも肌身離さず持っていたのだ。この日もジーパンに刺して自転車に乗ってたんだっけか
先生「なんやおまえ、カチコミにでも行くんか」

痛かったけど、それより猛烈に恥ずかしかった
翌週大学に行くと、案の定医者の娘さんだった同級生がみんなに言いふらしていた…サイアク

あれから30年、神経抜かれても健気に働いてくれた私の前歯もついにお役御免
褐色に変色した前歯は満身創痍。今までありがとね
私もじきにそっちに行くから、先にゆっくりしておいてくれ、なんて人生の夕暮れ気分を味わった週末でした