長野勤務における目標の一つ、高天原温泉へ

高天原温泉へのルートは幾つかある。最もポピュラーなのは富山県の折立から太郎平〜薬師沢を経て向かうルート(約16キロメートル・コースタイム(以下CT)約10時間)
しかし松本からだと折立は遠すぎるので、今回はスタート地点を新穂高温泉に取り、小池新道経由で双六小屋〜三俣山荘〜雲ノ平を経て向かうルート(約25キロメートル・CT約16時間)を選択
そして帰りは高天原温泉から温泉沢ノ頭〜水晶岳〜鷲羽岳を経て三俣山荘に抜けるルートを取り、裏銀座の一部を縦走する計画を立てた
総距離50キロ超、累積標高4,415メートルを4日で歩く



(1日目)
06:00 新穂高登山口発
初めて登る小池新道は南面斜面の日当たりの良い登山道。猛暑にたちまち汗だくになる
それでも徐々に登りつめて鏡平山荘に到着
かき氷を食べた



(ミゾレは絵になりませんな)
うへえ生き返る
前日まともに寝ていなかったのもあり、ここのベンチで1時間ほど寝てしまった…これが運の尽き

起きると辺りは真っ暗。ヤバい雨だ!
大粒の雨がポツポツきたと思ったらいきなり本降り。急いでカッパを着る

弓折乗越から先は、晴れていれば右手に屏風のように迫る槍穂高を見ながら綺麗に整備された稜線を歩けるのだが、ガスと雲で何も見えない


(恨めしや)

15:00 双六小屋着



(色とりどりのテントが綺麗)

双六小屋は今回使った山小屋の中で一番良い印象だった。特にトイレと寝具の清潔さは他の山小屋とは段違い

(2日目)
05:20 双六小屋発


日の出を拝んだら、まずは双六岳に登る
山頂からの眺望は素晴らしい


槍ヶ岳から三方に伸びる尾根、そして槍に続くかのような登山道

双六岳から三俣蓮華岳を縦走


山頂からは正面に鷲羽岳、その奥に水晶岳だ
これは貫禄ありますね

三俣蓮華岳を下り、三俣山荘から黒部源流方向に下っていくと、水量豊かな沢のほとりに広場がある




「黒部川水源地標」と記された小さな碑
これが黒部源流碑



冷たい水をボトルに詰めて、ここから雲ノ平へ登る


(鷲羽岳から撮影)
写真中央左下にある⭐️印が黒部源流碑で、そこから右上の台上に通じている登山道を登る
ヒイヒイ言いながら上り詰めると台形地形になっており、そこが「日本最後の秘境」「天空のお花畑」と呼ばれる雲ノ平



登山道の先には雲ノ平山荘が見える



(スイス庭園。沢山の池塘)
スイス庭園の先から前方に広がる凹地を覗き込む



写真中央、森林地帯の中に小屋が見える
あれが高天原山荘
流石日本一遠い温泉と言われるだけあって、ここからまだ結構ありますよ

雲ノ平山荘に到着し、ここで双六小屋で持たせてもらった弁当を使う


ビールはロング缶1,000円
北アルプス最深部だし妥当か

ここから高天原山荘までは約2時間の行程
樹林帯の酷く急な下りを慎重に進む



14:30 高天原山荘に到着
早速風呂だ!えっ?小屋に風呂がない?
そうですここから更に30分歩いたところに温泉があるとのこと



入り口こそ綺麗だが、進むと普通に登山道
この前も途中で転んで大怪我してヘリで搬送された人がいたというのでお気をつけて

しばらく進むと温泉沢に出る
既に辺りは硫化水素の香ばしい匂いがプンプン



沢を挟んで男女別の湯小屋が二つと混浴の露天風呂が並ぶ

まずは混浴露天風呂



大きさは3人サイズ
湯温は41度
浴感はキシではなくややスベ
口に含むと収斂味も酸味もなく、玉子の味がする
これは単純硫黄泉か炭酸水素塩泉(硫化水素型)のいずれかと見当を付ける

ザーッと雨が降ってきたので、腰に手拭いを巻いて小屋掛けの方に逃げ込む


こちらは4人サイズ
湯べりも整えられていて長湯に耐えられる仕様

同浴になったのは東京から来た人
え?折立から一日で来たのですか?
聞けば日本海から太平洋までの縦走をしたことがあるという。いやはや化け物ですな
そして神戸から来られた人
この人もしょっちゅう北海道の山に遠征しているらしい。流石にこんな山奥に来ると、山もベテランの人ばかりだ

山小屋に戻り夕食を取る
高天原山荘は電気のない山小屋



これだと寝るしかなくなるので、食事で同席になったソロの人たちで集まり、テラスに出て飲み始めた
さっきの東京と神戸の人の他に、千葉から来た青年、富山の公務員、静岡から来られたご夫婦、そして私の7人
温泉に関しては一番経験があるが、山は断然ビギナーの私には刺激的すぎる話ばかり
手足をブヨに噛まれたが、この日の思い出は実は高天原温泉よりもテラスでの酒盛りの方が印象深いのではないか

(3日目)
04:35高天原山荘発
この山行で一番きつい行程
温泉沢ノ頭までの登り



(宿に貼っていた案内)
まずは温泉から沢沿いに登る


結構な水量のある沢を10回以上渡渉する
靴を濡らすと後が大変なので、早々にワークマンで買った水陸両用のシューズに履き替える
これがすこぶるいい!
これまでワークマンなど小馬鹿にして使ったこともなかったが、わずか1,900円でジャブジャブ川に入れて、しかもグリップも確か

1時間ほどで枝沢に入り、ロープの垂れた崖をよじ登る。ここからいきなり直登が始まる
樹林帯を抜け、ハイマツ帯になると眺望が開ける



しかし目指す温泉沢ノ頭はまだ見えない



ザレ場



ガレ場。写真中央には高天原山荘


07:53 ようやく温泉沢ノ頭に到着。標高差800メートルを3時間ちょいで登るのだから本日の営業はここで終了。後は敗残兵のようにトボトボと歩く


09:00水晶岳登頂



水晶小屋に着くが、アルコール以外全部売り切れ。おまけに渇水で水もペットボトル1本分の給水制限

11:07 ワリモ岳登頂


11:50 鷲羽岳登頂

13:00 三俣山荘到着



三俣山荘では、高天原温泉で出会った7名のうち5名と再会。だが私以外は皆テント泊
夕食はソロ登山の5人が同じテーブルに集められて食べた。そのうち2人は20代の女性
向かいに座った可愛い女性と少し話す
アン「え?去年上高地の山小屋で働いてませんでしたか」
女性「はい、あれ?あの時の?」


(2022.10.18撮影)
去年10月に奥穂高に登った時に某山小屋に立ち寄った。そこは我々の職場の人間が行くとコーヒーやアイスクリームをご馳走してくれるのだが、その時に話した女性が目の前にいる
なんという奇遇

夕食を終えると特にすることもない。布団の上でまどろんでいると小屋の外から「すごい!」「綺麗ね」なんて人の声が聞こえてくる
なんだろうと小屋を出る



目の前の槍ヶ岳が夕陽に染まっていた

今回の旅で思い知ったが、どこの頂上でも、まず最初に探すのが槍ヶ岳で、見えれば必ずシャッターを押してしまう。槍は北アルプスの象徴だよな

(4日目)
05:11 三俣山荘発
昨日の女性に挨拶して山荘を立つ。本日も快晴、ただし昼からは雷雨の予報。先を急ぐ
06:55 双六小屋着
ここまでずっと売り切れだったコーラを買って一気飲み
08:03 弓折岳登頂
頂上そばのハイマツ林にライチョウさん親子
ウグウグ鳴いている





(かわいい!)
08:39 鏡平山荘着
実はここまで「味噌ラーメン!」「味噌ラーメン!」と鏡平山荘名物の味噌ラーメンを食べる気で独りごちながら下ってきたのだが、流石にこの時間から味噌ラーメンを食べるのも人間的にいかがなものかと思い直し通過
10:59 わさび平小屋着
この日の暑さは半端じゃなく、この辺りでは声もうわずり朦朧とし始めていた
そこに「そうめん」の幟が涼しげに風になびいている
これは食べるしかないでしょう!



(うんめ!うんめ!)
人生で一番美味しいそうめんでした

12:11 新穂高温泉登山口着

こうして3泊4日、総距離55.3キロ、累積標高4,461メートルのクタクタ温泉旅終了
もうお腹いっぱい。しばらく山はいいや
え?再来週は湯俣温泉?

高天原温泉
富山県富山市有峰
数カ所から湧出したものを集めて使用
単純硫黄泉(硫化水素型)
(低張性・中性・高温泉)
成分総計0.534g/1kg
pH6.2
泉温57.8〜62.5度
湧出量69ℓ/分
微に白濁、弱い硫化水素臭と弱い渋みを有す
主要成分(1kg中)
ナトリウムイオン90.5mg
炭酸水素イオン143.5mg

新穂高温泉登山口以降の交通手段は徒歩のみ
新穂高温泉登山口にはいくつかの駐車場がある
このうち無料で一番近いのがP5駐車場