三島由紀夫の『禁色』(新潮文庫)を読みました。
地位も名誉も金もあるが醜男の老作家・檜俊輔は、女性を愛することが出来ない超絶美青年・南悠一と出会い、今まで自分を裏切ってきた女性達に、悠一を使って復讐するってな物語なんですが…
現代に読んでも色褪せる事のない内容の衝撃さも然ることながら、そんな衝撃的な作品が昭和26年から28年の間に書かれていた(連載されていた)って事に、ぶっ飛びます。おまけに三島、二十代。
内容は、とってもエンタメ☆
はじめは純粋だった悠一が徐々に自身の魅力と才能に気付くと、女性達のみならず男性達をも弄ぶようになるんですが、その様はかなり痛快。
ゲイバー〈ルドン〉の描写もリアルで、そこから派生する悠一のロマンスには、淫靡な香りがプンプンします♪
女性と寝る事に逡巡している悠一に、俊輔が放ったアドバイスが凄い…
「相手を薪ざっぽうだと思いなさい、座蒲団だと思いなさい、肉屋の軒に下った牛肉の塊りだと思いなさい」
…ネ、凄いでしょ?
此のワードチョイスに、三島のセンスが窺われます☆くどいようですが三島、二十代。
鏑木伯爵夫妻の存在に、きっとアナタも驚愕させられる筈。
「人間をいちばん残酷にするものは、愛されているという意識だよ。
愛されない人間の残酷さなんて知れたもんだ。
たとえば、悠ちゃん、ヒューマニストというやつはきまって醜男だ」
700ページ弱もあり、時折くたびれる箇所もあるかも知れませんが、底の浅くないエンタメ作品な上、本書を読んだ後、世界の見方が大袈裟でなく変わります。是非。