広報担当スタッフの後藤(将)です。

 

今回は、2024年6月中のホームレス・貧困問題に関連する記事から、興味深かったもの・大切な話題だと思ったものをご紹介します。

 

1.ホームレスの人々に選挙権を。アイルランドで、住所がなくても投票が可能に(IDEAS FOR GOOD 2024年6月4日)

 

https://ideasforgood.jp/2024/06/04/ireland-homeless-voter/

 

 

ホームレス状態にある人がおよそ14,000人ほどにまで急増しているアイルランドで、ホームレスの有権者登録を可能にするキャンペーンがスタートしたとのことです。

 

日本だと身元の確認や証明に多くの手間と時間が必要になりそうですが、アイルランドには国内で就労したり社会保険サービスを受けるために必要な「PPS(Personal Public Service )ナンバー」があり、ホームレスになっても所持し続けている人は多いのだとか。このPPSナンバーがあれば、オンラインか電話で登録ができるようです。

 

このように社会問題に直面している人たちの声が政治に反映される取り組みが、日本でも取り入れられることが期待されます。

 

2.「孤独・孤立」対策としての外出のきっかけづくりと移動手段確保(ニッセイ研究所 2024年06月14日)

 

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=78807?site=nli

 

 

ニッセイ基礎研究所のコラム「研究員の眼」より、国の孤独・孤立対策の骨格となる「重点計画」についての解説記事です。

 

重点計画に盛り込まれている「居場所の確保」について、そこへ通うための「移動手段の確保」も付け加える必要があると指摘しています。

 

同研究所が2022年発表したレポートによると、「送迎、公共交通の充実」が高齢者にとって生活上でニーズが最も大きいものであったことからも、移動手段は重要な課題です。

 

そして、自動車部品メーカー「アイシン」(本社:愛知県刈谷市)が全国で運営している乗合タクシー「チョイソコ」や、群馬県の渋川市社会福祉協議会が運営する相乗りタクシーによる買い物支援サービス「あいのり」という、高齢者が外出する機会と移動手段を同時に提供し外出を促すサービスの事例を取り上げています。

 

こうした外出のきっかけと移動手段を同時に提供するという交通と福祉が交差する領域の取り組みは孤独・孤立対策としても参考になるのではと投げかけています。

 

3.「もう何日もお米を食べさせられていない」日本で9人に1人が“貧困状態”…子どもたちを食で支えるフードリボンとは(南海放送NEWS 2024年6月26日)

 

https://news.ntv.co.jp/n/rnb/category/life/rb9820d305d97d4626b05dbdc6b520ac73

 

 

ユニークなシステムで子どもたちを支援する「フードリボンプロジェクト」と、フードパントリーを行う教会の取り組みを紹介した記事。

 

フードリボンプロジェクト」は、千葉県の「一般社団法人 ロングスプーン協会」が始めたプロジェクトで、全国で186店舗が参加。

このプロジェクトでは、まず客の利用客がひとつ300円のリボンを購入。そのリボンを店内の掲示板に貼っておきます。このリボンを子どもがレジへ持っていくと、一食を無料で食べられるという仕組みです。利用する子どもの経済的事情などでの区別はありません。

 

今回の記事では、このプロジェクトに参加している愛媛県西条市の中華料理店の方のコメントによると、飲食店の負担はそれほど大きくないようです。さらに、これまで経済的理由で外食が難しかった家庭が、家族連れで利用してくれることもあったとか。

 

また、愛媛県松山市の三津教会では子ども食堂やフードバンクのほか、フードパントリーも行っています。教会の牧師によると、利用するのは130世帯で、このうち8割がひとり親家庭で、ほと

んどがシングルマザーだそうです。

 

行政やNPOに限らず、こうした優しさの輪が広がっていくことで、地域の中で支え合う力が育まれていくことは大切なことだと感じました。

 

4.桐生市の生活保護費、今も満額不支給のまま NPOが一部を預かり支給は6割、市は関与否定も「知らないはずない」(東京新聞 2024年6月13日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/333234

 

 

 

違法性が疑われる生活保護制度の不適切な運用が明らかになった群馬県桐生市で、保護費の分割支給と、保護費満額を利用者へ渡さない運用が実質的に続いていることを報道した東京新聞の記事です。

保護費管理を委任されたNPO法人は本人に満額を渡さず、一部を銀行口座に留めたままだたようです。この実態を、当事者へのインタビューや金銭管理を委任されているというNPO側への取材を通して明らかにしています。

 

桐生市の違法な生活保護制度の運用についての報道が続いていますが、おそらくこれは氷山の一角と考えられます。生活保護受給者にはスティグマ(恥の意識)が生まれやすいことから、権利を侵害される立場に置かれやすい状況にあります。社会的に弱い立場に置かれ声をあげづらい人たちの権利擁護の仕組みや体制を、現在の生活保護行政の自浄作用に委ねるのは限界があるのかもしれません。

 

5.「行く所がないからこういう所におるんや」決定受け困惑…西成・あいりんセンター周辺の路上生活者への立ち退き命令が確定 吉村知事「不法占拠が解消されなければ強制執行」(TBS NEWS DIG 2024年05月30日)

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1201312?display=1

 

※5月末の記事ですが、大切な話題だと思ったので取り上げさせていただきました。

 

大阪市西成区の労働者支援施設「あいりん総合センター」は耐震性の問題を理由に建て替えが決まり2019年に閉鎖されましたが、一部の路上生活者らが敷地内から立ち退くことを拒んだため、大阪府が立ち退きを求めて提訴。最高裁まで争われましたが、路上生活者の上告を退ける判決となったという報道です。

 

西成に限らず、こうした立ち退きの問題は、最終的にはマジョリティの論理で決着されることが多いような印象を受けます。

路上生活の方が地域社会や公共空間から結果的にでも排除されてしまうことは、路上生活者への無理解や偏見・差別を強めてしまうことにもつながります。

こうした問題は、公共空間での路上生活は認められるべきかということに焦点があたってしまいがちですが、こうした問題を根本的に解決していくには、路上で暮らすことを結果的に選択しなければならなかった人の立場からも、支援のあり方や環境改善を考えていくことが求められるのだと思います。

 

何にせよ、報道にコメントした路上生活をされている方の「どうしたらいいか分からん…どこにも行く所がないからこういう所におるんや、わしらも、行く所のない人間が集まるところやから」という言葉に、この問題の本質が語られているように感じました。

 

(広報担当 後藤将之)

 

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