広報担当スタッフの後藤(将)です。

今回は、2024年4月中のホームレス・貧困問題に関連する記事から、興味深かったもの・大切な話題だと思ったものをご紹介します。

1.孤独・孤立対策推進法が施行 専門家「見えない孤独すくい取れるか」(朝日新聞デジタル 2024年4月1日)
 


コロナ禍で深刻化した孤独・孤立の実態をインタビューを交えて紹介されています。
 

また、今年4月に施行された、孤独・孤立の問題を「社会全体の課題」と位置づける「孤独・孤立対策推進法」の概要についても説明。

この法律は、国及び地方において総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進するため、その基本理念や国等の責務、施策の基本となる事項、国及び地方の推進体制等について定めたものです。

新法では自治体に対して支援団体で構成する地域協議会を設置する努力義務を課し、政府は悩みを抱える人を支える「つながりサポーター」を各地で養成するほか、全国で対策の好事例を共有できるデータベースをつくる施策を進めていくようです。
 

そして、孤独・孤立に関わる問題は多岐にわたることや、表面的には見えにくい孤独をどうすくい取れるかという視点からも対策を考える必要性についてなど専門家のコメントも交えて、孤独・孤立の問題が解説されています。

2.令和6年「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について」
 


令和6年1月に実施された「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)」の結果が発表されました。
全国のホームレス数は2,820人。前年比8%減で、内訳は男性2,575人、女性172人、性別不明の73人。2003年の調査開始以降最少を更新する形となりました。
都道府県別でみると、東京23区と20政令市の大都市エリアで、全体の約8割を占める形となっています。
 

ただし、この調査の対象となっている「ホームレス」は、あくまで路上生活を送っている人に限られ、いわゆる「ネットカフェ難民」や車中泊といった潜在的にホームレス状態にある人々は含まれていません。また、調査日時点の目視による調査のため、住まいを失うほどに生活に困窮した人々の実態が調査結果として正確に反映されづらいことには注意が必要です。

3.SNSで広がった「意地悪ベンチ」論争 排除の対象はホームレス?酔っぱらい?それとも…(東京新聞 2024年4月10日)
 


新宿区にある区立公園に設置されたアーチ状のベンチが座りにくい「意地悪ベンチ」だとSNSで批判が相次いだことについて、行政や近隣住民、専門家の視点から公共空間における「排除」の機能を考察した記事です。
 

記事では専門家のコメントも紹介。
排除アートに関する著書もある東北大の五十嵐太郎教授(建築史)は、「ホームレスを排除するという理由は入り口だったが、今では誰にとっても不便で不幸になっている」と指摘し、ホームレス問題に詳しい高千穂大の五野井郁夫教授は、「ホームレスが公園からいなくなっても、貧困問題がなくなるわけではない。ただ問題を見えなくしているだけだ」と批判。
また、公共空間の設計やプロデュースを手がける「グランドレベル」の田中元子代表は、「行政は税金を使ってわざわざベンチに仕切りを付けるのではなく、そのため(地道な福祉政策)にこそ税金を使うべきだ」と語っています。
 

文末のデスクメモにある「行き場がないと思った人に、都会に冷たく光るベンチやオブジェはどう映るだろうか」というコメントは、路上生活を送る方たちに関わる私たちの胸に訴えるものがあります。

4.アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自治体で実験進む(ロイター 2024年4月20日)
 


アメリカのロサンゼルス郡で、「ホームレスになる危険がある」住民を見つけ出すために試験的に人工知能(AI)の導入が行われているそうです。
 

このAIは刑務所や病院、各種セーフティネットプログラム、ホームレス動向、児童養護制度などのデータを分析して、路上生活になる恐れがあるとみなされる10万人のリストを作成。自治体はそのリストに基づいて相談にのったり、現金支給などの支援を行うことで生活が行き詰まるのを防ぐ試みです。
 

記事で紹介されている研究者のコメントによれば、適切なタイミングでホームレスになるリスクが高い人を把握し、現金支給などの支援を行うことでホームレス拡大の流れを止められるとのことです。また、ロサンゼルス郡でホームレス予防部門がこれまでに対応した数百人のうち、約9割がプログラム終了後も家に住み続けられていると説明されています。
 

支援を早期に行うことの重要性がわかるだけでなく、ホームレス状態にいたるリスクが高い人を把握し、アプローチする方法として非常に参考となる取り組みだと思います。

5.学校を辞めて祖父母の面倒を見ろ! 若者を追い込む「生活保護」の実態とは?(Yahooニュース 2024年4月9日)
 

 

NPO法人「POSSE」の今野晴貴代表の寄稿。
 

2024年3月に、生活保護を受給する70代の夫婦に対し、准看護師として働きながら看護専門学校に通っていた同居の孫の収入が増えたとして、保護を廃止した熊本県の処分を適法と福岡高裁は判決を言い渡しました。孫が祖父母の生活費まで出すと学校を続けられないと福祉事務所に訴えていたそうです。
 

孫が祖父母の扶養を強制され、教育を受ける権利を奪われてしまったことについて、生活保護法上の「世帯単位の原則」の問題点を詳細に指摘しています。
 

そして、この原則が世帯員相互の助け合いや扶養を強制し、この裁判のように学生の教育を受ける権利も侵害している状況があることから、若者の未来を守るために世帯単位の原則を縮小・再編(あるいは廃止)していくことが必要と提言。生活保護制度の運用改善を求めていく支援活動や社会運動が不可欠としています。
 

(広報担当 後藤将之)

 

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