広報担当スタッフの後藤(将)です。


ホームレス・貧困問題の動向を把握するために関連情報を収集しているのですが、今回の記事では、その中で興味深かったもの、大切な話題だと思ったものをご紹介します。

1.生活保護費の引き下げ 取り消す判決 津地裁(NHK 2024年2月22日)

 

 

 

最近、テレビや新聞などで目にすることの多い「生活保護基準引き下げ訴訟」関連の報道です。
 

国は2013年4月から3年間かけて、生活扶助基準(生活保護基準のうち生活費部分)を平均6.5%、最大10%引き下げました。これは過去に例のない下げ幅で、実に受給者の96%が影響を受ける大きなものでした。
 

こうした生活保護基準引き下げに対し、2016年11月に生活保護法や憲法に違反するとして幅広い著名人や団体が参加し「いのちのとりで裁判全国アクション」を結成。現在、全国29都道府県で1,000名を超える原告が違憲訴訟を提起し、国・自治体を相手に裁判が行われています。
 

2024年2月22日、これまで全国の地裁で言い渡された26の判決のうち、15例目となる保護費の減額処分の取消しを命じる原告勝訴判決が三重県・津地裁で出されました。その一方、各地で国も控訴し、現在も裁判が継続中です。すでに大阪・愛知での裁判は最高裁にまで進んでおり、今後どのような司法判断が下されるのかが注目です。


2.役所も黙認か「貧困ビジネス業者」驚きの手口 通帳とマイナンバーカードを取り上げられた(東洋経済オンライン|2024年2月23日)

 

 

ジャーナリスト藤田和恵さんによる東洋経済オンラインの連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」の記事。貧困ビジネスの被害にあった方のインタビューから、業者の手口をレポ―トしています。


住まいを失い、路上やネットカフェで生活する人々に声をかけ、施設への入居を勧める業者。しかし、施設に入り生活保護を申請すると、新しく作ったマイナンバーカード、そして生活保護費を振り込む預金通帳は取り上げられ、返却を求めても高圧的な態度で応じてもらえません。
 

施設のある自治体の担当職員は「施設に入ったのも、通帳を預けたのも本人の意思。自分たちには業者を指導、処分するための法的な根拠がない」とコメント。
 

「生活保護費の財源には限りがある。本当に税金を節約するつもりなら、保護費を搾取し、利用者の自立を阻む貧困ビジネス業者を牽制したほうがよほど効果があるのではないか。現行の法制度の下でも、行政ができることはあるはずだ」
「貧困ビジネスの問題を考えるうえで、個人のいたらなさをあげつらう行為は、業者の悪質さから目を背けさせるだけでなく、告発しようとする被害者を委縮させる。結果的に業者を利するだけだ」
 

と藤田さんは指摘しています。

3.生活保護、水際作戦が常態化? 桐生市の「異様さ」がデータで見えた 「最低水準」の背後に何があったのか(東京新聞 2024年2月18日)

 

 

不適切な生活保護費の支給が問題となっている群馬県桐生市についての追加報道。
 

研究者やケースワーカーでつくる「生活保護情報グループ」と東京新聞が連携して県作成の資料を分析したところ、10年ほど前から、生活保護を開始した世帯の割合が県内の他市に比べて明らかに低い状態が続いてきたことがわかりました。
 

産業構造や高齢化率などが似た近隣地域は、保護率や保護開始の割合も同じような推移をたどりやすいとされています。

生活保護情報グループのメンバー桜井啓太・立命館大准教授(社会福祉学)は、窓口に相談に来た段階で申請する意思をくじくような説明をするなどの申請権の侵害がなかったかのチェックや、県の監査が形骸化していなかったかの検証が必要と指摘しています。

4.フィンランドのホームレス対策 「ハウジングファースト」(FNNプライムオンライン 2024年2月14日)

 

 

フジテレビの持続可能な社会のためにSDGs(持続可能な開発目標)を見つめ直すキャンペーン「楽しくアクション! SDGs」による、ホームレスゼロを掲げるフィンランドの取り組みを紹介する記事です。

 

人口550万人のフィンランドには、1980年代後半に約2万人のホームレスがいました。そこで、ホームレスへまず初めに家を提供する取り組み「ハウジングファースト」をスタートさせた結果、2022年には4,000人以下までホームレスを減少させることに成功したようです。 
 

こうした対策で中心的な役割を担うNGO団体「Yファウンデーション」代表者の一人は

 

「以前は従来の『段階的』なホームレス対策を行っていたので、『ハウジングファースト』は大きな転換点になった。自分の生活基盤、つまり自分の家がなければ生活で抱える他の問題を解決することはとても難しい。翌日の眠る場所が決まっていないと(社会復帰への)道はとても険しいものになる」

 

と言います。
 

近年、日本でもこうしたハウジングファーストの取り組みが民間団体を中心に取り入れられるようになっていますが、「自分の家がある」ことが心に余裕を与え、元ホームレスの住人たちが抱える課題解決と社会復帰につながっているフィンランドの取り組みは、日本のホームレス支援政策にとっても参考になりそうです。

5.引き取り手のない「無縁遺骨」約6万柱。自治体負担の葬祭扶助が増加して財政を圧迫…総務省「厚労省は保管のあり方について方針を示すべき」(婦人公論.jp)
 

 

 

全国の市区町村で管理・保管している引き取り手のない「無縁遺骨」は、2021年10月時点で少なくとも6万柱にのぼることが、総務省の調査で明らかになりました。
 

また、経済的に困窮し、身寄りがないまま亡くなった人などの葬祭費を自治体が負担する葬祭扶助(生活保護費)も年々増加。すでに全国で支出総額が110億円を超えています。
 

葬祭扶助の急増には不適切な運用も指摘されていますが、かつては身元がわかっていながら家族など引き取り手がいないという事態はあまり想定されていませんでした。しかし核家族化が進み単身高齢者も増えたことで、現実的な対応ができなくなっているようです。
 

山友会では、合祀され無縁仏となってしまう元ホームレスのおじさん達が死後もつながりを感じていられるように、共同墓地を運営しています。しかしこれは、もはや特殊な事例ではなく、「無縁社会」とも呼ばれるこの社会を生きる私たちも、同じ問題を抱えているではないでしょうか。
 

(広報担当 後藤将之)

 

*********************************

【スタッフ募集!】

日常生活支援住居施設「山友荘」生活支援員(常勤)・配膳スタッフ・食堂スタッフ

山友会では、一緒に働いてくださるスタッフを募集中です。ぜひご応募ください。https://www.sanyukai.or.jp/recruit-lp1

 

【山友会メールマガジン ”やまとも通信”】
活動のトピックスやイベント・ボランティア募集などの情報が満載です! (配信は月1回)
登録はこちらから→http://bit.ly/2oPwUEu 

 

【マンスリーサポーター募集中です!】
ホームレス状態を余儀なくされている人々が、ひとりではないと感じ、笑顔を取り戻すために。
月々1,000円からのご支援。詳しくはこちらから→https://www.sanyukai.or.jp/monthlysupporter