広報支援チームやまともボランティアの藤井です。

前回のブログでは、山友会の活動の現場だけでなく、社会全体として危機感が高まっている「孤立死の現状」についてレポートしました。

※前回記事はこちら→孤立死の現状


その孤立死はなぜ起きてしまうのでしょうか。

 

今回は、その背景について探ってみたいと思います。




1.単独世帯の増加
 

まず、単独(一人暮らし)世帯が増加していることが挙げられます。
 

昭和61年には6,826,000世帯(全世帯数に占める構成割合18.2%)であった単独世帯数は、平成28年には13,434,000世帯(同26.9%)にまで増加しています。(図表3)

 

実に、日本人の4人に1人が単独世帯であるということになります。

 
資料:「平成28年 国民生活基礎調査」より筆者作成

さらに、65歳以上の一人暮らし高齢者は昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人でしたが、平成22(2010)年には男性約139万人、女性約341万人にまで増加しています。国立社会保障・人口問題研究所によると2035年には男性260万人、女性501万人にまで増加すると推計されています。(図表4)

図表4 一人暮らし高齢者の動向

 出典:平成28年度版 高齢社会白書(内閣府)P15

2.社会的孤立
 

次に挙げられるのが、社会的に孤立していることです。

社会的孤立の状況についても詳しく見てみたいと思います。
 

日本では「友人、同僚、その他の人」との交流が「全くない」あるいは「ほとんどない」と回答した人の割合が15.3%にのぼり、OECD加盟国20カ国の中で最も高い割合です。(図表5)

図表5 「家族以外の人」と交流のない人の割合(国際比較)

 

他国に比べると、家族以外の人々との交流が比較的少なく、一人暮らし世帯などが社会的孤立に陥りやすい状況にあることがわかります。



孤立死に直面しやすい高齢者の社会的孤立の状況を見てみましょう。


内閣府の調査(2008年)※6によると「ふだんどの程度、人(同居の家族を含む)と話をするか(電話や E メールも含む)」との質問に対して、92.1%が「毎日ある」と回答しています。
 

しかしながら、回答者が一人暮らしの場合、毎日と回答したのは、64.8%。更には1週間に1回以下と回答したのは、8.2%とのことです。(図表6)

※6 「平成20年度 高齢者の生活実態に関する調査結果」(内閣府)

図表6 高齢者の社会的孤立の状況


 


出典:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000029cea-att/2r98520000029cit.pdf

さらにアメリカ、ドイツ、スウェーデンと比較した調査(2015年)※7において、「病気の時や、一人では出来ない日常生活に必要な作業が必要な時、同居の家族以外に頼れる人がいる」との質問に対して、「頼れる人がいない」と回答したのは16.1%。これは他の国と比べて最も低い割合です。(図表7)
※7 「平成27年度 第8回 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(内閣府)によれば、「病気の時に助け合う」と回答する割合は、ドイツ31.9%、アメリカ27.0%、スウェーデン16.9%、日本5.9%。

図表7 近所の人との付き合い方

出典:平成28年高齢社会白書(内閣府)P63


1週間1回話をする機会があるかないかで、さらに近所に病気の時に助け合う人がいないのであれば、孤立死となるのは、想像に難くありません。
 

全てが全てとはいえませんが、数多と発生している孤立死という事象は、こうした社会的に孤立した状況の結果なのだと思います。

 

3.社会的に孤立した人々はどれだけいるのか
 

それでは、そういった社会的に孤立した状況にある人はどれだけ存在するのでしょうか。
 

しかしながら、それを明らかにするために必要とされる、孤立状態と判断すべき基準や標準的な測定方法は定まっていないのが現状だそうです。※8
 

高齢者については、過去の先行研究に共通して、孤立した高齢者の割合はほぼ一桁(10%未満)と言われています。具体的には、より深刻な孤立状態では高齢者の概ね2~10%程度、孤立しがちな状態では高齢者の概ね10~30%程度という結果が多いようです。※9(図表8)
※8、※9 「高齢者の社会的孤立に関する主要な知見と今後の課題」斎藤雅茂(2012)

図表8 先行研究における孤立高齢者の操作的定義と出現割合

出典:「長寿時代の孤立予防に関する総合研究」(ニッセイ基礎研究所)P11

また、対象を20歳以上に拡げた場合の孤立者の割合が8.9%という報告もあります。※10
※10 「孤立の社会学-無縁社会の処方箋」石田光規(2011)。2003年日本版社会総合調査(JGSS)で対象となった日本全国に居住する成人(20~89歳)1,706人のうち「悩みを相談できる相手が一人もいない人」が8.9%であったことによる。

さらに、ニッセイ基礎研究所は、社会的孤立リスクを日常のコミュニケーション量から測定しており、それによると、ゆとり世代(23~25歳)では16.0%、団塊世代(39~42歳)で5.5%、75+世代(75~79歳)5.0%が最もコミュニケーション量が少なく孤立リスクが高いとされるレベル5であったと報告しています。※11

※11「長寿時代の孤立予防に関する総合研究 報告書」株式会社ニッセイ基礎研究所(2014)
 

この報告をもとにすると、日本の全人口のうち孤立リスクが高い状態にある人数が約1,004万人いると推計されるとも言われています。※12

※12 『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』菅野久美子(2017)

 

やや粗い試算ではありますが、これだけの人達が社会的に孤立してしまうリスクが高いという現状。

自分の身に迫る問題として、より危機感を感じます。

 

最終回となる第3回は、何が孤立の要因となっているのか、そして、孤立死をはじめとする社会的孤立の問題はどのように解決していったらよいのかということについてレポートします。

 

【参考文献・資料】

・厚生労働省(2016)『平成28年 国民生活基礎調査』
・内閣府(2016)『平成28年度版 高齢社会白書』
・OECD(2005)「Society at Grance:2005 editon」
・内閣府(2008)「平成20年度 高齢者の生活実態に関する調査結果」
・斎藤雅茂(2012)「高齢者の社会的孤立に関する主要な知見と今後の課題」
・株式会社ニッセイ基礎研究所(2014)「長寿時代の孤立予防に関する総合研究 報告書」
・石田光規(2011)「孤立の社会学-無縁社会の処方箋」
・菅野久美子(2017)『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』

 

 

(広報支援チームやまとも ボランティア 藤井)

 

 

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